全日本ちょこちょこっと知っとこ


雨男だれやのん!?

 第28回「雨男だれやのん!?」

 全日本ロードレース第4戦SUGO、JSBクラスはセミ耐久レースでした。

 これまで鈴鹿200キロレースとか300キロレースとか、鈴鹿サーキットでは「8耐の前哨戦」として盛り上がりましたが、昨年よりSUGOでの耐久レースが全日本シリーズの中の1戦として開催されるようになりました。とはいえ、昨年の100マイルは、メーカーによっては給油やタイヤ交換をしなくてもいい微妙な距離だったので、今年は20マイル延長して120マイル=約194キロ(52周)のレース。そしてピットインの義務付けが課せられました。

 各チーム、給油のタンクやらスタンドやら普段使わない道具がピットに並んでいる光景もなかなか面白いものです。

 さて、レースはどうだったか? 
 といえば、天気予報が大当たり。
 雨のち、豪雨。3時間遅れのレーススタート。周回数は52周から40周に減算され、ピットインの義務もなくなり、ちょっと長めのスプリントに?



選手自ら水かきに追われる


3コーナーから土砂が流出
排水溝が追いつかずピットに浸水、選手自ら水かきに追われる。 スタート進行中にディレイとなり、ダメダメのポーズの高橋巧選手。


3時間遅れてやっと


3コーナーから土砂が流出
豪雨が上がり、3時間遅れてやっとのスタート。蔵王の山が見えます。 3コーナーから土砂が流出、ハイポイントからバックストレートのあたりはもっとたくさんの土砂が流れてタンクローリーで水を撒きながらの清掃でした。

 スタートが上手だったのは加賀山就臣選手。柳川明選手、中須賀克行選手。少し離れて高橋巧選手、山口辰也選手、渡辺一樹選手、津田拓也選手と続きました。

 トップ争いは加賀山選手、柳川選手、中須賀選手となり、ウェットにもかかわらずすごいバトルでした。
 しかし、柳川選手が白線に乗ってしまい戦線離脱。レースは加賀山選手と中須賀選手の一騎打ちの体となりましたが、給油のため中須賀選手が33ラップを終えてピットインした直後に、コース上に流れ出たオイルによりセーフティーカー導入。これによって中須賀選手はピットエンドでしばらく待たされる形になり、コース復帰したときには6位。残り周回で挽回を狙っていたところ、セーフティーカーが入ったままレースは36ラップ目に赤旗で終了。35ラップ目の順位が採用され、優勝は2年ぶりの加賀山就臣選手! 2位高橋巧選手、3位の津田拓也選手の上位3名ともピットインはせずでした。



ル・マン式スタート
ル・マン式スタート。バイクの傾きが少しずつちがうんです、中須賀選手、柳川選手のバイクはわりと横に、加賀山選手、高橋選手は斜め前に向いていますね、これが好スタートの決め手だったのかも?。


あわや接触の中須賀選手と柳川選手。加賀山選手はスッと前に
あわや接触の中須賀選手と柳川選手。加賀山選手はスッと前に。


この4台のトップ争い
この4台のトップ争い。ドライと変わらない迫力。


雨のなか粘りの走行を続ける加賀山&ダンロップ


中須賀VS加賀山
雨のなか粘りの走行を続ける加賀山&ダンロップ。 中須賀VS加賀山。このあと中須賀選手トップでピットインしたのですが……


狭いSUGOのピットレーンでの作業


決勝で1番にピットインしたのは渡辺一樹選手
狭いSUGOのピットレーンでの作業(練習時のもの)決勝はノンストップでした。 決勝で1番にピットインしたのは渡辺一樹選手。13年ぶりに8耐出場となるチームグリーンのピット作業は予想以上に早かったです。4位フィニッシュ


雨はもう、いいです!
水しぶきをあげて10パーセント勾配を駆け上がってくるトップ集団。こういうのを見ると雨もカッコいいなぁって思ってしまうけど、雨はもう、いいです!

 後で聞いたら、中須賀選手は燃費の問題で絶対ピットインしなきゃいけないのは分かっていたので、チームカガヤマはギリギリまで我慢する作戦だったと。セーフティーカーが入ってる間は燃料使わないからこのまま行けると思ったそうです。
 よそのチームでも「このコンディションだったら途中で赤旗入る可能性あるから粘って走らせるよ!」と最初から中断も想定していたり。
 ということで、セーフティーカーが入ったときには、加賀山選手には勝ちが見えていたんじゃないかと思います。

 
 レースには色々なアクシデントがありますが、今回のようなときも冷静に判断し遂行したチームカガヤマの作戦勝ち。加賀山選手にしてみれば2年ぶりに同じSUGOでの優勝です。そりゃチームも大盛り上がりだわ、8耐に向けていいはずみがつきました。

 ざっくりのレポートですが、レースは実際見ないと伝わらないことばかりなので、気になるかたは是非サーキットで生でレースを見てほしいです。



優勝した加賀山就臣選手、チーフメカの胸で号泣


加賀山就臣選手
優勝した加賀山就臣選手、チーフメカの胸で号泣。 2年前もこの表彰台の一番高いところに立った加賀山就臣選手。奥の松酒造の発泡日本酒ファイトは控えめに、大半はチームの皆さんの口に消えていきました。


2位に入った高橋巧選手


3位の津田拓也選手
2位に入った高橋巧選手、今季は慎重なレース運びで4戦全て表彰台(うち2勝)現在ポイントリーダー。 3位の津田拓也選手。


コレがやりたかったらしい


赤旗にならなければ・・・というのはナシですが
モトGPみたいに、パルクフェルメでのコレがやりたかったらしい。チームスタッフの笑顔がステキです。 赤旗にならなければ……というのはナシですが、せっかくなので金曜、ドライでの中須賀選手のヒジすりをどうぞ。

 めったにない悪天候のレース。路面改修したばかりのSUGOは水はけが悪く、ストレートでまっすぐ走れないくらい危険なこともあります。たしかに、凄い雨が降った時間帯は「これは、無理かもしれない」という思いも頭をよぎりましたが、雨雲レーダーで見てもその後は弱まる予報になっていました。選手の中にも、雨がひどいときは「やめよう!」という人はいたけど、再開が決まったときには気持ちを切り替えて戦う目になっていました。チームスタッフも、周回数などレギュレーションが二転三転するのに合わせてあわただしく動いていました。

 そして、凄い雨と雷の中、帰らずに待っててくれたお客さんが大勢いました。
 正直、開催できてよかったと思いました。3時間遅れとなりましたが、SUGOのオフィシャルさんが総出でコース上の泥を清掃してくれたおかげで、無事にスタートできたのです。SUGOの皆さんの、心意気に感謝の一日でした。

……余談ですが、「『やめよう』といったやつが気持ちで負け!」とポロッとこぼした人がいました。レース終わってみれば若干「あぁ……」な感じです。

 さて7月ともなればボチボチみなさんアレが気になってくるところですね。
 最近は事前のテストも一般公開となり、本番までのワクテカ感が一層つのりますね、「鈴鹿8時間耐久ロードレース」。
 次回は、テストの様子をちょこちょこっと……。


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