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2014年4月18日
■絶版車店の選び方
つい最近、立て続けに「あそこのショップはどうなの?」とか「○○が欲しいんだけどどこで買ったらいい?」なんて聞かれることが続きました。これがね、非常に難しいんだ。
結局のところ、「ではあなたは何を求めているの?」ってハナシになるんですよ。
だってさ、完全にメンテフリーで乗りたくて、一切のストレスなく絶版車を楽しみたいんだったら、購入後にゼンプクの信頼を置くメカニックに全部をバラバラにしてもらってさ、フレーム修正とか本格的に骨格から見直してもらって、さらに消耗部品全てを替えて、心から安心して乗って、さらに定期的にその人に整備してもらえばいいわけですよ。
だけどそこまでやる人は少ない。
だから結局は、「自分なりに満足いく整備をしてもらいたい」ということでしょう。そしてその「自分なりの整備」に見合った(と自分で思ってる)額を支払いたいわけだ。だけどその「自分なりに満足いく」というのが、買い手側で大きく変わってくる。
僕はけっこうウルサイ方だから、15年以上経ってるバイクならホイールベアリング、ステムベアリング、ピボットベアリングはとりあえず交換。さらにサスのリンク周りのグリスアップ、そしてステップやグリップなんかのゴム部品も交換。ブレーキ周りも全部新品のオイルシールやダストシールを使ってOHしたいタイプ。もちろんタイヤも新品に。幸い自分でこれをやるからお金はあんまりかからず、それも楽しみの一部としてとらえています。
よくある話は「旧いバイクを買ったらフォークのオイルすら変えてなかったんだ!」なんて言って憤ってる人。お店の判断としては「漏れてないし、ダンピング性能もまだ大丈夫な範疇でしょう」だったわけだろうけど、買い手側との意識にズレがあったわけだ。
だけどさ、最初から「僕、うるさいタイプでしかも結構飛ばすんです。フォークは現状、大丈夫そうでもオイルとオイルシールは交換しておいて下さい」と言えばいいことでしょ? それを言った上で、しかもお店としては「やっておきました」と言ってるのにやってなかった時点で、初めてお店に対して疑問をもつことになるわけです。
だけどね、間違いだってあるわけだから。フォークオイルが交換してなかった時点でお店に連絡して「フォークをお願いしてあったはずですが、やってないですよね?何かの間違いですか?」と確認するべきでしょう。特に営業や受付担当とメカニックが別の人なような大きなお店だったら希望の伝達がうまくいってない場合だってある。1回目は寛容になろうよ。
2回目になって初めて怒っていいだろうし、そのお店に自分なりの「悪いお店」レッテルを張っても良いでしょう。やると言ったことをやらずに、しかもやったテイでお金を取ってるんだったらそりゃ詐欺だ。その場合は怒っていいと思う。返品も良いでしょう。無駄にした時間について請求したっていいと思う。
よくある間違いが、バイクを買って調子が悪いなり納車整備に納得がいっていない → なぜか買ったお店とは違うお店に持っていって見てもらう → 「やってなかったよ。アンタ、とんでもないお店でバイク買わされたな」と言われる → 購入したお店に不信感を持つ → 結局買ったお店には二度と行かず、「あそこはひどい店だ」とふれ回る。という流れ。
なんだそりゃ!
中には本当にとんでもないお店もあるのかもしれないけれど、だいたいこういう話を聞くと「あぁ双方のコミュニケーション不足だな」と感じるのですよ。
なのでね、絶版車(に限らず中古車)を買うときはちゃんと何をやってくれて、何をやってくれないのか、そして何に対してお金がかかるのかを確認すること。
よくあるのは「うちは全部やってる」というやつね。信頼関係のあるお店で、お店側と自分のとの色んな事に対する意識がある程度共有できているならば、それで任せちゃっていいでしょう。だけど初めて行くようなお店だったら、「全部」とはいったい何を指しているのかちゃんと詳細を説明してもらうべき。じゃないとまず自分が仕上がりに納得できないことになる可能性があるし、お店としても「そこまでやってほしいなら最初から指示してほしい」という気持ちにもなるでしょう。人によって「全部」の尺度が違うからね。
ま、個人的には「全部やってる」というのはあまり信用してません。特に「全部って何ですか?」って聞いてもその内容を詳細に言わないお店は、その言葉の裏には「あなたに説明してもわからないでしょう?」という見下しが感じられたり、または「全部」という言葉で安心させておいて実はたいしたことはやってない、ということが多いと経験から感じているから。
大事なのはお店と自分との波長が合うか、でしょう。お店側がこちらのメカに対する知識の度合いを知っていて、かつライディングスキルも知っていて、どういう用途でそのバイクを使ってるかを知っていれば、それに見合った整備をしてくれるでしょう。そして当然、お客側としてもそのお店がどういうレベルで整備をしてくれるのかを把握する必要があります。ここがクリアになっていれば、安心して整備に出したり中古車を買ったりして、受け渡しの時には何も疑心暗鬼になる必要はなく、気持ちよくお金を払って気持ちよく乗れる。幸い僕はここ最近、僕の波長とよく合ったお店と出会うことができました。これは幸せなことですよ。
さらに、お店との最初の接触がまた難しい。
バイクに関わる人って、どうも実力以上のことを言いたがる人が多いんですよなぜか。だからお客さんも「うちのツーリングは基本的に200キロ巡航ですので」なんてフイてたりする。なわけねーだろ、とマトモな人ならわかるわけで、そうなるとそもそもお店から信用されない。これがお店側でもあるからタチが悪くて、バイクショップで「うちはレースやってたからそこら辺のお店と一緒にしてもらっちゃ困る」みたいなことを言ったりする。
これもマチマチでさ、もちろん本気のレースメカだった人もいたりするけれど、中には「ウチに出入りしているお客さんが草レースに出たことがある(ようなことを言ってた)」というレベルで「レースやってた」なんてフイちゃうお店もある。
だから最初に変な誇張とか自慢とか、ほら吹きといったものは置いておける関係がいいよね。じゃないと色んな事がこじれちゃう。
避けたいのは無用な悪口。
「あそこのお店はイイ話聞かない」
ほんとか??
そう言ってる奴がろくでもないだけじゃないのか??
「騙されたって話を聞いた」
ほんとか??
騙されたんじゃなくて、ちゃんとコミュニケーションが取れてないだけじゃないのか??
もう一つはね、「あそこのバイクに乗ったらひどいもんだった」ってやつ。これはね、確かにひどい状態のバイクもある。しかもそのバイクにどこぞの有名店のステッカーが貼ってあると、ついつい短絡的に「あそこのお店のバイクなのにこんな状態かよ」とがっかりして、そのお店に対してマイナスイメージをもったりする。だけどね、最後にそのお店で整備を受けたのはいつだったのかも考慮しないと。
以前に撮影用にある有名店のお客さんのバイクを借りたことがあって、これが残念な状態だったんだ。有名店のお客さんだから大丈夫だろうと思ってた節があったんだけど、いやそれはそれは。乗りっぱなしのかわいそうなバイクでした。お店のステッカーは貼ってあったけれど、そのお店で整備を受けてからずいぶんと年月が経ってたというわけ。それじゃあそのお店の整備のスタンスの判断はできないよね。
絶版車選びはお店選び、なんて言われます。あらゆるお店の取材をして、だいたいどこでも「結局はお店選びですよ。うちに任せれば大丈夫」と言うわけだ。それはどのお店でもある程度真実なんだと思いますよ。そのお店の波長に合ったお客さんが集まれば自然と「良いお店」と評判になるし、反対にお店の波長に合わないお客さんばかりきちゃうと「悪いお店」となるわけだ。ある程度の規模でやってて歴史のある絶版車屋さんなら、それぞれがそのお店のスタンスに賛同してくれるお客さんを抱えてて、それらお客さんから信頼も厚いはず。
最初に戻るけど、僕に「どこで買ったらいい?」って聞く人。その人と僕の波長が合ってるとは限らないからね!僕が良いと思ってもその人にとってはそうでもないかもしれない。僕が薦めたお店で買ったらひどい目にあった、なんてなったら申し訳ないじゃんね。
絶版車や中古車を買おうとするアナタ、できるだけいろんなお店に行って、いろんなスタンスを知ることをお勧めします。そしてお店側がアナタを見誤らないように、へんなほら吹きは控えましょう。そうやって自分の中での判断基準を磨いたうえで、自分の波長に合ったお店に出会えることを祈ってます。
最後に付け加えるとさ、他のお店の悪口を言うようなお店はやめといた方が良いすよ。
マジで。
(ノア)