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6時間55分でも気持ちは8耐!

 第30回「6時間55分でも気持ちは8耐!」

 8耐・・・じゃない6時間55分の短い夏が終わりました。
 24時間の世界耐久を戦っている外国人選手にしてみれば、その3分の1にも満たないレースのためにはるばる日本まで。しかも豪雨のおかげで涼しく、過ごしやすい決勝日のレースはあっというまに過ぎていきました。
 サーキットにいらっしゃったみなさま、ずぶ濡れになった方もたくさんいたと思います。私は1コーナーの撮影台の下で雨宿り、それでも下からたたきつける雨しぶきは容赦なかったです。思えばあの豪雨が色々なハプニングの序章・・・。
 豪雨が収まり、路面は完全ウェットで6時間55分のレースが始まりました。



スタート
8耐史上初の1時間5分遅れのスタート。

 スタートは物凄い! 水・し・ぶ・きっ!



スタート
水しぶきのスタートは、ライトオンで

 そして、終わってみれば、去年の表彰台でもいいんじゃない? っていうメンツでした。去年と同じチーム、同じ順位の表彰台、だからといって去年と同じようなレースが展開されたわけではありません。リザルトを見るだけでは分からない出来事がたくさん。これが耐久、これが鈴鹿8耐。

「レースは、最終ラップの最終コーナーまでわからない!」と、藤原克昭選手が常日頃から口にしていますが。8耐では毎年、どこかで何かが起こります。今年はまるで「北の国から」のストーリーを彷彿させるような、やるせない不幸が訪れました。レジェンド・オブ・ヨシムラ・・・。

 昨年のチームカガヤマからの参戦が記憶に新しいケビン・シュワンツと、レジェンドチームとして結成された辻本聡、青木宜篤組ですが、ヨシムラ12号車青木選手と、34号車津田拓也選手の2台のバトルとなり、6周目の130Rでオーバーテイクした青木選手がそのまま転倒、マシンは走行不可能なくらいに大破しそのままリタイヤ。ケビンと辻本聡は決勝を走ることなく8耐がおわりました。

「・・最終ラップの最終コーナー・・」どころか初っぱなから・・・
 私たちは木曜からの撮影でケビンの走りを何度も見ているし、ヨシムラの赤いマシンに乗るケビンの走行、またピットでのリラックスした表情や3人の中のよい光景をずいぶんと楽しませていただきましたが、ケビンや辻本さんを楽しみに決勝に来られた方、ホントに残念でした。



#12 レジェンドオブヨシムラスズキ


#12 レジェンドオブヨシムラスズキ


#12 レジェンドオブヨシムラスズキ
けして速くは見えないケビンですが、力の抜けた無駄のないライディングでしたが……。 ケビンさんの素敵な笑顔をどうぞ。 「ここ、ここをちょっと!」っていう会話?でしょうか?


#12 レジェンドオブヨシムラスズキ


#12 レジェンドオブヨシムラスズキ


#12 レジェンドオブヨシムラスズキ
辻本聡選手も1度も決勝を走ることなく終わりました。来年・・どうですか? ヨシムラのストップボードはこんなにオシャレでした。 ピットのレジェンドたち

 レースはF.C.C.・TSRの秋吉耕祐選手がリード、後続とのアドバンテージを徐々に広げていきます。2番手ハルクプロの高橋巧選手、ヨシムラの津田選手、チームカガヤマのドミニク・エガーター、TOHOレーシングの山口辰也選手、そして後方からチームグリーンの柳川明選手がペースを上げて上位に食い込んできました。

 34号車のヨシムラ、GPライダーのランディ・ドプニエ、BSBのジョシュ・ウォータース、日本の津田拓也選手は安定した速さで172周を周回して2位表彰台。



#34 ヨシムラ


#34 ヨシムラ


#34 ヨシムラ
もうひとつのヨシムラ。34号車、第一ライダーは津田拓也。 第三ライダーはプライドの高いドプニエ。 第二ライダーのジョシュはかなりフレンドリーな人でした。

 カワサキ直系チームとしては13年ぶり、8耐に帰ってたチームグリーンは全日本ロードレースに参戦中の柳川明選手、渡辺一樹選手(2012年J-GP2チャンピオン)、そしてアジア選手権の藤原克昭選手という3名でこの8耐に挑んできました。
 柳川選手から第2ライダーの渡辺選手にバトンタッチ、渡辺選手が前車との差を詰めていき、3位のヨシムラ、ジョシュ・ウォータース選手をパスしたころにコース上には再び雨粒が。それでも勢いをとめない渡辺選手が2位のハルクプロ高橋巧選手を抜いたころにはコースは全面ウェットに。あと1周でピット交代というタイミングで、なんとヘアピンで転倒・・・。
 その後コース復帰して修復~ピットはバタバタ、藤原克昭選手にライダーチェンジ。2度のピットインは、ハンドル位置の調整と、コース上がドライになり、タイヤをチェンジするためでした。
 ペースアップした藤原選手の追い上げの甲斐もあり、最終的には12位でのチェッカー。チームグリーン復活初年度は少々苦い結果となりましたが、目標だった「完走」は果たすことができました。当の釈迦堂監督は「もし、やらかすとしたら一樹やな」と最初から頭に入れていたようで、テストには無かったトラブルを経験して来年は強固な陣営で挑んでくると思います。
 しかし、雨のなかでもグイグイくる渡辺選手の走りにはカワサキファンの皆さんも大いに盛り上がったことだと思います。カワサキにもようやく骨のある若手がやってきましたよ! そして、ラストは柳川選手の夜間走行(3回目)「俺、テストでも走ってないのに! 真っ暗なの!こわかった~!」と笑いながら話すこの人も超人です。3スティント走り切った後の足取りは、小鹿でした・・・。



#87チームグリーン


#87チームグリーン


#87チームグリーン
スタートからの難しいコンディションで追い上げた柳川選手。 グリーンの若手、転倒してしまったが一時はカワサキを2位に押し上げ、カワサキファンを楽しませてくれました。 転倒後のマシンでタイヤを交換したあとハイペースで追い上げる藤原克昭選手


#87チームグリーン


#87チームグリーン


#87チームグリーン
序盤に追い上げる柳川選手。 みんなあまりしらない渡辺一樹選手はこんな顔です。 藤原克昭選手。

 F.C.C.TSRが全車をラップしていたのですが、4時間を過ぎたころ、なんと秋吉選手が130Rでまさかの転倒。これには会場騒然の「え~!」が聞こえました。秋吉選手、一度は担架に乗せられたものの、バイクとともにピットに帰還。修復し、第3ライダー、ロレンツォ・ザネッティとジョナサン・レイによって40位のチェッカーを受けました。



#11 FCCTSR


#11 FCCTSR


#11 FCCTSR
雨で速すぎ!序盤のトップ争いもなく順調に差をひろげていった秋吉選手。 秋吉にライダーチェンジ、このあと悲劇が。 秋吉が転倒したあと第3ライダーのロレンツォが引き継ぐ。

 コース上はだんだんと荒れてきます。転倒が相次ぎ、またもペースカー。ピットインした選手たちがいうには「ペースカーが遅すぎてタイヤが冷えるから気をつけろ!」でした。日中の日差しは傾き、路面温度も下がってきたころ合いです。ペースカーが解除され、タイヤが冷えた状態での再スタート。それまで7番手を走行していたエヴァンゲリオンレーシング世界耐久王者のルブラン選手がオイルに乗って転倒。エヴァンゲリオンレーシングは24位でのチェッカーとなりました。



#01 EVA


#01 EVA


#01 EVA
今年も出場、エヴァンゲリオンレーシング。 第一ライダーは8耐職人、出口 修選手。 第二ライダーはベテラン井筒仁康選手。

 108周目のTSRの転倒によりトップに立ったハルクプロ、高橋巧選手はその後もレオン・スラム、マイケル・ファン・デル・マークとともに順調に周回を続け、2年連続の表彰台、高橋巧選手は3度目の8耐優勝となりました。思えばこのチーム、今回なにもトラブルがなかった(小さなトラブルはあったでしょうけど)。
 高橋巧選手は今年全日本ロードレースでも2勝を挙げていますし、マイケル・ファン・デル・マーク選手はワールドスーパースポーツで開幕を除いて全て表彰台、4勝を挙げていて現在ポイントリーダーです。
 初めてテレビや現場で高橋選手を見た方、表彰台での喜びが少ないと思っている方もいると思いますが、普段からあまり表情を出すことがないたっくん。今回の表彰台ではけっこう喜んでいるほうだったんですよ。そして選手より手前に出てしまう茂樹監督・・・はいつもどおり。



#634ハルク


#634ハルク


#634ハルク
8耐3勝目を目指す高橋巧選手、思えばウィーク当初からテンション高かった。 マイケル・ファン・デル・マーク、青木、辻本、ケビン各選手の長身ライダーミーティング。 いつもより喜んでいる高橋巧。そして選手より前にでる茂樹監督・・・。

 チームカガヤマは今年はドミニク・エガーター選手を起用、「さて? ドミニク・エガーターてっ?」というくらいの知識しかなかった私もテストの走りから釘づけ。さすがGPライダーですね。
 エガータくん、これまでMoto2で一度も勝ったことがなかったのに、8耐テストに参加した翌週のレースで見事優勝! チームカガヤマにいい運気を持ってきてくれました! それに、すごく笑顔が可愛い(笑)。またビッグな助っ人ライダーがもう1人、イタリア、ミラノに日本料理レストランをオープンさせ、すでにイタリア人化している芳賀紀行選手。Nitro NORIの走りが見られるのは8耐だけ。
 スタートライダーのドミニクからチェンジした加賀山選手はドライからウェットに変わった一番難しい時間帯を2時間連続走行! ドライからウェットに変わったあたりがライダー交代のタイミングでしたが、「ウェット走行は自分のほうが速いし、コースの状況も自分が一番良く解ってるから」と、ピットインのタイミングで、すでにドミニクが準備しているところに大声で「大丈夫! 俺行けるよ~!」とユッキー。これにはスタッフもびっくり。「言ったからには1時間はピットに戻ってくることはできない。だけど、雨だったから体力的にも大丈夫だと思った」
 最初にドライで出ていったユッキーのヘルメットはドライ仕様のままで、途中で曇ってくるかもしれないという不安もあったけど、それ以上に、すでに1時間走ってさらに1時間、疲労のたまった身体と精神力でチームを引っ張っていくには相当の覚悟があってのこと。
 結果、ユッキーの頑張りがみんなを奮起させ、その後のドミニク選手、芳賀選手の走りにつながりました。最高2位まで上がったチームカガヤマですが、シートカウルのトラブルなどあり、修復のために時間を要し、5位からの挽回で3位表彰台を獲得。芳賀選手は昨年チェッカー後の脱水症状で表彰台に上ることが出来なかったので、ようやく皆でシャンパンファイトができて良かった! 
 チームカガヤマは、加賀山就臣選手が作ったプライベートチームで、主要メカ以外は普段別の仕事を持ち合わせている人たちなのです。8耐のために集まり、ユッキーの求心力でみんなの気持ちが一つになったときのパワーの凄さを感じました。いいチームだなぁ。チームカガヤマの来年が楽しみです



#17チームカガヤマ


17チームカガヤマ


17チームカガヤマク
スタート前の加賀山就臣とドミニクエガーター。 スタートのドミニクからチェンジ、この後2時間走行を敢行する加賀山就臣選手。 1スティントしか走行はなかったが存在感のあった芳賀紀行。


#17チームカガヤマ


17チームカガヤマ


17チームカガヤマク
ドミニク・エガーターの2回目のセッション。 表彰台、めっさ手を振っていたら紀ちゃんが気づいてくれた。 来年も来日してね、芳賀のりちゃん。

 表彰台には上りませんでしたが、オープニングラップをトップで通過してきたTOHOレーシングの山口辰也選手、6時間55分後の最終ラップにまた見せてくれました! それまで6位走行だったところ、視界の悪い夜間走行の最終ラップの最終コーナーで前車をかわして5位でフィニッシュ。最後まであきらめない兄貴の姿は、後輩ライダーやチーム員、ファンの皆さんに届いたと思います。

 山口辰也選手の特集はホンダのこちらでどうぞ!
「ホンダで戦うライダーたち」

 このほか、前回のSUGOで優勝した日浦大治朗君が参加した鈴鹿レーシングは6位。玉田誠監督のチームアジアは7位、



#104 TOHOレーシング


#104 TOHOレーシング


22チームアジア
TOHOレーシング山口辰也のラストセッション、このあと最終ラップの最終コーナーで前車をパスして5位に! ラストにオトコをみせた山口辰也選手。 チームアジア監督の玉田誠とザムリ・ババ。


#6 HOOTERS


07YAMAHA YSP


39
斎藤翔太監督と、フーターズギャルは本物です! 46位。 MotoGP日本グランプリにワイルドカード参戦が決まった中須賀さん。4位 最速のうなぎ屋こと、酒井大作選手の奥様は子連れで奮闘。外車勢最高の14位。


#44


051


39
人気キャラのKTM HAMAGUCHI BAKUON RACINGは52位。 加納典明さんが監督でした。チーム典明。サクラプロジェクト。完走ならず。 「今年で最後の8耐」の亀谷長純。Honda DREAM RT 桜井ホンダはリタイアに。


#98


090


111
映画「パトレイバー」とコラボのドッグファイトレーシング。17位。 ホンダ世界耐久チームも頑張る。HONDA ENDURANCE RACING 33位。 au&テルル・KoharaRT 長島哲太選手はMoto2参戦中。

 長くなりましたが、私にとっては8耐もアジアロードレース選手権も全日本ロードレースも全日本モトクロスも、全て同じ気持ちで撮影しています。同じというのは、どのレースも、そのときにしかない大事な一瞬ということです。

 6時間55分でも8耐、1つのレースにすぎませんが、スプリントとは違って長い準備期間、レースウィーク、疲れが極限のなかで人間模様が交錯し、それぞれの本音やわがままがぶつかり合い、チームとして、ライダーとして成長してより絆が深まる。ただ一つのレースに過ぎないけれど、同じ目標をもって進む人たちには、8耐ってシーズンの中ですごく重要な位置を占めているレース。

 最高の笑顔で終われたチームは、来年もそれを超えるような伝説を作ってたくさんのファンを喜ばせてほしいと思う。悔いの残ったチームは、今年できなかったこと、やり残したこと、捨てられない思いが一つでもあるなら、また立ち上がって来年の8耐に向かって進んでいってほしいです。

 なんだかんだ、8耐って・・・ね。



●鈴鹿8耐の公式リザルトは鈴鹿サーキットの8耐サイトでhttp://www.suzukacircuit.jp/8tai/御確認を。

8耐に華を添えたきれいなおねーさんたちは、次ページにてんこ盛り♥