バイクの英語

第36回「ono (Or Nearest Offer)オア ニアリスト オファー」

 物の価値って何だろう。

 最近は何でもかんでも安く提供されて、それはそれでありがたいんだけど、なんだかなーってものも多い。

 本当に大丈夫か? なんて思うことが多いのはクリーニング。何を頼んでも「あ、そんなもんでできちゃうんだ」っていうぐらい安いうえに、行きつけのところは水曜日に行けば半額。それなのに「光熱費が30万円ぐらいかかるのよー」なんておばちゃんが言ってたから、一体どこで稼げてるのか不思議&心配。

 先日行ったカレー屋さんは、インドだかスリランカだかの人たちが6人ぐらいでやってるんだけど、ランチが600円で食べられちゃう。カレー2種と、ちょっとしたタンドリーチキンと、ナンと、サフランライスを少々、デザートのヨーグルトまでついてだよ。会計のときに「夜の部も今月いっぱいは半額ですから」って言うんだからやっぱり「大丈夫?」って思っちゃう。ちゃんと給料でてるのかな?

 牛丼屋に月2回ほど朝ご飯を食べに行くのだけど、メニューにたまごかけごはん朝食ってのがあって、これがなんと200円。ご飯と味噌汁とひじきとたまご。これで200円っていったいどうなのさ! もちろん消費者としてはありがたいし、大きなチェーン店なんだから商品もしっかりしてるでしょう。だけどここまで安いとなんだかコメ農家とかひじき農家(?)とか味噌汁農家(??)に失礼に感じちゃう。っていうか、その卵を産んだニワトリさんに申し訳なくて食べれない。この価格を実現するために様々な材料を買い叩かれている業者がチラついちゃうんだよね。

 これとは逆のパターンで、なんでこれがこんなに高いかなぁ! ってものも多々ある。特にバイク関係のものはそういうものが多く感じるね。趣味のものだから高い値段でも出すでしょ? みたいな心理が透けて見えちゃったりするととってもがっかりする。やけに高いカスタムパーツがバリだらけだったり、穴の位置が絶妙にずれていたりとかね。見た目カッコイイウインカーが、雨が降ったら中に水が入っちゃったりとか、おしゃれなミラーが全然後ろが見えなかったりとか……。こんな品質であの値段!? なんて思うことも少なくない、から、最近ではカスタムなんてしなくなった。純正の品質はやっぱりとても高いし、純正部品は価格に見合った耐久性もちゃんとあるのだもの。

 ウェアもそう。ぱっと見「いいかな」と思ってもよくよく見ると「えぇ? この縫製は…」ってものが結構いい値段したりする。これだったらユニク○の安いダウンの方が品質高くないか? なんて思っちゃうこともあるほど。だからしっかりしたメーカーの革ジャンなんかはあまり高い! って思わない。モノが間違いないし、職人さんが1着1着手縫いしてると思うと、ま、10万円ぐらいしてもしょうがないか、と思える。

 だけどたとえばタイヤなんかね。今はフロント120、リア180の17インチが最も一般的なんて言われてるけどその割には相変わらず高いねぇ!  高性能をうたうのもいいけど、世界中でそんなに本数が出てるんなら廉価版も結構安く作れちゃいそうなものです。オイルもそう。日本は何でもプレミアム志向だけどさ、クルマには量販店オリジナルの安いオイルを入れてる人がワンサカいるんだからバイク用にもそういうのを用意してほしい。「これ入れときゃ純正同等で大丈夫!」ってやつ。

 これはもちろん車両本体でも同じで、何年経ってもすっげー高いバイクがある。プレミアがついちゃったりするとそれもしょうがないでしょう。そういったお金を出す人がいるからそういう値段がつく。だけど機械としての性能や中古車としての整備状況に見合わない値付けを見ると「えー? 本気ですかぁ?」って思っちゃう。逆のパターンでは、とってもいいバイクなのに人気がないからってビックリするほどリーズナブルなのもありますね。こういうのを見るともはや買わなきゃ罪だ! なんて思っちゃう。人気の有り無しでそのバイクの開発や生産につぎ込まれた労力や情熱が計れるわけじゃないからね、機械として、または乗り物としての価値を大幅に下回るような中古車価格設定だと悲しくなる&思わず買ってしまうことも。

 こんな世の中の価値とは別に、消費者の価値観だけで盛り上がるのがネットオークションでしょう。売るのも買うのもけっこう利用するけど、「えぇ? こんなものが?」ってものがいい値段で取引されていたり、「これはイイものだぞー!」と出品したものが全然値段が上がらなかったり。目に見える「物」そのもの価値ではなくて、だれにも見えない「人気」というものが価値を決めてるわけだ。ははーん。

 ネットオークションとは別に雑誌の個人売買欄では最初から値段が決まってる。つい先日も雑誌の個人売買欄から欲しいものを見つけて往復はがきを書いたのだけど、やっぱりモノに対して価格が安かったんだね、たくさんの人から手紙が来たそう。その中でいの一番に現物の確認に行った人が購入を決めちゃったから、すぐに見に行けなかった僕は今回は残念賞。でもネットオークションよりは人情味あふれる感じでよかった。個人売買は一期一会だね、人ともモノとも。

 今回の英語はono。これはOr Nearest Offer、すなわち「もしくは一番近い人」という意味。例えばCB400SFを15万円って出して、買い手が「うーん、13だったら買うのに」という場合、13万円でどう? と払いたい値段を提示していいわけ。そこで14万円を提示した人がいればそっちのほうが当初の値段にNearest(最も近い)だから、そっちに売られていく。逆オークションみたいなもんですね! もちろん、マナーとして「3万円なら買うよ」みたいな無茶な交渉はやめたいところ。そんな人に対応してか、さらにovnoという表記もあります。これはOr Very Nearest Offer、すなわち「もしくはぎりぎりまで近い人」という意味。こう書かれていたら、売り手としては本音では15万円欲しいんです! というイメージですね。だから「12万で!」なんていう交渉は遠慮したい。またはぎりぎりまで交渉OKということだから、14万8540円では? なんて交渉するのもOK。

 オークションと違って人情的に感じるのは、オークションが「いくらまで上がるかなぁシメシメ」というメンタリティー(とはかぎらないけど)なのに対して、こちらは「本音ではこの価格が欲しいけど、買い手あってのことだから、そっちはどのぐらい出したい?」という振れ幅を持たせているから。良いと思うなぁ。

 逆に(逆が多すぎてわからなくなってきたけど)これを応用して、たまごかけごはん朝食の価格設定は200円~としたらどうだろう。安く提供するけど、このメニューを頼む人は基本的にチップを渡す、もしくは募金箱にちょっと入れる、みたいなルールを促す。こんなことを言うと偽善だなんて噛みつきたがる人もいるけど、いいことをするきっかけを作るのは悪いことではないでしょうよ。

 ということで、たまごかけごはん朝食の新しい価格は「200円&tw」(Tips Welcome) チップ歓迎で行きましょう!


筆者 
ロン フィリス

ネットオークションにサビサビのヨシムラマフラーを出したらとんでもない金額になって、これじゃ詐欺だ! と自分で取り消した小心者。以来出品時は必ず即決価格を設定している。不人気なのにいいバイクの筆頭はGPX750Rだと思っている。昔このバイクでレースしていた思い出から、15万円ぐらいで取引されているのを見ると心が締め付けられる。
※例によって写真はイメージです。



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