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ヤマハ
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こちらの動画が見られない方、もっと大きな画面で見たい方は、YOUTUBEのサイトで直接どうぞ。「http:http://youtu.be/RBOrMY56Um0」 “スポーツパッション&スマート”をコンセプトに、走りの楽しさと街中で映えるファッショナブルなスタイル、コストパフォーマンスを調和させたモデル、MT-07。

 排気量ヒエラルキー的には、直列3気筒エンジンを積んだMT-09の弟分だし、価格もよりお手頃。だからMT-07のエンジンは1気筒少ない直列2気筒エンジンなのか、という単純なものではないことを、試乗前の技術説明で聞いた。

 乗って楽しいエモーショナルな理想のオートバイを求めてゼロからの開発。エンジンは単気筒も3気筒も直列だけでなくV型など様々なものを議論して、それを達成出来るものとして完全新設計したこの2気筒エンジンにしたそうだ。新設計なのはエンジンだけでなく、ほぼすべてである。

 MT-07のメーカー希望小売価格(税込)は69万9840円、ABS付で、74万9520円。お金のことを最初に話すのは下世話で申し訳ないけれど、689cm3のネイキッドスポーツとしては、安い。ナナハンクラスの日本他メーカー4気筒モデルなら100万円付近。これは、割り切ったコンセプトと価格の、同じ直列2気筒エンジンである、ホンダNC750シリーズと真っ向勝負といったプライスだ。

 MT-07を目の前にして、ぐるっとひと回りして眺めると、その価格設定が信じられなくなる。安っぽさを感じさせないのである。カラー外装部分の曲線や、ハンドルバー上に設置された新デザインの液晶メーター、シュラウド風エアインテーク部分の造形と表面処理により素材感を変化させているところなど、表情が豊かで魅力的に感じられた。完全新設計、そしてこの作り込みとデザインで、この価格なのだから驚いてしまう。

 シート高805mmと低めで、最近のシート形状の流れにそって前方が細くなっていることもあり、身長170cmで足が長くないライダーの私でも、両足が力を込められるまで地面に届いた。燃料タンクはニーグリップ部分が車体と共に細く、適度にタイトでステップにのせた足がピタッと収まり、フィット感は好感触。樹脂パーツを施したタンク上部が猫背のようにせり上がっている形状なので、視覚的に大排気量車だという押し出しが強めの印象を受ける。しかし実際はハンドルバーのグリップ位置も近く、座面と比べると高め、ライディングポジションでおへそくらいの高さなので、上半身の自由度が大きいちょうどいいコンパクトさ。ロックするまでハンドルを切っても外腕は伸びきらない。

 開発の大きなテーマとして「軽量化」を掲げて取り組んだことも大きなトピック。車両重量179kg(ABS無)の数値にピンとこないかもしれない。例を挙げると、YZF-R1より30kgほど軽く、ひと昔前にラインアップにあった空冷4気筒エンジンを積んだ、ひとつ下のクラスになるXJR400Rより20kgほども軽い数字だ。跨ってバイクを左右に揺すってみても、それが判った。

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「シート高805mmと低めで、最近のシート形状の流れにそって前方が細くなっていることもあり、身長170cmで足が長くないライダーの私でも、両足が力を込められるまで地面に届いた」。
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 270°位相クランクを採用したクロスプレーンコンセプトの直列2気筒エンジンは、3千回転以上なら常に最大トルクの80%が出ているデータ通り、スロットルを開ければどこからでもトルクがついてきて気持よく加速。体が前後にゆすられる強いものではなく爆発を感じながらもコロコロと転がるような感じ。スロットルの動きに対するレスポンスが良好ながらも、ギクシャクしたところがほとんどない。このフューエルインジェクションの制御は素晴らしい。

 どんな時も寛容なのに、開ければ確実にパワーがついてきて、バイクとライダーをどんどん前に押し出す。回り切るくらい高回転まで回しても、そこに戸惑いや怖さはない。上り坂に設定された一時停止からの加速では、意識しなくてもポンポンとフロントタイヤが浮いてきた。試乗車なので意識的なフロントアップなんてやらないが、簡単に出来そうだ。加速は小気味良い。意地悪に2速からの発進も試した。それが半クラを長くせずとも普通に発進出来てしまった。エンジンの実力だけでなく、車体の軽さもここで効いている。

 強すぎないフレーム、倒立フォークではなく、正立フォークを採用するなどで、減速中は、動きと手応えがしっとりしていて、タイヤのグリップ感を手に取るように感じながらスーッと車体が倒れていく。MT-09よりキャスターが立っていて、トレールが短いので、少し神経質なところもあるのかな、と乗る前は思っていたけれど、まったくの杞憂だった。

 適度な速さでセルフステアが入って、思い通りにコーナーリング動作へ入れる。バチっと減速して、フロントタイヤからグイッと旋回してさっと向きが変わるというスーパースポーツ的なものではなく、バンクし程よい旋回力で、曲がるのを堪能しながらコーナーを抜けていく感じ。コーナーでの自由度は大きく、様々な運転技量のライダーに対応できそうな優しさがある。ハンドル周りの慣性モーメントを小さくするために、ハンドルセンター真上に配置したメーターや、ピッチの短いフォーク間の距離、軽いヘッドライトユニットなども貢献しているに違いない。

 倒しながらステップのバンクセンサーがまず接地するけれど、その時でも乱れない安定感。コーナー脱出時の加速は、不等間隔のエンジンらしく、タイヤグリップが横に逃げずに、前にトラクションする感じがしっかりあって、思い切ったスロットル操作で、加速していける。ちなみに純正装着タイヤはMICHELIN Pilot Road 3だった。

 個人の好み的には、もっとタイヤが細くヒラヒラした感じも良かったかも、と思えたが、このままでも充分にフットワークは軽く、走り回るのが理屈抜きに楽しくて仕方がなかった。そこに難しさはない。これならビギナーからベテランまで気持ちのよい走りが出来ると思う。エンジンから、ハンドリングまで、スポーティーで爽快だけど、やり過ぎていない。このバランスがとてもいいというのが、面白さに直結している。売りは安さとデザインだけではないということ。操る喜びを加味した趣味的な魅力がしっかりとある。MT-07がライバルを慌てさせる存在なのは間違いない。

(試乗:濱矢文夫)

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クロスプレーン・コンセプトにより開発された水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ、689cm3エンジン。ライダーが“自分のペース”で走りを楽しめることを基準に、実用域で使用頻度の多い中低速域での粘り強いトルク、リニアなレスポンス、扱いやすいパワーのバランスを図っているという。270度位相クランクを採用しており、心地よい加速フィーリング、駆動感が特徴だ。放熱性に優れるダイレクトメッキシリンダー、軽量化と低振動化に貢献する1軸バランサー、ロス馬力を低減するオフセットシリンダー、小型設計クラッチなどを採用。排気系にはチャンバータイプの2into1ダウンマフラーを採用。
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“軽量・スリム・コンパクト”なボディを支えるフレームも完全新設計。しなやかな乗り味とコントロール性を実現。重心位置や軸間距離、リアアームの位置などのディメンションをエンジン特性に合わせて最適化。ライダーの操作とマシンの動きが連動し心地よい走行フィーリングが楽しめるという。またリアのリンク式モノクロスサスペンションは、ショックユニットをクランクケースに締結、ショック荷重を受け止める構造物がフレーム側に不要で、良好なフレームバランスを支え、軽量化にも貢献している。
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兄貴分のMT-09とイメージのよく似たフロントフェイス。 ビジュアル表示のマルチファンクションメーター。小型フル液晶を採用し、エンジンの回転数のバー表示を多用する4,000~8,000回転のトルクバンド表示面を幅広くとり発生トルクのボリューム感を強調している。ギアポジション表示、ECOインジケーターも装備。 車体上部は“人とマシンの融合美”を、車体下部は“走り”の機能美としてパワーユニットの粘り強いトルク感を表現する“ダブルデッキ・ストラクチャー”を採用している。
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コンパクトなライディングポジションに貢献する形状のシート。 テール周りは極力コンパクト&スリムに。テールライトはLED。 ロングツーリングの快適性を高めるアクセサリーもスタンバイ。写真は大型のスクリーンや、テール&パニアケース、カーボンカバーなどを取り付けたコンセプトモデル。
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●MT-07〈MT-07A〉主要諸元
■全長×全幅×全高:2,085×745×1,090mm■ホイールベース:1,400mm●最低地上高:140mm■シート高:805mm■車両重量:179〈182〉kg■燃料タンク容量:13L■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量:689cm3■ボア×ストローク:80.0×68.5mm■圧縮比:11.5■燃料供給装置:フューエルインジェクション■点火方式:TCI(トランジスタ)式■始動方式:セルフ式■最高出力:54kw[73.4PS]/9,000rpm■最大トルク:68N・m[6.9kgf]/6,500rpm■変速機形式:常時噛合式6速リターン■ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク×油圧式シングルディスク■タイヤ(前×後):120/70ZR17 M/C 58W×180/55ZR17M/C 73W■懸架方式(前×後):テレスコピック×スイングアーム(リンク式)■フレーム:ダイヤモンド
※〈 〉内はMT-07Aのデータ
■車体色:マットグレーメタリック3(マットグレー)/ブルーイッシュホワイトカクテル1(ホワイト)/ビビッドレッドカクテル1(レッド)
■メーカー希望小売価格:MT-07 699,840円(本体価格648,000円)、MT-07A(ABS 搭載モデル)749,520円(本体価格694,000円)、8月20日発売。


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