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HERO‘S 大神 龍 年齢不詳 職業フリーライター 見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。 時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。 愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ900。
GW後半突入前日。茨城県と福島県の県境付近に位置する、とある道の駅。日が暮れてからは立ち寄る車もまばらだ。そんなまるっきり人気のなくなった道の駅の売店の軒下にテントを張りオレは中で地図を眺めていた。目的地まであと50キロほどだろうか。あと一日、時間を残してのこの距離は本来なら楽勝以外のなにものでもないはずなのにオレはまったく一安心もできない気分でいた。 ここまで約1000キロの距離、オレを快調に運んでくれたエイプは夕方から激しさを増した雨によりキャブがグズりまるで風邪でもひいたかのように完全に調子を崩していた。予報では明日の天気はさらに悪いものになると言う。 問題はそれだけではない。エイプはこの時、それ以上に深刻な問題を抱えていた。フロントフォークとトップブリッジを固定しているボルトが左側、どこかで飛んでなくなってしまったのだ。アンダー側はしっかりと締め上げておいたのでなんとか走ることはできる。だがしかし、こんな片足を捻挫したような状態では右左にステップを踏む事もブレーキングする事も普段では考えられないほど神経をすり減らす事となる。スタートして5日目。ここへきてこのトラブルはキツイ。最終的な目的地はすぐそこだがそのあと、同じ距離を来た時の半分の日程で帰らなければならない。高速を使わずに(まぁ使えないんだけどね)所々、GWで混雑しているであろう1000キロを2日半で・・・・。かなり本気で走らなければならないのにとても本気になれないこの現状。さぁどうする。万事快適だったGW前半が思い起こされる。
スタート初日は完全なる晴天で初夏の陽気だった。出くわす気温表示計はどれも27℃や28℃。だが頬を撫でる風はひんやりとしてて走っていて実に気持ちが良い。連休初日でしかも快晴という好条件でどこへ行ってもある程度の混雑は覚悟していたがまず最初の街中、姫路市内はガラガラ。神戸、大阪、京都の街中を避けるために選択したR372とR477は普段と変わらぬ快走っぷりで上機嫌なエイプはミニバイクらしからぬペースで東へ向けて進んでいった。延暦寺でかつての恩人の墓参りを済ませ琵琶湖大橋を渡り湖岸道路から8号線へ。そこから21号線に進路をとりさらに東へ向けて岐阜県を横断する。 ここで簡単に今回の予定を説明しておこう。まずはGW前半の2日目、4月29日に桃太郎神社で行われる愛知の番頭さん主催“星空ナイト”に参加。そのあとは寄り道をしながら5月1日に千葉の友人宅へ。そして最終的に5月4日、福島で行われるアルカディアミーティングを目指す。予定としてはそんな感じではあるがこのままいくとその初っ端となる星空ナイトに一日早い。だがそのあたりは毎度の事で、どうせ先走ったやつが何人かいて前夜祭になるであろうと。そんなオレの希望的予見はちょっと違った意味で裏切られる事となる。 まだ日も高いうちに桃太郎神社に到着してみると主催の番頭さんはもちろんの事、主だった他のメンバーも含めて、まぁいるわ、いるわ。この日が本祭でもいいんじゃねぇか!? って言いたくなるほどの面子が揃っていた。それだけのバイク乗りが集まれば前夜祭でありながら当然のように夜の宴会は盛り上がる事となり、翌日はコラボしたもう一つの集会も絡んで前日の倍以上にものぼるバイク乗りが集まってきた。 同キャンプ場ではドッグショー的なイベントも行われており一般客も多く賑わっている。いかにもGWといった景色が広がる中、オレはこの日、一日をバイクに跨る事すらせずダラダラと過ごした。昼間から夜中まで呑んで食って、仲間と語らって・・・と。片道1000キロを予定しながらスタート2日目にしてこんなんでいいのかとちらっと考えもしたが2つのイベントを絡めた旅の道中ゆえにその日程に合わせようとすると多少のラグは仕方のないことだ
のっけから自堕落な楽しいだけの時間を過ごしたオレはその翌日、独り旅を再開させた。 空は前日までの晴天から一転し太陽の姿は拝めない。この日は特に予定はないが今後のスケジュールを考えると伊豆あたりまでは走りたい。1号線までくだりそのまま静岡県に入り東へ突き進む。静岡県はその横に伸びた距離の長さにもかかわらず整備されたバイパスなどのおかげで思った以上に距離を稼がせてくれる。ずいぶんとゆっくり出発したにもかかわらず夕方には沼津まで辿り着けた。 だがここから先が問題だ。翌日に事故で重傷を負い入院してる仲間を見舞うため横浜に立ち寄る事を予定していたのでその事を考えればこのまま1号線を進み箱根を越えるのが最短と言う事になるのだがこの時の天気がいつ降り出してもおかしくないような空模様でその先に見える箱根の山はすっぽりと雲に覆われている。どう考えてもすでに降ってるであろう有様だ。オレは進路を246号に変更し、まだ雨雲のかかっていないであろう山側を走った。この読みはズバリ的中し、完全に日が落ちるまで雨に降られる事はなかった。
御殿場を過ぎたところにある道の駅に立ち寄ると1号線を走っているときは雲に隠れて見えなかった富士山が目の前でその雄大な姿をさらけ出している。なんとも贅沢な眺めである。この日はここで一夜を過ごす事に。色々と制限やマナー的に考慮しなければならない部分は多いが道の駅の環境は途中泊で仮眠をとる事だけ考えると抜群に良い。前日のように語らう仲間は誰もいないが日本を代表する絶景を前に静かに独りで過ごすのも悪くない。