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ヤマハ
※こちらの動画が見られない方、もっと大きなサイズで見たい方は、YUOTUBEのサイト「http://youtu.be/KxQj3o02hfQ」で直接どうぞ。

 マスコミ、ジャーナリスト向け試乗会も終了し、このWEBミスター・バイクだけでなく、これからいろいろなメディアにヤマハYZF-R25の記事が載ることになる。そこでは「とうとう」「やっと」「待っていた」という言葉が多く使われるのではなかろうか。250カウル付ロードスポーツ復権の流れに、ずっとヤマハは乗れてこなかった。ヤマハファンは困っていたのである。待ったかいがある。YZF-R25はそう表現してもいいだけのものに仕上がっていた。

 姿はYZF-R1を頂点にしたRシリーズの雰囲気。特にライバルより確実に切れ上がったテールに思い切りの良さを感じる。近くで見ると、細い車体ながら写真よりもグラマラスだ。MT-07でも見られた、表面処理が違う外装をミックスし、光の反射の違いで立体感が際立っている。個人的な嗜好だけど、斜め後ろから見たルックスがとてもいい。サイドカウルの処理、上から見ると菱型のテールカウル、逆スラントヘッドライト周り、ミニマムな車体の中に、うまく独自性を出していると思う。

 デザインの妙と言っていい部分は、燃料タンクの頂点がハンドルグリップ位置より高いところにも。跨ってみると、すぐに判るほど、実はアップライトなハンドルポジションで前傾はまったくきつくない。オートバイ趣味に入って最初の機種になる可能性も高いこともあり、取っ付き易さを考慮したもの。だけど燃料タンクの頂点よりハンドルグリップ位置が低いことで、単体の静的ルックスではスポーツモデルに必要な前のめり感が出て、一方ライダーが乗った動的なルックスでは腕との間に大きな隙間が出来ず、楽ちん姿勢ながら牧歌的に見させない巧みさ。

ライダーの身長は170cm。『体重70kgの私で両足はカカトまでべったりとはいかないけれど(残念ながら同身長の標準的な人より足が短いので……)、7割~8割がた足裏が接地するシート高』(濱矢文夫)
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 ステップの位置は、ヒップポイントから少し前にあり、膝の曲がりもきつくない。ライバルのカワサキNinja250と似たポジションで、YZF-R25の方がハンドル垂れ角は小さいか。身長170cm、体重70kgの私で両足はカカトまでべったりとはいかないけれど(残念ながら同身長の標準的な人より足が短いので……)、7割~8割がた足裏が接地するシート高。車体が軽いこともあり、ある程度足が届けば不安を感じることはないと思う。ハンドルも充分に切れて、戦闘的な見た目とは裏腹に優しい。今風の表現をすればツンデレである。試乗現場でどこからか「もっと前傾にしてほしい」という意見が耳に入ったけれど、マーケットを考えるとこれで納得できる。カスタマイズという手もあるし。

 後発だけあって、そつがないと思ったのは、ギアポジションが表示されること。これは、とりわけビギナーにはとてもありがたい。細かなところだけど、サイドスタンドが出しやすい形状なのも気に入った。36psを1万2千回転で発生して、レッドゾーンは1万4千回転からのクラス最強の動力性能、軽快なハンドリング、というスポーツ性の部分に注目がいくけれど、こういう何気ない装備に感心した。ライバルと市場をよく研究している。もし私が購入して使うならば、リアに荷物を積む時に、タンデムステップホルダーの部分しか荷物積載用コードやネットなどを引っ掛けられそうになかったのが、ちょっとだけ残念に思うかも。もしかしたらリアフェンダーが使える? 決められた時間内だけの試乗だったので、これはいずれ要検証。シートベルト以外に後ろの持ち手もテールカウル周りにはない。性能と趣味性を重視した、よりスポーツ走りにこだわったと説明されたことを考えれば理解も出来る。

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メーターは、左にアナログ回転式のタコメーター、右にデジタル表示の速度計、さらに中央にはシフトタイミングインジケーターを採用。その他にも便利なギアポジションインジケーター、燃料計、水温計、瞬間燃費や平均燃費、時計、トリップ1、2、オイル交換時期などを表示可能なマルチファンクションメーターを採用。
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マスフォワードシルエットのフロントには、R-DNAでデザインされた二眼ヘッドライトを採用。 スリムなテール周りデザインを可能としたLEDテールランプの採用。被視認性も向上。
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「R-DNA」はこんなところにも。間もなくY’S GEARさんがバックステップキットも用意してくれるはず。 スリムなテール周りのデザインの割には、ETCはもちろんちょっとした小物なら収納可能なスペースが現れる。
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用意されたカラーは3色。イメージカラーといえる「ディープパープリッシュメタリックC(青×銀)、ビビッドレッドカクテル1(赤×白)、そしてブラックメタリックX(黒)。 Y’S GEARのアクセサリーを装着したモデルも展示。スポーツスクリーン、12,960円(税別、以下同様)、サイドスライダー、13,500円、シングルシートカウル(ブラック)、16,200円、フォークキャップ(ガンメタ)、4,104円、ピボットカバー(ガンメタ)、5,400円、スイングアームスプール(ガンメタ)、4,860円、ライセンスプレートホルダー、17,280円などが用意されている。バックステップキットとヒールプレートキットはまだ、参考出展。

 新開発の水冷並列2気筒エンジンは、高回転が得意と言われる180°クランクを採用。圧縮付近で、ピストンとコンロッドの傾きが少なくなる、オフセットシリンダーや、鋳鉄ライナーを使わないオールアルミのDiASilシリンダーなどヤマハお得意の技術が使われている。スロットルを大きく開けて加速してみても、1軸偶力バランサーも入っていることもあり、体に伝わる不快な振動はほとんど感じられず、いとも簡単にレブリミットまで到達する。低回転から中回転までは、強すぎず弱すぎず、ギクシャクせず走れる必要なトルクは出ている。面白いのは中回転。具体的には7千回転付近から、1万3千回転までが本領発揮だ。力強さを増しながら気持ちいいほど伸びていく。走りながら、クラス最強出力だと実感出来た部分だ。速い、そしてその時の甲高い音も雰囲気があっていい。

 フロントはインナーチューブ径Φ41mmの正立タイプフォークで、キャスター角25°00′はクラス内でいちばん立っており、トレールは95mm。リアサスペンションは、長いスイングアームにリンクレスのモノクロスサスペンション。日本人はスペックに弱いところがあって、リンクレスはいかがなものか、と思う人は少なくない。危惧するなかれ、試乗コースは大きなギャップやうねり、凸凹はあまりない路面ではあったけれど、取り付け角度、ショックアブソーバーの性能もあって、長いスイングアームは初期からしなやかに動く。ペースを上げても、突っ張って路面追従性が悪くなるような印象を持たなかった。動きの良いフロントフォークはブレーキをかけてフォークが沈む時、リリースした時の戻りもスムーズで不安にさせない。エンジンパワーが生む速度に対して、車体と足周りのバランスがとれている感じ。試乗前半は所々にウェット部分が残るコース状態だったが、タイヤのグリップ状態を把握しやすく、恐る恐る、な気持ちはすぐに消えた。

 とにかくハンドリングはスポーティー。倒しこみ、旋回、どれも身のこなしが軽く、ステップがアスファルトと接触するバンク角でも、安定感は抜群だ。クローズドコースだったので、エンジンを高回転に保ち、気兼ねなく攻めていけ、走りに集中して楽しんでいる自分に気がついた。180°クランクだから不等間隔爆発のエンジン特性と相まって、トラクションは良好で、コーナー脱出時にスロットルを開けやすい。マスの集中化や、重量バランスを前後、50:50にするなどのこだわりが、走りに表れている。シフトタイミングインジケーターがメータートップにあって、光るのがすぐに判って、ストレートでは体を伏せ、それを合図にシフトアップ。速度がぐんぐん伸びる。

 作りこまれたデザイン。ポジションなどの快適性。ギアポジション表示などの装備。扱いやすく、高回転での爽快な伸びが味わえるクラス最強2気筒エンジン。とてもスポーティーなハンドリング。価格もライバルと変わらないときた。取りこぼしがないと思うほど。「毎日乗れるスーパーバイク」というコンセプトに大きく頷いた。250にこの強力で魅力的な1台が加わり、また一段と盛り上がりそうな気配だ。

(濱矢文夫)

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■YAMAHA YZF-R25 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,090×720×1,135mm、ホイールベース:1,380mm、最低地上高:160mm、シート高:780mm、車両重量:166kg、燃料タンク容量:14リットル●エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:60.0×44.1mm、圧縮比:11.6、最高出力:27kW(36PS)/12,000rpm、最大トルク:23N・m(2.3kgf-m)/10,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:TCI(トランジスタ式)、始動方式:セルフ式、潤滑方式:強制圧送ウェットサンプ●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:25°00′、トレール:95mm●サスペンション:前・φ41mmフォーク、後・スイングアーム(モノクロスサス)●ブレーキ:前・油圧式シングルグディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・110/70-17M/C 54S、後・140/70-17M/C 66S。●メーカー希望小売価格:556,200円。


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