おやびん道

それぞれの道には、それぞれの風土、気候、環境などを積み重ねた表情がある。それはまた人生にも似ている。道は人生、道の数だけ物語がある。野口おやびんが走って来た幾多の道を、想い出話と共に語ろうか。

第36回
磐梯山周辺の道 Part.2


前回に続き、今回も磐梯山周辺のグッドロードについて書く。まずは最も標高が高く、距離も長い磐梯吾妻スカイライン。そして、その近くを走っている国道115号線の一部区間。裏磐梯と磐梯熱海をつなぐ県道24号線の一部の母成グリーンライン、の3本だ。それぞれ、異なる雰囲気のワインディングで、景色のよさでいくと磐梯吾妻スカイラインが随一だろう。国道115も土湯峠付近は素晴らしい。グリーンラインも走り応えがあり、峠には戊辰戦争の史跡も。



MAP

 磐梯吾妻スカイラインは裏磐梯東側の土湯峠の料金所~福島市側の高湯料金所までの約29kmの、東北地方でも屈指の山岳観光道路だ。東日本大震災後、少しでも多くの観光客に福島に足を運んでもらおうと、磐梯山周辺の他の有料道路とともに無料開放されているが、それまでは通行料金の高さでも知られた道路で(バイク1150円)、個人的なツーリングで利用したことはなく、25年くらい前に初めて走った時は泊りがけの仕事で福島方面に出かけたときだった。その後もほとんど仕事で4、5回訪れ走っている。

 ただ、直近では、前回にも書いたが、11年秋、3人で裏磐梯に紅葉狩りツーリングしたとき、無料開放されていたこともあって、吾妻小富士の上り口にある浄土平ビジターセンターまで行って引き返した。途中まではあいにくの霧で景色も走りも楽しめなかったが、浄土平手前くらいから晴れて、一切経山と吾妻小富士の美しい山容を拝むことができた。これまで福島市側から入ったのは一度くらいで、ほとんどは土湯峠からだ。国道115号線から県道30号線経由で土湯峠の料金所を過ぎ、先に進むと針葉樹林のワインディングとなる。

 平均標高は1350mで夏でも涼しく、スカイラインの名のとおり眺望に優れ、爽快なライディングが堪能できる。土湯峠の料金所から浄土平まではヘアピンカーブがあったり、ほぼ直線的になったり、コーナリングしやすい中速コーナーが適当に続いたり、と、変化に富んでいる。場所によっては雲を見下ろしながら走れる区間もある(当然、天候次第なのだが)。烏子平付近はもっとも標高が高く、圧巻の景観である。

 多くの観光客は浄土平のビジターセンターに立ち寄り、休憩したり食事を摂ったりで、とっても広い駐車場に車を置いて吾妻小富士に上る人もいる。一切経山の山肌の一部から煙か蒸気が噴出しているのを駐車場から目にしたこともあるが、火山活動は続いているのだ。5月の連休時期だとまだ残雪が多く、気温も低かったりする。これまで、いつも駐車場から吾妻小富士を見上げるだけだったが、今後行ったときには、登ってみたいと思う。

 ビジターセンターを過ぎると道は下りのヘアピンカーブの連続で、荒涼とした「しもふり」と呼ばれる岩原に下ると、道はそのなかをしばらくほぼ直線的に伸びる。路傍に、有毒ガスに注意、と看板が立ててあったりして、しもふり、というより“地獄谷”か“賽の河原”的な風景だ。さらに下るとタイトコーナーの連続になって高湯の料金所に至る。もう10年以上前のことになるが、大所帯で裏磐梯に出かけ、スカイラインで取材した後、高湯温泉の旅館で1泊したこともあったし、思わぬアクシデントに見舞われて閉口したことも思い出す…。

 国道115号線の土湯峠付近は、この道って有料道路なのでは? と勘違いしそうなくらいのいい道で、猪苗代町側から上ると追い越し車線もある2車線の直線区間がしばらく続き、その後、いくつかの超高速コーナーを経て土湯トンネルへ。猪苗代町の若宮というところからトンネルまでの距離は10km弱。トンネルを抜けてからの眺めは素晴らしく、高速コーナーが土湯温泉付近まで続く。道の駅「つちゆ」からの眺望も抜群だから立ち寄って一服するのもいい。20年くらい前、取材で裏磐梯周辺を走り土湯温泉で一泊したこともあった。



磐梯吾妻スカイライン


磐梯吾妻スカイライン


磐梯吾妻スカイライン


磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイラインです。どうですかこの景色。これが無料なんです。ぜひ一度は走ってみてください。現在発売中のミスター・バイクBG11月号巻頭特集で紹介されています。あわせてご覧下さい。
●撮影-鈴木広一郎

 母成グリーンラインは磐越自動車道の磐梯熱海IC近くから裏磐梯に至る県道24号線の有料道路区間=中の沢~熱海線のことで、距離は11km弱。以前はバイク通行料金530円だったが、06年9月から無料開放。この道を初めて走ったのは20数年前で、泊りがけの試乗で磐梯方面に出かけ、乗り入れた。林の中のワインディングを登って行き、駐車場やコーナーで写真を撮った。その後も数度、取材で利用し、私的なツーリングでも何度か走った。

 上り切ると母成峠で、広い駐車場があり、そこでも写真を撮った。母成峠は、かの戊辰戦争の激戦地の一つとなった場所だけに、それを記した大きな石碑が駐車場に建っている。5、6年前の夏、バイク旅の取材で会津地方を巡った時も訪れた。駐車場の石碑だけではなく、その周辺にもかつての激戦を後世に伝える史跡などがあり、それらを見て回って、感慨を覚えた。そういえば忘れていたが、去年の秋に3人で裏磐梯ツーリングしたときも初日はグリーンラインをルートに組み入れた。霧雨のなかでも紅葉がきれいだったっけ…。

 峠を後にして裏磐梯方面に下って行くと、それまでとは変わって高原の針葉樹林のなかを走る直線とコーナーが組み合わされた道となり、数kmで中ノ沢に至る(ちなみに、県道24号線は国道115と接続していて、前記の若宮と中ノ沢は至近距離にある)。2回にわたって磐梯山周辺の道について書いたが、会津地方には今後も訪れるだろうし、いずれの道もまた走ることだろう。



野口眞一

野口眞一
1956年、7月生まれ。バイクに乗って40数年、バイク雑誌関係の仕事に就いて30数年。若い頃からバイクの旅が好きで、日本各地を走り回ってきた。所有するバイクは今となっては滅多に見ないトライアンフのサンダーバード(1996年型の水冷並列3気筒)で、16年乗り続けている。長く乗っている割には走行距離は少なめで7万km。

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