順逆無一文

第64回『二輪車のETC普及率は…』

 ローカルな話題で申し訳ないですが、通勤路となっている首都高速が、4月1日の午前0時から新料金システムに移行します。要は値上げってことですね。
(※首都圏の圏央道、外環道、中央道、横浜横須賀道路、京葉道路、千葉東金道路、新湘南バイパスなども料金変更が行われるのですが、それらの情報は皆様のご利用なさっているエリアの道路情報コーナーや、下に記載したリンクから調べてみてください)
 
 ETC装置を導入されていないであろう多くのバイクライダーにとっては上限料金での支払いとなり、これまでの930円が1,070円(普通車はさらに大きく、約1.4倍の1,300円に)と、またまた値上されることになります。
 
「現金でご利用のお客様は、初乗り料金所で以下の基本料金をお支払いいただきますと、首都高全線をご利用いただけます」。と現金利用車への説明書きではなんだかやさしく諭された気がしますが、「最短区間しか乗らなくても、全線フルで乗ろうが、いったん首都高速に乗り入れたら最後、均一料金の1,070円をいただきますよ」と、2012年1月1日の前回の料金値上げの時と同様、木で鼻をくくったようなETC非装着車などお荷物、とばかりの“切り捨て”対応に変わりなし。
 
 ETC非装着車が話題になるのは「料金徴収員を置かなければならず、人件費などで無駄な経費を発生させている」等の話題として取り上げられる時のみ。それだって現実には現金利用車に対応するためだけに人員を置いているわけなんかじゃなく、カードが反応しない、カード入れ忘れた、だのなんだかんだとETCゲートを詰まらせてしまうETC利用車両のトラブルに対応するための役割もどれだけ多いことか。
 
 現に、一部の入り口では現金利用車両でも自動徴収機で無人で支払わせているのだから、ETC非装着車ばかりを非難するのは見当違い。ETCの完全導入に近づけることで更なる経費削減、収益率アップを狙っているだけ、そのためにはETC非装着車を悪者にするのが一番、などとうがった見方をされてしまっても仕方ないのではないでしょうか。
 
 ちなみに今回の料金改正の要点は、現行の「6㎞毎の料金距離に応じて加算される料金体系」から「0.1㎞毎の料金距離に応じて10円単位で加算される料金体系」に変更されるということ。そしてもう一つのポイントが、現行の「2車種区分」から「5車種区分」へと、遅まきながらやっと細分化されるということ。
 

●2016年3月31日までの首都高速料金表
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 ついこないだ値上げしたばかり。料金圏別「均一料金制」から「距離別料金制」に移行したのは、2012年1月1日だからわずか4年前のこと。ちなみに、今回の新料金も実は5年間しか持たないようですね。首都高速道路株式会社の「首都圏の新たな高速道路料金について」という資料によれば、この新料金、あくまで2016年4月1日から2021年3月31日までとなってます。5年後には再値上げのスケジュールがすでに予定にあるのでしょうか。ま、それはともかく首都高速の新料金は以下の通り。
 

●2016年4月1日からの首都高速料金表
20160401.jpg 

 軽・二輪車の上限は1,070円。車種区分が従来の普通車と大型車の2区分から、軽・二輪車、普通車、中型車、大型車、特大車の5区分になったことで二輪車の上昇率は低く抑えられた(上限比較で1.15倍)のがせめてもの救いでしょうか。それでも二輪車のETC装着率の低さからいえば文句の一つも言いたいところですが。
 
 ちなみに二輪車のETC装着率のデータを探してみましたが見つけられませんでした。代わりにといってはなんですが、高速道路のクルマ全体でのETC利用状況を。ちょっと古いですが、2014年3月現在で89.7%(国交省“ETC利用状況の推移”から)というのが出てきました。ちなみにETCが全国展開されたのは2001年12月(二輪車は2006年でしたっけ)ですから、高速道路の利用車に限ればかなりの勢いで普及したといえますね。ただしこれはあくまで高速道路の利用車両に限った利用率の話。普通車に対するETCの装着率は、カーナビの普及率よりちょっと低い約6割というところが実態といわれています。
 
 これが二輪となるとまったく雲をつかむような話。高速を利用できる126㏄以上の二輪車全体に対するETCの装着率など、どこも調べたことがないのでしょう。ちなみに数字としてきっちり把握できる高速道路を利用した二輪車に限ってのETC利用率ではクルマよりも10%以上少なかったという数字が出ています。それでも意外に多いですね。装着率となると実際は10台に1台にも満たないような気がします。
 
 ヨーロッパでは、ETCゲートを設けて路車間通信で料金徴収を行う方式から、現在はGPSも利用して走行実態を把握し課金する方法が主流となってきているそうです(日本は、今年の春からETC2.0を導入しますが、相変わらず路車間通信を中心に進化させる独自の路線を取ることになってますね)。そして何より、一番強調しておきたいヨーロッパとの違いは、それらの車載器自体はユーザーに無償で貸与されているという点(取り付け費用は国ごとに有償だったり無償だったりのようですが)。「料金所での渋滞が解消されます」や「現金をいちいち用意しないで済みます」などと、さも利用者にとってのメリットのみを強調して、利用者に全額負担させて車載器を取り付けさせている日本とは大違い。
 
 ちなみに昨年の9月に、国土交通省からバイクETCの利用率アップを目指した施策の検討が伝えられましたが、その後どうなったのでしょうか。また、この年の5月にETCサービスの開始以来初めてとなる「バイクETCの利用状況サンプル調査」なる実態調査が行われたというのですが、それら一つとってもいかに二輪車などどうでもよかったかが分かりますね。
 
 これが先ほど紹介した「二輪車のETC利用比率は全車平均よりも10%以上低かった」のデータにつながるわけです。やろうと思えばすぐにできたはずの高速道路でのETC利用率の実態把握ですらこの状態なのですから、126㏄以上の二輪車全体でのETC装着率などわかるはずがない、といったところ。クルマ全体の約6割に普及というのも同様に確実な数字とは思えませんが。ま、そんな程度だろうと考えていた方がいいかもしれないですね。
 
 そういえば、一部のライダーさんたちにとっては気になる第三京浜、横浜新道なども上がります。まずは、第三京浜。玉川から保土ヶ谷まで、距離にして16.4㎞。単順に対距離計算で行くと680円にもなってしまいます。が、当面、激変緩和措置としてETC車、現金車共に普通車が上限390円に設定されました。軽・二輪車の車種間比率は0.8ですから単純計算で312円、切り捨てで上限310円に。さすがに首都高速とは違って現金車は全て上限料金を払えなどということにはなりませんでした。ちなみに保土ヶ谷~港北(5.6km)は110円(普通車は130円)。港北~京浜川崎(8.6㎞)は160円(普通車は200円)の新料金に。
 
 横浜新道も当面、激変緩和措置として現行の均一料金制を継続して現行の軽・二輪160円(普通車210円)から250円(普通車320円)に。こちらは前から5車種区分+原付(!戸塚~今井間は走れるんですね)の6車種区分でしたので上昇率は1.56倍とちょっと多めです。
 
 他の首都圏の高速道路の新料金は独立行政法人、日本高速道路保有・債務返済機構の「首都圏の新たな高速道路料金」のページが分かりやすいのでご参照を。
http://www.jehdra.go.jp/searchmap/information.html
ページの下の方にある「料金の変更概要」のリンクで。
 
 また首都高速の4月1日からの新料金・ルート案内は、「首都高ドライバーズサイト」の検索ページが使いやすいのでご参考までに。
http://fee-route.search.shutoko.jp/
 
 まだまだ朝晩は寒いですね。皆さまもくれぐれも安全運転で。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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