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第117回 第5戦 フランスGP Rd05 Le Mans'

 第5戦フランスGPは、非常に劇的なレースで、優勝したマーヴェリック・ヴィニャーレス(モビスター・ヤマハ MotoGP)、彼と激しいバトルを演じた末に転倒で終わったバレンティーノ・ロッシ(同)、初表彰台となったヨハン・ザルコ(モンスター・ヤマハ Tech3)他、語るべきことはたくさんあるのだが、5月22日(月)に逝去した2006年MotoGP世界チャンピオン、ニッキー・ヘイデンの訃報をうけて、思うところを少しだけ記しておきたい。

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#69

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 今回のレースウィークは、5月17日(水)にリミニ近郊で自転車トレーニング中に自動車事故に遭い、重篤な状態が続いていたニッキー・ヘイデンに向け、全パドック関係者がクラスやメーカーの垣根を越えて思いをひとつにし、回復を祈願する週末になった。
 日本でもロードレーサーなどのスポーツ用自転車は年々人気が高まり、サイクルロードレースの認知やスポーツとして親しむユーザー数はひと昔前よりも格段に向上している。とはいえその一方で、自動車の側のこれらスポーツ自転車に対する認識はその普及に比例しているとはまだ言いがたい状況のようで、自転車を邪魔者や厄介者扱いするような物言いも、まだときおり耳にすることがある。
 もちろん、マナー違反の危なっかしい自転車が依然として多いのも、一面の事実ではある(スマホを操作したりイヤホンで何かを聴いていたり、車道を逆走したり、見通しの悪い交差点なのに左右の確認も一時停止もせず突っ込んできたり、等々)。このような悪質な自転車との事故を防ぐためには、自動車やオートバイの運転者はアクティブセーフティを常に心がけることが最善の回避策になるだろう。
 だからといって、車道を走行する自転車を総じて邪魔者扱いしてしまうのは、エンジンつき車両操縦者の傲慢であるようにも思う。粗雑な一般論として言えば、自転車を邪魔者扱いするロジックは、(そんな人は今では非常に希だと思うが)オートバイを邪魔者扱いする言説と、基本的に通底するところが多いかもしれない。道路交通法に則った「くるま」同士としてお互いがほんの少し譲り合うことで、円滑な混合交通が達成されると思うのだが、どうだろう。
 それにしても、日本と比べて格段に長く深い自転車ロードレースの伝統を持ち、有酸素運動としての活用も高い「自転車の本場」の欧州でも、今回のような交通事故が発生してしまうのだから(数週間前には、プロ自転車ロードレーサーのミケーレ・スカルポーニがトレーニング中に交通事故に遭い逝去するという痛ましい出来事もあった)、日本人の我々が今回の悲しい事態から何か教訓を得るとすれば、自転車と自動車が互いの走行に配慮しながら安全で気持ちの良い混合交通を心がける、ということに尽きるのでないか。
 レースのリスクとは無関係な、しかも公道でのトレーニング中の事故で、皆に愛されたライダーが命を落としてしまうのはあまりにむなしい。


 



■2017年5月21日 
第5戦 フランスGP
ブガッティサーキット

順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #25 Maverick Viñales Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


2 #5 Johann Zarco Monster Yamaha Tech3 YAMAHA


3 #26 Dani Pedrosa Repsol Honda Team HONDA


4 #04 Andrea Dovizioso Ducati Team DUCATI


5 #35 Cal CRUTCHLOW LCR Honda HONDA


6 #99 Jorge Lorenzo Ducati Team DUCATI


7 #94 Jonas Folger Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA


8 #43 Jack Miller Marc VDS Racing Team HONDA


9 #76 Loris BAZ Avintia Racing DUCATI


10 #29 Andrea Iannone Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI


11 #53 Tito RABAT EG 0,0 Marc VDS HONDA


12 #44 Pol Espargaro Red Bull KTM Factory Racing KTM


13 #38 Bradley Smith Red Bull KTM Factory Racing KTM


14 #22 Sam Lowes Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


15 #50 Sylvain GUINTOLI Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI


RT #46 Valentino Rossi Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


RT #41 Aleix Espargaro Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


RT #93 Marc Marquez Repsol Honda Team HONDA


RT #9 Danilo Petrucci OCTO Pramac Yakhnich DUCATI


RT #45 Scott Redding OCTO Pramac Yakhnich DUCATI


RT #17 Karel Abraham Pull & Bear Aspar Team DUCATI


RT #8 Hector Barbera Avintia Racing DUCATI


RT #19 Alvaro Bautista Pull & Bear Aspar Team DUCATI


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