順逆無一文

第31回『対牛弾琴』

 多くのスネかじりバイクを養っている方には悩ましい4月1日。走れる状態にしておくか、はたまたいったん眠らせるか…廃車手続きは間に合いましたでしょうか。

 バイクやクルマを所有しているだけで支払わなければならない「軽自動車税」や「自動車税」。所有していることに対して課税される“財産税”の一種で、本来は道路を利用することに対して、その整備費などを負担してもらうという性格を持って作られた地方税のひとつでした。過去形なのは、この軽自動車税、自動車税が“目的税”ではなくて“普通税”とされてしまったことで、現実にはその目的どおりに使われているとは思えないからです。

 自動車税は、普通自動車、三輪以上の小型自動車を所有する方が、税率表に定められた額を、都道府県から送付される納税通知書により、5月末日までに納める地方税。ちなみに対象となるのが、4月1日午前0時現在の所有者というわけで、“悩ましい4月1日”となってしまうのですね。

 二輪の場合は、これが「軽自動車税」という名称になり、4月1日付けの所有者に課税されるなど、地方税法にもとづく課税の基本は一緒ですが、自動車税が、都道府県が徴収するのに対して、軽自動車税は、市区町村が徴収するという、けっこう根本的な違いがあります。

 ちなみに総務省の「道府県税の概要」によれば、平成24年度の自動車税の収入見込額は、15,677億円で、道府県税の全体に占める割合は11.3%となっています。同様に「市町村税の概要」という資料によれば、平成24年度の軽自動車税の収入見込額は、1,810億円で、市町村税全体に占める構成比率は0.9%になるそうです。それぞれの数値を多いと見るか、少ないと見るかは人によって判断が違うでしょうが、二輪の所有者もかなりの額の税金を納めていることに注目してください。自動車の所有者に対して10分の1強です。約1割。もっと肩身の狭い貢献度だと勝手に想像してましたが、立派に交通社会の一員として財政面でも地方自治体を支えているじゃありませんか。税全体でも市町村税の約1%です。

 生活する上で、道路など公共のインフラを利用させてもらっているのはバイクもクルマも同じ。そしてそのインフラを支える原資となっている地方税を負担している率も若干少ないとはいえクルマの10分の1。

 では、それに対する見返りは? 道路整備や信号整備などの恩恵にあずかっているのはクルマと一緒。ただ1つ、あまりに格差が付いているインフラ環境があります。駐車場の問題ですね。

 駐車場の現状は、1台あたりの駐車可能台数がクルマの10分の1かとえ言えばとんでもない。二輪車用の駐車可能台数は1000分の1にもならない。軽自動車税、自動車税ともに普通税で、目的税ではないのですが、せめて1%でも、バイクの駐車問題の改善に予算を使ってください、ですね。こと駐車スペースに関しては、あまりに差別的な扱いしか受けていない。その認識から変えていかないと、いつまで経っても二輪ライダーの要求など、ごまめの歯ぎしりなのでしょう。

 いっそ、二輪車用駐車場が整備されない限り、もう軽自動車税は納めない、という運動を起こすぐらいの気概でないと改善は望めないのではないでしょうか。

 軽自動車税も自動車税も普通税なので使い途は各自治体に任されています。徴収した額自体は簡単に分かっても、それが実際に何にどれぐらい使われているかは、各自治体の決算報告を個々に調べるしかない。いずれにせよ軽自動車税、自動車税は、地方自治体の予算という丼勘定に呑み込まれてしまうんですね。

 そして、ほとんどの自治体では「地方税は、公務員の給料、教育、警察、消防、道路の整備、ゴミの収集、健康保険など、生活に密着したことに使われています」と説明されているはず。まずは、いまだ民間に比べ呆れるほど優遇されている公務員の皆さんの給料に割り当てられて、残りを市民生活のために使っております、ということ。

 これでは前例、前年予算が基本のお役所仕事で、突然降って沸いた災いといえる二輪の駐車場問題のために予算を取ろうなどとは、微塵たりとも思い至らないでしょう。もともと二輪車の存在など端から意識していなかったのですから。

 警察が二輪を都市部から追い出すために駐車監視員という奥の手を使って駐車させない施策を打ち出したところ、想像以上の効果が上がってしまった、というのが現状でしょうか。

 ならば解決策は簡単です。駐車場を整備するまでは取り締まらない、ということでしょうね。常識的に考えれば。ただ、そんな市民レベルでは当たり前の常識というものの通用しない警察ですから、これは実現の可能性はまず無いでしょう。

 実はほとんど金なんかかけずともいい解決方法があるんですね。それは警察のごり押しで始まった駐車違反取締りの民間委託がスタートする以前のように「二輪車など空きスペースに自由に置いておけばいい」に戻ればいいのです。

 ただ、それではまた無秩序に人の迷惑も考えずどこでも勝手に停める阿呆が出てきますから、かつてバイクを停めてもさほど問題が起きなかった空きスペースや公共の空き地に、駐車してもOK、邪魔にならないスペース、として分かるようにバイクサイズの白線枠を引いてくれるだけでいいんです。市区町村役場が管理しているちょっとした空スペースはいくらでもあるはず。民間の施設でも遊んでいる場所(かつて二輪車を停めていたような所)に白線で枠をひいてもらうよう要請してもらえればより可ですね。なんならマンション等の建築時に自転車だけでなく、二輪車の駐車スペースを確保しなさいと、行政指導していただくとよりベターですね。

 そういえば、自転車は自動車税も、軽自動車税も対象外。一切税金払っていないのに専用路線を確保しましょうだの、付帯施設に駐輪場を作りましょうだのと、インフラ整備による利益を享受しているのが不思議ですよね。お上にテラ銭巻き上げられている二輪ライダーとしてはなんだか割り切れない話。話が飛びました。

 駐車スペースを作るといっても勘違いされては困ります。駐車用の装置を設置して、料金徴収機を立てて、そしてその料金を回収する人員を確保して…などと何でもかんでも金取るシステムにしようとするから、結局は無駄な費用がかかる、手間がかかる、環境負担になる、挙げ句の果てはそんな面倒くさいことは出来ない、で対策を放棄してしまう。

 とにかく白線で枠を書くだけでいいんですね、それ以外のことは一切やらない。そこで起きた事故、盗難などは当然自己責任。かつては、そんな枠など存在しなくても、問題なく円滑に生活できていたのですから。

 警察に格好の口実を与えてしまった阿呆どもの好き勝手駐車は、これまで以上にキメ細かく、厳しく取り締まればいい。そんな「非常識駐車の二輪は見つけ次第通報する運動」なんてものがあれば、普通に常識のある二輪ライダーなら喜んで協力するはず。社会生活を送る上での常識が理解できないような人間には厳しい躾が必要です。

 警察の発想は’70年代からまったく変わっていないんですね。ごくごく一部の珍走族を締め出すためにすべての二輪車を通行止めにしてしまった、世界的に見ても例を見ない恥ずかしい過去の所行を顧みることなく、またもや一部の非常識なライダーの迷惑駐車を無くすために二輪車全体を都市部から締め出してしまった。

 蛇足ながら付け加えると、地方税の滞納残高(累計、平成22年度決算)を取り上げておくと、軽自動車税は、市町村税の滞納残高14,468億円の中の、その他、809億円(5.6%)にまとめられてしまっていたので実態は分からなかったが、自動車税の方は、道府県税5,824億円の内、565億円で9.7%を占めているという。また、平成22年度決算の現年分地方税滞納額及び徴収率は、道府県税の自動車税が16,177億円でその内98.5%を徴収、市町村税の軽自動車税が1,796億円、内96.8%の徴収率となっている。基本的に、この国の一般市民は善良なのです。

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 前回のコラムで取り上げた警察関連の事件、不祥事、その後も一向に無くならず。引き続き交通関連の話題をダイジェストで掲載しておこう。

 まずは期待を裏切らない愛知県警さん。交通事故死者数のワースト記録に名を連ねる常連さんだが、なんと、その交通事故統計を改竄してランキングを下げていたというニュース。2月8日付けの日刊スポーツによれば、1991年から2011年までの交通事故統計を再調査したところ、新たに’03年と’04年、そして’10年で、実は北海道などを抜き愛知県がワーストワンだったことが判明してしまったという。実際には最多記録は’12年まで10年連続で愛知県がダントツトップだったのだ。しかもこの事実は、国家公安委員会に匿名通報があって再調査が行われ初めて判明したというのだから呆れる。

 2月15日、高知地裁は、赤信号を無視したとして交通違反の罪に問われた女性に無罪の判決を下した。取り締まられた軽自動車の女性は「黄色信号だった」と主張したもののパトカーの中から見ていた(よく見かけるケースで、隠れて違反するのを待ちかまえて取り締まったのでしょうか)警察官の証言に「パトカー内から停止線の位置を確認するのはほぼ不可能。停止線を確認したとする警察官の主張は事実に反する憶測の可能性が高い」と裁判長。

 これは警察の不祥事というわけではないが。2月15日大阪府枚方市の市道で軽乗用車が電柱間に張られた針金に引っ掛かった。本当に死者が出てしまうまで、どれだけ危険な行為をしているかが分からないのでしょうか。たまたまバイクでなくて良かったというだけ。例によって警察は「殺人未遂容疑で捜査」と発表しているらしいが、マスコミ向けのリップサービスだけじゃなく、本当に犯人を検挙して殺人未遂で立件して欲しい。一向にそれが出来ていないから類似の事件が多発している。2月23日には大阪府東大阪市でも起きた。こちらは通りがかりの男性が気がつき110番したので被害は何もなかったが。とにかく類似の犯罪を起こさせないためには、犯人を殺人未遂で検挙することが必要だろう。

 2月24日、北海道は足寄町の国道で一時停止を無視した乗用車をパトカーが発見。逃走したため追尾、約80km離れた北見市内で沿道の雪に突っ込んで停止。さらにバールを振り回すなどしたらしいが、運転席から引きずり出し、手錠をかけたところで男が意識を失っていることに気づいたという。男はその後病院で死亡が確認された。死因の徹底的な調査が必要だろう。それと、やはり取締り時にはドライブレコーダーのような自動録画装置が不可欠なのではないでしょうか。

 最後は懲りないライダーの話題。3月8日、大阪府警はバイクで制限速度を40km以上超えるスピード違反をしたとして箕面市の男性を道交法違反容疑で現行犯逮捕した。一般的な速度違反自動監視装置(オービス)では後部にしかナンバーのないバイクは、取り締まれないのをいいことに、この男はなんと37回も速度違反を繰り返していたという。業を煮やした大阪府警が、ならば人間様の出番と、捜査員約10人を張り込ませ、オービスが作動するのを確認後バイクを停止させ検挙したという。警察官も人の子、ライダーも人の子、ですかね。なんともお粗末さま。(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。 


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