湯めぐりみしゅら~ん


第33湯 三重県湯巡りツーリング(後編)

 三重県湯巡りツーリング2日目。朝方は霧が出ていたが、出発する頃になるとすっかり晴れ渡っていた。本日第1湯目に予定している大山田温泉「さるびの」の開店時間が午前10時00分なので、時間調整を兼ねて伊賀市内の中心部にある「伊賀流忍者博物館」に行ってみることにした。キャンプ場から10分ほどで博物館がある上野公園に到着。まだ午前9時前なので観光客は少ない。

 昨日から地図や標識を見ると「伊賀」「上野」の両方の言葉が出てくる。さらに上野公園の近くにある駅は伊賀鉄道「上野市駅」、でも住所は伊賀市…県外者からするとややこしい。「伊賀」という名称のほうが、漫画「忍者ハットリくん」の影響からか広く浸透しているため、住所は伊賀市になったのか…おそらく政治的な事情があるのだろう。

 伊賀流忍者博物館に向かう前に、園内にある伊賀上野城(駐車場でもらった地図を見ると「上野城」と書いてあり、ここにも複雑な事情があるのだろう…)を見学。天守閣からは伊賀市内が一望できる。城内をゆっくり巡ったところで、いよいよお目当ての伊賀流忍者博物館に行ってみることにした。

 園内を進んでいくと、茅葺屋根の古民家風の建物が見えてきた。入館料700円を払って入場。古民家風の建物が、実は忍者屋敷だった。入口には「出た〜っ!」とばかりに黒装束に身をまとった忍者たちがお出迎え。もちろんピンクの装束をまとった可愛らしいくの一もいる。入口からは忍者さんが屋敷内を案内するという。私の回りはすべて家族連れ。不惑のおっさんは、家族の付き添いのようなふりをして後に付いていく。

 部屋に入ると、忍者さんが早速カラクリの説明を始めた。部屋のところどころに仕掛けられたカラクリは、テレビなどで観たことがあるものが多いが、実際に仕掛けを可動させると思わず「お〜っ!」と唸ってしまう。壁が回転したり、壁の奥に隠れるスペースがあったり、屋根から隠し階段が出てきたり、廊下に刀が隠してあったり…周りにいる子供たちより感動している東京から来たおっさんがひとり。しかも仕掛けの構造がかなり合理的で感心させられる。

 さらに「じゃあ、このカラクリをお見せします。えいっ…あれ、(ガチャガチャ…)ちょっと待って下さいね…(ほかの忍者さんにヘルプされながら)あっ、と、こういう感じでカラクリが動くんですよ!」となかなか人間味のある(実戦ではアウトだろうが)忍者さんの解説は面白い。20分ほどのカラクリ解説後は、場内にある忍術体験館と忍者伝承館に向かい、手裏剣やまきびしなどのよく知られている忍者の道具や歴史を拝見。もちろん売店でお土産もゲット。今回は時間がなかったので忍者実演ショー(入館料とは別に300円必要)は観なかったが、おそらく期待を裏切ることはないだろう。

 入口まで戻ると、見学者がいっぱい訪れていた。早めに入館して正解だった。今回訪れた伊賀流忍者博物館は、かつて訪れた佐渡島の佐渡金山よりも面白かった。伊賀市に来たら是非、伊賀流忍者博物館に立ち寄ってほしい。

 大満足したところで、ようやく本日の第1湯である大山田温泉「さるびの」に向かうことに。伊賀流忍者博物館から国道163号線を津市方面に向かって進み、県道668号線に入り、ほどなくして大山田温泉「さるびの」があった。駐車場は広く、玄関先には地場産の商品を売っている出店が立ち並んでいた。

 大山田温泉「さるびの」は三重県伊賀市上阿波にある日帰り入浴施設だ。入湯料は800円。脱衣場から浴室(けさんの湯)に向かい、身体を流した後、内湯に浸かる。お湯はヌルスベ感があって気持ちいい。朝風呂にピッタリ。露天風呂に行ってみると、湯船は大きな桶型をしており、石釜みたいなサウナが横に並んでいた。しばし露天風呂に入った後、さっきとは違うドアから浴室に戻ってみると階段があった。昇っていくと内風呂があり、こちらは源泉かけ流しとのこと。その構造はまるで忍者屋敷のようだ。源泉はかなりヌルスベ感が強くて気持ちよかった。

 大山田温泉「さるびの」は第1湯目としてはかなり上出来だった。ここからは津市方面に向けて走っていく。国道163号線を津市方面に進み、榊原温泉方面への道が見えたところで榊原温泉に向かい、ふれあいの里「湯の瀬」を目指した。途中道に迷ったものの、何とか辿り着いた。

 榊原温泉ふれあいの里「湯の瀬」は三重県津市榊原町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は530円。浴室はそれほど大きくはないものの、設備は充実している。お湯は無色透明でちょっとヌルスベ感がある。露天風呂は木製の樽型。木枠が泉質のためかやや滑るので入るのにコツがいるが、風情ある感じだ。

 外に出るとポツポツと雨が降ってきた。そんな大降りにはなりそうにないが、自分らしいツーリングになってきた。時間は午後0時を過ぎていたが、第3湯目に選んだ榊原温泉からそれほど離れていない一志温泉「やすらぎの湯」に向かうことにした。県道28号線を国道165号線方面に進み、国道165号線を過ぎて県道15号線に入り、一志中学校のある道を左折したところに目的地があった。

 一志温泉「やすらぎの湯」は三重県津市一志町にある日帰り入浴施設だ。入湯料は550円。貸しタオルが2枚ついてくる。今回入った三重県の温泉はタオルつき(無料か貸し出し)が多く、連湯する旅人としてはありがたい。まずは内風呂から。お湯は無色透明で、このお湯も少しヌルスベ感がある。内風呂から見える露天風呂は庭園風の立派な作り。露天風呂に入っていると、自分が出てきたドアとは違う方向から人が出てくる。そちらに行ってみると、さきほどは違う内風呂があった。どうやらこの温泉の浴室は、露天風呂を囲むようにコの字型になっているようだ。

 ちょっと変わった構造をしている一志温泉に入ったところで、時間は午後1時を過ぎていた。ここまで3湯入っており、いい調子だ。一志温泉を出て、県道15号線を久居方面に向かい、国道165号線に入ったところのコンビニで昼食。県道118号線を津市方面に進んで一志温泉から約1時間ほど走った田園地帯の中に、第4湯目に選んだ「磨洞温泉涼風荘・湯処森乃泉」があった。

 「磨洞温泉涼風荘・湯処森乃泉」は三重県津市半田にある日帰り入浴もやっている温泉旅館だ。入湯料は700円。静かな館内を進んだ奥に男湯(高虎の湯)があった。浴室はそれほど大きくはなく、半露天風呂のような浴室はワイルドな作り。お湯はツルツルとした肌触りの無色透明。熱めで、じわじわと身体が温まってくる。湯上り後に成分表を見たところ、源泉名は白山温泉と美里温泉の2つが使われており、貸切で洞窟風呂があるという。

 熱めのお湯で汗がなかなか引かないが、そろそろ帰京を考えたルート設定をしなければならない。津市を過ぎて鈴鹿市、亀山市方面に向かい、そこで2湯ほど入った後、伊勢自動車道を通って帰京することにした。ひとまず鈴鹿市にある「鈴鹿さつき温泉」を目指すことにした。県道118号線から国道23号線に入って鈴鹿市方面に向かい、途中亀山市に向かう国道306号線方面に進む。国道1号線を鈴鹿サーキットのある四日市市方面に進み、県道637号線に入り、磨洞温泉から1時間ほどで目的地に到着した。

 「鈴鹿さつき温泉」は三重県鈴鹿市津賀町にある日帰り入浴施設だ。近くには鈴鹿サーキットがあり、鈴鹿サーキットに行ったついでに立ち寄れる。ここはJA鈴鹿が経営しているとのことで駐車場は広く、地元の方が多く訪れていた。入湯料は500円。内風呂、露天風呂ともにそれほど広くないものの、綺麗な和風作りで、湯船にはお湯がたっぷり注がれている。お湯はやや緑がかっており、52.4℃の熱めの源泉は適温に調節されている。

 JA鈴鹿が経営しているだけあって庶民的な雰囲気の「鈴鹿さつき温泉」に入ったところで時間は午後3時30分。ここまで5湯入って、あと1湯入れば585湯になる。ならば「入るでしょ!!」ということで、ツーリングマップルをにらめっこして四日市市の近くにある湯の山温泉に目標を定めた。

 鈴鹿さつき温泉から国道306号線に戻って四日市市方面に進み、国道477号線に入って湯の山温泉方面に進んで到着。鈴鹿さつき温泉から約1時間ほどかかった。現場に到着してみると、湯の山温泉は温泉旅館がほとんどで、共同浴場や日帰り入浴施設がない。時間が午後5時近かったため、どこも日帰り入浴の受付が終了していた。万事休すと思ったところ、湯の山温泉の入口寄りにあったホテルウェルネスというホテルが日帰り入浴が午後7時まで受付可能だと判明。早速行ってみることにした。

 「ホテルウェルネス鈴鹿路」は三重県三重郡菰野町にある温泉ホテルだ。近鉄・湯の山温泉駅から徒歩で10分のところにある。入湯料は600円。館内、浴室ともにホテルらしく整備が行き届いている。内風呂、露天風呂ともに無色透明のソフトな肌触りのお湯が注がれている。成分表を見ると新潟の山温泉とあるが、湯の山温泉の源泉のひとつなのだろう。露天風呂に入って三重県で過ごした2日間を振り返りながら旅を締めくくった。

 ホテルを出ると時間は午後6時30分近くになっていた。あとは東京に向けて走るのみ。四日市インターから東名阪自動車道に乗り、御在所サービスエリアで夕食。四日市ジャンクションから伊勢湾岸自動車道に向かい、東名高速道路を走り、途中強烈な睡魔に襲われて、またもや事故すれすれの運転をしながら東京に戻った。

 ミスルートや計画性のなさが露呈した今回のツーリング。それでも終わってみれば「楽しかったね!」となってしまい、反省点はうやむやになり、いつになっても進歩せずに歳だけを重ねていく。まあそんなことをかしこまって言いつつ、何とか年内に600湯達成するべく、次のツーリングの計画を立てる今日この頃なのだ。

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伊賀市内の上野公園内に聳える伊賀上野城。園内、場内ともに整備が行き届いており、天守閣からは伊賀市内を一望できる
伊賀市内の上野公園内に聳える伊賀上野城。園内、場内ともに整備が行き届いており、天守閣からは伊賀市内を一望できる。


2日目のお楽しみだった伊賀流忍者博物館。奥に見える茅葺屋根の古民家風の建物が忍者屋敷だ。内部は仕掛けでいっぱい
2日目のお楽しみだった伊賀流忍者博物館。奥に見える茅葺屋根の古民家風の建物が忍者屋敷だ。内部は仕掛けでいっぱい。


黒装束の忍者さん(?)が部屋の仕掛けを丁寧に教えてくれる。写真はよく見聞きする壁に仕掛けられた回転扉を解説しているところ
黒装束の忍者さん(?)が部屋の仕掛けを丁寧に教えてくれる。写真はよく見聞きする壁に仕掛けられた回転扉を解説しているところ。


忍者伝承館に展示してあった「忍術の樹」。服部半蔵、猿飛佐助以外に、よく見ると宮本武蔵や武田信玄、真田幸村などの名前もある。忍術はなかなか奥が深い…
忍者伝承館に展示してあった「忍術の樹」。服部半蔵、猿飛佐助以外に、よく見ると宮本武蔵や武田信玄、真田幸村などの名前もある。忍術はなかなか奥が深い…。


玄関前に出店が立ち並ぶ大山田温泉「さるびの」。かなりのヌルスベ源泉が楽しめる二重構造の浴室はさながら忍者屋敷のようだ
玄関前に出店が立ち並ぶ大山田温泉「さるびの」。かなりのヌルスベ源泉が楽しめる二重構造の浴室はさながら忍者屋敷のようだ。


清少納言にゆかりがあるという榊原温泉の日帰り入浴施設「湯の瀬」。都会の喧騒を忘れさせてくれるような静かな田園地帯にある
清少納言にゆかりがあるという榊原温泉の日帰り入浴施設「湯の瀬」。都会の喧騒を忘れさせてくれるような静かな田園地帯にある。


露天風呂をコの字で囲むように浴室が設けられている一志温泉「やすらぎの湯」。お湯も良質で湯船も広く、なかなかくつろげる
露天風呂をコの字で囲むように浴室が設けられている一志温泉「やすらぎの湯」。お湯も良質で湯船も広く、なかなかくつろげる。


磨洞温泉涼風荘・湯処森乃泉の湯船は半露天風呂タイプ。浴室はワイルドな作りで、無色透明のお湯はちょっと熱め
磨洞温泉涼風荘・湯処森乃泉の湯船は半露天風呂タイプ。浴室はワイルドな作りで、無色透明のお湯はちょっと熱め。


JA鈴鹿が経営している鈴鹿さつき温泉。湯温が高めの源泉は良質。駐車場も広く、地元の方に愛されている感じがした温泉だった
JA鈴鹿が経営している鈴鹿さつき温泉。湯温が高めの源泉は良質。駐車場も広く、地元の方に愛されている感じがした温泉だった。


捨てる神あれば拾う神あり…万事休すだった湯の山温泉で、ホテルウェルネス鈴鹿路に立ち寄れた時はそんな気分だった
捨てる神あれば拾う神あり…万事休すだった湯の山温泉で、ホテルウェルネス鈴鹿路に立ち寄れた時はそんな気分だった。


東名阪自動車道・御在所サービスエリアで見つけた津ギョーザ(写真左、1個200円)と御在所焼き(480円)。津ギョーザはなかなかのボリュームだった<br />
東名阪自動車道・御在所サービスエリアで見つけた津ギョーザ(写真左、1個200円)と御在所焼き(480円)。津ギョーザはなかなかのボリュームだった。


ブースカ的温泉評価
●大山田温泉「さるびの」 ★★★★
二重構造のユニークな浴室で源泉が味わえる。
●榊原温泉「湯の瀬」★★★() ★★★★★
津市から近い静かな田園地帯に建つ日帰り温泉。
●一志温泉「やすらぎの湯」★★★★() ★★★★
内風呂、露天風呂ともに広々とした日帰り温泉。
●磨洞温泉「涼風荘・湯処森乃泉」 ★★★★★
ユニークな湯船と貸切洞窟風呂が魅力的。
●鈴鹿さつき温泉 ★★★★★
鈴鹿サーキットに近い地元密着型の日帰り温泉。
●湯の山温泉「ホテルウェルネス鈴鹿路」 ★★★★★
湯の山温泉の入口にある手軽に入浴できる温泉ホテル。

毛野ブースカ毛野ブースカ
トイガンとミリタリーの最新情報誌『月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は585湯。湯巡りツーリングの相棒はスズキ・ジェベル250XC。ちなみにマイカーもスズキのエスクードというスズキスト。


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