湯めぐりみしゅら~ん

第53湯:八幡平湯巡りツーリングその2

 八幡平湯巡りツーリング2日目。名湯・繋温泉を出発して県道16号線を進み、分れ南の交差点から国道282号線を安比高原方面に進む。ホンダ400Xは快調そのもの。交通の流れはスムーズだが、やはり天候が気になる。岩手県と秋田県の県境まで進むにつれて曇天の濃さが増してくる。気温もひと桁台。10月下旬とはいえ東北地方の朝は寒い。

 やがて秋田県に入り、国道341号線と国道282号線の分岐点まで進み、とりあえず国道282号線(鹿角市)方面に進む。ほどなくして道の駅「かづの」が見えてきたので、休憩がてらに立ち寄ってみた。そもそも鹿角市方面に来た目的は、鹿角市が発祥の「きりたんぽ鍋」を食べるため。何のあてもなく来てみたが、偶然にも道の駅で「きりたんぽ鍋」を発見してしまった。しかもご丁寧に1人前で販売していた。早速「きりたんぽ鍋」と「味噌つけたんぽ」を購入。お店のおばさんは、私が写真を撮りたいのを察したのか「撮影しやすいように容器に入れてあげるね」と「味噌つけたんぽ」を容器に入れてくれた。てきぱきと撮影して早速いただく。具がたっぷり入っており、冷えた身体が温まる。お替りできたら何杯でもいけそうな美味しさだった。

 道の駅「かづの」を出発して第1湯目である大葛温泉に向かう。国道282号線から県道191号線、県道22号線をあの「比内地鶏」で有名な比内町方面に進み、道の駅から15分ほど走ったところに大葛温泉の共同浴場(町民浴場)があった。大葛温泉の共同浴場は大館市比内町大葛字牛ケ岱にひっそりと佇んでいる。入湯料は100円。熱めで無色透明のお湯はもちろん源泉掛け流し。いかにも共同浴場然とした浴室はこじんまりとしており、内風呂のみ。山奥にもかかわらず地元の人がひっきりなしに訪れていた。

 大葛温泉に入湯後、昼食を摂るために午前中に訪れた道の駅に再び行き、今度はてんぷらそばを食べて腹ごしらえ。ここから国道282号線を通って岩手県に戻るのだが、危惧していた雨がついに降ってきてしまった。諦めて国道282号線を進み、第2湯目に選んだ湯瀬温泉に着く頃には雨は本降りになってきた。湯瀬温泉に到着し、共同浴場である「湯瀬ふれあいセンター」に入った。湯瀬温泉「湯瀬ふれあいセンター」は秋田県鹿角市八幡平湯瀬湯端にある共同浴場だ。入湯料は200円。受付のある1階が湯瀬温泉の資料館になっており、浴室は2階にある。共同浴場らしく小さめの内風呂のみだが、無色透明の熱めのお湯は源泉掛け流し。湯に浸かりながらこれからの予定を考える。今宵の宿は岩手県二戸市の稲庭交流センター「天台の湯」に決めているが、夕方までは4時間以上はある。雨だが頑張って2湯は入ることにした。

 湯瀬温泉を出発して国道282号線を岩手県方面に走る。雨はまったく止む気配がない。安代町に来たところで、県道30号線を中山方面に進んだところにある七時雨山(ななしぐれやま)温泉に入ろうとしたが、なんと午前中で営業終了とのこと。仕方ないので県道30号線を戻り、途中にある新安比温泉「静流閣」に入ることにした。第3湯目の新安比温泉「静流閣」は岩手県八幡平市叺田(かますだ)にある温泉宿だ。入湯料は700円。2種類の源泉(金の湯、銀の湯)があり、内風呂のみに温泉が供されている。広々とした内風呂の温泉は強塩泉の茶褐色。湯温は適温で、冷たい雨にやられた身も心も温まる。露天風呂もあるが、こちらは温泉ではないとのこと。

 外に出ると、相変わらず雨が降り続いている。時間は午後4時を過ぎたところだが、チェックイン予定時間の午後6時までもう少し時間があるので、国道282号線を盛岡市方面に向けて戻り、安比高原の近くにある綿烏帽子温泉館「あずみの湯」に入ることにした。綿烏帽子温泉館「あずみの湯」は岩手県八幡平市細野にある日帰り入浴施設だ。建物はその名のとおり帽子をイメージしたものとなっている。入湯料は600円。浴室、内風呂、露天風呂ともに広めで、お湯はやや黄金色。適温で冷えた身体が蘇る。夕方のためか多くの地元の方がたくさん訪れていた。

 外に出ると雨はほぼ止んでいた。このままの状態で宿に向かいたい。再び国道282号線を秋田県方面に進み、県道6号線方面を浄法寺町方面に進む。日はすっかり落ちて辺りは街灯も少なく、暗い道を標識を頼りに進んでいく。やがて「天台の湯」方面に向かう道に入り、稲庭岳方面に向けて林道を進む。標高が高くなるにつれて天候が荒れてきた。街灯がなく真っ暗なのと、雨と強風で遮られて視界ゼロ。止むなくLEDフォグランプを点灯したところ、一気に視界が明るくなった。「おお、スゴイぜっ! 助かった〜」と、独り言をいいながら突き進み、ようやく山の中腹にある宿に到着した。停車するとバイクが倒れてしまうのではないかと心配するほど風が吹き荒れている。予約した時点では天候は予測できなかったとはいえ、とんでもないところに来てしまった。

 今宵の宿である稲庭交流センター「天台の湯」は岩手県二戸市浄法寺町黒沢にある保養施設だ。ここのお湯は純粋な温泉ではなく、準天然トロン温泉となっている。宿泊だけではなく日帰り入浴もできる。通された部屋は和室で、1人では十分な広さ。まずはズブ濡れになった装備を解除。宿には乾燥機が設置されていないので、部屋のあらゆるところを利用して装備を乾す。ちょっとくつろいだところで夕食前にお風呂に入ることに。内風呂のみだが広々としている。適温のお湯で冷えた身体をリカバリー。お風呂上りに食堂で夕食を食べてから部屋に戻った。外はまだ風が吹き荒れている。よほど濡れたのだろうか、濡れた装備から水が滴り落ちている。これがキャンプ泊だったら濡れっぱなしのまま一夜を過ごさなければならなかっただろう。

 昨日の雨と風が収まり、穏やかな朝を迎えた。朝風呂の後、いかにも日本の宿らしい朝食をいただきながら最終日のスケジュールを練る。ひとまず国道282号線を走って盛岡市近くまで進んで、お昼前には岩手県を出発、夜のうちには東京に戻りたい。天気は回復するらしく、ズブ濡れにはならなくてすみそうだ。宿を出発して県道6号線に向かう。昨日は真っ暗だったのでわからなかったが、高原らしい開放的な景色が広がる。県道6号線に出たところで、盛岡市方面に戻る前に、宿の名前にもなっている「天台寺」というお寺に向かうことにした。

 「天台寺」は小説家であり尼僧として著名な瀬戸内寂聴さんが名誉住職を務めているお寺である。5年前に亡くなった母親が、寂聴さんと同じ高校の後輩ということもあり寂聴さんの書物をよく読んでいたのだ。そんなことから、せっかくなので寂聴さんゆかりの天台寺を訪れてみた。駐車場から参道を登ること10分弱、午前9時前なので訪れる人はなく、森に囲まれた山の中にひっそりと天台寺が佇んでいた。本道は改修工事中だったが、本道の横に寂庵があった。お参りをした後、お守りを購入して駐車場に戻った。

 県道6号線を国道282号線方面に進み、国道282号線に入って盛岡市方面を目指す。途中の安比高原の外気温は2℃…。雨が降っていないのが幸いだ。昼間で時間があるので、あと1〜2湯温泉に入ることにした。国道282号線を走り、東北自動車道・西根インターの近くにある西根温泉「おらほの温泉」に向かった。西根温泉「おらほの温泉」は岩手県八幡平市大更にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円。館内は健康ランドのように広々としており、浴室も広いが、施設全体がやや老朽化している感じがした。露天風呂はなく内風呂のみ。お湯は無色透明でやや熱め。朝風呂にはちょうどいい。

 西根温泉「おらほの温泉」を出て、このまま西根インターから東北自動車道に乗ろうと思ったが、もう1湯入りたくなり、西根温泉からそれほど遠くないところにある岩手山焼走り国際交流村内にある「焼走りの湯」に向かった。岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」は岩手県八幡平市平笠にある日帰り入浴施設だ。場内にはキャンプ場やキャビンが併設され、背後には岩手山が見えるなかなかのロケーションだ。入湯料は600円。内風呂のみだが広々とした開放感のある作りで、眺めもいい。お湯はやや熱めの無色透明。今回のツーリングで最後となるお湯をじっくり楽しんだ。

 岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」を出たのがちょうど午後0時。西根インターから東北自動車に入り、あとは東京をひたすら目指すだけだ。途中天気が崩れたり、トラブルが発生することもなく、東京に到着したのが午後7時50分、総走行距離は約1640kmにも及んだ。デジタルメーター上での燃費はリッター24.7kmだったが、実際にはリッター30kmに近い。ホンダ400Xは十二分に期待に応えてくれた。じつに頼もしい相棒だ。

 結局、八幡平湯巡りツーリングが2015年最後の大遠征となった。冬場も出かけたいところだが、凍結や雪を考えると、なかなか遠出しにくい。大遠征は春先まで待とう。今から春が待ち遠しいぜ!


写真をクリックすると大きなサイズで見られます
道の駅「かづの」で食べたお一人様用きりたんぽ鍋(400円)と味噌つけたんぽ(1本150円)。お一人様用のきりたんぽ鍋があるのはソロライダーに嬉しい
道の駅「かづの」で食べたお一人様用きりたんぽ鍋(400円)と味噌つけたんぽ(1本150円)。お一人様用のきりたんぽ鍋があるのはソロライダーに嬉しい。
大葛温泉の町民温泉は入湯料100円とリーズナブル。共同浴場らしく湯船はこんじまりしているが、お湯はもちろん源泉掛け流し
大葛温泉の町民温泉は入湯料100円とリーズナブル。共同浴場らしく湯船はこんじまりしているが、お湯はもちろん源泉掛け流し。
湯瀬温泉の入口近くにある「湯瀬ふれあいセンター」。1階が湯瀬温泉の資料館になっており、湯瀬温泉の歴史を学ぶことができる
湯瀬温泉の入口近くにある「湯瀬ふれあいセンター」。1階が湯瀬温泉の資料館になっており、湯瀬温泉の歴史を学ぶことができる。
新安比温泉の温泉宿「静流閣」。金の湯と銀の湯という2種類の源泉が供されている。ただし露天風呂は温泉ではないとのこと。ちょっと残念…
新安比温泉の温泉宿「静流閣」。金の湯と銀の湯という2種類の源泉が供されている。ただし露天風呂は温泉ではないとのこと。ちょっと残念…。
夕暮れ時のため色崩れしてしまった綿烏帽子温泉館「あずみの湯」。建物の中心部が帽子のようになっているのがわかるだろうか
夕暮れ時のため色崩れしてしまった綿烏帽子温泉館「あずみの湯」。建物の中心部が帽子のようになっているのがわかるだろうか。
2日目の宿となった稲庭交流センター「天台の湯」。写真は3日目の朝に撮影したもので、前の晩はものすごい嵐だった
2日目の宿となった稲庭交流センター「天台の湯」。写真は3日目の朝に撮影したもので、前の晩はものすごい嵐だった。
ズブ濡れになったグローブやジャケットを部屋で乾かす。グローブは水が滴り落ちるほど濡れていた。キャンプだったら絶対に乾かないだろう
ズブ濡れになったグローブやジャケットを部屋で乾かす。グローブは水が滴り落ちるほど濡れていた。キャンプだったら絶対に乾かないだろう。
日本の宿らしい和食中心の朝食。ご飯はおひつに入ってきたのだが、もったいないので全部食べてしまった
日本の宿らしい和食中心の朝食。ご飯はおひつに入ってきたのだが、もったいないので全部食べてしまった。
かの瀬戸内寂聴さんが名誉住職を務める天台寺。写真は本堂の横に設けられている寂庵。訪れた時は本堂は改修工事中だった
かの瀬戸内寂聴さんが名誉住職を務める天台寺。写真は本堂の横に設けられている寂庵。訪れた時は本堂は改修工事中だった。
日東北自動車道の西根インターの近くにある西根温泉「おらほの温泉」。建物内がやや老朽化しているのがちょっと気になった
東北自動車道の西根インターの近くにある西根温泉「おらほの温泉」。建物内がやや老朽化しているのがちょっと気になった。
岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」の背後に見えるのは岩手山。この日も晴れたと思ったら雪がチラつくなど不安定な天候だった
岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」の背後に見えるのは岩手山。この日も晴れたと思ったら雪がチラつくなど不安定な天候だった。
岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」に向かう途中の道でパチリ。ホンダ400Xによる初の大遠征だったが、十二分に期待に応えてくれた
岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」に向かう途中の道でパチリ。ホンダ400Xによる初の大遠征だったが、十二分に期待に応えてくれた。
昨年末に、バイク仲間と一緒に栃木県塩谷郡高根沢町にある全国バイク神社認定第1号の「安住神社」にお参りしてきた。ここでは御祈願後に巫女さんと一緒に記念撮影できる。お近くにお住まいの方は参拝してみてはいかがだろうか
昨年末に、バイク仲間と一緒に栃木県塩谷郡高根沢町にある全国バイク神社認定第1号の「安住神社」にお参りしてきた。ここでは御祈願後に巫女さんと一緒に記念撮影できる。お近くにお住まいの方は参拝してみてはいかがだろうか。

 

ブースカ的温泉評価
大葛温泉 町民浴場  ★★★★
湯量豊富で良質な源泉掛け流しのお湯が楽しめる
湯瀬温泉「湯瀬ふれあいセンター」 ★★★★★
湯瀬温泉の歴史が学べる共同浴場
新安比温泉「静流閣」 ★★★★★
種類の源泉が楽しめる強塩泉の温泉が特徴
綿烏帽子温泉館「あずみの湯」 ★★★★★
ユニークな建物が目印の地元密着型温泉
西根温泉「おらほの温泉」 ★★★★★
館内、浴室ともに広々とした健康ランド的な温泉
岩手山焼走り国際交流村内「焼走りの湯」 ★★★★★
岩手山をバックにした雄大なロケーションにある温泉

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は734湯。湯巡りツーリングの相棒はホンダ・400X。ちなみにマイカーはスズキのエスクードだ。


[第53回へ][第54回][第55回]
[湯巡りみしゅら〜んバックナンバー目次へ]
[バックナンバー目次へへ]