Honda FORZA Si
こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/1ebURyGQHjE」で直接ご覧ください。 このフォルツァ Si試乗の翌日には某外車のオフモデル試乗会に参加、そして8月上旬にはホンダのモトクロッサーCRFシリーズ、そしてY社さんのYZシリーズ試乗会に。怪我しないようほどほどにオフを楽しんでください、濱矢文夫先生。

 このFORZA Siは何が新しくて、何が違うのか。

 ビッグスクーターにあまり興味がない人は現行FORZA Zとルックスが違うことにも気が付かないかもしれない。

 一時期のスクーターブームが落ち着いて、軽二輪のスクーター、いわゆるビッグスクーターの新車市場は一番売れた2005年の4分の1ほどになっている。原付一種より排気量が大きいスクーターを一度でも所有したことがある人、現在所有している人は分かっていると思うが、移動の手段としてこれほど便利な乗り物はない。

 オートマチックで気軽に乗れ、シートが広く居住性が良く、なんてったってトランクにヘルメットや荷物が入れられる。この事実はブームが去っても揺るぎようのない優れたポイント。

 FORZAは誕生から、エンジンや車体の進化と共に、ハンドシフト操作が出来るSマチック、スマートカードキー、オーディオなどと装備が充実してきた。それらは今もスクーターを趣味的なアイテムとして魅力的なものにしている。ただ、その結果、販売価格が高くなってきたのも事実だ。

 FORZA Siは、もう一度原点に立ち返るように、Sマチック、スマートカードキー、オーディオなどの豪華な装備を装着せず、走りを高めながらスクーターの基本的な利便性、快適性を追求したモデル。さらに欧州、タイ、北米、韓国、マレーシア、オーストラリアで販売するSH300i(300cc)と基本を共有。これによって価格は、FORZA Zの 70万円~80万円ほどの価格に比べ、大幅に安価な53万9千700円、ABS付きで58万9千50円になった。

ライダーの身長は170cm。シート高715mm。全体にスリム化が図られたボディスタイルながら収納に関しては従来モデルとほとんど変わらず、フルフェイスヘルメット2個が収納可能。

 FORZA Zと比べて10kgくらい軽くなったのは、押したり、跨ったからも分かる。歩道の段差などにぶつけないようにレッグスペースの前方がくびれていることも含め引き締まったコンパクトさを感じた。シート高はFORZA Zと比べ5mm高いけれど、細くなっている前方に股を持ってくれば、身長170cm、体重68kgで、カカトまでベタ着きとまではいかないが、不安のないレベルで足は届いた。

 SH300iベースのOHC4バルブの単気筒エンジンは 、スーっとVベルト式無段変速らしくスムーズに発進したら、グッとトルクが立ち上がって速度が伸びていく。低回転からのピックアップと車速の上がり方にストレスは感じなかった。

 固い部分と柔らかい部分を調和させたフレームで必要な剛性を出しながらしなやかさを狙ったという。エンジンの振動を車体に伝えないようにマウント部にオレオリンクを採用したのも大きなトピック。確かに、高回転になっても体に伝わってくる振動は小さい。

 フロントに14インチホイールを採用したこともあって、コーナーリングでの安定感は良好。あまり向いてないと思われるような深いバンク角でも、乱れることなく安定していて、前タイヤの接地感をしっかり感じながら向きが変わる。’80年代前半からバイクに乗ってきた者として、この進化は感慨深い。普段スクーターに乗っていないから、余計にそう思う。何を伝えたいかと言うと、バイクばかりでスクーターの経験がない人でも、大きな違和感がなく、怖い思いもせずに扱えるだろうということ。タイトなワインディングを走っていて楽しさすら感じた。ここでも軽くなった車体が効いている。ブレーキの効きも必要にして十分。

 個人的には、速度を出しながら段差を乗り越えたり、強いショックが加わった時、リアサスペンションがもう少しストロークの奥に行った場面のレベルが上がると、走りの次元が一段上がると思った。語弊の無いように説明すると、このクラスのスクーターとして高いレベルなのは間違いない。ただ、もうひとつの武器としてあったらライバルを大きく出し抜けるのではないかと。そう期待したくなる素質があった。

 ホンダには同じクラスに好調な売れ行きのPCX150。軽量コンパクトなFAZE。豪華装備で趣味的なFORZA Z。それに走りを高めながらベーシックな利便性と高い快適性を持ったこのFORZA Siが加わって強力な布陣が完成したワケだ。
(試乗:濱矢文夫)

ヘッドライトは35/35WのH1バルブを2灯配置。効率的な光学設計によるマルチリフレクターにより、夜間の快適な走行を可能とする配光としている。フロントウインカーには21/5Wバルブを採用。5Wのポジションランプを常時点灯。 視認性の高い5連メーターを採用。高級感とスポーティさを演出。豊富な情報量を誇る液晶表示部、インジケーターなどを機能的に配置。
シート形状は前端を適度に絞り込んだ形状とすることで良好な足つき性を確保。シート高は715mmに設定。

リアウインカーは21Vのアンバーバルブ、テールランプは5Wのバルブを2個、ストップランプは16Vバルブを2個採用。テールランプを面発光させることにより重厚で高級感を醸し出すデザインとしたという。
メインキー部両側にはシートの開閉やリッドの開閉を操作するスイッチ類を設けている。フロントインナーボックスの左はキー付きで、ETCなどを収納。また、アクセサリーソケットを装備。 フォルツァ Si開発担当の皆さん。
フォルツァ Siのパワープラントは、海外で実績のあるSH300iのコンパクトなエンジンをベースに、低燃費でかつ扱いやすいワイドレシオのVベルト式無段変速機構(Vマチック)と組み合わせて搭載している。SH300iからの変更点としては燃焼効率の向上がメインで、燃焼室形状の変更、カムプロフィールの変更、バルブタイミングの見直し、燃焼室の中央で点火させるためオフセットシリンダーを採用(エキゾースト側に5mmオフセット)、シリンダーヘッドにローラーロッカーアームを採用、エンジンオイルの潤滑をより促進するため、ピストンには条痕形状を最適化、などの改良を行っている。フレームは、従来モデルのガセットプレートを多用したフレームからヘッドパイプから直線的に伸ばしたアッパーチューブとロアチューブにリアフレーム、ダウンチューブとシンプルな構造に。エンジンを“オレオリンク”と呼ばれるリンクシステムを介してフレームにマウントすることで不快な振動などが伝わりにくくそれでいて外乱に強い足周りとしている(こちらもSH300iで採用されている)。足周りではフロントにインナーチューブ径φ35mm、サスストローク110mmの正立テレスコピックサス、リアのアクスルストロークは98mm。ブレーキはフロントφ256mm、リアφ240mmのシングルディスク。ABS仕様もラインナップ。ちなみに一足早く海外でデビューしたNSS300Forzaは、新型フォルツァ Siの兄弟モデルとなる。
■フォルツァ Si 主要諸元
■型式:JBK-MF12■全長×全幅×全高:2,165×755×1,185mm■ホイールベース:1,545mm■最低地上高:135mm■シート高:715mm■燃料消費率:41.0km/L(60km/h定地走行テスト値)■最小回転半径:2.4m■車両重量:192〈194〉kg■燃料タンク容量:11L■エンジン種類:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒■総排気量:248cm3■ボア×ストローク:68.0×68.5mm■圧縮比:10.2■燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置PGM-FI■点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火■始動方式:セルフ式■最高出力:17kw[23PS]/7,500rpm■最大トルク:23N・m[2.3kgf・m]/6,000rpm■変速機形式:無段変速式(Vマチック)■フレーム形式:バックボーン■ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク■タイヤ(前・後):120/70-14M/C 55P・140/70-13M/C 61P■車体色:パールヒマラヤズホワイト、グローイングレッド、アステロイドブラックメタリック■メーカー希望小売価格:539,700円〈589,050円〉
※〈 〉内はABS仕様のデータ、製造事業者:Thai Honda Manufacturing Co.,Ltd.、製造国:タイ、輸入事業者:本田技研工業株式会社


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