アッキーがキタ
アッキーがキタ
甘酸っぱい思い出……
アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。愛車の1台は写真の750ニンジャというマニアックな一面も合わせ持ち、アメリカン以外のジャンルもほほいのほい。見かけはご覧のようにとっつきにくそうだが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はウソでもない。

  みなさんどーも、私が世界初のIPS細胞の移植に成功した森口です! 記者会見やら何やらで忙しくてコラムの執筆が遅れてしまいました(大ウソ)。
 って、ギャグがちょっとレベル高すぎましたか? しかし、一躍時の人となった忍者ハッタリ君の森口氏ですが、実は某大手出版社であるモー○ーマガ○ンの営業部にいらっしゃるUD川さんにソックリだという話とか書くと業界関係者にしか分からないので、またしてもくだらないヨタ話はここまでにして本題に入りましょう。

 
 さて、今回はまたしても思いつきで書く、今までのコラムの中でも最年少時代のコトである。
 時はオレが中学生時代。当時、まあ言ってみればプチ・ヤンキーだったオレだが、別にケンカが強いわけでもなかったため、当初は不良仲間の間でもパシリ状態であった。しかしある日、そんな下っ端時代に終焉を迎える時が来た。2年生になったとき、校内でも屈指の強さを誇り、事実上同学年のアタマ格であったT君と同じクラスになったのだ。

 
 もちろん、T君もまたオレのことをパシリ程度にしか考えていなかったのだが、実はひょんなコトから、彼が当時大流行していた機動戦士ガンダムが大好きだったことが発覚! それをいいことに、オレは日曜日に朝からプラモ屋に並んでしこたまガンプラを買い込み、T君に献上することで彼の絶大なる信頼を勝ち得たのだ(情けない話ですが……)。、

 
 こうしてT君のうしろだてを確保し、校内のヤンキー仲間の間でもそれなりの扱いを受けるようになったオレ。まあヤンキーとか言っても他校の生徒とちょっと小競り合い(オレは見てるだけ)したりとかコンビニの前にヤンキー座りしてたむろしたりとか授業をちょっと自主休憩(サボりとも言う)したりとかトイレに隠れてタバ……(またお叱りの手紙がくると困るので自主規制)とか、まあ可愛いもんであった。

 
 だが、そんなある日、ガンダム友達であったT君がとんでもないことを言いだした。

 
「3年生のヤツら、シメるぞ!」

 
 えええー! である。中学生の頃の不良といえば上級生には絶対服従というのが当たり前であるが、T君はそれに業を煮やしたらしく、また本人自身が3年生の誰よりも強いと言われていたので、そんなことを言いだしたらしい。しかし! である。アンタは強いからいいがオレはケンカ弱いし、しかも3年生に恨みなどない。なんとか回避はできないものか、っつーかオレだけ参加しないようにするにはどうしたらよいのか!!

 
 しかしケンカ当日はやってきた。しかも、放課後になってコッソリ帰ろうとしたら、やる気マンマンのT君が「加藤、行くぞ!」と戦闘状態でオレに声をかけるもんだから、もう逃げられやしない。嗚呼、ヘタにケンカなんぞして弱いところ見られたら、またオレのヤンキー格付けは下がるのだろうか……(てゆーかもともと高くないけど)

 
 そして、学校の近くの公園に集まったオレ達2年生と、敵の3年生。お互い30人ほどはいただろうか。初めはなんやらT君と相手のアタマがガヤガヤと言い合いをしていたのだが、「ふざけんな! やっちまうそコラ!!」の一言で、ついに戦闘スタート!

 
 しかたない。公園内のあちこちで、1対1となって殴り合いが多数行われている中を、するりするりと抜けながら移動するオレである。「誰も3年生がオレに気づきませんように」と祈りつつ、かつその場を逃げ出したと仲間に思われないように、なんとか現場にいて何かやってる感じを出すために必至だった。

 
 が!

 
 ふいに後ろから「コラお前、こっち向けや!」と声をかけられてしまい、ああついにオレも誰かとケンカしなきゃいけないのか、いやだなあとか思いつつ振り返ると、そこには良く知った顔があった。オレと同じブラスバンド部の先輩のSさんである。

 
 Sさんはバリ不良なのになぜかブラスバンド部に所属し、まあたまにしか顔を出さないものの、プチ不良だったオレには1年生の頃からよくしてくれた。なので、ケンカ自体もしたくないのに、ましてや大好きな先輩となんかしたくないのである。

 
 それをSさんも察したのだろう。小声で「加藤、どうする?」と聞いてきた。うーむ、としばらくお互い見つめ合いながら考え、オレは言った。
「先輩、ケンカのフリだけしましょう」

 
 そしてオレ達は、周りと同じように大声で叫びあう。

 
「やんのかコラァ!」

 
「ウラぁっ!」

 
「ゴルァ!」

 
「やっちまうぞてめえっ!」

 
 そしてお互いの胸ぐらを掴みあい、ぐるぐると回転する。

 
 でも、殴りもケリもしない。ただ回るだけ。

 
 まあオレ達ふたりだけの行動をよく見れば明らかに不自然なのが分かってしまうのだが、周りの連中は自分らのケンカだけで精一杯。ヤラセがばれることはない。

 
 結局、この集団ケンカは2年生の圧勝で終わった。公園からの帰り道、どうやらオレの声がかなりでかかったこと、そして傷ひとつ負ってなかったので(ケンカしてないのだから当たり前)、なぜかこの日から「加藤は実はケンカ強いんじゃないか」という噂がささやかれるようになったのであった。

 
 後日談であるが、アタマを張っていたT君は、後に愛知県内でも最強と呼ばれる屈指の不良高校に進学するのだが、そこで付いたあだ名は「ガンダム」。いや、ガンダム好きだったからではない。校内で群を抜いて強かったため、そう言われるようになったということである。ああ、彼と友達でよかった。


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