おやびん道

それぞれの道には、それぞれの風土、気候、環境などを積み重ねた表情がある。それはまた人生にも似ている。道は人生、道の数だけ物語がある。野口おやびんが走って来た幾多の道を、想い出話と共に語ろうか。

第35回
磐梯山周辺の道 Part1


会津若松市を中心とする旧会津藩を舞台にした大河ドラマで、昨今何かと注目されている会津地方。そのシンボリックなお山が磐梯山で、その周辺にはグッドロードが数多く散在している。今回はそのなかから裏磐梯地域の有料道路=磐梯吾妻レークライン/磐梯山ゴールドライン、そして、無料化されて久しい西吾妻スカイバレー=山形県道・福島県道2号線、国道459・檜原ビューラインについて書くことにする。すべて走って楽しい山岳ワインディングだ。



MAP

 磐梯山周辺を初めて訪れたのはもう40年近く前だ。1975年のGWに3泊4日のソロツーリングに出かけ、2日目の夕刻、猪苗代町の民宿に飛び込んだ。急な客にも係らず、宿の人たちは暖かく接してくれて、郷土料理の夕食もじつにうまかった。数年後、当時付き合っていた女性とバイク2台で東北ツーリングした際も再訪し、お世話になった。初めてのときも2度目の時も、国道49号線を走ったことは記憶しているが、裏磐梯の有料道路は多分、乗り入れなかったと思う。夜学生で昼間は働いていたが、ひとりアパート暮らしで、生活費は無駄にできず、ツーリングに出かけても節約しなければならなかった。

4本の道のなかで、最初に走ったのは2003年から無料開放された旧西吾妻スカイバレー=県道2号線だった。20代の前半、彼女と猪苗代を訪れた時と前後する頃、山形県内にいる友人のところに、同じ定時制高校時代のバイク仲間(当時は実家の福島県いわき市に戻っていた)とツーリングに行き、そのとき旧西吾妻スカイバレーを利用した。裏磐梯から山形の米沢に行くには最短の道で、その先の山形県西置賜郡にある友人宅にいくのに便利だったから、有料だけどたまにはいいか、とスカイバレーを選択したのである。

その後、これまでの30数年の間、仕事や個人的ツーリングで何度も走った。直近で行くと、3、4年前、息子と東北ツーリングした帰りに通った(それまでとは逆に山形側から裏磐梯に抜けた)。距離は17、18kmで、檜原湖東岸の早稲沢から山形県側の白布温泉あたりまでが有料道路区間だったように思う。料金所がどの辺にあったのか忘れたが、福島県側の東鉢山七曲りと呼ばれている区間はタイトな急カーブが続き勾配もきつい。上って行くと途中数カ所に駐車場があって眺望がよく、檜原湖や磐梯山北鹿が見渡せる。

白布峠から山形県側もワインディングだが、それほどきつい九十九折はなく、短いストレートも時々現れる。途中にいくつか駐車場もあって、俺は休憩したことはないが、不動滝ほか、見どころも点在しているようだ。そういえば、もう10年くらい経つだろうか、数台のバイクでツーリング試乗に出かけ、裏磐梯からスカイバレーを抜けて白布温泉の旅館に泊まったことがあったなあ…。



西吾妻スカイバレー


西吾妻スカイバレー
まさにつづら折りが続く東鉢山七曲がり※以下すべて写真はすべてイメージです。●撮影-依田 麗

 磐梯山ゴールドラインや磐梯吾妻レークラインは‘80年代後半から’00年代前半にかけて、仕事(ツーリング試乗など)でよく利用した。前者は裏磐梯高原と会津を結ぶ観光有料道路で、距離は17kmくらい。裏磐梯側は山懐を縫う感じで、南の会津側は眺望に優れる区間もあり、展望駐車場から猪苗代湖を眺めることもできる。そういえば、そんな駐車場の近くで走り写真を撮ったことも3、4回ある。全線ワインディングで、コーナリングが楽しめる。バイクの通行料金は530円だったと思うが、2年前の震災の後、無料開放されている。

 後者のレークラインは、小野川湖畔の国道459号線と裏磐梯東側の国道115号線を結ぶ観光有料道路で、115号線からの一部区間は県道70号線となっており、料金所から料金所までの距離は10数km。小野川湖、秋元湖、檜原湖をところどころで眺められる林間のワインディングで、中高速コーナーも適当にあってスポーティな走りを楽しむことができる。中ほどにある中津川渓谷は裏磐梯随一の紅葉の名所と言われている。渓谷の近くに広めの駐車場付きのレストハウスがあって、そこで撮影したこともある。バイクの通行料金は630円だったが、ゴールドライン同様に震災後、無料開放されている。

 中津川渓谷だけではなく、裏磐梯地域は秋になればいずこも錦繍に彩られ、美しい景色を楽しむことができる。震災のあった11年秋、少しでも、と思って裏磐梯に友人と息子と3人でツーリングに出かけ、檜原湖岸の宿で一泊。翌日は檜原湖を一回りして帰路に着いたが、湖岸道路の両脇は見事な紅葉で、お天気もよく、とても楽しい旅となった。なお、かつて有料だった3本の観光道路は、冬季は閉鎖される。また、時期によっては夜間通行止めになる。



磐梯山ゴールドライン


桧原湖
名峰磐梯山の麓を行くゴールドライン。四季折々の楽しみが。 裏磐梯の中心が檜原湖。今回紹介した道もここから四方に分かれる形に。

 国道459号線・檜原ビューラインは、喜多方と裏磐梯を結ぶ道で、距離は約16km。昔、何度か通り、直近では6、7年前、ひとりでツーリングしたとき、たまには違うルートで裏磐梯に、と思い、利用した。また、檜原湖周辺に仕事で訪れた際、喜多方側に数km走ったところのコーナーで車走り写真を撮った。3桁国道だけに交通量は少なく、それでいて道幅は充分で路面もいい。傍らを川が流れている区間もあって、気持ちよくコーナリングできる中速コーナーが続く。穴場的なグッドロード、といっていいだろう。

 裏磐梯は高原なので夏でも過ごしやすいし、秋は前述のように紅葉が堪能できる。距離的にも東京や関東圏からは1泊コースで無理せず回って来られるので、今後もツーリングしたいと思う。皆さんも出かけてみては?



野口眞一

野口眞一
1956年、7月生まれ。バイクに乗って40数年、バイク雑誌関係の仕事に就いて30数年。若い頃からバイクの旅が好きで、日本各地を走り回ってきた。所有するバイクは今となっては滅多に見ないトライアンフのサンダーバード(1996年型の水冷並列3気筒)で、16年乗り続けている。長く乗っている割には走行距離は少なめで7万km。

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