オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ750?。
第54回 放狼記 海外編 第一章 Are you ready?

 
 自分の中で何かを決定した後のオレの行動は早い。
 道祖神へ連絡をとりツアー参加を申し込む。その際、事の詳細や必要なものなどを事細かに問い合わせた。ツアーの内容はというと期間は6月3日からの九日間。宿泊はホームステイでマン島に着いてからは基本的にすべて自由行動。道祖神からの同行者ありで困った事やわからない事があった場合は対処してくれるという事だ。
 さてここから必要なものを揃えていかないとならない。まずは・・・海外となるとパスポートだ。さっそく地元の役所へ行き申し込んだ。10日ほどして連絡がありパスポートを受け取った。人生初のパスポートである。次に免許センターへ行き国際免許を取得した。マン島での移動手段としてレンタカーを借りるという選択を視野に入れての事だ。借りれるかどうかは行ってみないとわからないが首尾よく借りれた際に免許がないでは話にならない。そしてその次にオレが行ったのは銀行。現金を日本円から行き先の通貨に換金する。マン島での通貨はイギリスと同様にポンド。オレは今回、10万円分をポンドに換えるつもりだ。さっそく窓口へ行きその旨を申し込むと対応してくれた担当者は「観光地であるならば大抵の買い物はカードでできるし、実際、そうしている人の方が多い。特にイギリスなど小銭の種類が多く、慣れない通貨だとそのやり取りに手間がかかったりしますよ。そう考えると10万円分というのは多すぎるのでは?」と。そういえば海外経験が豊富な友人も海外で多額の現金を持ち歩くのは危険な事だと言っていた。しかし・・・初めてというのはどんなことであっても過剰に構えてしまうものである。オレは当初の予定通り10万円分のポンドを要求した。

 
 自宅でパスポート、国際免許、そしてポンド紙幣を並べて眺めてみると色んな想像が頭の中を駆け巡る。出発はまだ何ヶ月も先だというのに凄まじくドキドキしている。まったく何事も初というのは期待と不安が恐ろしいほどの質量を持って自分に中に渦巻くものだ。マン島に着いたら死んじゃうんじゃねぇのか、オレは。
 ひとまず命綱3点セットは揃った。あとはコレをいかに使いこなすかという事だがそのためにとても重要なのが英語力である。残念な事にオレのそれは実にお粗末なものだ。かと言ってこればかりは数か月のうちに何とかできるものでもない。しかし、英会話ができるというスペックは身につけて無駄になるものではない。マン島に間に合わなくとも勉強する価値はあるだろう。これもできる限りやっていくつもりだ。もちろん日常の中でやるべき事も多い。当然、バイクで走る事も。そんな忙しない時間の中、瞬く間に3ヶ月という時間は過ぎ去っていった。
 5月の最終日、オレはバッグひとつを持って家を出た。メインのスーツケースは市川の友人宅に送ってある。この日から友人宅を何件か寄り道しながら成田へ向かう。この3か月間、
 オレは常に軽い興奮状態だったように思う。ずっとドキドキしていたのだ。こうなるともう遠足前の小学生とか言ったレベルではない。だがそんな期待感ばかりでもなく・・・当然、不安な部分も同じくらいオレの中に膨れ上がっていた。飛行機が初めてというのもある。しかも今回は成田からドバイまで行きそこで機を乗り換えてイギリスのマンチェスターへ。そこから国内線でマン島へ行く事になっている。つまり離着陸を3回、経験する事になる。さらにはつい1週間前にイギリスではテロが起きたばかりだ。それもよりによってマンチェスターで。

 
 そんなグチャグチャな精神状態の中、一人であれこれ考えていたのでは正気を保てない。まずオレはイギリスを経験した事のある神戸の友人を訪ねた。彼は自分の経験を踏まえてあれこれレクチャーしてくれた。わずかでも予習的に知識を取り込んだことで少し落ち着いたと自分では思っていたのだがその友人からの後日談で実際はそんな事はなくやはりオレはおかしなテンションだったらしい。そのおかしなテンションは翌日に訪れた横浜でピークを迎えていた。そこで会った友人がドン引きするほどに。その友人曰く、「正気じゃなかった。」と。だがそこで無駄なエネルギーを使ったおかげか日本を発つ前日に市川の友人宅に着いた時にはオレはだいぶ落ち着いていた。そしてそこに到着していた自分のスーツケースを見た時、悟った。ここから先はもう誰も後押ししてはくれない。選択肢は2つ。支払った旅行代金をフイにして引き返すか腹を括ってこのまま飛ぶか。ふっ、問うまでもない。オレに後退はあり得ない。本当の意味で覚悟が決まると人間というのは妙に冷静でいられるものだ。この時点でオレはすっかり本来の自分をとり戻していた。
そして出発当日の夕方、友人に成田空港まで車で送ってもらった。空港内へ入りこの日フライト予定の電光掲示板を前にする。そこに表示された中の一つに目がとまる。

“エミレーツ航空EK319便22:00発ドバイ行き”



やはりこのビジュアルなくしてRCBとは呼べんでしょ!?その出来栄えは文句なし。サイコーです

 
いよいよだ。我が人生において最高にして最大規模の旅が始まる。再びあの感覚が押し寄せてきた。ドキドキ、ワクワクが止まらない。


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