伊豆半島は首都圏から距離的に手頃で、ちょっと頑張れば1日で回れるし、1泊なら余裕でコーナリングも景色も食も楽しめる。また、海岸線は冬季でもほとんど凍結しないから、寒い時期のツーリングもOKだ。俺も昔から幾度となくツーリングを楽しんできたし、仕事でも利用してきている。件の道を初めて走ったのは‘75年の春だった。2泊3日の日程でソロツーリングに出て、伊豆半島~房総半島(久里浜からフェリーで渡った)~福島を回ったときだ。初日、東京から沼津まで、奮発して東名高速を使い、高速を降りてから国道414、県道17号線とつないで海岸線を南下し、半島を反時計回りで走った。
右手に駿河湾を眺めつつ、マイペースでコーナリングも楽しみ、松崎まで。その後さらに南下して、差田というところで県道16号線に入り、奥石廊へ。深い藍色の海と海岸線の景観が素晴らしく、感動ものだった。石廊崎ではバイクを止め、灯台まで歩いて観光した。5月の連休の時だったが、国道もあまり混んではいなかったように思う。その後、‘80年代に入ってからは、バイト先(某都内のホテルでウエイターをしていた)のバイク仲間と日帰りや1泊で伊豆半島ツーリングによく出かけるようになり、南伊豆を走る場合は、県道16号線と国道136号線の奥石廊~松崎間を外すことはまずなかった。
‘90年代に入ってからは、仕事で知り合ったバイク乗り3、4人(多いときは7、8人)と泊まりで伊豆半島ツーリングを楽しむようになり、やはりそのルートを必ず取り入れてコースを設定した。ほとんどが伊豆スカを南下し、川奈で一泊。2日目に東伊豆の海岸線の国道135号線に出て下田まで。下田から国道136をしばらく走って、弓ヶ浜に至る手前の分岐で県道16号線に入り、石廊崎~奥石廊崎に。で、あいあい岬の駐車場&土産物店で一服し、その後国道135号で松崎を経て土肥まで北上、というパターンが多かった。
最初に伊豆半島を走ったときのように反時計回りに西伊豆から東へと走り抜けることも何度かあったが、大半は逆に時計回りで、伊東など東伊豆の海岸線から南・西伊豆に抜ける順路だった。集合場所や宿泊地、伊豆スカを走ることや2日間の走行距離、遠くからの参加者など、諸々を考慮してそういうルート設定にしたのだ。そうそう、書いているうちに思い出した。奥石廊には中木という小さな漁業集落があり、ウエイターのバイトをしていたとき、夏に先輩方と10人前後でそこのある民宿に2、3泊で遊びに行き、泳いだり釣りをしたり、楽しい時間を過ごした。‘70年代末期のことだった。
‘80年代末から’90年代半ばまでの時期は、仕事で西伊豆や南伊豆を走ることも多かった。メーカーが新車の試乗会を松崎や下田をベースに開催することもあって、その時はインプレ取りや撮影を県道16号線やマーガレットラインで行った。ホンダのCB-1やスズキのバンディット(250か400)はそうだったと記憶する。懐かしいなあ…。‘00年代に入ってからも、旅企画の取材でそのルートを走ったことがあり、撮影のために半日で複数の露天風呂に入ったっけ…。
さて、3つの道の様子だが、まず石廊崎~石廊の県道16号線は、下田側から入るとしばらくは海沿いで、眺めがよく道幅も比較的広めで走りやすい。石廊崎の前後はブラインドのタイトコーナーが続き、道幅もやや狭くなる。奥石廊のあいあい岬から国道に接続するまでの区間は次第に内陸部に入ってゆくが、道幅がやや広くなって、中速コーナーが多い。基本的に交通量が少なく(観光シーズンの休日は例外だと思うが)、コーナリングと美しい景色を堪能できる。ただし、時折対向車が現れるから、その点、要注意。
マーガレットラインは、妻良から雲見までの区間の愛称だと認識しているが、回り込んだ中低速コーナーもあるし、高速コーナーもあって、走りごたえがある。ただ、路傍に民家や施設があったりするので、飛ばし過ぎないように。雲見から松崎までは富士見彫刻ラインと呼ばれタイトコーナー連続区間で、道幅はやや狭い。断崖の海岸線上を通っているので、駿河湾を見渡せるし、好天なら富士山の雄姿も拝める。で、ゆっくり走って注意していないと見落としてしまうが、路傍に21体の彫刻が置かれている。約30年前、ツーリングコースを紹介する企画の取材で知ったことだが、昭和47年に地元・松崎の芸術家グループの手で制作・設置されたものだという。コーナリングを楽しむのもいいけど、目を吊り上げて路面ばかり見てないで、ゆっくり走ってそれらにも目を向けてみましょう。