ふつーのおとーさんのバイクライフ シーズン2

「深まりゆく秋なのに…」

 仲秋の名月も過ぎ、10月に入るとさすがに夏の気配は見当たらなくなってきて、やっぱり秋なんだな、と自分自身やっと夏の終わりに納得する。
 僕は昔から夏とバイクの組合せが最上だと思い続けているのだけれど、一方で秋とバイクの組合せもまたすばらしい。

 

 秋という季節の中でバイクに乗って1人旅に出ることは、僕の中では本当に本当にこの上なくすばらしくシアワセな行為なのだ。

 

 
 毎年10月か11月、僕はこのシアワセを手に入れる。そして今年も、さてどこへ向おうか?などと算段を始めている。
 別にどこに向ったって構わないし、僕の場合どうせ計画通りにはうまく進まないのだけれど、まあ旅というのは計画を立てることから始まる、とも言われているみたいだし。

 

 ということで2012年の僕の秋旅は、千葉県の家族先から群馬・長野・岐阜を抜けて単身先の名古屋へ行く、というルートを定めた。土曜の朝出発し、そのまま名古屋まで行っても、途中のどこかで宿泊してもどちらでも良い。
 旅のツレは、夏のツーリングでマフラー脱落の大トラブル(帰り150kmをマフラー無しで壮絶な爆音と共に帰ってきた)を巻き起こした後、めでたく修理が完了した(はずの)SRX-6クンである。

 

 
 しかしなかなか実行に移せない。
 先週も先々週も週末は「日本のサラリーマンの正しい接待」みたいなことに時間を費やしてたし、一方家族先では「ヤモリがリビングに出た~」「コウモリが2階の部屋を飛んでる~」「見たことの無いような巨大イモムシがリビングにいた~」「屋根から雨漏り~」「トイレが水浸し~」などと次から次へとトラブルが発生しており、とてもじゃないけど「じゃあオレツーリング行って来るわバイバーイ」などとは言い出せない状況である。
※ちなみに見たことの無い巨大イモムシ君は部屋の観葉植物(南米チリ産)の根っこに住み着いていたらしい。成虫になったらどんなモンになるのかちょっと興味深いけど。

 

 ましてたのみの相棒のSRXクン自体、これまでの悩みだった5000回転以上廻らない病が治ってくれたものの、新しい病「熱間で再始動全然出来ない病」を発症してしまってしる。
これは冷間時(その日初めて始動するエンジン冷えてる時ね)はふつーにエンジン掛かるのに、熱間時の再始動(例えばガソリン給油後の再スタートね)では何10回キックしてもぜ~んぜん始動しないという恐ろしい病である。
もうマグロの回遊状態! ※マグロは常に泳いでいないと死んでしまう(らしい)。

 

 まあこの再始動困難病については、1回エンジン止めたら15分は絶対掛からない、と心に定め、あとはエンジン始動時のアクセルテクニックと気力体力で(多分)なんとかなる、と信じているので、行く前からクヨクヨしてもしょうがない(と心に言い聞かせている)。
 しっかし、「そろそろ軽くて楽なバイクにしよー」と目論んでSRXクンにしたのに、再始動にこれだけ時間と体力注ぐとはねえ(実際600単気筒エンジンのキックの数10発はごっそり体力気力を奪われる)、一人旅ならなんとかなるけど多人数ツーリングじゃ迷惑だよなあ。
 更に問題なのは、脱落したマフラーを取り付けてくれたいつものバイクショップのおにーさんのポソッとつぶやいた「マフラーステーの溶接がちょっとだけ取れかけてるねぇ」である。
 僕はもう1年程このSRXクンに乗り続けて、600単気筒の振動による破壊力はつくづく身に染みている。後付のアルミステーなど平気で引きちぎるのである。色々な部分のボルトが平気で緩むのである。
 その破壊力を持ってすれば、「ちょっとだけ取れかけている溶接」などあっという間に取れてしまうのではなかろうか?
 「うーん、ヤフオクで新しいマフラー探そうかなー。だったらヨシムラサンパーかOVERの2本出しがいいよなー。」新たなる野望? も加わり、なかなか出発出来そうも無い。

 

 平日の夜、例えば誰かと飲みに行った帰り(基本オレ下戸だけど…)、単身先のアパートへ帰る道すがら秋の夜風を受けていると、痛切にオートバイに乗りたくなる。
 バイクなんて唯の趣味なのに、趣味と言うだけでは片付けられないような切実な感情となって現れる。
 早く、早くバイクに乗りたい。バイクに乗って秋の季節の中に入り込みたい。
 大げさに言えば、僕とバイクと秋が一体になるような日々を過ごしたい。

 

 
 バイク乗り達は本能的に、バイクに乗ることによって季節と一体化出来ることを知っている。そしてそれがどれくらい気持ち良いことか、また自分にとってどれ位大切な事かを良く分かっている。

 

 季節の中で走る事が、自分が自分であるためにとても必要な行為なのだ、と言い切ったら「何を馬鹿なことを」と言われちゃうかなあ?


タカヤスチハル
タカヤスチハル
「もう30年以上バイクに乗ってます」と威張れるくらいず~っと乗り続けているのにちっともうまくならないへたれライダー。ふつーのお父さんは逆境にも負けず、ささやかなバイク生活を営んでいます、が…… 

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