町の稼ぎ頭」が54年ぶりの完全一新へ!!

スーパーカブ50インプレッション Honda

 1958年の初登場から今年で54年、50シリーズにとって初のフル・モデルチェンジと言っていいだろう。このモデルから中国の新大洲本田で生産されることになる。先に販売されたスーパーカブ110と車体を共有することで外観はほぼ同じ。見た目の違いはナンバープレートの色やタンデムステップの有無くらいだが、よく見るとカブ50は110に対して若干前後のタイヤ幅が細い。ちなみに車体色「パールハーベストグリーン」は50の専用色(逆に「パールシルキーホワイト」は110専用色)となる。

 新型カブ50は今までのように装備に差をもたせたバリエーション展開は無い。1グレードのみだ。ただ、ボディカラーは5色も用意され、幅広い要望に対応。リトルカブ、プレスカブ50は現在のところ、今まで通りラインナップされている。

 OHC化(1966年)、PGM-FI化(2007年)と、今まで2回の大きな変更を受けたスーパーカブの49ccエンジンは、110ccエンジンがベースとなったことで46年間不変だったボア×ストローク比が変更になる完全な新エンジンに生まれ変わった。もちろん、好評の2段クラッチと4速ミッションが組み合わされる。FI化の時に失ったパワーも再び向上。セルフスターターも標準装備となった。

 パワーアップが図られたとは言え、50ccというキャパシティに力強い走りを期待するのは酷というもの。もっとも、カブに速さを求める人はいないだろう。主戦場となる街中で誰にでも扱いやすい特性なのは言うまでも無いが、回せば回すほど力が増していくことを感じることができ、久々に忘れかけていた小排気量車の醍醐味を味わうことができた。一方、50ccってこんなに振動が少なかったんだ、と改めて感じさせてくれる。ミッションはカチカチと節度があり、とても扱い易く、以前に比べニュートラルが出しやすくなったと感じる。シフトショックが低減されているのも体感できた。

 車体は先行発売されたスーパーカブ110と共通となったことで骨格、足が一気に最新スペックへと進化を果した。新型のウリのひとつである安定感向上は既に110で確認済みだが、今回のモデルからパイプフレームを採用するカブ50は従来型とは別次元の走りを実感させられる。多くの荷物を積み、ビジネスユースとしての割合の高いカブ50にとってさらなるチャームポイントを得たということになる。

Honda SUPERCUB 50

Honda SUPERCUB 50 Honda SUPERCUB 50

Honda SUPERCUB 50

Honda SUPERCUB 50 Honda SUPERCUB 50
新型カブ50(AA04型)を従来型(AA01型)と比較すると全長+115mm、全幅+40mm、全高+40mm、ホイールベース+40mmに。シート高に変更はない。外観デザインは先行販売されたスーパーカブ110と共通。リアまわりのデザインが大きく変わったが、全体のイメージは「カブ」そのものだ。
Honda SUPERCUB 50 Honda SUPERCUB 50
シーソー式のチェンジペダルはカブの不変アイテム。ペダル後ろ側のガード状のパーツは、アセアンカブに装着されるステップホルダーに代り左右の剛性バランスを整えるためのもの。 エンジンは一新された。110用のエンジンがベースとなり、発進と変速それぞれ独立したクラッチ機構(2段クラッチ)や4速ミッションを採用。出力は0.3PS向上した。
Honda SUPERCUB 50 Honda SUPERCUB 50
耐熱塗装となったマフラーにクロームメッキのカバーを装着。リアサスのカバーなど、光物が多くなった印象。スイングアームはプレスのモナカタイプから四角断面に。 日本のスーパーカブ50史上初となるテレスコピック・サスを採用。110同様、タイヤはメトリック表記に。110に対して細く、前後同サイズとなる。
Honda SUPERCUB 50 Honda SUPERCUB 50
燃料計を内臓した大型スピードメーターを採用。ウインカーのインジケーターも左右独立に。54年間不変であったウインカースイッチはハンドル左側の一般的なレイアウトに。 前ヒンジ開閉式のシート、大型キャリアと、これまたスーパーカブ不変のアイテムを継承、。燃料タンクの容量は0.9リットル増えている。

 一方で、車体を110と共用することで重量増となってしまった新型カブ50だが、取り回しはもちろん、スタンド掛けなどで重さを感じる場面はなかった。

 旧くからカブを愛用しているユーザーにとっては問題ないかもしれないが、従来型までの右ウインカースイッチ(しかも縦型)は現代の目から観ると明らかに不自然であったことは否めない。そんな操作系は遂に「普通」となった。メーターは大きくなり、パネル内に燃料計も装備する。

 角型ヘッドライトをはじめとする、アセアンカブ(Dream)と共通となったデザインは、日本では賛否両論あるようだが、アイボリー系のレッグシールドを採用(車体色パールプロキオンブラックを除く)することで、日本のスーパーカブのイメージを踏襲。大きく変わったリアまわりのデザインを除けば、すぐに日本の景色に溶け込むスタイルのはずだ。

 日本を代表する工業製品、スーパーカブが海外生産となってしまったことは衝撃だ。そして、従来モデル(4速ミッション、セルフ式スターター装備のカスタムタイプ)に比べ48,300円も安く設定された車両価格も衝撃である。

Honda SUPERCUB 50

オールブラックのカラーを纏う新型スーパーカブ50は、フロント側から見ると精悍な印象。テレスコピックとなったサスの視覚的効果も大きいかもしれない。

スーパーカブ50主要諸元
■型式:JBH-AA04 ■全長×全幅×全高:1,915 ×700 ×1,050 mm■ホイールベース:1,215 mm■最低地上高:135 mm■シート高:735 mm■車両重量:95 kg■乗車定員:1人■最小回転半径:1.9 m■エンジン型式:AA04E■エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒 ■総排気量:49 cm3 ■ボア×ストローク:37.8×44.0 mm■圧縮比:10.0 ■最高出力:2.7 kw[3.7 PS]/7,500 rpm■最大トルク:3.8 N・m [0.39 kgf ・m]/5,500 rpm■燃料供給装置形式:電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)> ■始動方式:セルフ式(キック式併設) ■点火装置形式:フル・トランジスタ式バッテリー点火 ■潤滑方式 :圧送飛沫併用式 ■燃料タンク容量:4.3 L■変速機形式:常時噛合式4段リターン(停車時のみロータリー式) ■キャスター角/トレール量:26°30´ /71 mm ■タイヤ(前/後):60/100-17M/C 33P / 60/100-17M/C 33P ■ブレーキ(前/後):機械式リーディング・トレーリング / 機械式リーディング・トレーリング ■懸架方式(前/後):テレスコピック式/スイングアーム式■フレーム形式:バックボーン式 ■車体色:スマートブルーメタリック 、バージンベージュ 、パールバリュアブルブルー 、パールハーベストグリーン 、パールプロキオンブラック ■メーカー希望小売価格:187,950 円


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●週刊カブ バックナンバー

第01号 2011.08.01[アナザストーリー 広告宣伝に見るスーパーカブの歴史 「51年目の知られざる真実」前編]
第02号 2011.08.08[インジェクションモデル「スーパーカブ50・インプレッション」]
第03号 2011.08.15[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・1 1958〜]
第04号 2011.08.22[ピンキー高橋大統領の「スーパーカブ110 インプレッション」]
第05号 2011.08.29[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・2 1966〜]

第06号 2011.09.05[アナザストーリー 広告宣伝に見るスーパーカブの歴史 「51年目の知られざる真実」後編]
第07号 2011.09.12[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・1]
第08号 2011.09.20[ピンキー高橋大統領の「スーパーカブ110プロ インプレッション」]
第09号 2011.09.26[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・3 1978〜]
第10号 2011.10.03[初代スーパーカブデザイナー 木村讓三郎氏に聞く「カブは、何故世紀の大ヒット・バイクになったのか?」(前編)]

第11号 2011.10.11[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・2]
第12号 2011.10.14[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・4 1982〜]
第13号 2011.10.24[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション ポートカブC240」]
第14号 2011.10.31[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・5 1986〜]
第15号 2011.11.07[初代スーパーカブデザイナー 木村讓三郎氏に聞く「カブは、何故世紀の大ヒット・バイクになったのか?」(後編)]

第16号 2011.11.14[第15回カフェカブミーティング「思い入れ、楽しみ方は千差万別」]
第17号 2011.11.21[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション CT200」]
第18号 2011.11.28[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・3]
第19号 2011.12.05[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・6 1991〜]
第20号 2011.12.12[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション スーパーカブ50SDX」]

第21号 2011.12.19[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・7 リトルカブ]
第22号 2011.12.26[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・4]
第23号 2012.01.10[51年目のスーパーカブで国道51号線を走る「イバラッキーストライクホンダが征く」]
第24号 2012.01.16[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・8 1998〜]
第25号 2012.01.23[野口オヤビンの「オモシロ系カブインプレッション Wave125i」]

第26号 2012.01.30[初期の新聞、雑誌広告に見るスーパーカブの広告ヒストリー・5]
第27号 2012.02.06[「不動の思想 進化する思考」スーパーカブ全史・9 2007〜]
第28号 2012.02.13[『変えない」という名の進化 スーパーカブ開発ストーリー]
第29号 2012.02.20[スーパーカブ110がフルモデルチェンジ]
第30号 2012.02.27[アンジョーのオモシロ系カブ・インプレッション ハンターカブCT55]

第31号 2012.03.05[阿部正人のスーパーカブ賛歌「目覚めの装置」]
第32号 2012.03.12[PINKIE大統領 ちょっとだけアセアンカブに乗る]
第33号 2012.03.19[ホンダワークスが仕掛けたカスタマイジングの新しいカタチ「カブラ」]
第34号 2012.03.26[NEWスーパーカブ110開発者インタビュー]
第35号 2012.04.2[NEWスーパーカブ110の生産地・中国 新大州本田]
第36号 2012.04.09[1993年東京モーターショー スーパーカブ華の競演夢舞台]
最終号 2012.04.16[[PINKIE高橋大統領のNEWスーパーカブ110インプレッション]
おかわり号 2012.06.15[NEWスーパーカブ50インプレッション]

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