オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。

時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ900。

アイル・オブ・生月 参戦バスツアー!!

 アイル・オブ・生月。このイベントは誌面の頃から何度も紹介しているのでオレのコーナーを読んでくれている人の記憶にはいくらかは残っているだろう。まるで過去のもののように言っているがそのイベントが終わってしまっているわけではない。生月島に住むAki姉という一人のバイク乗りによる個人主催ゆえ基本的なメニューは同じだがその年その年の状況によっていくらかその色を変えながら今でも開催されている。そして今年も。
 昨年は主催者側の都合でやむなく中止という事になってしまったが今年は無事開催の運びとなった。オレ自身のことで言うと実はアイル・オブ・生月は3年ぶりとなる。昨年は先に述べたように中止となりその前の年は開催日の直前に思いっきり体調を崩して行く事ができなかった。今年は必ず行くという意気込みのもとにオレは時間を作ったのだが結果としてかなりぎりぎりの日程しか確保できなかった。本当ならエイプでゆっくりと旅しながら行きたかったのだがそうもいかない。そうなるといくつかほかの選択肢がでてくる。ホーネットで高速を飛ばすか5月のミステリーツアーのように軽トラにエイプを積み込んで走るか。人間というのは弱い生き物で一度、ラクというものを覚えてしまうとその次からもついついラクな方を選んでしまう傾向にあるようだ。オレは軽トラにエイプを積み込んで出発の用意をした。

 出発前夜、いかに高速を使うとは言え軽トラゆえにそれなりの時間を要する事からオレは深夜2時くらいのスタートを予定して9時くらいに寝に入ろうとした。
 すべての用意を済ませまさに布団に入った時、オレの携帯が鳴った。かけてきたのは香川のE島氏。オレと同様にアイル・オブ・生月を目指して前夜スタートで走っているようだ。電話でE島氏はオレに「今、どこらへんにいるん?」と。今、家で早い出発に備えてこれから寝るところだ、と伝えると「だったら拾いに行くから一緒に行こう」と。どうやらみか凛と軽の箱バンで走っているらしくオレのエイプを積んでも3人余裕で乗れるからと誇らしげに語るE島氏は有無を言わさぬ強引さで我が家に押しかけ、オレとエイプを車に押し込み、高速に乗って西へ向かった。
 マズイ。なけなしの睡眠は邪魔されたがさらに楽なバージョンの誕生である。エイプをトランポし、高速を使い、しかも誰かに運転さえもしてもらう。なんだかバイク乗りとして堕落の一途を辿っている自分をひしひしと感じずにはおれない。しかし、まぁこのところハードな旅が続いていたのだからたまにはこういうのもいいだろう。
 オレは時折、転寝をしながら車の助手席に座り生月島を目指す事になった。
 とは言ってもまっすぐに生月島を目指すわけではない。九州が故郷であるE島氏の予定に合わせての行動となる。この誰かに便乗という手段のネックな部分はそのスケジュールを自分で勝手に決定できないと言う点に尽きる。自分が予定していなかったものにも付き合わなければならないが今回は時間の余裕はたっぷりとある。おまけにオレ自身は思いっきり体力を温存する事ができそのメリットは大きい。なんせ今宵、いやがうえにも呑みますからな。
 オレ達はまず大牟田にあるE島氏の実家へ立ち寄った。その後、E島氏が用事を済ませている間、仮眠をとりそこからいよいよ生月島を目指した。


今回、E島バスにエイプ搭乗の絵面。そりゃ楽チンですよ。バイク乗りとしてはいかがなものかとは思いますが・・・
今回、E島バスにエイプ搭乗の絵面。そりゃ楽チンですよ。バイク乗りとしてはいかがなものかとは思いますが・・・

 途中の伊万里でE島氏らは温泉に入るというのでそこでオレはエイプ共々降ろしてもらい単独で走ることに。特にたいした意味はない。いくらかはバイクで走りたいという気持ちもあったが結局はすでに参加者がいくらか集まっているであろう島の会場にはとりあえずバイクで登場するというオレなりのとてつもなくセコい演出だ。
 海沿いの道を走ること2時間弱。まずは平戸島が見えてきた。橋を渡り生月島へ通じる平戸島のワインディングをひた走る。4ヶ月前にあまりにも怪しげなカブを始めとするミニバイクの集団で爆走した記憶が蘇る。しばらく走るといよいよ生月大橋が見えてきた。何度来てもこの橋を渡るときはなんとも言えない達成感がこみ上げてくる。それが途中まで高速を使いトランポされていたとしてもだ。会場に入っていくとこのイベントではお馴染みの面々がその準備に追われていた。
 あの方はまだ到着していないようだ。あの方・・・そう、今やこのイベントではなくてはならない存在、高橋国光氏である。実は3ヶ月ほど前に所用でクニさんに電話する機会があった。その際、調子に乗ってオレは必ず行かねばならない的な約束を交わしていたのだ。そりゃ調子にも乗るさ。2年連続でスルーしたあとでクニさんと話して「今年は来るんでしょうね」なんて言われれば「そりゃ必ず行きますよ」なんて言葉が普通に出てしまう。そしていざ生月島に来てみれば初めて会った時と同様な緊張感とワクワク感がオレの中に湧き上がった。
 Aki姉をはじめとするスタッフ連中と久々に再会し言葉を交わす。司会を務める金太郎氏とも本当に久しぶりだ。そうこうしていた昼の3時、お馴染みのアライバスが会場に入ってきた。バスのドアが開きクニさんが満面の笑顔で降りてくる。このイベントに携わる人達にとって待ちに待った瞬間だ。一人一人がクニさんと握手を交わし再会を喜び合う。そしてこのオレも。3年ぶりに会うクニさんは以前とまったく変わらない人懐っこい笑顔で何の違和感もなくオレたちの輪の中に入ってくる。モータースポーツ界における彼の大物っぷりから考えたらあきらかに異常な光景である。だがそれゆえにオレ達にとってのこのアイル・オブ・生月の存在価値は大きい。夕方にかけて会場にはオレにとってお馴染みのバイク乗りが次々に集まってきた。E島氏らも無事に会場入り。クニさんは一度、宿に入り、日も暮れた夜の7時からクニさんを囲んでの懇親会が始まった。


港の福祉会館を借りての懇親会。お酒も入りご満悦のクニさん。いやいや、本当に楽しそうでした

港の福祉会館を借りての懇親会。お酒も入りご満悦のクニさん。いやいや、本当に楽しそうでした
港の福祉会館を借りての懇親会。お酒も入りご満悦のクニさん。いやいや、本当に楽しそうでした

 その時の様子はあえて細かくは書かない。ざっくりと表現するならただの飲み会である。一応はクニさんのトークショーのような感じではあるがイベント的な堅苦しさはほとんどなくオレ達は喫煙スペースでタバコを吸いながらフツーにクニさんと話したりしていた。クニさんは参加者の中に旧友を見つけたらしく昔話に花を咲かせたりしている。もうこうなるとアイル・オブ・生月というイベントにゲストで来てるというよりも休暇でこの島を訪れたクニさんにファンの人達が付き合ってる感じのものでしかない。オレ自身も最初の緊張感はどこかへ消し飛びすっかりリラックスした状態でこの場を楽しんだ。
 

 懇親会は2時間ほどで終了した。だが本番はこれからだ。今回のアイル・オブ・生月は実質的に翌日、日曜日のワンデイイベントでこの日は関係者と一部のクニさんファンによる前夜祭だ。この前夜祭こそがオレがもっとも楽しみにしていたものなのである。


前夜祭2次会となるイベント会場は縁日っぽい風情でちょっとしたお祭り騒ぎに
前夜祭2次会となるイベント会場は縁日っぽい風情でちょっとしたお祭り騒ぎに

こう言ったらとても失礼かもしれないがこうなると大物ゲストというよりもすっかり参加者の一人です

こう言ったらとても失礼かもしれないがこうなると大物ゲストというよりもすっかり参加者の一人です
こう言ったらとても失礼かもしれないがこうなると大物ゲストというよりもすっかり参加者の一人です。

 オレ達はイベント会場へと場所を移し2次会がスタートした。雰囲気はいつもの野宴と変わらない。そしてその中にはクニさんの姿も。
 この日オレは本当に色んな人と語り合った。久しぶりに会うやつもいれば初めての人もいる。この新鮮さと驚きの連続はいつまでたっても変わる事がない。昼間に温存した体力に任せてオレは寝床である湾岸ハウスに戻ってからも何人かでそれこそ明け方近くまで語り合った。


湾岸ハウスから見える生月大橋。オレはここから見える景色がとても好きなのですよ。はい
湾岸ハウスから見える生月大橋。オレはここから見える景色がとても好きなのですよ。はい。

会場には見たこともないような珍車、旧車が多く来場。これももともとが旧車ミーティングの名前で始まったこのイベントの特徴

会場には見たこともないような珍車、旧車が多く来場。これももともとが旧車ミーティングの名前で始まったこのイベントの特徴
会場には見たこともないような珍車、旧車が多く来場。これももともとが旧車ミーティングの名前で始まったこのイベントの特徴。

車のほうも負けてはいない。往年の名車を始めとする旧車が大集結

車のほうも負けてはいない。往年の名車を始めとする旧車が大集結
車のほうも負けてはいない。往年の名車を始めとする旧車が大集結。

Aki姉の挨拶からイベントはスタート。頭上にはクニさんを歓迎するカンバンが。このイベントにとってクニさんにかける言葉は「お帰りなさい」なのだ
Aki姉の挨拶からイベントはスタート。頭上にはクニさんを歓迎するカンバンが。このイベントにとってクニさんにかける言葉は「お帰りなさい」なのだ。

二輪レーサー時代のクニさんの愛車を再現して作られたマシン。ベースはGB250クラブマン。この日、クニさんはこれで島を走った・・・らしい

二輪レーサー時代のクニさんの愛車を再現して作られたマシン。ベースはGB250クラブマン。この日、クニさんはこれで島を走った・・・らしい
二輪レーサー時代のクニさんの愛車を再現して作られたマシン。ベースはGB250クラブマン。この日、クニさんはこれで島を走った・・・らしい。

 翌朝、皆よりも遅めに起き上がったオレは会場へ向かった。会場にはすでに旧車、珍車を始めとする2輪、4輪が続々と会場入りしていた。そんな中、主催であるAki姉の挨拶でイベントがスタート。クニさんのトークショーやチャリティーオークションなどのプログラムが進行していく。
 そして今年オレはこのイベントに最後まで付き合うことができない。昼を過ぎてから予定されていたクニさんと走る島一周のツーリングに参加したかったのだがそれを待たずして帰路につくことになった。まぁ仕方がない。そう、今回はすべてオレの都合と言うわけにはいかないのだ。E島バスの運行スケジュールに沿った行動となる。島を後にしたオレ達は福岡市内など寄り道しながら家路についた。


帰りの途中に福岡のカドヤで仲間と合流。やっぱり人が走ってるのをみるとバイクで来ればよかったかななんて思ってしまう

帰りの途中に福岡のカドヤで仲間と合流。やっぱり人が走ってるのをみるとバイクで来ればよかったかななんて思ってしまう
帰りの途中に福岡のカドヤで仲間と合流。やっぱり人が走ってるのをみるとバイクで来ればよかったかななんて思ってしまう。

 どうなんだろう。昔はバイク乗りたる者、どこへ行くにもバイクだなんて考えた事もあった。そんな中で仲間が増え、お互いに歳をとり生活環境が変わる中でなかなか時間の自由が効かなくなる。それでも、と固定観念にとらわれて意地を張っていると他の手段であるならば行けるであろうに行けないケースも出てくる。実際、オレが参加しているミーティングなどは車はもちろん新幹線や飛行機を使って来る者もいるくらいだ。別にオレ達はイベントや集会に行くためだけにバイクに乗っているわけではない。それぞれが一人で勝手に走り回ってそのバイクライフの中のひとつとしてそういう楽しみが存在しているだけにすぎない。お互いに認めあっているバイク乗り同士なんだから無理に意地を張る必要はないようにも思える。ただ・・・・意地を張るバカほどこの世界ではカッコ良く見えてしまうんだなぁ、コレが。


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