カタナが好きだ。ただし過去に所有したことがあるのは水冷250だけだ。
250も中々に良かったのだけど、やっぱりカタナと言えば一般的には1100か750を指すのでしょう(250・400のカタナファンの方ごめんなさい)。僕が好きなのもやはりシリーズの中では1100カタナということになる。やっぱり“基”のモデルだものね。
先日、ふと今カタナを買ったらどうなる? と思い立ってバイク屋さんへ行って来た。
ちなみにこーゆー時僕はネットよりも実際にバイク屋さんへ行って話を聞くのが好きです。
とゆーことで最初に行ったのがカタナのカスタムなんかも手掛ける専門店。
ノーマルからフルカスタム迄6台もカタナが置いてあって、やっぱすげーなと感心。
で、いろいろとお話を聞くと、結局ノーマルで乗るにせよバリバリカスタムするにせよ、満足するトコまで持っていくには200万円位掛かっちゃう、とのこと。
なんだか「アンタにそこまでの覚悟はあるか?」と問われているような気もする。
聞けば「カタナはファイナルエディションが2000年に出ているから割と新しいバイクのイメージを持ってる人もいるけどぜーんぜん違うからね。りっぱな旧車だからね」
「いい状態で乗り続けるためには愛情をずっと注いでやらないとムリだよー。愛情を注ぐって要するにお金掛けるってコトだからねー」
ごもっとも。なんとゆー正直かつスルドイお言葉でしょうか?
いやいやワタクシそんな強いカクゴなど全く持ち合わせてございません、おじゃましました~と早々に退却した。
別の日、懲りずに今度は関東を中心に20店舗ほどを持つ中古車メインの販売店に行ってみた。
残念ながら訪問した店にカタナの現車は置いてなかったけれど、さすがに20店舗もあるのでチェックしてもらうと結構あるある。
もう古いバイクで苦労するのはイヤだとばかり、ファイナルエディションで探してもらうと1台だけ群馬にあった。
完全ノーマルで写真と評価を見る限り程度はとても良さそうだ。
気になるお値段は99万円とのこと。
ふ~んファイナルエディションの新車時価格と一緒なんだあ、1人妙に納得しました。
12年経って新車時価格と一緒というのはどうなんだろうね?
もう二度と手に入らない名車の最終モデルが新車時価格で購入できるのは超お買い得! と考えられなくもない。
事実僕はそう考えてしまった。
100万円あれば美しいカタナが買える。これは神様が僕に与えてくれたとっておきのチャンスではなかろーか?
しっかし100万円である。
子供の頃イメージしてた100万円ってのはすっごい大金だった。
社会人になると100万円は現金でポンとだせなくても、がんばれば準備できる金額になった。
そして今オヤジになり背中にいろんなモノを背負うようになると、ひゃくまんえんは再び手の届かない遠い処へ行ってしまった。
でもいいよな~カタナ。きれいなファイナルエディションなんて今手に入れなかったらもう二度と手に入らないかも知れないよなー(これは言えるね)。今オレが購入して程度良く維持してやんなきゃカタナかわいそうだよなー(かなり妄想入ってる?)。
う~ん100万円かあ? わーどうしよう?
とてもじゃないが自分では結論など出せん。誰かオレの背中を強く激しく押してくれないかなー。
それ以来合う人合う人に高額商品の購入を強く勧める日々を送っている。クルマとか家とか高級時計とかを買っちゃえーと勧めまくっている。
誰かに高額借金を背負わせて、その姿から勇気を貰おうという魂胆である。
我ながら根性がないというか他人任せというか…。
そんな悶々とした日々を過ごしていたある日、たまたまお仕事でスズキさまへ行った帰り、そうだスズキ歴史館へ行って(そーゆーのがある)カタナ眺めてこよ、と思い立って見学してきた。ちなみにスズキ歴史館は無料なのでスズキ乗りは(別にヤマハ乗りでもいいけど)ツーリングの途中に寄ってみてもいいかも。
果たしてカタナは歴史館の入り口近くに、お子様の写真撮影用として鎮座しておられた。
受付のおねーさんに一応おことわりしてまたがってみると、なるほどポジションは’80年代初期としてはとってもタイトだ。同年代のCB-Fに長く乗っていた僕としては、当時ここまでハンドル下げたのかあ、と改めて驚かされた。
当時の運輸省(現国交省ね)のお役人もイキナリこのポジションを許可しろと言われてもイエスとは言えなかったのね、と納得。
3階に上がって年代順に眺めていくと、あったあったファイナルエディションが展示してあった。
ちなみにシリアルNo.は? というと1100番になっていました。
えっ? ファイナルエディションって1099台しか販売してねーじゃん(こらっ)。
そっかーホントのラスト1台は売らないでスズキにとってあったのですねー。
ひょっとしたらカタナ好きの中では当り前のハナシなのかもしれないけど。
街中でもツーリング先でも最近はさすがにカタナの姿は少なくなってきた。
それでも時々、コーナーの向こう側や山間の展望台や雨のサービスエリアで、すれ違ったり近くに停まっていたりすることがある。
僕にとってカタナは今でもはっとする程美しく圧倒的な存在感を持つ無二のバイクだ。
このままずっとあこがれのバイクで終わってしまうのか、それとも起死回生の大勝負に出るのか。自分でも決められない、どうすんだオレ? という今日この頃なのである。
P.S.結局、例のファイナルエディションは僕が逡巡している間に、ソッコーで売れてしまいました。
寂しいような、ほっとしたような…
タカヤスチハル
「もう30年以上バイクに乗ってます」と威張れるくらいず~っと乗り続けているのにちっともうまくならないへたれライダー。ふつーのお父さんは逆境にも負けず、ささやかなバイク生活を営んでいます、が……
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