湯めぐりみしゅら~ん


第30湯 福井県湯巡りツーリング(前編)

 アームズマガジン300号記念となった2013年6月号の進行が終わり、ホッとする間もなく、5月下旬に発売する別冊の制作進行がゴールデンウィーク前から始まった。ゴールデンウィークと言えば、毎年恒例となっている「春の集会」が開催される。今年は5月2日、開催場所は石川県小松市の「ふれあい健康広場」となった。もし参加するとなれば、距離的に2泊3日の日程にしないとツライ。ゴールデンウィークの真っ只中、別冊の進行を抱えて3日間何も仕事しなくて大丈夫なのか…悶々としながらゴールデンウィーク前半が終わり、ついに出発予定日の5月1日前日になってしまった。

 とりあえずここまでやるべきことはやった。あとは帰京してからやればいい。行かないより、行ったほうがまし! ということで、出発前日に行く決心を固めた。そそくさと準備を整え、午前5時ちょうどに自宅を出発。第1日目のルートは、東名高速を走り、米原JCTで北陸自動車道へ進み、敦賀ICで下車。そこから国道476号線に沿って進み、福井市の近くでキャンプするというものだ。敦賀までは約500kmの道のりだ。

 ゴールデンウィーク中とはいえ平日なので道は空いている。往きは旧東名高速を使って静岡県、愛知県を通過。午前10時をまたぐ頃には北陸自動車道に進み、途中神田PAで見つけた「味噌カツバーガー」で腹を満たして、敦賀ICに到着したの午前11時30分を過ぎたところ、所要時間約7時間、ほぼ予定通りだった。

 敦賀ICを降りて、国道476号線に向かおうとした時、左に見える山裾に大きなガラス張りの建物が目に入った。どうやら事前に調べておいた敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」のようだ。早速向かおうと案内看板に従って行くが、なかなか辿り着かない。同じ道を行ったり来たりしながら、ようやく温泉に到着した。

 敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」は福井県敦賀市高野にある日帰り温泉施設だ。北陸自動車道敦賀ICの近くにあり、細長い外観は船をイメージしたものだという。開放感のある玄関から中に入り、受付で入湯料1000円を払う。建物は3階建てで、浴室は3階にある。浴室は明るく広々としており、窓からは遠くの景色が一望できる。お湯は北陸トンネルを掘削した時に湧出したものだという。

 身体を洗い、まずは内風呂に入る。お湯は無色透明で熱め。かなりヌルスベ感がある。冷え切った身体に血の気が巡り、じわじわと回復していく。温まったところで露天風呂へ。内風呂同様、露天風呂も広い。こちらはそれほどヌルスベ感はないが、気持ちいい。5月とはいえ、肌に当たる風は予想以上に冷たい。再び内風呂に戻って案内表示を見ると、内風呂と露天風呂で泉質が異なるという。同じ施設内で泉質が異なる温泉が供されているところは珍しく、なかなか贅沢な温泉だ。

 すっかり身体が温まったところで、いよいよ福井県の内陸部に進撃する。福井県は学生時代に訪れたことがあるが、バイクでは初めてだ。敦賀きらめき温泉を出て向かった先は今庄365温泉「やすらぎ」だ。国道476号線を走ること約20分、シーズンが終わり、閑散としたスキー場内にあった。

 今庄365温泉「やすらぎ」は福井県南条郡南越前町にある日帰り入浴施設だ。今庄365スキー場内にあり、建物が山小屋風なのも納得がいく。スキーシーズン中は大賑わいしているのだろう。受付で入湯料500円を払おうとしたところ、モンベルクラブの会員だと100円引きという表示を見て、すかさずモンベルクラブのカードを提示して入湯料を400円にしてもらった。

 山小屋風の落ち着いた雰囲気の浴室はそれほど大きくないが、窓からの景色は良好。雪が積もっていたらさぞかし気持ちいいだろう。ほどよい肌触りと湯温のお湯は、無色透明のアルカリ性単純硫黄泉。露天風呂は階段を降りたところにあり、屋根つきなので雪が降る日でも大丈夫。雪見の温泉はさぞかし最高だろう。

 温泉を出ると、先ほどから気になっていた雨が降り始めた。夕方まで持ちこたえてほしいと願っていたが無理だった。雨の中、国道476号線を走って国道417号線沿いにある渓流温泉「冠荘」を目指そうとしたところ、痛恨のミスルート! 一見すると国道476号線から国道417号線に抜けられそうだが、地図をよく見ると途中で道は途切れていた。10kmほど走った道を戻り、国道365号線に出て、県道202号線沿いの花はす温泉「そまやま」に向かうことに。ここで約1時間30分ほどロスしてしまい、身体、装備ともにすっかり濡れてしまった。

 花はす温泉「そまやま」は福井県南条郡南越前町にある宿泊も可能な温泉施設だ。入湯料は550円。館内は地元の方が多く訪れており、憩いの場のような雰囲気。浴室は広く、まずは内湯に入る。お湯はややにおいのする無色透明。続けて露天風呂に入ってみようと外に出ると、露天風呂にお湯が提供されていなかった。湯量は少なくはないが、何かトラブルでもあったのだろうか。ちょっと残念だった。

 花はす温泉「そまやま」を出ると、時間はすでに午後3時40分を回っていた。そろそろキャンプ地を決めたいところだが、あと1湯入りたかった。先ほど向かおうとした渓流温泉「冠荘」に向かうことにした。次第に本降りになる雨の中、国道365号線から国道8号線に出てから県道201号線に進み、国道417号線に入り、渓流温泉「冠荘」に到着した。

 渓流温泉「冠荘」は福井県と岐阜県の県境に近い福井県今立郡池田町にある日帰り入浴も可能な温泉宿だ。入湯料は500円。綺麗な浴室の大きな窓からは森に囲まれた景色が伺える。内風呂には湯煙漂う肌触りの優しい無色透明のお湯がたっぷり注がれており、リラックスできる。露天風呂はそれほど大きくないが、周囲の情景に合わせた風情ある作り。雨空なのが残念だ。

 ゆっくりと浸りたいところだったが、今夜のキャンプ地を見つけるべく渓流温泉「冠荘」を出発。国道417号線を戻って国道476号線を福井市方面に走り、県道2号線に進み、県道192号線沿いにあるかわだ温泉「ラポーセかわだ」の近くにある「尾花キャンプ場」を目指した。県道192号線を走っていると、キャンプ場の案内看板が出てきたので、とりあえずキャンプ場に行ってテントを張ってから温泉に行こうと思った。

 キャンプ場に向かう林道は険しく、落ちた枝や葉で覆われた道は、雨が降っているせいか走りにくい。コケないように注意しながら林道を約5kmほど登ったところにキャンプ場があった。場内に入ると誰もおらず(こんな天候なら当たり前か…)、場内にある看板を見ると5月1日から利用可能と書いてあったが、県道192号線に戻って他を探すのはツライので、利用させてもらうことにした。後で調べたところ、尾花キャンプ場は福井県鯖江市尾花にある公営キャンプ場で、利用する際は電話で申し込むとのこと。使用料は100円と格安となっている。場内には500年以上の歴史がある禅定神社がある。

 まずは神社にお参りしてから、雨が降っていることもあり、炊事場にある長椅子を片付け、そこにテントを張った。雨は降り止まず、おまけに気温も低く、足元は靴下までびしょ濡れ。もう来た道を戻って温泉に入る気力はなかった。夕食を食べ、テントに入って横になると、炊事場がコンクリート打ちっぱなしのためか、思いのほか冷える。エアマットをしっかり膨らませて、エアマットから身体が出ないように気をつけながら寝た。

 翌朝、雨は止み、日が差してきた。結局その日は誰も訪れず、私ひとりだった。2日目は集会場所に午後2時までに到着すればいいので、福井県を代表する温泉である芦原(あわら)温泉と三国温泉に入り、景勝地「東尋坊」を見学してから向かうことにした。午前8時30分キャンプ場を出発。前日入ろうとしたかわだ温泉「ラポーセかわだ」は諦め、県道192号線、県道18号線を通って国道8号線に入り、県道9号線を進んで芦原温泉に午前10時30分に到着。町内にある共同浴場「セントピアあわら」に入ることにした。

「セントピアあわら」は福井県あわら市温泉にある共同浴場だ。外観は共同浴場には見えないほど立派で、以前入湯した加賀温泉や山中温泉の「総湯」に似ている。まさに温泉街の威信をかけて作った建物と言っても過言ではない。入湯料は500円。浴室は「地の湯」と「天の湯」に分かれており、この日の男湯は「天の湯」だった。青空が見える浴室は開放感に溢れており、良質な無色透明のお湯とあいまってとても気持ちいい。朝風呂にはもってこいだ。

 芦原温泉を満喫したところで、芦原温泉から30分ほど走ったところにある「東尋坊」に向かった。「東尋坊」と言えば荒々しい断崖が織り成す国内有数の景勝地だ。沿道にはお土産店がたくさん軒を連ねており、当日も多くの観光客が訪れていた。実際に行ってみると、まさにテレビや雑誌で見る風景そのもの。吹きつける風も強く、場所によっては足がすくんでしまう。

 観光客気分を満喫したところで、東尋坊から県道7号線を福井市方面に数km走ったところにある三国温泉「ゆあぽーと」に向かった。三国温泉「ゆあぽーと」は福井県坂井市三国町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円。海岸沿いに建っており、周囲には遮る建物などはない。内湯だけなのが残念だが、大きな窓からは日本海を一望できる。無色透明のキリッとした熱めのお湯に浸かりながら、日本海を眺めてくつろいだ。

 三国温泉「ゆあぽーと」に入ったところで午後1時を過ぎていた。天気は前日と違って快晴。湯巡りはいったん終えて集会場所に向かうことにした。(次回に続く)

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北陸自動車道神田PAで見つけた「味噌カツバーガー」。PAの場所は岐阜だが、ボリュームもあって新鮮な味わいだった。1個280円なり
北陸自動車道神田PAで見つけた「味噌カツバーガー」。PAの場所は岐阜だが、ボリュームもあって新鮮な味わいだった。1個280円なり。


第1湯目の敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」。まるで船のような建物は敦賀ICから見える。泉質の異なる2つのお湯が楽しめるのが魅力
第1湯目の敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」。まるで船のような建物は敦賀ICから見える。泉質の異なる2つのお湯が楽しめるのが魅力。


山小屋風の建物の今庄365スキー場内にある今庄365温泉「やすらぎ」。雪が積もっているスキーシーズンなら、さらに風情豊かな場所なのだろう
山小屋風の建物の今庄365スキー場内にある今庄365温泉「やすらぎ」。雪が積もっているスキーシーズンなら、さらに風情豊かな場所なのだろう。


痛恨のミスルートをした後に訪れた花はす温泉「そまやま」。露天風呂がやっていなかったのがとても残念だった
痛恨のミスルートをした後に訪れた花はす温泉「そまやま」。露天風呂がやっていなかったのがとても残念だった。


山間に佇む渓流温泉「冠荘」。日帰り入浴ではもったいないと感じさせる優しいお湯と落ち着いた内風呂・露天風呂が特徴だ
山間に佇む渓流温泉「冠荘」。日帰り入浴ではもったいないと感じさせる優しいお湯と落ち着いた内風呂・露天風呂が特徴だ。


1日目の宿泊地となった尾花キャンプ場。標高約683m、県道192号線から険しい林道を5kmほど走った林間にひっそりと設けられている
1日目の宿泊地となった尾花キャンプ場。標高約683m、県道192号線から険しい林道を5kmほど走った林間にひっそりと設けられている。


雨をしのぐために、止むを得ず炊事場の中にテントを張った。この日はゴールデンウィークとは思えないほど寒かった…
雨をしのぐために、止むを得ず炊事場の中にテントを張った。この日はゴールデンウィークとは思えないほど寒かった…。


福井県を代表する名湯・芦原温泉の共同浴場「セントピアあわら」。美術館のような作りとなっており、まさに街自慢の温泉だ
福井県を代表する名湯・芦原温泉の共同浴場「セントピアあわら」。美術館のような作りとなっており、まさに街自慢の温泉だ。


複雑な岩が織り成す雄大な景色が広がる「東尋坊」。これでもっと荒れた天気だったら、○○サスペンスドラマのクライマックスシーンのようだ
複雑な岩が織り成す雄大な景色が広がる「東尋坊」。これでもっと荒れた天気だったら、○○サスペンスドラマのクライマックスシーンのようだ。


「東尋坊」の沿道にある海鮮処「磨呂」というお店で食べた「かにそば」。越前そばに大きなカニがドンと入っている。お値段1580円なり
「東尋坊」の沿道にある海鮮処「磨呂」というお店で食べた「かにそば」。越前そばに大きなカニがドンと入っている。お値段1580円なり。


「東尋坊」から程近いところにある三国温泉「ゆあぽーと」。浴室からは日本海が眺められる。露天風呂があればもっとよかったのに…
「東尋坊」から程近いところにある三国温泉「ゆあぽーと」。浴室からは日本海が眺められる。露天風呂があればもっとよかったのに…。


ブースカ的温泉評価
●敦賀きらめき温泉「リラ・ポート」 ★★★★
2つの泉質のお湯が楽しめるお得な温泉。
●今庄365温泉「やすらぎ」 ★★★★★
スキー場内にある山小屋風の落ち着いた温泉。
●花はす温泉「そまやま」 ★★★★★
露天風呂の再開を願う地元密着の温泉。
●渓流温泉「冠荘」 ★★★★★
優しいお湯が満たされている山間の出湯。
●芦原温泉「セントピアあわら」 ★★★★
名湯が満喫できる街自慢の共同浴場。
●三国温泉「ゆあぽーと」 ★★★★★
夕陽を眺めてみたい眺望良好の湯船。

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は571湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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