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KTM JAPAN

 
KTM 690 DUKE R   1,092,000円(3月6日発売)

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 KTM 690 DUKEは個人的にとても気に入っているストリートバイクだ。スポーティーな単気筒エンジンに軽快で素直なハンドリングで動きをコントロールしやすく、走るのが楽しくてしかたがない。身長170cmでも気にならない低いシート高に、ライディングポジションは穏やかな前傾で無理な体勢を強いらない。急かすようなところがないからゆったり走るのも自然に出来て、そこからひとたびスロットルを積極的に操作し俊敏に走るようなことも気持ちよく応えてくれる。まるで自分の足がとてつもなく速くなった気分。80万円台前半という価格設定もガイシャのイメージから脱却した嬉しいもの。

 KTMというメーカーのイメージとして、レースに特化したダートモデルや、攻撃的なモタードモデルなどで知られてきたこともあって、シロウトお断りな感じを持っている人がいるかもしれない。それはもう古い価値観。その急先鋒と言っていいのが、DUKEシリーズだ。ユーザーフレンドリーでありながらKTMの血統というか、全モデルに共通する、スポーツ走りするとツボにハマる設定。乗っていると「どうだ、おもしれーだろ」と語ってくるよう。作り手の狙いが素直に伝わってくる。 

 少し前置きが長くなったが、そのお気に入りの690 DUKEに、走りの部分をさらに強化した690 DUKE Rが新たなラインアップとして加わることになった。ニュースを知ってから気になって仕方がなかったが、念願かなって先日、袖ヶ浦フォレストレースウェイでその注目のモデルに試乗してきた。

 見て最初に気がついたのはフレーム。通常モデルのフレームをもっと強化するために、クロームモリブデン鋼トレリスフレームがエンジンを囲むバードケージのように前方にも伸びた専用シャシー。次にサソリマークが入ったアクラポビッチのサイレンサーに目が行く。もちろん、それだけでない。前後のサスペンションが変わっている。削り出しのトリプルクランプに装着されるWPの倒立フォークはフルアジャスタブルタイプ。リアショックのリザーバー付ショックユニットはダンピングをハイ/ロースピードの個別調整が可能だ。フロントブレーキにブレンボのワンピース・ラジアルマウントキャリパーを装着し、マスターシリンダーもそれに合わせたものに変わっている。エンジンはマッピングの変更で2psと僅かな出力UP。これで通常モデルより25万円ほど高い。パーツの違いを考えれば納得がいくものだけど、価格差ほど走りの違いがあるのかが気になった。

 試乗日のコースはドライで、3月初旬でも肌寒さは消えて気温が上がった絶好のサーキット日和。690 DUKEを乗って後に690 DUKE Rに乗ったので純粋に違いを体験できた。

 結果を先に言えば、まるで別物だった。DUKEの走りは前述した通り私好みで楽しいけれど、ストリートでの走りをメインとしたものだ。サーキットでペースを上げていくと、コーナーで前後のサスペンションがワナワナと若干落ち着かなくなって、気がついたら逃げようとするフロントを抑えようと上体を前に出し荷重がかかるような姿勢になっていった。DUKE Rではその不安定な部分がすっかり影を潜めた。通常DUKEより高い速度でコーナリングしてもビシっと安定していて狙ったラインを怖くなく楽にトレースしていける。走りの所作がまるで違うのである。明らかなレベルUPを感じることが出来た。

 2psしか違わないというエンジンも、その事実を「ほんとかいな??」と疑うほど元気が良い。ピックアップの速さに加え、トルクに厚みが出ていてびっくり。こうも変わるものなのかと驚くほど。

 さらにフロントブレーキが素晴らしい。やや強めに握りこんで効かせるDUKEに比べて、指2本軽めに握っただけで強力なストッピングパワーを発揮。さらにタッチとコントロール性も格段に良い。

 周回タイムのような客観的な実力差を比べることはしなかったが、各ポイントで通常DUKEに乗った時に速度計の数値を見ていた。DUKE Rに乗るとどのポイントでもDUKEより表示した速度が高い。減速、進入、旋回、立ち上がりと曲がっていくのが気持よく、そして速くこなせた。

 これは悩む。ストリートを楽しく走ることに関しては通常のDUKEでなんら不満はない。だけど、この走りを知ってしまった後に、どちらを選ぶのかと問われると本気で悩む。DUKE Rは価格が高くなっていても、それをバリューに感じさせるほど走りの水準が高まっている。
(濱矢文夫)

2012年シーズンのユーロジュニアカップを戦ったマシンをイメージして、新型690 DUKEをベースに鍛え抜かれた足廻りと、数々のハイグレード装備を搭載したスペシャルマシン。シャシーもR専用に新設計。 オレンジアルマイト処理が施されたアルミ削り出しトリプルクランプを採用。
新設計倒立フルアジャスタブルフロントフォークを採用。伸び側、圧側のダンパーをそれぞれ左右のフォークに振り分けて調節可能としている。バネ下の軽量化と、追随性の向上。ブレーキもブレンボの最新高強度軽量ワンピース・ラジアルマウント・ブレーキキャリパー“M50”を採用。従来比6%の軽量化も達成。新型キャリパーに合わせ、専用デザインのマスターシリンダーを採用している。 リアはWP製外部リザーバー付リアショックユニットを採用。ダンパーはハイ/ロースピード時の個別調整が可能。“SUPERMOTOモード”を搭載したボッシュ9M+ABSシステムを装備。よりアグレッシブな走りに対応させている。
価格は690 DUKEの847,300円に対して1,092,000円。パフォーマンスの内容を考えればお買い得のはず。 排気系では専用のアクラポビッチ製サイレンサーシステム搭載。
<690 DUKE R 主要諸元>
●エンジン:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ●ボア×ストローク:102×84.5mm●総排気量:690cm3●圧縮比:12.6●最高出力:51.5kW(70PS)/7,500rpm●最大トルク:70N・m/5,500rpm●燃料タンク容量:14リットル●燃料供給装置:KEIHINフューエルインジェクション●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:クロームモリブデン鋼トレリスフレーム
●全長×全幅×全高:2,152×844×1,193mm●シート高:865mm●最低地上高:192mm●重量:149.5kg●サスペンション:前φ43mmWP製倒立フォーク、後WP製モノショック●ブレーキ:前φ320mmシングルディスク、後φ240mmシングルディスク、ABS付●タイヤ:前120/70R17、後160/60R17

 
KTM 1190 RC8 R   1,999,000円(3月6日発売)

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 国の内外を問わずスーパースポーツモデルは存在するけれど、このRC8 Rのルックスほど個性的なものはない。エッジがはっきりした造形に特徴的な顔つき。前側のボリュームに比べて小さいテール。遠くにあっても、すぐにそれだと分かる。2008年に登場したRC8から大きくイメージを変えていないのに古さを感じさせない。

 この戦闘的なルックスから、取っつきにくそうな印象を持っている人もいるかもしれない。でも実際に乗ってみると、それが取り越し苦労だったことが分かる。確かに初期のRC8は、Vツインエンジンが楽しい乗り物と思える反面、独特のクセがあったことは事実で、その印象が残っている場合もあるかもしれない。

 しかしこのRC8 Rとなってから話は違う。乗り手を選ぶような乗りにくさはとことん影を潜め、フレンドリーなものに進化した。スリッパークラッチが標準装備になった2013年モデルに乗って熟成ぶりを確認できた。水冷75度Vツインエンジンは、低回転からパワーが出てくるが神経質なところはなく、スロットルを回すとよどみなく一気にリミットまで回る。途中に引っかかるような谷間はない。高出力ながらそれをネガティブに意識させない扱いやすさ。

 それはしっかりした車体があるからというのもある。このエンジンパワーをきっちり受け止める軽量なシャシーと足廻り。試乗場所がサーキットということもあって、難なくおもいっきりの速度を出して楽しめた。タッチも効きも良好なブレーキを使ってコーナーに進入する時の動きはシャープそのもの。直4エンジンモデルとは違う。

 2気筒らしさを感じる鼓動感と音を伴いフラットに力が出てくるが、引っ張って回しすぎるより1速上げ中速域を多用して走った方が速いし気持ちいい。ヒラヒラと左右に深くバンクさせ、それを急いで繋ぐようにスロットルをワイドに開く。どこでも安定感は高く、薄氷を踏むみたいな気持ちにさせない。

 ただ単にストイックに速さだけを追求したものではない。ファンライドできる性格を随所から感じた。もちろん運動性能は高い次元だ。クローズドコースだからある意味で当たり前かもしれないけど今回のKTM2013年ストリートモデルの試乗でライディングする面白さはトップクラス。(濱矢文夫)

より精悍なグラフィックとなった2013 RC8 R。フェアリングの一部をブラックアウトするとともに、ホイールもブラックに。 マルチファンクション液晶ディスプレイを採用。ライディングに必要な情報を瞬時に得ることが出来る。。
7.3kgの超軽量クロームモリブデン鋼フレームを採用。高い剛性と感性に沿うしなやかさを両立しているという。駆動系では、スリッパークラッチを新採用。 805mm/825mmの2段階調整機能を備えたシート。4ポジションステップ、5ポジションレバー、さらに高さと角度をそれぞれ2段階に調整可能なハンドルを採用。
フロントにはWP製フルアジャスタブルφ43mmフロントフォークを採用。 リアはWP製フルアジャスタブルモノショック。
<1190 RC8 R 主要諸元>
●エンジン:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ●ボア×ストローク:105×69mm●総排気量:1195cm3●圧縮比:13.5●最高出力:74kW(101PS)/6,500rpm●最大トルク:110N・m/6,000rpm●燃料タンク容量:16.5リットル●燃料供給装置:KEIHINフューエルインジェクション●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:クロームモリブデン鋼トレリスフレーム
●全長×全幅×全高:2,049×821×1,177mm●シート高:805~825mm●最低地上高:110mm●重量:184kg●サスペンション:前φ43mmWP製倒立フォーク、後WP製モノショック●ブレーキ:前φ320mmシングルディスク、後φ220mmシングルディスク●タイヤ:前120/70ZR17、後190/55ZR17

 
KTM 125/200 DUKE   470,000円/513,450円

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 125 DUKEと200 DUKEが、国内にそれまでにあった多くの小排気量スポーツと違うところは、エンジンパワーに対して贅沢なシャシーとサスペンションを装備していることだろう。確かに’80年代レーサーレプリカ時代の時も軽二輪(250)クラスに高性能なモデルがあったが、それと異なるのは単気筒エンジンをクロモリトレリスフレームに積んだ軽さと、レーサーレプリカのような前傾姿勢にならない気楽さ、そして国内メーカー製と比べてもリーズナブルと感じてしまう価格設定だ。

 考え方は極めてシンプル。水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒エンジンのパワーにへこたれないサスとシャシーにしたら、大きなパワーがなくてもスロットル全開で遊べて楽しいに決まっているというもの。その極めて分かりやすい考えを実現するために野心的と表現していいほどいろんなところがこれまでの概念に囚われていないモデル。

 125は試乗場所のサーキットで乗るにはアンダーパワーだけど、乗っているとヘルメットの中で顔がほころぶ、楽しいったらありゃしない。ベッタリ伏せてストレートを通過し、軽い車体のメリットを活かしてブレーキングポイントを遅らせて突っ込んで、速度を保ったままスーっとコーナーに飛び込んでフルバンクで曲がる。

 この2013年モデルでディスクローターがφ280mmから300mmへと大型化されたこともあって、確実にブレーキの効きが向上した。スムーズに回るエンジンは相変わらずだが、より洗練された感がある。乗っていくと、バイク好き人間の性として、より速度を高く保ったまま走ろうとがんばる。がんばっても、足廻りと車体は弱音を吐かない。

 やっぱりエンジンに車体が勝っている方がバイクは楽しい。

 スポーティーながら125 DUKEは下がスカスカだからギャンギャンに回して乗らなきゃ、というエンジンではない。回さなくても普通に走れ、これが街中を走る時の味方になってくれる。ABSも標準装備されたし、いろんなシーンで愉快な相棒になってくれるだろう。

 200 DUKEは125に輪をかけたフレキシブルさで、2速発進もお茶の子さいさいに出来てしまう。最初に乗った時は流れている市街地ならトップ6速のまま巡航をこなせるほどだった。125と基本同じ車体に排気量が大きくなったエンジンだから軽いまま。加速型のギアセットなこともあり、曲がってからスロットルを開けていくのが気持ちいい。パワーの出方はフラットで最上回転数までストレスなく回る。200もフロントブレーキが大型化された。走りのしっかり感と安定感は125同様にエンジンパワーに負けない。

 両車とも魅力が確実にUPしていると感じた。乗ると欲しくなってしまうのが困りもの……。(濱矢文夫)

KTM試乗会恒例“プレス対抗125 DUKEレース”も開催されました。“チーム・ミスター・バイク”も参戦。前2回とも優勝させていただいているディフェンディング・チャンピオンとしては負けられません。写真をクリックするとどんなレースだったのかが分かります(写真左、濱矢、右、BGでおなじみノア・セレン)。 というわけで走りの速さで順位が決まるわけではありませんでした…!?。写真をクリックすると今回の“レース結果”が見られます。125 DUKEのワンメイクレース楽しいぞ!
<125 DUKE〈200 DUKE〉主要諸元>
●エンジン:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ●ボア×ストローク:58×47.2〈72×49〉mm●総排気量:124.7〈199.5〉cm3●圧縮比:12.8〈11.5〉●最高出力:11.3kW/10,500rpm〈19kW/10,000rpm〉●最大トルク:12N・m/8,000rpm〈20N・m/8,000rpm〉●燃料タンク容量:約11リットル●燃料供給装置:ボッシュ電子制御フューエルインジェクション●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:クロームモリブデン鋼トレリスフレーム
●全長×全幅×全高:2,029×836×1,267mm●シート高:800mm●最低地上高:170mm●重量:127kg〈129.5kg〉●サスペンション:前φ43mmWP製倒立フォーク、後WP製モノショック●ブレーキ:前φ300mmシングルディスク、後φ230mmシングルディスク●タイヤ:前110/70R17、後150/60R17
※〈 〉内は200 DUKEのデータです。

 
KTM 990 SUPER DUKE R   1,398,000円

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 990 SUPER DUKE Rは積極的にスロットルを開けていくとやんちゃそのもの。フルスロットルではフロントタイヤの接地感が希薄になってブルブルっと身をよじるスパルタンさ。固めで幅のあるシートは身長170cmではベッタリ足つきとはいかないけれど一度跨ってしまえば気にならない。少し腰高、でもネイキッドモデルらしいポジションで流すようにゆったり走っても快適。だけどそのまま気を抜いたまま一気にパワーをかけると前述の通りになってしまうので、前に伏せて戦闘態勢を取ることを促される。

 ストリート向けモデルながらサーキットで走っても楽しい。いい意味での面白いクセがある乗り味が個性を際立たせていて、カテゴリー的にはビッグネイキッドの中に入るが、他に似たモデルがない。ブレーキを含めて足廻りは高レベル。これはKTMのストリートモデルに総じて言えること。2012年モデルからふたり乗り仕様になっているのもイイネ。見た目も走りもパンチの効いたDUKEシリーズの長兄。(濱矢文夫)

Rモデルは専用のオレンジ塗装高剛性クロモリフレームを採用。2013年モデルでも、2011年モデル比28万2千円安い価格設定を引き継いでいる。 2012年モデルよりダブルシートを採用している。装備面からも性能面からもクラス最強のKTMネイキッドのフラッグシップモデル。
<990 SUPER DUKE R 主要諸元>
●エンジン:水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ●ボア×ストローク:101×62.4mm●総排気量:999cm3●圧縮比:11.5●最高出力:92kW/9,000rpm●最大トルク:100N・m/8,000rpm●燃料タンク容量:約18.5リットル●燃料供給装置:KEIHIN電子制御フューエルインジェクション●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:クロームモリブデン鋼トレリスフレーム
●全長×全幅×全高:2,110×840×1,070mm●シート高:850mm●最低地上高:150mm●重量:186kg●サスペンション:前φ48mmWP製倒立フォーク、後WP製モノショック●ブレーキ:前φ320ダブルディスク、後φ240mmシングルディスク●タイヤ:前120/70ZR17、後180/55ZR17


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