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第41回
『第186回国会 参議院予算委員会』


 現在ETC車載器の導入をご検討中の方はご注目。
 
 太田昭宏国土交通大臣が、3月19日の参議院予算委員会で、二輪車を対象にETC車載器の普及促進を目的として、5万台を上限に、1台あたり1万5千円の助成を行うと発表した。具体的な助成の方法はまだ決まっていないが、実施時期は今年度中の実施が確定だ。
 
 この決定は、自民党オートバイ議連事務局長でもある三原じゅん子参議院議員への答弁で明らかにしたもので、太田氏へは事前に三原氏からETC助成などの要望が出されていたことに対しての返答というカタチになった。ただ、事前情報では、三原氏は、さらに二輪車の駐車場問題や高速道路料金などの質問も準備していたとのことだったのだが、いわゆるグローバル企業などの“課税逃れ問題”の質疑に時間を割いたため、二輪関係はこのETCの助成問題を取り上げるので精一杯だったという感じだった。
 
 以下、消費税アップの時節柄、税金に対しても気になる答弁内容となっているので、質疑全文を掲載させてもらった。お時間のある方はご参考までに。答弁の内容は動画から取った聞き書きなので正式な議事録でないことをあらかじめご了承下さい。ちなみにETCに関する答弁は一番ラストとなってます。

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参議院
予算委員会
-第1委員会室-
 
○自民党 三原じゅん子参議院議員(自民党オートバイ議連事務局長)の質疑
 
「自由民主党の三原じゅん子です。本日は少し大きなテーマとして、企業と税について問題提起をさせていただき、議論を深めて行けたらと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。この問題を巡っては、グローバル企業による租税回避、平たく言うと課税逃れという問題が以前から指摘されております。課税逃れとは何か、税率や課税する対象などの税制は国ごとに異なります。複数の国をまたいで活動するグローバル企業としては、この国ごとのルールの違いを巧みに利用して納税額を少しでも抑えようとするのです。
 
 イギリスの民間団体“タックスジャスティスネットワーク”の統計によりますと計21兆ドル、なんと2千100兆円にのぼる金融資産が租税回避地に集まっているといいます。アメリカ政府ではこの仕組みを使った“節税”で4千500億ドル、約45兆円もの税収が失われていると推計されています。
 
 記憶に新しいところでは、コーヒーチェーン大手のスターバックスが、そのイギリス法人が過去3年間に4億ポンド、約600億円の売り上げがありながらですね法人税をほとんど納めていなかったと報じられて、消費者団体などからは不買運動を起こされたりしておりました。また、アップルはですね、極めて複雑なスキームを作ってまでして税金を不等に低く抑えているとして、CEOが米国上院の公聴会に呼び出されたりしております。
 
 ま、その他のグローバル企業も多かれ少なかれ同じような手法で課税逃れを行っていると言われています。そして、私たちにとって身近な企業としてアマゾンがありますが、こちらも同様です。日本法人であるアマゾンジャパン、アマゾン・ドット・シーオー・ドット・ジェイピーは、日本でのシステム運営と顧客サービスを担当しているにすぎないのであって、販売を行っているわけではない。販売しているのは、あくまでもアメリカ法人であるから、法人税はアメリカに支払うというものです。これは、アマゾンの領収書でも確認することが出来ます。
 
 簡単に言えばですね、販売会社はあくまでもアメリカ法人であり、アマゾン・ドット・シーオー・ドット・ジェイピーは、商標、ブランドに過ぎない。だからアマゾン・ドット・シーオー・ドット・ジェイピーでいくら買ってもそれは通しているだけであって実際はアメリカ法人から買って配送などを日本法人が行っているという仕組みだから法人税はアメリカに払っているということなんです。
 
 国税庁に伺います。アマゾンの我が国での売り上げと納税額を教えてください。」
 
 
○愛知治郎財務副大臣の答弁
 
「アマゾンの日本における売上額と納税額について質問がありましたけど、申し訳ありません、個別の事項についてはお答えを差し控えさせて頂きたいと存じます」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「はい、あの、いつも個別企業の数字というのがなかなか出ないと言うご答弁のようでありますけど、ま、はたしてそれでどうやって国会の場で税制の議論を深めていけるのかなというのは、個人的にはちょっと疑問に思うところでございます。
 
 アマゾンについてはですね私も日頃から“便利で安くて早い”ということで良く利用してきましたけれども、ま、政治家としてですね、この問題を掘り下げて考える中で、自分の行いがとても恥ずかしいなと思うようになりました。ま、言ってみればですね、この“便利で安くて早い”にはやはり大きな落とし穴がございます。我が国の政府に納税がなされないと言うことによって巡り巡って、我が国の国家財政基盤が大きく揺るがされることになって、そのツケはですね、結局私たち日本の納税者、国民に回ってくるんです。納税を回避するようなこうしたグローバル企業は、国民の皆さんの税金で整備された道路や、橋や、トンネル、こういった諸々のインフラを税を納めることなく、いわばただ乗りする形で利用して商売を行っているわけであります。
 
 ま、ここまでの話は法人所得税の話でありますが、ここからは、4月から税率が8%に上がる消費税の話に移りたいと思います。民間シンクタンクの調査によれば、我が国でインターネットの広告やネットで配信される音楽や電子書籍などを巡り、外国企業に対して消費税を課税できないため、2012年には年間約250億円の税収が失われたと見込まれているようです。
 
 調査によりますと最も大きいのがネット広告で、グーグルなど外国企業の国内での売り上げ関係で133億円あまりの税収が失われました。次いでネット上で顧客のデータを保管するサービスで74億円あまり、音楽ソフトの配信で11億円あまり、電子書籍でも9億円近い税収が失われたと推計されております。ま、この額は取引の拡大に伴って年々大きくなっていっていることは言うまでもございません。本日はその中でもですねインターネットでダウンロードする電子書籍や音楽配信などについての問題を提起させていただきたいと思います。
 
 消費税において外国企業は課税の対象になっていないため、日本国内での取引であっても電子書籍や音楽配信などを販売したのがアマゾンのような外国企業であれば消費税を課税することができません。一方、我が国の老舗の書店であります紀伊国屋の電子書籍を販売サイトしている“キノッピー”のようにきちんと消費税を納税して下さっている事業者もいることは大いに強調しておきたいと思います。
 
 そこで、麻生大臣、私が問いたいのはですね、日本国内の消費者に同じ商品を販売しながら方や租税回避を、方やまじめに納税する、商売においてですね8%の価格差は決して小さくありません。これで公平な競争環境が提供されているといえるのでしょうか。こういうことを放置しておけばですね、私は時間の問題で、悪貨が良貨を駆逐することになるのではないかなと、このように思っております。麻生財務大臣、安倍政権としてこうした動きを許しておいてもよろしいとお思いでしょうか、是非お聞かせ頂きたいと思います。」
 
 
○麻生財務大臣の答弁
 
「これは国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税のあり方という話なんですけれども、これは平成26年度の与党の税制改正大綱におきまして、国際機関や欧州諸国における対応状況などを踏まえ、平成27年度税制改正に向けてこれを検討を進めて参りたいとうことで話をさせていただいておりますが、これを検討するにあたっては、課税の中立性の確保という観点というのが当然必要になってくるのですが、考えておかなくてはならないいくつかの問題は、税務執行が確保できるかということになると、これは執行権の管轄外の国の話ですから、そういった意味では適正な申告納税っていうのをどう確保することができるか、という点がひとつ問題になります。
 
 また、国内外の事業者の事務負担にあたる影響というのももちろん考えなければいかんので、これは国内の事業者にいわゆる納税義務を負わせるということになりますので、これは向こうでやるんじゃないのという話になりますので、そういった意味ではこれは幅広い観点から検討を進める必要があろうかと思っておりますので、これは昨年の秋以来政府の税制調査会におきまして有識者の方々から、専門家の方々からきちんとした意見を集めようということで目下検討をお願いさせていただいております。」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「はい、頑張っていただきたいと思います。税の歪みは国家の歪み、というが私の尊敬する経営者の言葉であります。その経営者曰わくですね、『立派な企業というのは“稼ぎ”と“務め”を両方はたすものである』と、稼ぎとは従業員を食べさせていくための売り上げ、そして務めは行っている事業を通じて世の中に貢献して行くことだ、自分さえ儲かれば税金は払わなくてもいいと、こういうことで本当にいいのでしょうか。この稼ぎと務めについて私は改めて考え直すことが必要なのではないかなと、こんな風に思っているところでございます。
 
 さて、今お話にもございましたように、このグローバル企業による租税回避の問題はOECDやG7で議論されていると言うことも承知しておりますが、その話を聞いていて私はふと有名なルース・ベネディクト氏の「菊と刀」というのを思い出しました。この本はですね、日本研究の古典としてもう世界各国に知られていますが、もともとは戦後の日本の占領政策と統治に活かすためにアメリカ政府が委托したものであります。つまり、アメリカの占領統治の元で設定された日本の戦後レジュームの理論的バックグラウンドとして活用されたわけです。この著書でルース・ベネディクト氏は、西欧文化と日本文化を対比させて、西欧文化は自律的な罪の文化であるのに対して、日本文化は他律的な恥の文化であると結論づけました。
 
 罪の文化というのは、神との契約において良い悪いが決まっている、だから西洋人は自分の頭で考えて倫理的な行動を取ることができる、しかしそれに比べて日本人は恥の文化であり、人の顔色をうかがいながらでしか行動できない人種である。「菊と刀」ではそのように決めつけているわけであります。はたして本当にそうでしょうか。
 
 確かによく私たち日本人はですね、人の顔色を気にしがちだといわれますけれど、しかし実は一番気にしているのは私、お天道様なのではないかと思います。どんなときでも、例えほかに誰も人がいなくてもお天道様はいつも私たちを見ている、見ておられる、だから悪いことはしない。つまり、天の理、宇宙の理というものに反したことはしない、というのが日本人の倫理観だと、私はこのように思っております。
 
 むしろ欧米人の罪の文化というのは、裏を返せば法律や契約書に書かれていなければ何をしても良いという文化であるともいえる、と私は思っております。先に述べたアップルのCEOが、アメリカの上院の公聴会に呼ばれて、海外に資産を移して不等に税金を回避しているという嫌疑について追求された際ですね、そのCEOが『私たちは法律に従っている。デジタル時代に法律が追いついていないのだ』と開き直った姿、これなどはまさに法律や契約書に書かれていなければ何をしてもいい、という罪の文化の典型例ではないかなと、私はこのように思っております。
 
 多国籍企業の課税逃れの横行を見逃すようなことになれば、その税の負担のしわ寄せというのは弱者である個人にのしかかってきます。消費税率が引き上げられる4月1日は、もう再来週のことになってきました。消費税増の負担を国民にお願いしている中でですね、こうしたことを放置すれば、国民の皆様は不公平だと思うに違いありません。また、まじめにきちんと納税している企業が馬鹿を見ることがあってはならないと、このように思っております。これでは、税制全体への国民の大切な信頼を失うことになりかねない。まさに税の歪みは国家の歪みにつながっていくのではないかなと、思っております。
 
 租税三原則によりますと、税は公平で、中立で、簡素でなければならない、といわれております。この公平性、これがあまりにないがしろにされて、莫大な利益を上げている企業にこんな節税を許していると分かったら、国民の皆様はどう思われるでしょうか。
 
 やがてはですねばかばかしくなって、誰も税金を払わなくなってしまう、こんなことを心配いたします。すなわち何度も言いますが、税の歪みが国家の歪み、であります。総理、こうした事態をですね放置していては最終的に“グローバル企業栄えて国滅ぶ”ということになってしまうのではないかと大いに心配しております。
 
 改めて企業と納税の問題について考え直す必要があるのではないでしょうか。税制面でのアプローチというのももちろんそうですけど、むしろですね、納税する企業こそが立派な企業なんだという正しい納税意識を持ってもらう、たとえば、納税額に応じてそういった良い行いをする企業を称えると言ったような、そういった仕組みなどが検討できないかどうか、安倍総理にこの問題についてのお考え、そして解決に向けたご決意をお聞かせいただきたいと思います。」
 
 
○安倍内閣総理大臣答弁

「ただいま三原委員が指摘をされたように、真面目な納税者によって納められた税金によって大切な社会保障は維持され、そして学校、道路、そうしたものもですね、しっかりと作ることが出来るわけでありますし、また警察を始め治安も維持されるわけでございます。つまり、まさにそうした真面目な納税がですね、当たり前なんだ、そしてそうするべきだということをみんなが共通の認識として持つことが大切なんだろうと、あらためて認識をしたような次第でございます。ご指摘のように多国籍企業が課税を逃れるような事態が横行することはですね、税収を減少させるのみならず、課税の公平性という観点からも問題だという風に考えております。まさに、これは根本を崩していくことにも繋がっていく課題であろうと思います。
 
 企業は経済活動を行う上で国家や社会から様々な恩恵を受けているわけでありまして、多国籍企業についても適切に税を負担していただくことが必要であります。昨年のロックアーンサミットでもこの問題がキャメロン首相から提議され、議論を行ったところでございまして、OECDにおいてはBEPS(Base Erosion and Profit shifting)税源浸食と利益移転に対する国際的な取り組みが進められているところでありまして、日本としても引き続き国際課税に関する議論を主導していきたいとこのように思うところであります。
 
 日本人が元来持っているまさにお天道様が見ている、この認識が倫理観として私は大変大切なんだろうとこのように思うわけでありますが、企業自らが納税を通じて社会に貢献するという正しい納税意識を持って頂くことが重要でありまして、こんな観点から現在、申告納税の内容が適正で、他の納税者の模範となる中小企業に対しましては、税務署長が表敬を行い表彰状を渡しているわけでございます。そしてまた税務に関するコーポレイトガバナンスが良好であると認められた大企業について、一定の条件の下で税務調査の間隔を延長しています。
 
 ま、今後とも国際的な議論等も通じまして企業の納税意識の向上に取り組んでいきたいと思いますし、そもそも、教育の場においてもこれは企業だけでなくて、消費税を通じてお子さん達も納税をするわけでございますが、この納税の意義、意味についてもしっかりと教育をしていくことが大切ではないかと思います。

 そして、ご提案のような納税額に応じて顕彰する仕組みの導入についてではございますが、これはですね、たとえば取引先の関係でたくさん税金を納めているんだったらちょっと、もう少しそれをですね価格を安くする、あるいはですね、取引先の関係におきまして『あんたんところ儲け過ぎじゃないの』ということを言われる危険性というのは常にあるものでございまして、支障を来す恐れもあるわけでございまして、ましかし、いずれにしましても、まこのような真面に納税をしているそのような人たちをしっかりと称えていく、顕彰していくことについてどうしていくべきだということについても検討していきたいと、まあこのように思います。」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「ありがとうございます。頑張る人が報われる、こういう社会の実現を目指していってもらいたいと、このように思っております。
 
“グローバル企業栄えて国滅ぶ”の一例ではございませんけれども、昨年、米国のデトロイト市が破産法の適用を申請、つまり財政破綻に陥り大きな話題となりました。かつて米国の自動車産業の中心地として栄華を誇ったデトロイトの今の姿など、またグローバル競争のなれの果てを見る思いがいたします。このデトロイト市の破綻の背景に一体何があったのか。アメリカ自動車大手ビッグスリーの一角であるGMが2009年に経営破綻した際、オバマ政権は約8兆円にも上る公的資金を投入した上、税制優遇で巨額の法人税の支払いを免除しました。しかし、公的資金を投入されたGMは、その資金をデトロイトでもなく、米国内でさえなく、なんと世界販売台数の半分を占める新興国に対して投資したのです。こうしてGMは蘇り、翌の10年には早くも黒字転換を達成して経営破綻から1年5ヵ月という異例のスピードで株式市場に再上場を果たしたのです。
 
 これにより役員達は数億円にも及ぶボーナスを手にいたしました。しかし、その陰でデトロイトの工場では、新規労働者の賃金は半減、8時間だった労働時間の上限は撤廃、不採算工場も閉鎖されてしまいました。ワーキングプアの層が大量に生み出されて生活保護の受給者に陥り、その支出がさらに州や市の財政を圧迫したのであります。
 
 そして、デトロイト市では失業率がなんと50%にもおよび市内の自動車関連の就業者は、ピーク時の約1割程まで落ち込みました。市の職員が大量に解雇されて、学校、消防署、警察、こういう行政サービスが凍結いたしました。これによって貧困率、そして凶悪犯罪発生率がともに全米1位となって、住宅ローン払えず、仕事もなく家族を抱えて途方にくれた人たちが、なんと保険金目当てに自宅に火を付けるような事件が後を絶たないと言います。これがグローバル競争のなれの果て、まさにグローバル企業栄えて国滅ぶ、という未来を暗示しているのではないかと、空恐ろしくなります。
 
 しかし、これはけして他人事ではありません。なぜなら我が国にもGM同様、莫大な公的資金を投入されて再生され史上最高益を上げながら、法人税を支払っていない例があるんです。これは、私も以前、ずっと取り上げ、先日の予算委員会でも先輩の西田昌司先生がくりかえし取り上げられているJALの再生を巡る問題であります。JALは2010年1月の経営破綻の後、会社更生法の適用に加えてやはり公的資金、つまり税金で救済されたわけですが、実はこれにとどまらず、欠損金の繰り越し控除の制度を適用されて4千億円規模の法人税の支払いも免れるという過剰な支援を受けており、JALは毎年度のように、1千億円を超える高い利益を上げています。
 
 このJALの利益、一体どれくらい大きいものなのか調べました。例えば2011年度、世界の航空会社全体での純利益が約6千720億円だった内、JALの純利益は、1千866億円。つまりJAL1社だけで世界の航空会社の3割近くを占めていたのです。また、JALは破綻時に株式が100%減資、つまり紙くずとなり、当時たくさんの株主の皆さんが泣かされたわけですが、その後に国の機関である企業再生支援機構が3千500億円出資しほぼ100%の株主となり、実質国有化状態でありました。そして一昨年9月、これまた破綻から2年という異例のスピードで再上場を果たしたわけですが、機構からの出資3千500億円分の株式を約6千483億円で切り抜けたことをもって、国として3千億円を超えるキャピタルゲインを得たといわれ、これをもってJAL再生は成功だったという方もいらっしゃいますが、とんでもありません。
 
 JALのために国が被った負担は、この3千500億円の出資だけではありません。パネルをご覧下さい。政府系金融機関による出資、200億円と債務免除1千490億円を始め、同じく政府系金融機関の債務保証1千億円、加えて債務免除益、つまり銀行が借金棒引きにした分、本来利益として法人税がかかるところ、その支払いが2千億円規模で免除された点など諸々きちんと踏まえて計算するとトータルで国庫から8千507億円の負担をしたのに対し、6千483億円を回収したに過ぎないんです。麻生大臣、つまり、JALの再上場で株を売却したことによって国は3千億円儲かったどころか、実は依然として2千24億円のマイナス、つまり国民負担が生じているということなんです。
 
 法人税減税見合いの課税ベース拡大といった議論もある中でですね、これ国としてきちっり耳を揃えて返していただく、国としてきちんと回収しなければいけないと思うのですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。」
 
 
○麻生財務大臣の答弁
 
「あの日本航空の再建に国民負担が発生しているんで、その分を税制で取り戻すべき、あの前半の倫理の話は別として、今の後半の部分で私どもの、財務大臣の担当としてはその点がご質問なんだと思いますので。あの、税につきましては、もうこれご存じの通りあらかじめ決められたルールでやって頂くんでありますが、これに対して、過去に生じた国民負担のようにこれまで想定していなかったもののいわゆる過去に遡って新たに税制を設けるということになりますと、その目的や他の事例への影響を含めてこりゃちょっと慎重に検討せにゃいかんということになろうと思います。
 
 あの、いわゆる遡及するという話なんですが、特に特定の企業のみをターゲットにして制度の不整や不利益の遡及となるような見直しって言うのはこれは現に謹んでおきませんと、これはひとつの例で、感情論としてははなはだ面白くないというのは良くわかりますし、元日本航空の株主でもありましたんで、紙くずになりました記憶がありますから、良く覚えておりますよ、私も。ふざけた話だと思ってましたよ、個人的には。
 
 しかし、私の立場というのは、今財務大臣という立場にありますので、私どもとしてはいろいろなことを考えますとこれは仮にじゃあ銀行が債務というものを放棄しなかったらどうだったであろうかと、これはJALが潰れたんだと思いますね。その場合は多分壮大な数の失業者が生まれたのではないだろうかと思いますし、いろんなことを合算してみますとどうだったかというようなことは、また別の観点から考えないかんところ、また、今の倫理観の話からいうとまた別の話ということになりますが、単に税金という話で遡及してきっちり耳を揃えて返せという話は私も分からんわけでもありませんし、私の主義にも合いますけども、あの、ちょっと私の置かれている立場からいいますと、法律的には今申し上げたような形にならざるを得ないんだと思っております。」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「はい。債権放棄は借金チャラ、おまけに追い銭である公的資金までもらって立ち直ったものに対して、不必要な9年間で4千億円の免税まで与えられ、先ほどの利益規模や利益率からも分かるとおり、競争上極めて優位な立場に立っているといえると思います。
 
 民主党政権下で生まれたこの歪みについてきちんと総括して適切な軌道修正を行っていくことは頑張る人が報われる社会を標榜する自民党、安倍政権の使命ではないでしょうか。総理、税の歪みは国家の歪みです。まず、民主党政権によるJAL再生のあり方について、安倍政権として、あれは失敗だっと認めて明確なステートメントを出す必要があるのではないかと思いますが、総理いかがお考えでしょうか。」
 
 
○安倍内閣総理大臣
 
「日本航空は、民主党政権下におきまして、平成22年1月の政府声明において我が国の発展基盤である航空ネットワークの重要な部分を担っており、その運行の継続と確実な再生を図るため必要な支援を行うとの方針に従って公的な支援が行われ、再生が図られた、これは委員ご承知のことだろうと思います。
 
 日本航空の問題につきましては、この委員会等で取り上げられた際、私たちとも問題意識を持ったことから、その後、政府内で検証を行ってきたわけでございます。日本航空の再生支援については大手2社による自主的な寡占状態の中で1社のみに対して行ったものであり、また異例ともいえる規模の再生案件であっただけに様々な議論を生んだ、課題を残したといえると私は認識をしております。
 
 このような議論中で指摘されている点については、今後の企業再生のあり方を考える上で重要であります。政府としてはこうした点を参考にしながら出来る限り競争関係を阻害することがないよう今後充分に配慮していくことが重要ではないかと考えています。そうした意味におきまして日本航空に対する公的資金によって航空会社間の競争環境がゆがめられることの無いよう国土交通省において、日本航空の再生の進捗状況の監視をし必要に応じて指導をおこなうなどを通じて監督をさせるようにしていきたいと考えております。」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「課税逃れ問題ということしっかりと取り組んで参りたいと思っております。次の質問に移らさせていただきます。ものづくりニッポンの我が国が誇る代表的なジャパンブランド、オートバイについてお伺いいしたいと思います。
 
 安倍政権の成長戦略において、世界で戦って勝、を目標にしております。我が国の二輪車産業、世界シェアが50%近くあり、市場規模は4兆円もあります。マシンというのはですね、細かい部品の集合体であり、その部品を作っているのは、ほとんどが町工場であります。この町工場の発展こそが成長戦略の要であると思っております。二輪車業界が今後さらに国際競争力を強化して行くためには、国内でのものづくりをしっかり実施して行くことが必要であり、また、生産、開発、雇用面で国内市場の一定規模の確保が非常に重要なのではないかと思っております。
 
 また二輪車は省エネ、省スペース、省資源、環境に優しい乗り物であります。さらに都心での移動時間も四輪と二輪車を使い分けることで、渋滞の解消にも繋がることと思いますし、CO2の削減効果もございます。そして2020年の東京オリンピック、パラリンピックを迎えるにあたりですね、都心部の渋滞緩和とか、環境対策ということを考えても、喫緊の課題になるのではないかなと思っております。また東日本大震災、あるいは阪神淡路大震災の際、二輪車は交通渋滞に巻き込まれることなく災害直後の初動における情報収集や医薬品とか食料品を輸送するといった時に大きく貢献をいたしました。
 
 このように社会に役立ち、災害にも強い二輪車に対して、国内における利用環境において様々な問題点があるために国内の需要が激減しているんです。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、すべて日本人の名前が付いているメーカーが世界のシェアのトップフォーを占めている。世界中に日本ブランドを広めている二輪車産業。これをさらに発展させていくためにも是非とも利用環境の改善というのを検討していただきたいと思っております。
 
 そこで太田大臣にお伺いいたします。
 
 まず、二輪車のETCの車載器を普及促進させるために助成制度を設けるべきではないかと思っております。現在二輪車のETCの保有台数あたりの搭載率は、平成24年3月末で11.2%、普通自動車が87.8%に比べますと、はるかに低いわけです。実際このETCというのは二輪車の方が実効性があるんじゃないかなと思っております。このETC本体とセットアップ料、これがですね自動車は1万円前後なんですけど、二輪車4万円前後という価格なんですね。これホントに高いんで助成制度のお願いに先日伺いましたけれども、大臣いかがなりましたでしょうか。」
 
○太田国土交通大臣
 
「ご要望いただきまして、検討させていただきました。二輪車、ETC車載器におきましては、17年4月から13万台を助成してきたところでありますけども、なかなかまだ充分な普及がないということでございます。そこで25年12月4日、ご要望を頂きました。高速道路会社において来年度、5万台を対象にして1台あたり1万5千円の助成を実施することといたしました。4月からまた消費税が上がるということもありますし、さらなる二輪車ETC車載器の普及促進に務めたいと、このように思っております。」
 
 
○三原じゅん子参議院議員
 
「ありがとうございます。そして高速道路の料金体系についてもですね、それから駐輪場の整備の促進、こういうこともどんどんやっていかなければならない、大きな問題がたくさんあると思いますけども、二輪車のますますの普及によって、また、女性ライダーが増えたらいいなと、こんなことも期待しながら本日質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。」
 
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 三原議員、お疲れさまでした。引き続き二輪環境の整備にご尽力よろしくお願いいたします。
 
 ETC車載器といえば、ミツバサンコーワが1月に2万円を切る税別1万9千円のモデルを発売してくれているが、それでも廉価版が各社から出回っている四輪用と比べると3~4倍以上。それに取り付け工事、セッティング費用を考えると1万5千円を助成してもらっても、まだけっこうな出費になってしまう。二輪車用は防水、防塵性を考えないといけないのでこの価格でも頑張っていただいたのだろうが…。それと5万台の枠なども太っ腹で外してしまいしょうよ、太田大臣様。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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