武さん「Baja 1000 からBaja500へ」を走るの後編は「武さんのホリデー」

●文-武さん ●写真-koji kawanami・Take San

なぜ前編と後編に分かれたのか。答は簡単。ここからはレースの話ではなく、単に観光旅行だから。
6回もBaja半島を訪れているのに、エンセナダの町の様子は全く判っていない。いつも夕方ホテルに到着し、ツーリング時は朝早くにバイクに乗って次の目的地に向かって出発。レースの時はホテルの中庭でマシンの調整とメンテとプリランで終わっていた。
明確な目的を持って訪れていたので、それを後悔している訳ではないのだが……

WEB Mr.Bikeオフロードチームワークスライダー? ごぞんじ武さんの“Baja 1000”参戦記の後編は武さんの観光記。

 
 エンセナダへの道は、2輪とチェイスする訳でもないので、ゆっくりと移動した。途中、山の中のレストランで昼食を摂り、まったりとした。ここはレースコースの近くではないが、レースを終えて戻るチームが立寄って食事をするらしく、ご多分にに漏れず窓には沢山のチームのステッカーが貼り付けてある。日本でも見た事のある毒蜘蛛のようなステッカーもあった。レストランの子供にステッカーをせがまれ、妹の分まで渡した。

 
 エンセナダのホテルは、一昨日まで泊まっていた所に飛び込みでお願いしてチェックイン。洗車も通常の洗車場では10ドルの所を、2ドルで使用させてもらえた。

※以下写真をクリックすると違うカットが見られたり、大きくなったりします。



チャーハンみたいなご飯と必ず添えられている豆の煮物と野菜


とてもシャイな女の子でしたが、もしかしてポーズ?
チャーハンみたいなご飯と必ず添えられている豆の煮物と野菜と肉の煮物です。味はイマイチでした。 とてもシャイな女の子でしたが、もしかしてポーズ?

 翌日は、本当の観光。といっても、超有名な観光地ではなく、ちょっとした港があるだけのマイナーなリゾート地なので、これといった名所はない。ネットで調べると、なにやら“潮吹き”を見る事が出来るらしい。早速そこに向かって走る。ホテルから1時間ほど南下した海岸沿いの小さな集落の先にそれはあった。

 車を有料駐車場に入れて昼飯。またもやタコス。今回は海辺という事でフィッシュタコスにする。プリプリのエビのフライと白身魚のフライをオーダーすると、名前を聞かれた。出来上がったら名前で呼ぶらしい。日本やアメリカのようにナンバーじゃない所に親近感を感じた。味は勿論おいしい。上にネギのような物を油で揚げたものが乗せてあって、これがまたおいしい。

 満腹になり幸せな気持ちで潮吹きに向かう。
 通路の両サイドにはびっしりとお土産屋が立ち並んでいる。織物がメインだが、中にはカラフルな陶器やお菓子もあり、観ているだけでも楽しい。右下のお菓子の写真の真ん中あたりのおにぎりのような物は、ヤシの実の果肉を細く切って丸めて焼いたものだって。焼きおにぎりかと思ったよ。

 5分ほど歩くと沢山の人が集まっている。どうやらここが目的の潮吹き場所らしい。
 1分に1回くらい吹くらしいが、今日は波が穏やかなので、ちょっとしか吹かないようだ。潮吹きのメカニズム等の案内看板は見当たらなかったが、波が広い場所から穴に入り、狭い出口で一気に吹き上げるみたいだ。

 結構観光客が多く、車のナンバーを見るとアメリカ半分メキシコ半分という感じで、観光バスも何台か来ていた。マヤの民族衣装で踊る人や、ペルーの楽器に似たもので音楽を奏でる人もいて、結構にぎやか。

 帰りは地元のスーパーに寄って、お土産を物色。その近くのバザールにも寄ってみる。中古の機械類とか、安いTシャツとかが沢山ある。中には床屋さんも3、4件あったなー。地元に密着しているなーと思う。

 その後はエンセナダに戻り海岸を散策。泳いでいる人はいなかったが、砂浜は奇麗に清掃されていた。夏場には沢山の人が海水浴に訪れているんだろう。また、貸しATVもあったが、海岸は走れないようで、海岸と一般道路の間の空き地を走っていた。町中にもお土産屋さんが軒を連ねている。観光客用に馬車も走っていた。

 市内にもアメリカから来た観光客が多く、人気のお土産は手作りのミサンガだ。見ている前で5分ほどで指定の名前を編み上げてくれて3ドル。前にオホスネグロスの交差点付近で見かけた少年のミサンガ売りは、ひとつ5ドルだった。交通費が2ドル加算されているのだろうか? 高い。
 飲み物も持たずに炎天下でいっしょうけんめい仕事をしていたので、チーム員3人で一個ずつ購入、飲み物もあげた。もちろんステッカー付きで。



海岸
エンセナダの海岸は奇麗に清掃されていて、気持ちが良い。


フィッシュタコス
フィッシュタコス 旨かった。


お土産屋
Bajaにはこの様な土産物屋さんが軒をつらねている。


お菓子
カラフルなお菓子屋さん。


陶器
陶器の土産物もカラフルな色使いです。


潮吹き


潮吹き
結構な観光客です。 潮吹きの入口のゲート。


馬車


子供
観光馬車は町中でよく見かける。 ミサンガを器用に作る少年。

 ここで、メキシコに行く予定ある方にひとつ注意を。
 メキシコの道路には信号が少ない。その代わりに赤地にALTOの看板を頻繁に見かける。これは「止まれ」の標識で、この手前で一旦停止し、先に止まった方が先に交差点に侵入出来るシステムだ。これを守らないと検挙される。周りの状況によっては非常に見にくい物もあるので、交差点に近づいたら要注意。
 信号がほとんどないので、従って信号待ちもほとんどなく、交通量が少ない場所では合理的なシステムだが、慣れない日本人は特に気をつけましょう。

 もうひとつ余談を。
 ラリー当日、288マイル付近で、俺がチーム員の静止が判らずに走り去った時の事。慌てたチーム員は速攻で俺を追いかけたのだが、その時にスマホを落とした。帰りに探してみたら、なんと50cmほど横にタイヤの轍があったが、踏まれることもなく無事発見された。こんな事もあるんですねー。



ALTO


スマホ
町中に沢山ある止まれの標識。 よく壊れなかった(踏まれなかった)。

 この日は夕方まで、エンセナダでホームデポに行ったり、その隣のモール街をうろうろしたりして過ごした。アメリカ資本の店が進出してはいるが、まだまだ客は少ない。こんなところにも所得の差が現れている。

 夕方にエンセナダを出発して、ロスに向かう。ティファナで間違って高速道路を降りてしまい、道に迷いながらなんとかボーダーに到着したが、そこで並んだ車列が間違っていた。事前申請で許可を得た人が並ぶラインに入ってしまったのだ。イミグレの若い担当官はパスポートを見ながら、「しょうがない日本人だな……」みたいな感じで、処理に手間取っていると上司らしい人が現れ「訳の判らん奴は、強制処分だ」みたいな事を言われた。ボンネットにBCSだったかCBSだったかの看板をつけられて、パスポート5人分をワイパーにはさまれて、次のゾーンへ誘導される。

 ここでしばし待機。周りの車はボンネットを開けたり、トランクを開けたり、荷物の中を詳細に調べられたりと結構厳しい検査を受けている。両手を後ろに回して手錠をかけられTシャツの若者が連行される。これはちょっとやばいんじゃねー。係官の目つきも尋常ではない。

 
 2時間ほど待機している。と、中でも目つきが最悪の係官が近づいてきて「お前らが長い時間待たされているのは判ってる。もうちょっと待て、なんとかするから」みたいな事を行っている。おまけに「俺は軍隊時代にニッポンの横須賀にいた事がある。六本木も知っているよ」と話している。どうやら我々は間違ったラインに並んだ懲罰の意味でここに待機させられたらしい。従って、車の内部検査も無く、パスポートのチェックだけで解放された。

 
 ここの出口にあるスピードブレーカーは信じられないほど高く、乗り越すのが一回では出来ないほどだった。やはり逃げられないようにいろいろな仕掛けが隠されていたヤバい場所だったんだなー。いい(怖い)経験だった。

 この後はハイウェイを北上し、途中のサービスエリアで仮眠でもと思ったのだが、車内で5人の仮眠には無理があるので、ハイウェイをおりて、モーテルへ。小さいがアメリカの映画に出て来る様な典型的なモーテルで、部屋は奇麗で特にベットの寝心地は今回のホテルの中では最高だった。



モーテル
映画に出て来る様なモーテル。夜中に隣の部屋から銃声とかが聞こえてきそうな雰囲気がたまらない。

 翌朝はピアの先端のレストランで朝食を摂り、ロスのモトフープスに戻り、マシントラブルの原因究明を行う。コンロッドのサイドメタルが粉々になって大端部が焼き付いていた。エンジンオイルは規定量が入っていたので、寿命かな?



原因究明


原因究明


原因究明


原因究明
マシントラブルの原因究明中。プラグにはアルミの細かな粉が? クランクは経年劣化によるサイドメタルの焼き付きか?

 翌日は、MSRのショップに行ってみた。
 用品や車両が沢山展示されていた。円安のせいなのか、完成車の値段が安い。
 ショップの2階はミュージアムになっていて、マルコム・スミス氏の歴史を振り返る事が出来る展示物が沢山あった。
 午後は、HRA-LAの方の案内で、アメリカンホンダのワークスチームのワークショップを見学。本家のHRCのショップよりも、広くて奇麗で機能的だった。



アメホン
来年一月から開始されるスーパークロスに向けてマシン制作も佳境でした。

 この日の夜というか、翌日の午前0時10分、LAX発のANA機で日本に戻る。
 空港でチェックインすると、案の定荷物の重量オーバーで+40ドルが発生。何とかしてとお願いしてみるが、ダメー。その代わりといっては語弊があるかもしれないが、エコノミーからプレミアムエコノミーにアップグレードされた。なんでだろう?「荷物が2個から1個に減らされてしまったので、次回からはJALにする!」なんてだだこねてごめんなさいねー。ありがとうANAさん。

 という事で無事日本に帰ってきました。

おしまい。