Milwaukee Eighit登場! これぞ、ハーレー! シングルカム化によって純度を増したビッグツイン・フィーリング

ハーレーダビッドソンジャパン クシタニ SHOEI
こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/rvMjtskP3nI
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すべて「ミルウォーキー・エイト」エンジン。左から“エアクールド”の107ci(排気量1745cc)、“ツインクールド”の107ci(排気量1745cc)、スクリーミンイーグル・ステージIIIキットを組み込んだ“ツインクールド”の114ci(排気量1868cc)。
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左/シングルカム化された「ミルウォーキー・エイト」“エアクールド”の107ciエンジン。クランク軸周りのデザインはシンプル&スリムとなり、また8バルブ化(1シリンダー4バルブ)によってシリンダーヘッド周りは大型化しています。またツインスパーク化にくわえデュアルスパークインジェクター&デュアルノックセンサーを採用。インジェクションのスロットルボディもφ55mmへと大型化されています。右/“ツインクールド”の114ciエンジン。
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左/油圧テンショナーを使用したシングルカムを採用。クランクピン&ベアリングの性能向上も図られています。エンジン前方のクランクウェブの間にアンチバックラッシュを備えたシングルバランサーを装備。オイルポンプや充電系システムの性能も向上させているとのこと。右/4バルブ化されたシリンダーヘッド。それに合わせロッカーボックスのデザインも変更されています。ロッカーアームを動かすプッシュロッドは調整不要の油圧システムを採用しています。

 
 ハーレーダビッドソンの新型ビッグツインエンジン「ミルウォーキー・エイト」が発表されました。現行ビッグツインエンジンは“ツインカム88”と呼ばれ、その名の通り2本のカムで吸排気バルブを動かしていたわけです。ハーレーのビッグツインはその誕生以来OHVを継承していて“ツインカム88”も同様。したがって45度のV字を形成するふたつのシリンダーが交わる部分/クランク軸の上に2本のカムシャフトを配置していました。

 対して「ミルウォーキー・エイト」は1本のカムシャフトでふたつのシリンダーの吸排気バルブを動かすシングルカムを採用。そうです、“ツインカム88”以前のビッグツインエンジン“エボリューション”と同じなのです。そう聞くと“ハーレーは退化したのか!?”と意地悪な想像してしまうのですが、それは大きな間違い。というのも「ミルウォーキー・エイト」はハーレーのDNAを継承しつつ、内燃機としてのポテンシャルと、厳しくなる一方の環境性能を高めるために最新の技術を駆使し、さらには創意工夫が凝らされたエンジンなのです。
 

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初日の夜。今回集まったアジア各国のメディア関係者とディナー。ビールが入ると、あっという間に仲良くなります。翌日、南アフリカチームが加わり、午前中に技術説明を受けた後、試乗に出発。初日はシアトルの隣町、タコマから出発しオリンピックナショナルパークを抜けてポートエンジェルに抜ける175マイル/282kmの道のり。巨大なハンバーガーの看板が目印のレストラン。地元バイカーやツーリングライダーが立ち寄る名物レストランのようです。ここでランチを頂きました。
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左/ポートエンジェルのホテルに着いたらロビーにはこんなお土産が。地ビールや地サイダー、スターバックスの瓶詰めコーヒーなど。今回の試乗会では、たくさんビールを試しました。右/ポートエンジェルに近づくと雨。初日の夕方は、かなり強く雨が降りました。翌日の晴れを願ってビールを頂きましたが、翌朝も雨…… 。
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出発前、ホテル近くの木製桟橋で撮影。はい、しっかり雨が降ってます。
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左/森の中での撮影は、最初は雨が降り、霧が立ちこめていましたが徐々に雲が流れ、時々晴れ間が見えるまでに回復。右/途中の休憩ポイントでは各国のメディアの人たちと意見交換。開発陣も同行してくれているので、質問があればいつでも応えてくれます。
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試乗終盤、ゴールのタコマが近づくとこんな青空も見えました。2日目のルートはワインディングや海沿いの道を走る220マイル/354kmでした。

 
 DOHCなど高効率のエンジン形式と比べれば、プッシュロッドを採用するOHVは不確定要素が多いのも事実。しかし、その不確定要素を深く理解しつつ、それを個性へと変換して進化を続けてきたのがハーレー。最新のハーレーに乗ったことがある方ならご存じだとは思いますが、拍子抜けするほど振動が少なく、パワフルなエンジンは国産ツアラーに負けない高速巡航性能を持っています。
 
 新型エンジンの「ミルウォーキー・エイト」は、そのハーレー的個性と、プロダクトとしての基本性能を、それぞれ高めたエンジンでした。そして先に述べたシングルカム化は、それらを実現するための大きなトピックスなのですが、ビッグトピックスはそれだけではありませんでした。たとえばエンジン名にある“エイト”はバルブの数。そう、1シリンダー4バルブ×2気筒で“エイト”バルブ化されているのです。また排気量は107キュービックインチ(ci)の1745ccモデルと、114キュービックインチ(ci)の1868ccモデルをラインナップ。107ciはエアクールドタイプに加え、シリンダーヘッド部分のみ水冷化したツインクールドタイプを、ハイエンドモデルである“CVO”にのみ搭載される114ciはツインクールドタイプをラインナップしています。
 
 さらにクランク前側の、クランクウェブの間に収めるようにシングルバランサーを搭載するほか、ツインスパーク化するとともにノックセンサーを採用、充電系のシステムをアップデートし、多くのユーザーが求めるアイドリング時の“三拍子”を実現する低アイドリング回転数/約850rpmを実現しながら、エンジンや車体に負担を掛けることなく、なおかつ環境性能も高められているのです。
 

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初日の午前中に開催された技術説明会。
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左/スライドを使ったプレゼンテーションに続いては、エンジンのカットモデルを使って各部を説明していきます。右/3つのエンジンは回転テーブルの上に載せられているため各部を説明するためにエンジンがテーブルの上でグルグル回ります。
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左/エアクールドタイプの新しくなったオイルラインが青で記されています。ふたつ並ぶ排気バルブの間を縦コの字型にオイルラインが新設されています。中/こちらはシリンダーヘッドのみを水冷化したツインクールドのカットモデル。ふたつのバルブの外周を囲むようにウォーターラインが新設されています。右/薄型のプライマリーを採用するとともに、国産スーパースポーツモデルも採用するA&Sクラッチ(アシスト&スリッパークラッチ)を採用。
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左/2枚のギアが一体となり、その1枚がスプリングの反力で噛み合うギアにフィットすることからノイズを減らすバックラッシュギアを1速とシングルバランサーに使用。中/4バルブ用のロッカーアームは新作。それに合わせロッカーカバーも新作されています。右/燃焼室側から4バルブをチェック。ここだけを見ているとハーレーらしくない、とも言えます。
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左/プレゼン会場には3Dプリンターで出力された、原寸大のミルウォーキー・エイトエンジンのモックアップも展示されていました。中/ロッカーカバーも含め、忠実に出力されています、右/今回試乗したツーリングファミリーには、そのすべてにSHOWA製の新型前後サスペンションが採用されていました。フロントフォークには減衰力の応答性に優れた“デュアルベンディングバルブ<http://www.m-bike.sakura.ne.jp/?p=82222>を採用。マシンの快適性や走行安定性が大幅に向上しています。各モデルは同デザインのサスペンションを採用していますが、モデルの特性に合わせセッティングを変更しているとのことです

 
 またアシスト&スリッパ−クラッチ(A&Sクラッチ)の採用でクラッチ操作を軽く&シフトダウン時のエンブレショックを軽減したり、車体左側のプライマリーカバーを薄くして足つき性を高めたり、後ろシリンダーのエキパイは形状を変更&キャタライザー位置を変更してライダーへの熱さ対策を進めたり……じつに細かな進化も進められていました。
 
 なんて書きましたが、「ミルウォーキー・エイト」、とてもハーレーらしいエンジンだと感じました。先にも書きましたが、ハーレーはOHVエンジンを正統に進化させてきました。今回は、基本性能のさらなるアップデートともに、それによってハーレーらしさを浮き彫りし、ハーレーのDNAを強調した、というイメージですね。それが日本人的には三拍子、アメリカ人的には“ポテイト、ポテイト”と表現する低いアイドリングと、あらゆるエンジン回転域で感じるハーレーらしい鼓動感&ビート感、そして抜群の排気音として表現されているのです。それらはシングルカム化に代表される構造の簡素化&パーツ点数の減少&軽量化などの積み重ねによって実現しているのです。また新たに採用したSHOWA製前後サスペンションが、じつに良い仕事をしていました。
 

032.jpg 033.jpg 左/プロダクト・プランニング・マネージャーのKevin Hintz(ケビン・ヒンツ)さん。右/テクニカルエンジニアのBill Pari(ビル・パリ)さん。

 
「ミルウォーキー・エイト」を搭載した2017年ツーリングファミリーの国際試乗会は約2週間にわたって世界中から多数の報道関係者が集結したのですが、我々が参加したパートはアジアグループ。日本のほか、韓国、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、インド、中国などなど。現状日本以外はハーレーをはじめとする大型バイク市場は発展途上ですが、その市場概要を聞くともの凄いポテンシャルを秘めているのです。またアジア市場においてもデジタルコンテンツ&ライフスタイルというキーワードは重要度を増しているようで、バイクを中心としたライフスタイル・メディアやデジタルメディアが多数招聘されていたのは、じつに興味深かったですねぇ。

 ストリート750を発売したことなど、ハーレーにとってアジアは、今後さらに重要度を増していく市場になるでしょう。それに向けアメリカを代表するブランドであるハーレーがどのようなプロモーションを行い、強いてはどのようなモデル開発をして行くのか。とても興味深い。そんなことを感じたアメリカ・タコマでの2日間でした。
 
(試乗・文:河野正士)

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FLHR ロードキング(エアクールド107ci/1745ccエンジン)。
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FLTRU ロードグライド・ウルトラ(ツインクールド107ci/1745ccエンジン)。
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CVOストリートグライド(ツインクールド114ci/1868ccエンジン)。
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FLHTK ウルトラ・リミテッド(ツインクールド107ci/1745ccエンジン)。
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FLRT フリーホイラー(エアクールド107ci/1745ccエンジン)。

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