pirelli_scorpion_trail_2_title.jpg

ピレリジャパン

 
最強の公道タイヤが更なるレベルアップ

 走行会でも草レースでも、サーキットを走る人ならば「ディアブロスーパーコルサ」ブランドを知らない人はいまい。ピレリタイヤと言えばハイグリップラジアルタイヤで現在最も支持を集めているブランドと言って差し支えないだろう。その中でも特にサーキットにおいてはディアブロスーパーコルサの恩恵にあやかっているライダーは多いはずだ。
 
 さらにピレリは、より公道に向けたロッソコルサ、そして新製品としてデビューしたてのロッソⅢ、ツーリング向きのエンジェルGT(及びST)と、公道においても癖がなく強力なグリップを発揮する魅力的なタイヤを多くラインナップしている。
 
 数々の魅力的なラジアルタイヤラインナップの中で、ムルチストラーダが水冷になったタイミングでデビューしたのが今回テストしたスコーピオントレイルの初代だ。アドベンチャーカテゴリーでありながら前後17インチのホイールを履くムルチストラーダだが、それでいてアドベンチャーモデルと言えるだけの万能性やオフロード性能も確保しなければいけない。そんな命題を強力にサポートしたのがこのタイヤなのである。オンロードのスポーツバイクで一般的な17インチサイズとしながらも、驚くほど深い懐を持っていて決して軽量車とは言えないムルチストラーダにダート走行を許容させてくれたスコーピオントレイル。その万能タイヤが進化しⅡとなり、テストの機会に恵まれた。
 

ピレリスコーピオントレイルⅡ。 こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/b97LXZUwW5s

 
エンジェルGTのプロファイルと60%のロングライフ化

 
 ピレリのスポーツツーリングタイヤ エンジェルGTのプロファイルをベースにタイヤ形状を再設計したスコーピオントレイルⅡは、シリカ配合のコンパウンドを新採用すると共にオンロード性能を大幅に高めたという。しかしスコーピオントレイルⅠの時点でかなりのオンロード性能を有していたタイヤだ。アドベンチャーバイクだけでなく、ネイキッドに装着してもとてもいいフィーリングをもたらしてくれ、また荒れた路面やウェットパッチでの安心感は絶大であった。Ⅱではドライ・ウェットグリップ共に向上させているというから楽しみだ。またスコーピオントレイルⅠではグリップやハンドリングは良いもののライフはもう少し、という要望があったこともあり、ⅡではⅠ比で60%ものロングライフ化を果たしているという。
 

02.jpg
ハイスピードワインディングでもしっかりとしたグリップでアドベンチャーモデルでも積極的に楽しめるだけでなく、ハードブレーキングしながらでもラインを変えていけるなどピレリの上級タイヤと同様の特性に、特に緊急時などは助けられそうだ。

 
万能バイク・Vストロームに、万能タイヤを装着する。

 
 テスト車両であり僕の愛機でもあるVストローム650のサイズはフロント110/80R19、リア150/70R17。現在の感覚では細めの設定にも感じるが、この細めのタイヤが気軽につき合わせてくれるキモにもなっており、また公道では軽い取り回しや切れ味のあるハンドリングを提供してくれる。さっそくスコーピオントレイルⅡを装着し走り出す。
第一印象はまるでキャスター角が立ったかのようだった。ハンドルがとても素直に切れていき、こちらの感覚以上にクルクルと曲がっていく。直前に装着していたタイヤが安定志向のもの(ミシュランのパイロットロード4)だったためその対比がまた鮮明だったのだろうが、それにしてもスポーティさが際立っており、大きな車体を振り回して乗るのが楽しい。
 
 一皮むいてからツーリングに出かけた。第一印象の軽快さは高速道路での安定感を阻害することはなく、直進安定性も高く高速道路クルージングもなんら問題はない。一般道のワインディングへと進むと軽快なハンドリングに加え深いバンク角でのしっかりとしたグリップ感が頼もしい。Vストロームは出荷時に装着されているブリヂストンのタイヤとの相性も良くハンドリングはもともと軽いのだが、このスコーピオントレイルⅡのような絶対的グリップ感はなく、バンク中にあまりハードにアクセルを開けていくとリアがズルズルと流れていくこともままある。しかしスコーピオントレイルⅡでは決してそんなことはなく、ステップを擦っているような深いバンク角からでも積極的にアクセルを開けていけるのだ。
 
 路面の良いワインディングではついついその気になってしまい、Vストロームの持つ素性の良さを最大限活かしながらスポーティな走行を楽しめてしまう。さらにブレーキングもとても良く、ブレーキを握りながらクリッピングへとバンクさせていくことができた。この感覚はサーキットでのディアブロスーパーコルサに通ずるものを感じることができ、減速と旋回を同時に行うスポーツライディングを安心して行うことができた。
 

03.jpg
ツーリング先ではこのような道に出くわすことも少なくないだろう。落ち葉などが散乱する舗装林道などはツーリングルートとしては魅力的ながら気を使うことも事実。スコーピオントレイルⅡはバイクの特性ににオフ車的な懐の深さをプラスしてくれると感じる。

 
トレイルというからには不整地もこなす

 
 オンロードでの性能はツーリングラジアルタイヤの同社エンジェルGTと比べても遜色ないどころか、こういったアドベンチャー系のモデルと組み合わせるとそれ以上の安心感や素直さが確認できた。しかしトレイルというからには荒れた舗装林道や不整地も走ってみたい。そもそも日本のワインディングと言えば舗装林道のようなところが多いのだ。
 走ったのは神奈川県の奥地。地図上では色の付いていないような道を探っていくと、まだまだ不整地にも出会えるエリアだ。まずは勝手知ったる舗装林道だが、ここでも安心感は高くVストロームとの相性も抜群。路面が見えている場所では積極的な操作ができるし、落ち葉が積もっているようなところでも、よりオフロードを意識したタイヤのような許容度を感じる。
 
 これがスコーピオントレイルブランドの不思議なのだ。一見そんなにオフロードが得意とも思えないパターンにもかかわらず、オフロードもイケてしまうのである。それはⅡになってもかわらず、舗装林道の先の不整地にも乗り入れたが、これがけっこうイケてしまう。アドベンチャーカテゴリーの中では軽量とはいえ、不整地で650ccのバイクを振りまわすのはなかなか骨だ。しかし、「例えもっとオフロード志向の強いタイヤを履いても、車重やスピード域を考えるとこれ以上のペースでは走りたくないな」というところまでスコーピオントレイルⅡはカバーしてくれるのだ。
 
 近年のアドベンチャーモデルは大きく重いため日本の細かな未舗装路に積極的に乗り入れることを薦めたくはない。しかしもしそんな機会があったとしたならば、このタイヤは無理なくそのシチュエーションをこなすだけでなく、ちょっと楽しんでしまおうかと思わせる懐を持っている。これはロードでのグリップやスポーティなハンドリングを考えると、驚異的なことに思う。そしてもちろん、フラットダートなど全く問題としない。
 

04.jpg
筆者のVストロームは650ccとアドベンチャーモデルの中では軽量な部類のためこういった道にも踏み入れるが、一般的には大型バイクでは走らないだろう。しかし北海道などではこんなシチュエーションに遭遇しないとも限らない。そんな時に「安心感を持ってやり過ごせる」能力は大切だ。

 
あとはライフなのだが

 
 手放しで商品を褒めることはほとんどないのだが、このスコーピオントレイルⅡについては、少なくとも僕の好みにはピッタリ合った性格のタイヤだと言わざるを得ない。保有しているバイクはVストロームであるが、しかし使い方はおとなしいツーリングばかりではなく、気持ちがいいワインディングがあれば楽しみたいし、フラットダートだってただこなすだけではつまらないと思っている。僕のように積極的にバイクに入力し、対話を楽しみたいと思っているようなライダーにならば、このスコーピオントレイルⅡは手放しでお薦めできる。
 
 一方で、高速道路主体でほぼ直線しか走らないというツーリングライダーだったら、本当の性能を楽しむ機会が少ないという意味で、もしかしたら他の選択肢があるかもしれない。しかしそんなライダーでもこのタイヤを履けば、改めて自分の所有するアドベンチャーモデルのポテンシャルに気づけるはずだ。なおアドベンチャーに限らず、オンロードスポーツモデル全般でもあらゆる路面でのツーリングをする人ならば試してみて損はないタイヤだ。
 
 最後に気になるのはライフである。確かにスコーピオントレイルⅠではライフに対する要望も聞こえてきた。しかし60%の向上となればこれはありがたい進化だ。前モデルのライフと照らし合わせると、Ⅱはどんなにハードに使っても1万キロは持ってくれる計算になろう。このハンドリングとグリップ性能で1万キロ持てば、個人的には十分満足できると思う。
 
 いかに高性能なバイクでも地面と繋がっているのはタイヤだけだ。コントロールできなければパワーなんて無意味、とはピレリのコピー。その通りだと思う。ぜひ試していただきたい、スコーピオントレイルブランドの新作だ。 


| ピレリジャパンのWEBサイトへ |