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第43回 『自動車運転死傷行為処罰法』


 今月はCBR250Rで通勤している。4月に新型になったばかりのモデルです。これが実に楽しい。CRF250Lと同じベースエンジンを積んでいるとは思えないほど。まあ、MD38EとMC41Eとエンジン型式も違うから、違って当たり前なんですけどね。
 
 前モデルのCBR250Rが相手だったらスタートで出し抜きそのまま差をキープ、なんてこともなんとか可能だったが、これでは立ち上がりから置いて行かれそうだ。CRF250Lより出力で3kW多く(PS馬力表示では23PS対29PSで6馬力も多いことになる)、トルクも22N・m(2.2kgf-m)対23N・m(2.3kgf-m)と1N・m(0.1kgf-m)上手。250ccなのでこの差は大きい、ということでしょう。
 
 ちなみに、前モデルだって最高出力は20kW(27PS)、最大トルクは23N・m(2.3kgf-m)とCRF250Lより若干大きかったのですが、二次減速比の違いが加速の差を生んでくれていたのでしょうか。ちなみにCRF250Lと前モデルのCBR250Rのミッション周りでは、この二次減速比しか違わなかったんですね。6速ミッションのギア比もまったく同一でした。
 
 新型となってCBR250R専用のギア比を持つ6速ミッションになったことも走りの向上にかなり効いてるのでしょう。いや、それにしてもほんと走りが楽しくなりました。街中なら、リターンライダーだと思って侮ってくるお兄さんたちに悔しい思いをさせることも可能に。いや私の話ではないですけどね。法さえ許せば140km/hの巡航も楽々でしょう。まだオドメーターが2千kmにもならない新車ですので、9,000回転くらいまでで抑えててこの楽しさ(10,500rpmからレッドになってます)。ヤマハのYZF-R25もそのうち国内発売されるでしょうから、新型Ninja 250とともに250バトルが楽しみです。
 
 燃費も前モデルに比べて向上してるそうですが、満タン方法で測ったところ、リッターあたり28.23kmでした。9,000回転までに抑えてましたから実際はもうちょっと下がるかと。ちなみにCBR250Rは満タンで13リットルも入るんですね(CRF250Lは7.7リットル)。350kmを超す足長さんはやはり何かにつけ便利でしょう。カタログ上では、前モデルに比べてリッターあたりで0.9km向上してるので、CRF250Lとはさらに差が開いたはず。ちなみに60km/hの定地データは、CRF250Lが44.4km/L、前モデルのCBR250Rが49.2km/L、新型CBR250Rが50.1km/Lとなってます。
 
 値段は、前モデル比約5万円のアップですが、消費税がアップしたことですししかたないですね。ちなみにCRF250Lと前モデルのCBR250R(のスタンダード)はまったく同じ449,400円だったんです。まあ、個人的な興味であれこれCRF250Lと比較していても読者の皆さんには関係ないでしょうからここら辺にしますが、バイク本来の性能を堪能しきれる250クラス、ってやはり楽しいですね。足りないのは、ご近所のバイク乗りさんたちの視線やパーキングエリアでの見栄だけ…。
 
 あ、それと今年の冬の“豪雪”の名残で、かなり路面が荒れている首都高速では、足周りが速度に追いついていない場面もちょっとありましたが。250にそこまで望むのは筋違い、というものでしょう。人間様の“膝サス”で補ってあげれば問題なし。そんなところもライダーがバイクを操ってる、という実感があって楽しいですよね。

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●CBR250R 主要諸元
■型式:JBK-MC41■全長×全幅×全高:2,035×720×1,125mm■ホイールベース:1,380mm●最低地上高:145mm■シート高:780mm■車両重量:161〈164〉kg■燃料消費率:国土交通省届出値、定地燃費値50.1km/L(60km/h)、WMTCモード値32.4km/L(クラス3-1)■燃料タンク容量:13L■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ■総排気量:249cm3■ボア×ストローク:76.0×55.0mm■圧縮比:10.7■燃料供給装置:フューエルインジェクション(PGM-FI)■点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火■始動方式:セルフ式■最高出力:21kw[29PS]/9,000rpm■最大トルク:23N・m[2.3kgf]/7,500rpm■変速機形式:常時噛合式6速リターン■ブレーキ(前×後):油圧式シングルディスク × 油圧式シングルディスク■タイヤ(前×後):110/70-17 M/C 54S × 140/70-17M/C 66S■懸架方式(前×後):テレスコピック × スイングアーム(プロリンク)■フレーム:ダイヤモンド
■車体色:ミレニアムレッド、ブラック、ロスホワイト
■メーカー希望小売価格:498,960円(本体価格462,000円)、4月24日発売。ロスホワイト、515,160円(本体価格477,000円)、ABSモデルは本体価格で47,000円アップ。CBR250R<ABS>Special Edition、576,720円(本体価格534,000円)、5月20日発売。


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 さて、今月は久々に“困ったちゃんシリーズ”をお伝えしましょう。何でこれほど、というくらいに相変わらず次から次へやっちゃってくれてます。
 
 まずは、さすがに不祥事に慣れっこになったとはいえ、あってはならない事件。北海道警察の技官による死亡ひき逃げ事件です。事件そのものは1月ですが、旭川市の市道で無職女性を車ではねたのに、そのまま逃走。警察官とはいえ、事故を起こしてしまうのは仕方ないとして、自身の立場を考えたらひき逃げなどあり得ない話。3月27日に懲戒免職したと発表。もちろん自動車運転過失致死罪で起訴ということですが。
 
 パワハラなどめちゃくちゃなことやってる秋田県警。交通違反のでっち上げ事件なのですが、明らかにされた判決を聞いて呆れてしまった。3月28日に、秋田地検が“虚偽有印公文書作成、同行使”などの罪で書類送検したその男に下した判決は、なんと“起訴猶予”。事務的なミスとか、勘違いの取締りなんかじゃなくて、違反のでっち上げですよ、でっち上げ。判決理由として「許されない犯罪だが、偽造による違反は取り消されて実害がないに等しく、退職して制裁を受けている」ですと。
 
 日頃、真面目に交通ルールを守っていても、ちょっとうっかりなど、些細なことでキップを切られてしまう一般市民にとって、どれほどキップを切られることが生活を脅かす“重大事”なのかこの裁判官は分かっていない。これが裁判員裁判だったら間違いなく悪質な犯罪者として有罪でしょう。「退職で制裁を受けている」など冗談じゃない。犯罪者としての処遇ではなく“依願退職”ですからね警察の扱いは。身内に甘すぎる。一般市民に厳しく、身内に大甘の“正義の味方”。
 
 4月9日午後11時頃、高知南警察署の覆面パトカーが自転車で道路を渡っていた男性をはねて大けがを負わせた。赤色灯をつけてサイレンを鳴らしていたというが、はねられた男性は歩行者用の信号のある横断歩道を渡っていたという。警察の発表は「事故原因は捜査中、コメントを差し控える」と。
 
 京都府警の巡査部長が3月7日、北近畿丹後鉄道の踏切で防護策に衝突しながら、そのままクルマを放置して逃走。4月10日付で懲戒免職処分。
 
 北海道警旭川東署の巡査が4月26日午前3時頃、市道の縁石に乗り上げそのまま眠ってしまった。通報で駆けつけた警察官が酒気帯び運転で検挙。警察官が率先してやってるんですから飲酒運転が無くなるわけないですね。
 
「知らなかった」では済みませんの事件。宮城県警の巡査部長と巡査長が乗るパトカーが4月29日午前10時頃、シートベルトをせずにクルマを運転していた女性を発見。一度はそのクルマを止めさせたが、女性がクルマを発進させたため、約500メートル追跡し現行犯逮捕。何故女性が発進してしまったのかは警察発表では分からないが、警察官達は“座席ベルト装着義務違反”では逮捕できない事を知らなかったという。
 
 4月30日、埼玉県警はタクシーのトランクを殴って凹ませたとして、浦和署の巡査を本部長訓戒処分にした。巡査は大宮駅のロータリーで「乗車拒否にあったと思った」と動き出したタクシーの前にはだかり、後部トランクを殴ったという。実際には別の乗客が乗っていて勘違いだったという。
 
 これまた改ざん事件。鹿児島県警は5月8日、交通事故の実況見分調書を部下に改ざんさせたとして、虚偽有印公文書作成、同行使などの疑いで県警本部交通企画課の警部を鹿児島地検に書類送検。鹿児島西署交通課長だった2012年当時に部下ふたりに命じて、管内で起きた交通事故の見取り図を書き換えさせた疑い。この他5件の調書改ざんや部下へのパワハラも認定。常習のようですな。

 富山県警では、県警の交通部門に所属する警部補を交通事故の証拠品を紛失したとして本部長注意処分としていたことが5月9日に発覚。「懲戒処分ではないため(氏名等を)公表しない」と県警監察官室。処分はすでに4月3日付で行われたらしい。紛失自体も2012年1月に起きた事故の証拠品と、何か怪しい。
 
 これまた秋田県警。県警本部の巡査部長が、4月7日、大館市内スピード違反で検挙された。60km/hの法定速度を30~40km/h超過だった。4月28日付で本部長注意としていたことが5月16日に判明。
 
                 ※
 
 5月20日、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」いわゆる「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されました。悪質な事故の増加によりできたはずの「危険運転致死傷罪」(懲役20年以下)でしたが、立証が難しく十分に機能しているとはいえなかったことから、「危険運転過失致死傷罪」よりは軽いが、「自動車運転過失致死傷罪」(懲役7年以下)よりは重く、確実に適用できる法律として誕生した特別法です。


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『自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律』
(平成25年11月27日法律第86号)
 
(定義)
第1条  この法律において「自動車」とは、道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第9号に規定する自動車及び同項第10号に規定する原動機付自転車をいう。
 
2  この法律において「無免許運転」とは、法令の規定による運転の免許を受けている者又は道路交通法第107条の2の規定により国際運転免許証若しくは外国運転免許証で運転することができるとされている者でなければ運転することができないこととされている自動車を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は当該国際運転免許証若しくは外国運転免許証を所持しないで(同法第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当する場合又は本邦に上陸(住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)に基づき住民基本台帳に記録されている者が出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第60条第1項の規定による出国の確認、同法第26条第1項の規定による再入国の許可(同法第26条の2第1項(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成3年法律第71号)第23条第2項において準用する場合を含む。)の規定により出入国管理及び難民認定法第26条第1項の規定による再入国の許可を受けたものとみなされる場合を含む。)又は出入国管理及び難民認定法第61条の2の12第1項の規定による難民旅行証明書の交付を受けて出国し、当該出国の日から3月に満たない期間内に再び本邦に上陸した場合における当該上陸を除く。)をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)、道路(道路交通法第2条第1項第1号に規定する道路をいう。)において、運転することをいう。
 
(危険運転致死傷)
第2条  次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
 
1  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2  その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
3  その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
4  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
5  赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
6  通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
 
第3条  アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
 
2  自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
 
(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
第4条  アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。
 
(過失運転致死傷)
第5条  自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
 
(無免許運転による加重)
第6条  第2条(第3号を除く。)の罪を犯した者(人を負傷させた者に限る。)が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、6月以上の有期懲役に処する。
 
2  第3条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は6月以上の有期懲役に処する。
3  第4条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、15年以下の懲役に処する。
4  前条の罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許運転をしたものであるときは、10年以下の懲役に処する。
 
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 今回施行されたこの新しい法律では、危険運転致死傷罪の適用範囲を広げるとともに、立証が難しかった危険運転致死傷罪を補うかたちで「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」でも適用できる新たな量刑(懲役15年以下)を加えたことが最大のポイントです。これまでは、万が一飲酒運転で死亡事故を起こしても、本人が「ちゃんと運転できると思った」などと言い張られると、実際はどんな状態にあったとしても「正常な運転が困難だった」ということを“立証”するのが難しく、けっきょく危険運転致死傷罪が適用できず、懲役7年以下の自動車運転過失致死傷罪しか適用できていなかった。
 
 今回、新たに「アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転」という条項ができたことで、実際はどうあれ客観的に「おそれ」があれば懲役15年以下の罰則が適用できるようになったということ。アルコールだけじゃなく、薬物や法令で定める病気の影響によるものも適用対象となっている点が新しい。
 
 また、懲役20年以下の危険運転致死傷罪自体も、一方通行の逆走や、歩行者専用道路への進入など、「通行禁止道路を危険な速度で走行」した場合にも適用されることになった。ちなみにこれまでは、(1)飲酒等の影響で正常な運転が困難な状態で走行、(2)進行の制御が困難なほどの高速度で走行、(3)進行を制御する技能がないのに走行、(4)人や車への意図的な接近、割り込みをし、危険な速度で運転、(5)赤信号を殊更無視し、危険な速度で運転、というのが危険運転致死傷罪の要件だった。
 
 さらに、この新法では、「飲酒や薬物等の影響」の発覚を免れようとした行為には、「発覚免脱罪」(懲役15年以下)、「無免許運転」の場合はすべての事故で量刑を3~5年加重することなども追加された。また、今回の施行により、従来、刑法で「自動車運転過失致死傷罪」と呼ばれていた罰則がこちらに移され、名称も「過失運転致死傷罪」(懲役7年以下は変わらず)となった。
 
 飲酒運転すること自体、事故を起こそうと起こすまいが、社会に対する犯罪です。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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