BMWのWEBサイトへ

“GS”小史から見る、
“GS”の停まらない進化。

 BMWがR80G/Sを1980年に発売して以来、時代とユーザーの要求、そしてセグメント・リーダーという自認を串刺しに進化を続けてきたモデルが“GS”だ。独自のブランディングでポジションを確立し、今やアドベンチャーツアラーの代表格にして、マーケットの拡大の牽引役でもある。その流れを見ると、「もっと遠くに、もっと快適に、もっと走りを」のコンセプトをその時々で極めた、まさに正常進化してきたモデルでもある。

 ざっと振り返っても、R80 G/Sシリーズに始まり、1988年登場のR100GSシリーズ、1994年にR1100GSシリーズ、1998年にR1150GSシリーズ、そして2004年にはR1200GSシリーズが登場し、歴代モデルで適宜マイナーチェンジを受けてアップデイトされてきた。その手法は、商品性アップ、カラーメンテナンスという企業的な側面にとどまらず、実際に地球規模の旅に出たら、こうした方がもっと良い、という改良がリアルに施されている。日常から離れて、旅を日常とする時のためのリアルさ、とでも言おうか。旅を非日常とサブにせず、あくまでも真正面から捕らえているバイク造りをするのが、BMWのGSモデルに対する姿勢なのだ。

「歴史」を変えるエンジン造り。

 さて、そんなGSシリーズの最新モデルのR1200GSだが、搭載されるエンジンは、まさに「歴史的変換点を目撃した」という表現こそふさわしいほど、劇的な変化が施されている。おそらく、従来と同じなのは、水平対向2気筒というエンジン形式ぐらいかもしれない。
 ダイジェストで見ると……。
●エンジン冷却システムがついに水冷化された。
●エンジンレイアウトが一新され、エンジンケース内にミッション、湿式多板クラッチ、ジェネレーターを内蔵。
 となる。

 ここだけ読むと「それ、普通じゃないの」となるが、BMWのボクサーツインは、クラッチは乾式単板、トランスミッションケースは独立してエンジン後部に配置。そこからドライブシャフトを取り出し、後輪に駆動力を伝達する、というレイアウトを伝統的に踏襲してきた。

 つまり、エンジンから後輪までのパワートレーンの距離の中で、エンジン+クラッチ+ミッションケースで占める割合が長かった。そもそも、縦置きクランクのため、クランクウエブの厚みなども縦方向の長さに重なるから、短縮するのは難しい構成だったのだ。

 新しいエンジンではクランクウエブの厚み自体も相当に薄くし、クランクマスそのものをウエブの重さだけではなく、プライマリーギアにも分担させる工夫を凝らし、全体で前後長の短縮に貢献。また、6速ミッションをクランク下に収納する形にしたことで、全体のユニット長も短縮させている。ユニークなのは、クラッチをクランクと等速で逆回転させることで、アクセルを開けた時、グラッと傾く縦置きクランク特有のトルクリアクションも低減させている。

 そしてケースとシリンダーを一体化した。コンパクト化と剛性アップ。考えられる最もハイスタンダードな手法を余すことなく盛り込んだエンジン設計でもある。

 注目の冷却方式は、燃焼室周りを中心にウォータージャケットを設け、エンジン全体では、水冷35%、空冷65%と(先代の油冷エンジンでは、油冷22%、空冷78%だった)、空冷への依存度を大きく取っている。左右に張り出すシリンダーで走行風を潤沢に受けることができる水平対向エンジンのメリットを、しっかりと活用しているのだ。水平対向エンジンに長い経験と知恵を持つBMWならではといえるだろう。そのためラジエターも左右分割の二つを外観意匠に響かせることなく搭載している。水冷化によって増えたエンジン周りの重量は僅か2.7キロと発表されている。

 この新エンジンで、水冷以外にも伝統を打ち破った箇所が吸排気レイアウトだ。BMWのボクサーエンジンは、これまで後方吸気、前方排気というレイアウトが守られてきた。しかし新エンジンでは上方吸気、下方排気、というダウンドラフトタイプを採用、ストレートフローを具現化している。インジェクターなどもより理想的な配置となっている。
 先代の4バルブDOHCボクサーでは、吸排気レイアウトの関係で、1本のカムシャフトがヘッドの上側、下側それぞれ2本のバルブを駆動する、というレイアウトだった。つまり、吸排気1本ずつを駆動する、という他にはあまりないスタイルだ。
 新型では吸気側、排気側をそれぞれ1本のカムシャフトが独立して作動させるため、将来的に可変バルブ(BMWが4輪で使うVANOS的なものだろうか)への可能性も滲ませている……。
(編集部注※VANOS:Variable Nockenwellen Steuerung。BMWが4輪で採用している可変バルブタイミングシステム。ベーン型可変バルブタイミング機構を吸気側だけでなく、排気側にも装着するという特徴を持つ)
 スロットルもバイワイア化された。左右にφ52㎜のスロットルボアを与え、ライダーの右手の動きを最善なドライバビリティーに変換してスロットルバルブをコントロールする。E-GASと命名されたこのシステム、ドライブモードの制御の緻密化や、クルーズコントロールのオプション設定化、またボクサーツインにはつきものだった、左右のバランス調整も電子制御システムが自動的に行ってくれるという。長年、スロットル操作に神経を注ぎ、左右のベストバランスを探るのがBMW乗りの証しだった、という姿も新型では必要がなくなったのである。

 他にもある。エアクリーナーボックスから2本ある吸気バルブの片側のポートだけに導かれるセカンダリーエアを入れる事で、吸気スワールを積極的に誘発させ、シリンダー内への充填効果を向上させるとともに火炎伝播速度を均質化させている。従来と同じボア×ストローク値ながら、2本のスパークプラグで点火して火炎伝播を均質化させる必要が無くなり、シングルプラグ仕様となっている。将来的にツインプラグになる可能性もあるだろうが、そんな余力を持たせたエンジンなのだ。

 このエンジンは、95kW(125ps)/7,700rpm、125Nm/6,500rpmと、スペック的にも史上最強のGSだ。そしてサイズも文句なしのコンパクトさ。この新型エンジンを製作したBMWは、これからの10年、間違い無くボクサーエンジン搭載のモーターサイクルを進化させて行くのだろう。

 2004年のフルモデルチェンジで新世代ボクサーの旗印を掲げたGS同様、今後、ツーリングモデルのRTやロードスターなど、新エンジン搭載のBMWが続々登場するはずで、GSアドベンチャーの登場も待ち遠しい。

 気になるGSの走りは、シャーシに盛り込まれたニュースとともにPART2にて。(Part2へ続く)

こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/k5uEYY2lAjM」で直接ご覧ください。
’93年、空冷OHV2バルブ水平対向2気筒から生まれ変わった初代空油冷HC(ハイカム。オーバーヘッドではないため、こう呼ばれた。カムカバー下側に1本のカムを持つ)4バルブ。伝統を引き継ぎ、エンジンの上に発電系、エンジン後部にはミッションケースがつながる。縦横前後に長いエンジン。ラジアル4バルブを採用したのもニュースだった。
細部を進化させながら1150へと排気量を上げ、5速から6速へとミッションも増段。後期型ではエミッション性能を向上させるためにツインスパークヘッドを採用。1100、1150時代は、エンジン+ミッションケースがフレームの構造体としての役割も大きく担っていた。そのため、単体重量も重かった。
そして’04年、日本でも発売になった先代R1200GSのファーストイシュー。トレリスフレームによって剛性を確保するシャーシコンセプトを採用し、エンジン、ミッションケース周りを一気に軽量化。横から見た全長、全高などコンパクト化が進んだのが解る。しかし、エンジン上にオルタネーター、エンジン後部にミッションケースという前作を踏襲したレイアウトは不変。
HP2スポーツでトライされたボクサーツインのDOHC化。その流れを汲み、他の水平対向モデルもDOHC化される。大きな変更ながら全体のルックスは従来どおり。ミッションケースなどのボルト数などが変わっているのが解る。
そして最新型エンジン。クランクケース上はほぼフラット。従来のオイルパンのあるスペースに6速ミッションが納まり、後部にはスターターモーターがある程度。湿式多板クラッチはエンジン前方にある。充填効率を高めた結果、それまで採用してきた放射状バルブレイアウトから一新、吸気側8度、排気側10度のバルブアングルを持ち、コンパクトな燃焼室形状の実現に貢献。先代より吸排気バルブは各1㎜拡大し、インテークがφ40㎜、エクゾーストがφ34㎜となっている。S1000RR同様の短いロッカーアームを介して駆動させるバルブのバルブステム径は5.5㎜で先代同様。バルブスプリングなどヘッド廻りからもフリクションロスを低減させつつ高回転、高出力化と低燃費化を図っている。
新型ボクサーツインの内部構造がこれ。ヘッドカバーにいわゆるDOHC感が無いのはこんな構造になっているからだ。タイミングチェーン(左シリンダーはクランクシャフト、右シリンダーはカウンターシャフトから取られている)が吸排気カムの中央からそれぞれをギアで駆動するユニークなもの。クランクウエブを薄くした分、カウンターギアにバランスウエイトを付けるなど、全体で回転バランスを取る手法をとっている。
前側からミッションを透視したイラスト。クラッチパックがエンジン最前部に陣取っているのが解る。クラッチにはスリッパー機構も備わる。レイアウト変更に伴い、シャフトドライブの取り出しは先代の右側から左側へと移設されている。
クーリングシステムを示した図。進行方向前側(写真前側)に大胆な空冷のクーリングフィンが。シリンダーの逆側に冷却水経路が備わっているのが解る。クランクシャフト前端に冷却水ポンプが備わる。
こちらは実際の冷却水経路の図式。シリンダーヘッドの排気側からインテーク側に冷却水が流れることで、吸気側の温度を確保するフローを採用。
別体から一体へとなったことでミッションもエンジンオイルで潤滑することになった新型エンジン(従来モデルは、ミッションはギアオイルで潤滑している)。
新型R1200GSの走りは、『BMW R1200GS 試乗』Part2でレポート。

| 『BMW R1200GS試乗』Part2へ | BMW JAPANのWEBサイトへ |