ホンダ
こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/XrDu-JPt8MI」で直接ご覧ください。 「New FUNdamental Concept」400Xの試乗会で記念撮影。写真中央、開発責任者の飯塚直さんと開発スタッフの皆さん。
ホンダ 400X「Feel the adventure form」

 先に乗った多くの部品を共有するCB400F、CBR400Rのつもりで走りだして、少々面食らってしまった。これが、まるで別のバイクになっているから。

 400Xは、クロスオーバーコンセプトというデュアルパーパス的な利点、ライダーの姿勢に無理の無い、背筋がしゃんと直立に近づいた楽なポジションと、路面状況や交通の状況が分かりやすい見晴らしの良さを得るために、アップハンドルのグリップ位置は高めで、シートも他より10mm高くなっている。

 それでも身長170cm、体重68kgの私が乗って、シートの高さが気になることはない。両足裏がべったりとはいかないけれど、しっかり体重を預けられる部分は接地するし、兄貴分のNC700Xに比べても小さい。コンパクトだ。これだけで、「やっぱり400じゃないとね」という理由は大いにあると思った。

 乗って感じた他との違いは、まずエンジン。CBR400RもCB400Fも1万回転に近づいても力が持続していく、スロットルを積極的に絞ってばんばん回して遊べる楽しさがあった。ワインディングにその感覚を持ったまま突入したら、高回転まで回してもやや重々しくて、夏の青空のような爽快な突き抜け感はあまりない。期待していたことが空振りになると、人間ってネガティブな心持ちになるもので、正直最初は戸惑った。でも、それじゃあ乗り方が違うというのにすぐに気がついた。回さなくていいのね。

 高回転域をある程度犠牲にして低中速重視になっている設定で、エンジン回転数が4千回転から6千回転の範囲に納まったくらいで、2気筒の鼓動を感じながらトコトコトコっと走ると気持ちいい。だからCBR400FとCB400Fより1段高いギアで走るとハマる。こうすることでエンジンの魅力がはっきりと出てきた。

 試乗会のあった河口湖近くから、東富士五湖道路にのり、須走ICでおりて、冬季規制が解除されたふじあざみラインのワインディングを堪能しながらどんどん登った。平均勾配約10°、最大勾配は22°と、なかなかの激坂を、各ギアで回転を上まで引っ張らない、基本“ひとつ上のギア”のまま、するするとまだまだ肌寒い富士山須走口の5合目まで登り切ってしまった。平地で普通に乗って体感するより、実際の中速域は厚みがある。

 他との違いはハンドリングにもある。ひと言で表現すればより安定志向。キャスター角が他の2台より寝かされて(25°30′→25°55′)、トレール量も増えている(102mm→105mm)。この違いがはっきりと出ていた。エンジンの時と同じようにワインディングでフルブレーキングから倒しこみ、向きを変えてスロットルを開けていく、一連の動作を一所懸命したら、CBR400RとCB400Fが持っていたシャープさがちょっと影を潜めていた。意地悪な言い方をすれば、ちょっとまったり。

 これもエンジンと同じで、そういう乗り方をするキャラクターではないと分かったら、すんなりと受け入れられた。頑張って回転を上げずに、リアタイヤとフロントタイヤは同期するようにゆるやかに車体がバンクして、す~っとコーナーを抜けていく。速度の速い、遅いでタイヤへの荷重が変わってくるが、どんな速度でもコーナーリングの安定感は良好。いろんな場面、いろんな技量のライダーに対し許容が大きいだろう。ブレーキの効きとタッチも必要十分。

「400Xのデザインキーワードは“Feel the adventure form”であり、“非日常”を求めるライフスタイル重視のアクティブなライダーに向けた、新たな“クロスオーバーコンセプト”の提案です。V4エンジンを搭載したクロスオーバーシリーズのトップエンドモデル“Crosstourer”のDNAを受け継ぎ、冒険心を掻き立てる力強さと、都会的で洗練されたデザインは、軽量コンパクトな車体とマッチして、クラスレスとも言える扱いやすさで独自のコンセプトを実現しました」(ホンダのプレスリリースより)
オールラウンドな走りを楽しめるクロスオーバーコンセプト。17リットル入りの燃料タンクで長距離をこなし、オフ走行でも飛び石からエンジンを保護するアンダーカバーなども装備。

 アドベンチャーモデルのような成り立ちとルックスをしているので、若干フカフカした火山灰土に子供のこぶし大くらいの石が混ざったダート道も走ってみた。このオンロード向けタイヤのままでも走破するにはまず問題はない。キャスター角の変更が効いていて、オンロードモデルでオフを走った時につきまとうフロントの重さに起因する不安定さは顕著ではなくなっていた。

 飛ばして走ったり、もっと荒れた林道を走るのは最初から想定していない。試乗前の技術説明でも「ツーリング中にふいに現れたダートでもこなせる」というような話をしていた。あくまでも、オンロード専用モデルより楽にこなせるというレベル。オフロードファンには物足りないかもしれないけれど、それはないものねだり。ユーザーのほとんどがオンロードオンリーで使うという事実があり、ダート道を狙って走るモデルではない。日本で使うオールラウンダーとしてこの設定に大きな不満はないもの。

 ハンドルグリップの位置が他より車体センターから離れていて、キャスターが寝たことで、唐突なギャップに対して手のひらにキックバックがほんの少しだけくるけれど、不安定になることはない。日常の使い方で走りに影響するようなことはまったくないと思える。

 個人的には、せっかくここまで作りこんだならば、ステップ位置をもう少し前方、具体的には50mmほど前方に持ってきてくれるとありがたい。長距離を乗るなら足首とヒザの曲りがキツくない、より椅子に座るようなポジションが好きだ。スポーツ走行するには今のままでもいいけれど、ここまで述べた通りそういうキャラではない。

 とにかく、明確な差別化を体感して3兄弟の中で一番力の入った作りこみを感じた。どのモデルでもツーリングは当然ながら可能だが、距離と時間が長くなるなら、間違いなくこの400Xを選ぶ。400のコンパクトさからくる扱いやすさと、安定した走り、ウインドプロテクションを高めたスクリーンなど、快適な旅路が想像できてニンマリ。

「良く出来ているけれど強い個性はない」という表現が使われることがあるけれど、これはそんなことはない。ルックスも含め立派に個性的な魅力を持っているではないか。

ライダーの身長は170cm。
ウインドスクリーンは、最適な防風効果を得るために高さを40mmアジャストできる機能を備え、高速ツーリングや長距離ツーリング時に快適な走行が可能。 アンバーレンズを採用したデジタルメーターで集中表示。CBR400RやCB400Fよりも若干高い位置に配して視線の移動量を軽減している CBR400R、CB400Fのセパレートタイプシートと異なり、400Xではライディングポジションの自由度を高める前後一体式のシートを採用。
マフラーデザインは太さと長さのバランスにこだわり、車体のバンク角とライダーの足元の居住性、エンジンのパフォーマンスと十分な消音性能を実現したという。 新開発の水冷直列2気筒DOHC4バルブエンジンはCBR400R、CB400Fと共通。ただし車種ごとの性格に合わせて微妙なセッティングの違いを行っている。 CBR400RとCB400Fでは共通の車体ディメンションが与えられたが、400Xではシート高やフロントのキャスター角(25°30′に対して25°55′)、トレール(102mmに対して105mm)が異なる。
ライディングポジションは、より自然体でのライディングが楽しめるように自由度の高さを重要視し、都市部から郊外までのさまざまなシチュエーションでの使用状況を考慮したまさにクロスオーバーコンセプト。
■400X 主要諸元
●エンジン:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ●ボア×ストローク:67.0×56.6mm●総排気量:399cm3●圧縮比:11.0●最高出力:34kW(46PS)/9,500rpm●最大トルク:37.0N・m(3.8kg-m)/7,500rpm●燃料タンク容量:17リットル●燃料供給装置:フューエルインジェクション(PGM-FI)●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:ダイヤモンドタイプ
●全長×全幅×全高:2,085×830×1,235mm●軸距離:1,410mm●シート高:795mm●最低地上高:145mm●重量:192kg〈194kg〉●サスペンション:前テレスコピック、後スイングアーム(プロリンク)●ブレーキ:前シングルディスク、後シングルディスク●タイヤ:前120/70ZR17M/C 58W、後160/60ZR17M/C 69W
※〈 〉内はABS仕様。
カラー設定は3色。パールサンビームホワイト、マットガンパウダーブラックメタリック、キャンディープロミネンスレッド。679,350円。ABS仕様は728,700円。
400Xのユーティリティを拡張するホンダモーターサイクルジャパンのカスタマイズパーツを装着したコンセプトモデル。400クラスとは思えない車格に。 詳細はホンダモーターサイクルジャパンのページへ。http://www.honda.co.jp/bike-customize/


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