「おっ切り込みうどん」とは、幅が1.5cmくらいもある極太のうどんを、たくさんの根菜類とともに、しょうゆ味のおツユでいただく、埼玉県は秩父地方の郷土料理なんです。ずいぶん昔に一度だけ食べたことがあるけど、地元九州の「ダゴ(団子)汁」にも似ていて(ダゴ汁は味噌仕立てだけど)、素朴な味わいになぜか郷愁を覚え、いつかまた食べたいと思っていたんです。
このコラムでももう何度も書いていますが、秩父は、東京から下道でも3〜4時間で行ける距離のため、ワタシが大好きなツーリングコースなんです。パワースポットである三峯神社に参拝し、道の駅ちちぶで自分用のおみやげを求め、丸山鉱泉でゆったりと温泉に浸かり、日々の疲れを落とし、夕暮れの国道299号線をのんびりと戻ってくるのがいつものパターンなんですよね。
しかし、今は真冬……。体は最新式のライダージャケットで寒くはないけど、手だけはどんなグローブを着けても、氷のように冷たくなってしまうのが目に見えています。行こうか行くまいか少しの間躊躇したけど、昨年の総走行距離がたったの5819kmしか走っていないのを思い出し、HONDA CB400SFのエンジンを回したのでありました。
しかし歳ばとってしまったもんですバイ。昔は一年中バイクに乗っていて、その距離も軽く10000kmを超えていたんヨ。しかし近年は、仕事が忙しい(漫画以外の)ためとはいえ、たったの5〜6000kmしか走らないのだ。ホントに「バイクの神様ごめんなさい!!」ってカンジ!?
青梅街道を西へ走り、箱根ヶ崎から国道16号線、そして入間から国道299号線へと入ります。いつもならバリバリ飛ばしているバイクとすれ違ったり、追い越されたりするんだけど、まだ寒いからね、休日なのにほとんどバイクを見かけることもなかったヨ。
高円寺を発つのにてまどり、秩父に着いたのは午後1時を回ってしまいました。本当は初詣を兼ね、三峯神社に行く予定だったんだけど、今回は予定を変更して宝登山(ほどさん)神社へと向かうことにしましょう。
秩父には、俗に秩父三社と呼ばれる「三峯神社」「秩父神社」「宝登山神社」があり、昔から大勢の方の信仰を集めています。国道140号線に入り、十数分ほど走ると、宝登山神社に到着しました。年末年始はかなりの人で賑わったんだろうけど、今日は数えるほどしか人はいません。寒気でガチガチに固まってしまったヒザを両手で持ち上げるようにして、バイクから降ります。
それにしてもなんと美しい社殿なんでしょう。絢爛豪華な飾りを施されたその社殿は一見の価値あり。再建事業は幕末に始まったらしいけど、資金難と社会の混乱により大幅に遅れ、なんと27年もの歳月を要し、現在の姿になったんだってさ。ワタシはかじかんだ手を揉みつつも、しばし見とれてしまったのであった。
お蕎麦屋さんに入り、さっそくおっ切り込みうどんを注文します。茹でるのに時間がかかるらしく、けっこう待たされたんだけど、すっかり冷え切った体がだんだんと暖まってくるし、ホントの意味での御馳走だよね。
近くには、日本で最初の貨幣「和同開珎」を作るために銅を掘り出した場所があります。どデカイ貨幣のモニュメントと露天掘りの跡が残されているだけなんだけど、はるか昔の歴史の一端が垣間見られるようで興味深いもんです。
いつもの道の駅ちちぶに寄ります。ここは地元で取れた野菜や物産品を安く手に入れる事ができるのだ。新鮮な野菜に目を奪われたけど、昨日スーパーで買った野菜が少し残っているのを思い出し、酒とまんじゅうのみ求めます。あと、名水も汲めるようになっているので、持ってきたペットボトル4本分いただいていきましょう。
冬は暮れるのが早いです。秩父を見下ろす武甲山(1295m)も夕日に包まれています。道の駅ちちぶから7〜8分走るといつもの丸山鉱泉に到着です。800円(平日700円)を払い、茶色く濁った露天風呂に浸かるのがワタシの楽しみなのであります。この濁りは、店主が近くの山から取ってきた薬草を煎じて、風呂に溶かし込んでいるのだ。