MBHCC E-1
 西村 章

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スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社、はては欧州のバイク誌等にも幅広くMotoGP関連記事を寄稿するジャーナリスト。訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマンスライディングテクニック』等。第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した『最後の王者 MotoGPライダー・青山博一の軌跡』は小学館から絶賛発売中(1680円)。
twitterアカウントは@akyranishimura

第71回 第12戦 イギリスGP Don't stop me now

 6戦ぶりの勝利である。
 第6戦カタルーニャGP以来の優勝、しかもMotoGPルーキーのマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の後塵を拝するレースが続いただけに、ラスト数周の激しいバトルを0.081秒差で制した今回の勝利に、「自分の人生で最高のレースのひとつ」「感無量のレース、感無量の勝利」とよろこびを露わにするのも当然だろう。

 土曜の予選では「自分のレースキャリアのなかでも屈指の予選ラップ」をマークしてポールポジションを確信した直後に、マルケスがそのタイムを上回ってPPを奪取されていた。それだけに、決勝レース終盤の厳しいバトルを凌ぎきった勝ち方がなおさら、ここ数戦で溜めに溜めていたストレスをきれいに解消し、さぞや溜飲の下がる思いだったにちがいない。

#99
「ブレーキングがもう少しよくなれば、もっと戦いやすくなる」とレース後に。

 今回の優勝で25ポイントを加算したものの、2位で20ポイントを得たマルケスとの差は39点。シーズンはまだ6戦を残すとはいえ、かなりマルケスに有利な状況になっているのも事実ではある。
 今回のレース前にロレンソは「計算上ではチャンピオン争いはまだ終わっていないけれども、じっさいにはかなり難しい」と語っていたが、今回の優勝後も「自分たちの戦闘力は高いけれども、チャンピオンはかなり遠ざかってる。ほとんど決まっているようなものなので、バイクの改善に集中して、勝てるように努力を続けるだけ」と、その見方は基本的に変化がない。
 ロレンソ、マルケスの背後で3位チェッカーを受けたダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)は、ランキング2番手につけているものの、マルケスの20ポイント加算に対して自らは16ポイント獲得で、さらに4点差が広がった。現在の両者の点差は、30ポイント。計算上は、ペドロサが残り6戦で全勝し、マルケスが2位に入り続ければ、ようやくふたりの点数が同点になる。悲願の王座獲得へ向け、スーパールーキーのマルケスにどう対処していくのかということについては、「戦略はない。毎戦コースに出て、ただ全力で勝利を目指すだけ。長い間勝っていないから、まず勝たないと」と語るペドロサだが、なにしろ相手は、午前に転倒して左肩を脱臼した状態でも、鎮痛剤を投与しながらレースを走って優勝争いのバトルを繰り広げ、2位に入ってしまうような<化け物>である。この先6戦の展開がどのようになるかは神のみぞ知るとはいえ、なまなかなことではマルケスの勢いに歯止めをかけるのは難しい、というのも、おそらく衆目の一致するところではないだろうか。
「今日のレースはとても面白かった。バトルもすごく愉しめたよ(ニコニコ)」というあの天真爛漫な<魔のクスクス笑い>は、今後も続くものと思われる。

#26 #93
「前ふたりに追いつくのにタイヤを消耗し、終盤はついていけなかった」 朝のウォームアップで黄旗無視により、ペナルティポイント2点。

       ※      ※       ※

 Moto2では、中上貴晶がこの三連戦で三連続の2位表彰台を獲得した。とくに前回のチェコGPと今回のイギリスGPは連続してポールポジションを獲得し、初優勝も期待された。両レースとも最終ラップまでトップグループで激しい順位争いを繰り広げたものの、いずれも、優勝まではわずかに届かなかった。
 ただ、レース内容で見ると、同じ2位でも一戦ごとに走りの内容は向上していることを中上自身も認めている。

#30
表彰台の常連となりつつある。頂点まで、あとひと押し。

「またまた2位で、勝てないのはすごく悔しいけど、ベストを尽くしてやりきって、負けた、というのは今回ですね。インディは終盤で堪えられなかったのが情けないし、ブルノは勝負を仕掛けるのが遅くてもうちょっとがんばれたんじゃないかという内容だった。今回は前半区間が遅くて後半区間で挽回する辛い展開だったけど、そんな状況のなかでもレースを楽しめたし、バトルもやりきった。もうこれ以上は走れない、という内容での2位でした。やるべき事はやったレースでしたが、今日の決勝は地元のスコット(・レディング)がすごく速くて、お手上げ状態でした。まだ優勝できてない自分にはいったい何が足りないのか、それをしっかり明確にして、次のレースに向けてがんばります」
 というわけで、次戦は中上のチーム、イタルトランス・レーシングチームの地元、イタリアはサンマリノGPである。そしてこの地はなにより、バレンティーノ・ロッシの自宅からほど近い、彼にとっては文字どおりのホームGP。「ヤマハ時代にはほとんど毎年表彰台に上がってきたし、ドゥカティ時代にも一度上がっている」(2008:優勝、2009:優勝、2010:3位、2012年:2位)と本人も語る<必勝の地>である。マルケス、ペドロサ、ロレンソのトップスリーを相手にどのような激しい戦いが繰り広げられるのか、じつに興味津々でありますね。では、また。

#46 #35 #04
レース序盤のペースアップが相変わらず課題。 ホームGPで表彰台獲得ならず。ざんねーん。 レース最終盤に転倒リタイア。踏まれたり蹴られたり。
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お約束のおねいさんシリーズイギリスGP編。
■第12戦  イギリスGP

9月1日 シルバーストーン・サーキット 晴
順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #99 Jorge Lorenzo Yamaha Factory Racing YAMAHA
2 #93 Marc Marquez Repsol Honda Team HONDA
3 #26 Dani Pedrosa Repsol Honda Team HONDA
4 #46 Valentino Rossi Yamaha Factory Racing YAMAHA
5 #19 Alvaro Bautista Go & Fun Honda Gresini HONDA
6 #6 Stefan Bradl LCR Honda MotoGP HONDA
7 #35 Cal Crutchlow Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
8 #69 Nicky Hayden Ducati Team DUCATI
9 #38 Bradley Smith Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
10 #41 Aleix Espargaro Power Electronics Aspar ART(CRT)
11 #29 Andrea Iannone Pramac Racing Team DUCATI
12 #51 Michele Pirro Ducati Test Team DUCATI
13 #8 Hector Barbera Avintia Blusens FTR(CRT)
14 #5 Colin Edwards NGM Mobile Forward Racing FTR-Kawasaki(CRT)
15 #9 Danilo Petrucci Came IodaRacing Project Ioda-Suter(CRT)
16 #14 Randy De Puniet Power Electronics Aspar ART(CRT)
17 #71 Claudio Corti NGM Mobile Forward Racing FTR Kawasaki(CRT)
18 #7 青山博一 Avintia Blusens FTR(CRT)
19 #70 Michael Laverty Paul Bird Motorsport PBM(CRT)
20 #68 Yonny Hernandez Paul Bird Motorsport ART(CRT)
21 #67 Bryan Staring Go & Fun Honda Gresini FTR-HONDA(CRT)
RT #4 Andrea Dovizioso Ducati Team DUCATI
RT #52 Lukas Pesek Came IodaRacing Project IODA-SUTER(CRT)
※第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した西村 章さんの著書「最後の王者 MotoGPライダー 青山博一の軌跡」(小学館 1680円)は好評発売中。西村さんの発刊記念インタビューも引き続き掲載中です。どうぞご覧ください。

※話題の書籍「IL CAPOLAVORO」の日本語版「バレンティーノ・ロッシ 使命〜最速最強のストーリー〜」(ウィック・ビジュアル・ビューロウ 1995円)は西村さんが翻訳を担当。ヤマハ移籍、常勝、そしてドゥカティへの電撃移籍の舞台裏などバレンティーノ・ロッシファンならずとも必見。好評発売中です。

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