順逆無一文

第37回『道路標識』


 国交省が道路標識の英語表記を、これまでのローマ字表記から英語の略語表記に改めると発表した。一部マスコミ報道でも取り上げていたところがあるのでご存知の方も多いだろう。その概要は以下の通り。


道路案内標識改善方針(案)
 
1.目的

 観光立国実現に向け、道路案内標識が外国人旅行者にも分かりやすいものとなるよう、英語表記の改善を推進する。
 
2.点検及び改善方法等
 
(1)対象地域
 先行的な取組として、「外国人旅行者の受入環境整備事業」における戦略拠点及び地方拠点(別紙)を対象地域とする。
 なお、当該拠点以外の地域において、意欲の高い地域についても取組むものとする。
 
(2)点検及び改善方法
 道路案内標識の英語表記に当たっては、対象地域内の道路案内標識の表示内容を点検し、必要に応じ改善を実施するものとする。表示内容の点検対象及び改善内容等については、道路標識適正化委員会(※注)において調整の上、決定するものとし、調整に際しては、地方運輸局企画観光部、各地方公共団体の観光部局及び観光関係団体等とも連携する。
 
(※注)各都道府県に設置され、関係する道路管理者が参画し、標識等の表示内容等を検討する委員会
 
(3)英語表記の基準(案)
 道路案内標識に記載する一般名詞については、別表の基準(案)を参考に、英語表記をする。
 なお、別表に定めのない一般名詞を表記する場合又は別表の基準(案)によらない英語表記をする場合は、あらかじめ国土交通省道路局企画課へ意見照会をするものとする。
 


 外国人どころか、日本人でも長い地名などをローマ字表記されては、瞬時に分かるとは思えませんな。読み終わらないうちに通り過ぎてしまったなどということになっているのでは。日本人は、漢字が読めない、何と読むのか迷う、という時ぐらいしかローマ字の部分など読まないですから、誰も気にもとめなかったということでしょう。
 
 で、気になってみたので注意して見てみると、都内の高速などはすでに英語の略語表記が普通に使われていましたが、ちょっと探せば読み切れそうもないのがいくらでもありました。「TOUKYOU TOKKYO KYOKAKYOKUMAE」なんてのは冗談ですが、ローマ字表記も併用しておけば、外国人さんたちにもちょっとは役立つだろう、という判断だったのでしょう。でも我々が外国に行った時のことを考えれば分かりますよね。現地の発音をそのまま音(おん)で表記してくれていたとしても、ほとんど役に立たない。文字そのものが分からないような外国で英語表記を見つけたときのホッとする感じってありますよね。主義主張、功罪いろいろあるとは思いますが、なんだかんだ言ってもやはり頼りになるのは英語です。
 
 ただ、何でもかんでも一律に英語表記にすれば、ってものでもなさそうです。たとえば「日本橋」。英語表記では機械的に「Nihon Brg.」になるのでしょうけど。なんだか一気に風情が無くなってしまいますね。「大山」、こちらは「Mt. Oho」でしょうか。同じ漢字で「Mt. Dai」もあります。「Mt. Daisen」だと「大山山」になってしまいますし。「江戸川橋」は「Edo Riv. Brg.」、「江戸川橋通り」「Edo Riv. Brg. Blvd.」。こんな時はやはり英語の処理方法に準じて「Edogawa Brg.」、「Edogawabash Blvd.」となるのでしょうか。
 
 ちなみにこの英語表記の導入、「訪日外国人旅行者の受入環境整備事業」における戦略拠点18拠点、地方拠点31拠点から実施するといいます(要は観光地)。2020年の東京オリンピック向けの対策でもあるんでしょうね。
 
         ※
 
 はてさて、同じ標識の話題でもこちらは困ったちゃん達の話題。
 
 毎度おなじみ千葉県警ですが、なんと公安委員会の承認が無く、法的な効力がない一時停止標識を理由に、2008年の4月から今年の9月までに、169人に青キップ167件、赤キップ(無免許運転を含むですって!)2枚を切っていた、というもの。この期間に“稼いだ”額は約110万円。
 
 いや証拠の残るのが2008年以降、ということなので、それ以前にも取り締まられていた人がいるのだろう。一応書類が残っていない分では、2007年6月から同年12月までということらしいが、県警の対応は「申し出があった場合、免許証のデータから追跡して対応する」となんとも“事件”の当事者らしからぬぬる~い対応。それと2008年1月から3月まで空白の期間があるが、その間は、取締りをしなかったということなのだろうか。
 
 現場は、八千代市米本のT字交差点。2007年の道路改良に伴い標識が移設されたとのことで、その際、本来なら当然ながら事前に公安委員会の承認が必要となったのだが、千葉県警交通指導課の説明によれば「担当の警察官が申請を忘れた可能性なども含めて現在詳細を確認中」とか。
 
 ちなみに道路標識というのは、道路法や高速自動車国道法、道路交通法等に基づいて設置されているもので、今回のような規制標識や指示標識のほとんどは公安委員会が設置(実作業は業者に委託)している(案内標識や警戒標識、そして一部の規制標識の補助標識などは道路管理者が設置、維持している)。
 
 つまり今回は、警察が勝手に移設したととれるわけで、そこら辺のいきさつはきっちり経緯を確認、公開していただく必要がある。
 
 さてもうひとつ、こちらは兵庫県警。こちらも“思いこみ”で、勝手に駐車禁止標識を設置、70人を取り締まり反則金約108万円也を稼いだというもの。“事件”となったのは明石市相生町の市道約360メートル区間。以前は時間制限付きの駐車禁止区間だったのだが、これまた道路の改良工事が行われたと同時に規制を廃止。兵庫県警の元巡査部長(さっさと退官してしまったんですね)がそれを知らずか公安委員会の決裁が降りていると勘違い、終日駐車禁止の標識設置の手続きをしてしまったというもの。
 
 こちらは2011年10月から2013年の9月までに、70人を“犯罪者”に仕立て上げている。兵庫県警のコメントは「違反を取り消し、反則金など計約108万円を返還
する」とのみ。さすが名だたる兵庫県警。
 
 毎日の日課、飯を喰らうがごとくルーチン化して取締るだけの警察関係者には分からないだろうが、善良な市民が違反キップを切られるということの精神負担がどれほどのものか。どうせ認められやしないのだろうが、被害に遭われた方には是非とも精神的慰謝料まできっちり請求していただきたい。自分たちのやっていることがどんなことなのか、しっかり自覚してもらうためにも。
 
 ちなみに千葉の事件では、同交差点で起きた人身事故の捜査の過程で、兵庫の事件は、違反者の書類をチェックしていて判明したのだという。県警という身内単位ではなく、警察庁としてやはりこのような“不祥事”が発生した経緯、背景をきちっと究明し、市民にことの顛末を公表していただく義務があるはず。勘違いや忘れた、のひと言で済むような話じゃない。他人様の落ち度を容赦なく突くのが商売なのだから、ご自分達の落ち度にどう対応するのか、市民は注目しております。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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