この世の中に揺らぐことのない真実は二つしかない。誰にでも自分をこの世に送り出してくれた親がいてそして誰もがいつかその人生を終える。2016年の秋、オレの父親がこの世を去った。ただの偶然か実際、そういう巡り会わせというのが存在するのかはわからないが命日はかつてオレと共に15年間生活を共にした愛犬ムサシの命日と同じ日だ。おかげでこの日だけは忘れることなく覚えていられそうだ。
18の時に家を出てからというものほとんど接する事がなかったので今回の件で特に悲しいとか寂しいという感情はなかったのだが、この期に及んでオレは父親の意外な一面を知る事となる。闘病中、入院生活の中でやたらとオレを呼び出し今後の事を話したりしたのだが、結論としてオヤジの所有する土地や物などのほとんどをオレが引き継ぎ管理する事になった。
最初は下手に使い道のないものなどを残されても税金やらなんやらで面倒なだけではないのかと危惧していたのだがそのあたりの趣味性はこのオレと合致したものだった。これに関するDNAはどうやらしっかりオレの中に引き継がれているらしい。まだオレがガキの頃、祖父が果樹園をやっていた山をオレのオヤジが引き継いていて果樹園は続けることはなかったが定年後、その山の一角にコンクリート造りの小屋を建て隠れ家として自分の好きな事をやっていたようだ。そして乗っていた車が軽四輪のスポーツカー、スズキのカプチーノ。どちらもオレにとっては利用価値は大きい。