アッキーがキタ
アッキーがキタ

ミュージシャンになるべく
夢抱き上京したバカ編 
       その14
アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。愛車の1台は写真の750ニンジャというマニアックな一面も合わせ持ち、アメリカン以外のジャンルもほほいのほい。見かけはご覧のようにとっつきにくそうだが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はウソでもない。

 え〜、なんか前回の原稿を書いた後、年末年始遊びほうけて気がついたら1月も終わりになっていて、そんでもMB編集部から何の催促も来なかったのでさらに遊びほうけて、2月に入っても催促が来ないことに気がつき「オレって干された!?」と慌ててたらようやく担当A山氏からメールを貰って安心したアッキーです。とりあえず超遅くなりましたが、読者のミナサマ、今年もこんなくだらな〜いコラムにどうかおつきあいくださいませ。

 で! 前回、今から20年ほど前にあの元女子プロレスラーである長与千種のコンサートをお手伝いした件について書いたが、今回もまた当時の話である。またしてもコラム見出しのミュージシャンうんぬんとはあまりカンケーない話だが、まあそのへんは北朝鮮のミサイル発射を見守る自衛隊のような大きな心で許していただきたい。

 さて、大先輩のPANTA氏がプロデュースすることになった長与千種バンド。その付き人となった当時ハタチそこそこのオレはある日PANTA氏に連れられ、メンバー達と初顔合わせするために都内の某スタジオへと向かった。聞けばバンドは全員女性、しかも結構な腕前を持つプロ達ばかりで集められているという。色んな意味で胸が高鳴るオレ。いやまあ、若かったしねえ。

 そしてスタジオ入りし、まずは長与さんとご対面(そこらへんについての話は前回書いたので割愛)。そして他のメンバーはと言えば、ギターはギャルバンブームの先駆けとなったあのSHOW-YAのライブサポートをしている人(たしか)、んでドラムは、んーと、忘れてしまったが結構業界でもブリブリいわしてる小柄な女性、キーボードはあちこちでソロアーティストのライブに参加しているわとそうそうたる面々で、なおかつ全員美人!(長与氏を除く、って本人に読まれたらどうしよう)。

 だが、ベーシストを見た瞬間、オレは固まってしまった。プー子さんと言うその方は、まだオレが10代の頃、当時のベースマガジンに新人プロベーシストとして掲載されていた写真に一目惚れした女性だったのだっ!(無念だが、彼女が在籍していたバンド名を忘れてしまった……)いやプー子さん、本人マジ美人!! これはなんとしても、同じベーシストとして接近し、仲良くならねば!!!!!!!!

 しかし、なかなかコトは上手く進まない。なにせ長与氏を含め6人編成のバンドに、付き人はたった一人(予算の都合上)。で、実は一番手間がかかるのがキーボードで、機材が多いし重いから、毎回のようにキーボーディストの家へクルマで送り迎えし、スタジオではセッティングのお手伝い。そんで中盤からは(前回書いたように)長与氏の態度が一変したため、一気に彼女の舎弟扱いになり余計なことばかりやらされる毎日。あー! プー子さんと話とかしたいのに、他の連中がうるさいったらありゃしない!!!!!!!

 しかし、そんな慌ただしい日々も過ぎ、ある日スタジオ練習が終わった後、みんなで食事に行くことになった。PANTA氏やマネージャーさんを含め10数人がテーブルについたのだが、なんとオレの正面に座ったのはプー子さん!!

“ドキドキしてます、母さん”(北の国からの純の声でお読みください)

 いやいやいやいや、これは何とかせねば! と思うオレ。マジで美人だし雰囲気いいし、年はちょっとオレより上っぽいが、なにせ当時のオレは年上好きときたもんだ。このチャンスを逃したらイカン、と思いつつ、なかなか話が切り出せない。すると、なんとプー子さんの方からオレに話かけてきたではないか!

「アキくんってさ、ベースなんでしょ? 何使ってるの?」

「おおお、オレっすか。フェンダーのプレベ(プレシジョンベース)っす」

「おー、シブいね〜」

 と、話はだんだんと盛り上がっていく。いや、プー子さんはしゃべると気さくな人で、んでもって美人(何度も書いて申し訳ないが、ホントにオレのストライクゾーンど真ん中だったんで)。マジ、惚れそうになりながら話は進み、“このまま仲良くなって連絡先とか聞いて……”とオレが妄想していると、横からドラマーの女の子がふいにオレ達の話に割って入り、まさに衝撃的なセリフを発した!!!

「そういえばさ、プー子さん。結婚式っていつ?」

 けけけけけけ、結婚式? えええ? いやいや、本人のコトじゃない、たぶん他の人のコトだ。そう頭の中で叫びつつ固まるオレの周りでは、その言葉に続いて皆が喋りだした。

「結婚したらバンドどうすんの?」

「プー子のウエディングドレス姿ってどんなだろうね」

 嗚呼、ハタチそこそこで人生で最高に胸が高鳴ったオレの恋はその時点で終わった。

 そして次の日からは、まさに長与奴隷として働くのだった。

追記

 このバンド活動中、態度が悪いのでほとんど口をきくことのなかったコーラスの女の子と、オレは後に付き合ってしまった。人生とはホント、分からないものである。


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