湯めぐりみしゅら~ん


第25湯 山形北部湯巡りツーリング(2日目)

 山形北部湯巡りツーリング2日目。1日目は銀山温泉に入湯し、第1目標を無事達成。2日目は、今回のツーリングの第2目標である肘折(ひじおり)温泉を攻略。その後は山形から宮城方面に進み、ニッカウヰスキー仙台工場・宮城峡蒸留所に寄って玉井カメラマンに頼まれたウイスキーを購入。夕方くらいには宮城県を出発して、夜中には東京に戻るという段取りだ。

 まずは肘折温泉を目指す前に、朝風呂代わりに「舟形若あゆ温泉」に入ることにした。午前7時15分キャンプ場を出発。天気は晴れ。さすがに東北地方の高原だけあって気温も高くなく、とても清々しい。前森高原キャンプ場に向かう1本道を国道47号線方面に戻って、国道47号線を新庄市方面に向けて進む。瀬見温泉の先にある県道56号線に入り、5kmほど走ったところに「舟形若あゆ温泉」があった。

 「舟形若あゆ温泉」は山形県最上郡舟形町にある日帰り入浴施設だ。コテージやキャンプ場を併設した「あゆっこ村」が併設されている。小国川を見渡す高台にあり、入り口には巨大な鮎のモニュメントが建っている。入湯料は350円。開放感のある浴室からは周囲の山々と町が一望できる。露天風呂はさらに眺めがよく、ゆったりくつろげる。ちょっとしょっぱいヌルスベ感のあるお湯はやや緑がかっており、ちょうどいい湯加減。朝風呂にピッタリだ。

 朝からまったりしてしまったが、肘折温泉を目指すべく、気合を入れて「舟形若あゆ温泉」を出発。県道56号線を国道13号線方面に進み、国道13号線を越して県道31号線に入る。そして肘折温泉に向かう1本道である国道458号線を進み、本来のルートが道路崩落で進めないため迂回ルートを通り、約1時間かけて肘折温泉に到着した。

 肘折温泉は山形県最上郡大蔵村にある温泉郷だ。開湯から約1200年という全国でも屈指の歴史を持つ温泉(湯治場)である。1日目に訪れた銀山温泉とは異なり、世俗的な旅館やお土産屋が立ち並ぶ。入り組んだ温泉街を進み、温泉街の中心にある共同浴場「上の湯」に入ることにした。807年に発見されたと案内書には記載されているが、モダンな建物に改修されている。建物の真ん中に番台があり、左側が女湯、右側が男湯となっている。入湯料は200円。浴室は薄暗いが、お地蔵さんが建つ湯船には朝日が差し込んでおり、透き通った源泉掛け流しの無色透明のお湯が旅人を待ち受けていた。

 お湯はぬるめで、肘折温泉では上の湯のお湯は「冷え湯」と呼ばれているらしく、旅館などで供されているお湯は「あたたまり湯」と呼ばれているとのこと。肌触りはなめらかで、ぬるめの湯温とあいまって最高に心地いい。「温泉を味わいたいなら共同浴場」という私の温泉持論(笑)を具現化している温泉である。思わず「ああ、来てよかった!」とつぶやいてしまった。

 「上の湯」を出ると、どうやら「上の湯」の近くにある湯座神社というところで神事が行なわれるらしく、地元の方々が行き交っていた。身体が発する熱さと、夏の暑さでしたたり落ちる汗をぬぐいながら、次なる目的地である黄金温泉「カルデラ温泉館」に向かうことにした。

 肘折温泉郷のひとつである黄金温泉の「カルデラ温泉館」は肘折温泉からバイクで数分のところにある苦水川のほとりにある日帰り入浴施設だ。入湯料は350円。建物は八角形をしたユニークな形状をしている。内風呂には入らず露天風呂に入ることにした。内風呂からちょっと離れたところにある露天風呂も八角形となっており、やや白濁したお湯はやや熱め。しばらく入っていると、常連とおぼしきおじさんが話しかけてきた。いろいろ話を聞いていくと、この黄金温泉は炭酸泉(塩化物泉、炭酸水素塩泉)であることが分かってきた。

 炭酸泉とは温浴では細かい泡の効果で血行を促進し(●王のバ●はまさにこれと同じような効果を狙ったもの)、飲用すると胃腸の働きを活発にし、利尿作用もあるという。炭酸泉は山形県はもとより全国でも珍しいお湯だ。私は黄金温泉が炭酸泉とは知らずに入浴していた。ラッキーなお湯に入ったなと思っていたら、「カルデラ温泉館」には炭酸泉による温浴のほかに、冷たい炭酸泉(単純二酸化炭素冷鉱泉)もあるとおじさんは言うではないか。さらにおじさんはペットボトルを持参して炭酸泉を持って帰っているという。

 おじさんの話を聞いたら炭酸泉が飲みたくなってきた。露天風呂を出て、建物内に戻ると、中心付近に炭酸泉の飲泉所があった。来た時はまったく気づかなかった。ひしゃくで注いで飲んでみると、ほどよい冷たさで、まさに微炭酸飲料そのもののノド越しで飲みやすい。飲み過ぎないように注意書きが書かれているが、飲みやすいのでおかわりしてしまう。温浴用の炭酸泉と飲用の炭酸泉は別々の源泉・泉温とのこと。これは全国でも珍しいという。

 なかなか貴重な炭酸泉をたっぷり味わって黄金温泉「カルデラ温泉館」を出発した。ここからは寒河江方面には行かずに、迂回ルートを再び通って国道458号線を走って国道13号線に出て、村山市方面に進んだ。朝の清々しい気候から一変して真夏の陽気になり、夏は暑いという山形の気候を体感することとなった。途中道の駅「むらやま」で一服。ご当地ものという「そばカレー」を食す。暑さに辟易しながら天童市に入ったところで国道48号線に入り、宮城県の奥座敷・作並温泉方面に進む。

 1時間ほど走ったところで作並温泉に到着。折角なので作並温泉でも有名な「元湯 鷹泉閣 岩松旅館」に入ってみることにした。「岩松旅館」は宮城県仙台市青葉区にある温泉旅館だ。入湯料は1500円。なお日帰りは午前11時から午後2時(日祭日は午後1時)までとなっている。この旅館の名物は大きな混浴の天然岩風呂があることだ。岩風呂は「瀧の湯」「鷹の湯」「新湯」「河原の湯」と源泉の違う4つのお湯に分かれている。

 長い階段を降りて向かうと、縦長の湯船には木漏れ日が差し込み、広瀬川が間近に流れている。お湯は無色透明で、源泉が異なるためか場所によって泉温が違っており、ベストな場所を探す。おだやかな風情をしばし独り占め。露天風呂から上がり、今度は男女別の大浴場(内風呂)に向かう。自然美溢れる露天風呂から一変、大きな湯船はまさに大浴場にふさわしい。これだけ広い湯船は、去年入った繋温泉以来だ。

 露天風呂、内風呂に入ったところで身体が熱くなりすぎたので、エアコンの効いた休憩スペースでしばしクールダウン。こんなに暑くなるとは予想しなかったので、メッシュジャケットを持ってこなかったのを後悔した。

 汗が引いたところで岩松旅館を後にして、ニッカウヰスキー仙台工場・宮城峡蒸留所に立ち寄り、頼まれたウイスキーを無事ゲット。ここで今回のツーリングのミッションがすべて完了した。時間は午後4時前。国道48号線を仙台宮城インター方面に進み、途中もう1湯入ろうと探したが見つからなかったので、ここで終了。仙台宮城インターから東北自動車道に入って帰京した。

 結局、2日間で入った温泉数は9湯だったが、赤倉温泉、瀬見温泉、銀山温泉、肘折温泉、そして作並温泉に入れたので、中身の濃いツーリングだった。これで入湯数は546湯になった。去年の9月に500湯達成したので、1年間で50湯近く入ったことになる。秋になると仕事が立て込みそうなので、ツーリングにいけるかどうか分からないが、できれば年内に550湯目を達成したい。そして目指すは600湯。さあ達成できるのかな…。

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舟形町を見下ろす高台にある「舟形若あゆ温泉」。内風呂と露天風呂からの眺めは最高。ヌルスベ系のお湯に癒される
舟形町を見下ろす高台にある「舟形若あゆ温泉」。内風呂と露天風呂からの眺めは最高。ヌルスベ系のお湯に癒される。


温泉街の中心にある肘折温泉の共同浴場「上の湯」。建物はモダンだが、お湯は807年に発見されたという
温泉街の中心にある肘折温泉の共同浴場「上の湯」。建物はモダンだが、お湯は807年に発見されたという。


「冷え湯」と呼ばれている「上の湯」のお湯。名湯にふさわしい滑らかなお湯はいつまでも入っていたくなる
「冷え湯」と呼ばれている「上の湯」のお湯。名湯にふさわしい滑らかなお湯はいつまでも入っていたくなる。


黄金温泉「カルデラ温泉館」のユニークな露天風呂。内風呂と飲泉所のある建物と同様、八角形をしている
黄金温泉「カルデラ温泉館」のユニークな露天風呂。内風呂と飲泉所のある建物と同様、八角形をしている。


内風呂の近くにある炭酸泉を飲める飲泉所。温浴とは別の冷鉱泉が使われており、ノド越しは微炭酸飲料そのもの
内風呂の近くにある炭酸泉を飲める飲泉所。温浴とは別の冷鉱泉が使われており、ノド越しは微炭酸飲料そのもの。


国道13号線沿いの山形県尾花沢市はまさに「すいかの名産地」。沿道沿いで立派に育ったすいかが売られていた
国道13号線沿いの山形県尾花沢市はまさに「すいかの名産地」。沿道沿いで立派に育ったすいかが売られていた。


道の駅「むらやま」で食べたご当地カレー「そばカレー」。そばの実が入っており、そばの実の触感が味わえる和風カレーだ
道の駅「むらやま」で食べたご当地カレー「そばカレー」。そばの実が入っており、そばの実の触感が味わえる和風カレーだ。


仙台の奥座敷・作並温泉を代表する温泉旅館「岩松旅館」。露天風呂もさることながら、その名に恥じない大浴場も素晴らしい
仙台の奥座敷・作並温泉を代表する温泉旅館「岩松旅館」。露天風呂もさることながら、その名に恥じない大浴場も素晴らしい。


岩松旅館の名物である混浴の天然岩風呂。源泉の異なる4つの湯船から成り立っている。横には広瀬川が流れている
岩松旅館の名物である混浴の天然岩風呂。源泉の異なる4つの湯船から成り立っている。横には広瀬川が流れている。


ブースカ的温泉評価
●舟形若あゆ温泉 ★★★★
眺めのいい露天風呂と癒されるヌルスベ系のお湯。
●肘折温泉「上の湯」 ★★★★★
まさに共同浴場のよさを体感できる納得の名湯。
●黄金温泉「カルデラ温泉館」 ★★★★★
歴史ある温泉街の日常が感じ取れる共同浴場。
●作並温泉「岩松旅館 ★★★★★
連泊して味わいつくしたい宮城県の名湯。

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は546湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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