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ホンダ タクト・タイトル
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新型タクトの発表会。壇上は、右から本田技研工業株式会社二輪事業本部長の青山真二さん、株式会社ホンダモーターサイクルジャパン代表取締役社長の加藤千明さん、今後の“eSP”システムの展開計画などを中心に説明していただいた本田技研工業株式会社二輪事業本部スクーター事業統括の今田典博さん、そして株式会社本田技術研究所二輪R&Dセンターでタクト(Dunkも)の開発責任者を務めた三ツ川誠さん。
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16年の歳月を隔てて蘇った、50スクーターのレジェンド「タクト」。新時代にふさわしいアイドリングストップシステム(タクト・ベーシックは除く)や国内50クラスの“eSP”第2弾として開発された新エンジンを搭載。 歴代のタクトが勢揃い。新型「タクト」は8代目ということになる。

 新型「タクト」の発表にあたって配布された資料には、原付一種スクーターの市場背景のヒストリーが詳細に取り上げられているので、ちょっと長くなるが、まずはそれから紹介していこう。

※以下ホンダの発表資料から--

『Hondaは、若い人はもとより、幅広いお客様が手軽に扱え、二輪車のある豊かな生活の提案として、小型モビリティーの提供に積極的に取り組んでまいりました。その変遷を時代背景とともにご紹介いたします。

 1975年当時、113万台規模の国内二輪車市場は、1976年にHondaがファミリーバイク市場を創造する目的で「ロードパル」を発売して以降、他社の参入も加わることで成長が加速され、初代「タクト」を発売した1980年には、国内販売台数は年間約237万台、その後82年には328万台と市場規模を拡大させてまいりました。

 この市場規模拡大の主な要因は、80年代のモータースポーツの隆盛による男性のスポーツバイクへの興味関心の高揚とともに、女性の本格的な社会進出に伴い、その活動範囲を広げる簡便なコミューターへのニーズが高まったことが考えられます。

 その後Hondaは、時代の要請に応え、経済性に優れ利便性の高い排気量50ccの第1種原動機付自転車(以下原付1種)の市場に、個性あふれる製品を開発し投入してまいりました。中でもスタンダードスクーターとして中心的な役割を担った「タクト」は、お客様のニーズとともに、乗り心地や利便性、上質さを進化させてきました。

 また、次代を見据え高い環境性能と力強く扱いやすさも兼ね備えた原付1種スクーターへの4ストロークエンジン搭載についても積極的に取り組んできました。1982年の「スペイシー50」、1983年の「ボーカル」、1986年の「タクトアイビー」など4ストロークエンジンを搭載した50ccスクーターを発売してまいりました。 さらに、1999年7月には、量産二輪車として世界初のアイドリングストップ・システムを採用した水冷・4ストローク・単気筒50ccエンジン搭載の「ジョルノクレア・デラックス」を発売しました。

 そして、2014年には、高校生など若者層を中心に、通学環境やスクーターに求めるさまざまな要望を徹底的にリサーチし、既存のスクーターにはない新しいスタイリングや力強く環境性能にも優れた新開発のエンジン「eSP」を搭載した「Dunk」を発売。若い人たちを中心に幅広い方々に受け入れられています。

 このように魅力ある商品を開発し市場に積極的に提案してまいりましたが、国内二輪車市場は、駐車場不足などをはじめとした利用環境の悪化を背景に、規制対応などによる製品価格の上昇や、経済環境の悪化などの要因も重なり、2014年では約41万7千台(国内4社合計)の市場規模、原付一種の市場は約22万9千台となっています。

 将来の二輪車市場の創造には、二輪車に対する利用環境の改善や各種規制の緩和を訴えながら、より多くの方々にこの原付クラスの魅力と共感の輪を広げ、有用性を享受していただくことが必要不可欠です。

 今回、国内二輪市場の再活性化にチャレンジするため、常にスタンダードスクーターとして新技術を投入し、新たな需要を創造してきた「タクト」のネーミングを16年ぶりに復活させました。これには、誕生当初の開発の想いと共に、スタンダードスクーターの原点に立ち返るという意志を込めています。力強く環境性能に優れた4ストロークエンジン「eSP」を搭載し、あらゆる世代に受け入れられるデザインや装備で、新しく誕生したスタンダードスクーター「タクト」の魅力をご理解いただき、ひとりでも多くのお客様に「タクト」のある楽しい生活を送っていただければと思います。』

--以上ホンダの発表資料より。

 こうして具体的な数字をあげて説明されると、改めてバイクブーム当時の凄まじさと、現在の“冬の時代”の落差が鮮明に伝わってくる。現在は若干ながらも回復傾向にある自動二輪車や原付二種の状況に比べて、原付一種の凋落ぶりはメーカーさんならずとも気になるポイントだ。

 次世代のバイクユーザーとなる若者にまずは原付から関心を持ってもらわなければ、バイクは趣味の部分だけで完結してしまう“特殊”な乗り物になってしまう。また、かつては多くの女性ユーザーの姿が見られた原付一種スクーターだが、今や主婦層にわずかに残っているだけ。そんな現状を改善するべくメーカーさんはあれこれ頭を痛めているという現状だろう。

 さて、市場の現況はともかく、ホンダが“本気”で取り組んでくれた原付一種スクーター、新型「タクト」を紹介しよう。

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伝統の原付一種スクーター名で10数年ぶりに蘇った「タクト」。エンジンはDunkでも採用されたeSPを搭載。メーカー希望小売り価格、172,800円。1月23日発売。 こちらは、アイドリングストップ機構を省略し、低シート高を採用した廉価版「タクト・ベーシック」。メーカー希望小売り価格、159,840円。1月23日発売。
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 エンジンは、Dunkへの搭載で定評の“eSP”を搭載。4.5馬力の動力性能と優れた環境性能を両立させたeSPならではの新世代エンジンの採用だ。

 OHC2バルブエンジンは、カムとの摺動面をローラー化し、摺動抵抗を減らす“ローラータイプロッカーアーム”を採用するなどにより動弁系全体のフリクションを低減。燃焼エネルギーを効率的にクランクシャフトに伝えるべく、オフセットシリンダーも採用。ラジエーターの冷却効率を高めることでラジエーター背面にあるクーリングファンを小型化し、空気攪拌抵抗を低減。ミッション内部の軸受け部3ヵ所にボールベアリングを採用して各軸の転がり抵抗を低減しているという。新世代のエンジンに要求されるのは、まずはメカニズムロスの低減や、効率アップなのが良く分かる。

 またタクト・ベーシックを除くタクトモデルには、停車後3秒で自動的にエンジンを停止する“アイドリングストップ・システム”が標準装備された。新たな特長としては、セルによるエンジン始動時のバッテリー電圧をモニターし、バッテリー電圧が低下していると判断した場合は、アイドリングストップ機能を停止し、バッテリー上がりの防止を図るという。また、スロットル開度やエンジン回転数に応じて、燃料噴射と点火時期を最適制御するPGM-FIによる燃料噴射を採用。これらの低燃費技術により、CO2の低減につながる燃費性能の向上も実現しているという。ちなみにキックで始動した場合はアイドリングストップ・システムを作動させないという賢さも備えているという。

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LCDディスプレイを備えたメーターパネル。時計機能やエンジンオイルの交換時期を表示、設定する機能、燃料計などを表示。 集中コンビスイッチ部に配されたワンプッシュ式シートオープナーボタン。
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ライディングポジションは、年齢のみならず、性別や体格などを問わないより幅広いユーザーに「私にも乗りやすい」と感じてもらえるものに。 Dunkのスペース効率に優れたフレームボディを共用しながら、外装部品をシンプル化することで車体重量はDunk比で2kgマイナスの軽量化を達成。 フロアスペースは最短部でも220mmを確保して足回りの自由度を確保。

 車体周りでは「軽量コンパクト」をテーマに、新世代のeSPエンジンの採用と、Dunkのスペース効率の優れたフレームボディを共用、さらには外装部品の構成を極力シンプル化することで、車体重量をDunk比で約2kg軽量化(タクト・ベーシックでは3kg)。高齢ユーザー層にも気軽に使える取り回し性を目標としたという。

 装備面では、メーター内に通勤、通学、待ち合わせなどに便利な時計機能も標準で備えたLCDディスプレイを採用。エンジンオイルの交換時期なども表示、設定できる機能や燃料計を装備。シートは集中コンビスイッチ部に装備されたシートオープナーによりワンプッシュでコントロールが可能。シート下ラゲッジボックスの容量は20リットルを確保。タクト・ベーシックでは容量が19リットルとなるが、十分なシートクッション厚を確保しながらシート高をノーマルのタクトより15mm下げ、705mmの低シート高を実現している。リアキャリアも標準で装備。車体左側のフロントインナーラックは500mlのペットボトルが収まるサイズに。

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タクトではフルフェイスも収納可能な20リットル容量のシート下ラゲッジボックスを装備。タクト・ベーシックでは、シート下のラゲッジボックス容量を19リットルとすることで、シートクッション厚を確保しながら、シート高をタクトより15mm下げ、705mmの低シート高を実現している。リアキャリアは標準で装備。
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■HONDA タクト〈タクト・ベーシック〉(JBH-AF75)主要諸元

●全長×全高×全幅:1,675×670×1,035mm、ホイールベース:1,180mm、最低地上高:105mm、シート高:720〈705〉mm、車両重量:79〈78〉kg、燃料タンク容量:4.5リットル●エンジン種類:AF74E 水冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ、排気量:49cm3、最高出力:3.3kW(4.5PS)/8,000rpm、最大トルク:4.1N・m(0.42kgf-m)/7,500rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション(PGM-FI)、始動方式:セルフ式(キック併用)●トランスミッション形式:無段変速(Vマチック)、クラッチ形式:乾式多板シュー式●フレーム形式:アンダーボーン●ブレーキ:前・機械式リーディング・トレーリング、後・機械式リーディング・トレーリング、タイヤ:前・80/100-10 46J、後・80/100-10 46J●製造事業者:Honda Vietnam Co., Ltd.、製造国:ベトナム。

■ホンダ タクト・ミニヒストリー

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初代(1980年~)

 初代は、次代を見据え、3.2馬力の2ストロークの強制空冷エンジンに、容易な始動性が得られる「セルスターター」(タクトDX セル付モデルに採用)や「自動チョーク機構」、スムーズな走行を実現する「自動変速機」(無段階変速機Vマチック)、さらに日常の保守点検の負担を軽減する「無接点式CDI 点火装置」、「自動開閉式燃料コック」など数多くの新技術を組み合わせて採用するなど、扱い易いスクーター特性を実現。その結果発売以来約2年間で72万台の販売台数を記録。1981年7月にはサイドトランクを設けたフルカバードタイプの「タクト・フルマーク」を追加し発売した。

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二代目(1982年~)

 二代目は、より洗練されたデザインに変更し、力強く燃費性能を向上させた新設計エンジン(4馬力)にスムーズに自動変速するトルクセンサー付きVマチックを組み合わせて搭載するなどフルモデルチェンジ。さらに日常の
利便性を高めるために、視認性の高いメーター類や被視認性の高い灯火器など充実機能を装備。
 また、「タクト」に加え、一代目からラインナップに加わった「タクト・フルマーク」「タクト・フルマーク・カスタム」をラインナップに加え3タイプを同時発売した。

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三代目(1984年~)

 三代目は、「タクト」「タクト・フルマーク」の2タイプ設定とし、1985年騒音規制(72dB)に適合させ、より静粛性が高く力強いエンジン(5馬力)を搭載。それまでの直線基調のデザインからより親しみやすいよう曲線、曲面を基調としたデザインに一新。
 装備面ではフロントパネルの内側に施錠できるインナーボックスを採用するなど、幅広い用途で扱い易く高級感あるスクーターとしていた。

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四代目(1987年~)

 四代目は、「タクト・フルマーク」として1986年の原動機付き自転車のヘルメット規制に伴い、フルフェイスヘルメットを収納できる大容量スペースを確保した『メットイン機構』をシート下のボディに内蔵しながらも流麗なデザインを両立させた。さらにエンジンは燃焼効率と掃気効率に優れた新設計の6ポートシリンダーの採用で5.8 馬力を達成。ヘッドライトには加圧クリプトンガス封入バルブのツインフォーカスヘッドライトを採用し照射範囲を一段と広げるなど細部の使い勝手や乗り心地も向上。

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五代目(1989年~)

 五代目は、ネーミングを「タクト」とし、駐車時のメインスタンド操作をキーを回すだけで簡単に行える画期的な機構として、量産車として世界初の「電動式オートスタンド」(スタンドアップ機構)を搭載。この機構は、軽量・コンパクト性を求められるスクーターの特性に合わせた構造にするとともに、少ない消費電力で作動するよう開発。この『スタンドアップ機構』は、毎回の駐車のわずらわしさを大幅に軽減する、使う人の立場に立った機能だった。
 この利便性の高い『スタンドアップ機構』に加え、メットインスペースの容量アップ(22L)や大型燃料タンク(4.8L)、新型の高性能6馬力2ストロークエンジン、より快適な走りと乗り心地を生む足廻りなど、スクーターの利便性をさらに広げる数々の機能を充実させながら、洗練された調和のとれた個性的なデザインを実現した。

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六代目(1993年~)

 六代目は、「タクト」「タクト・スタンドアップ」「タクト・S」の3タイプ設定とした。フラッシュサーフェスを基調に、シャープでエッジの効いた洗練されたデザインとし、さらに鮮やかなツーコート(2層)塗装を採用することによって、より質感の高いものとした。また、従来同様の大容量のヘルメットスペースに加え、5Lの燃料タンク容量を確保。さらにゆったりとしたフロア・スペースを確保するとともに、シート高を720mmに抑えながら新形状のシートを採用することで足つき性を良好なものとした。
 「タクト・S」の前輪には制動フィーリングに優れた油圧式ディスク・ブレーキにTLAD(アンチダイブ機構付きトレーリング・リンク式サスペンション)を装備し快適で軽快な走りを実現。さらにタクト・スタンドアップには、従来同様、駐車時のスタンド掛けを、メインスイッチのキーで容易に行える電動式オートスタンド(スタンドアップ機構)を搭載した。

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七代目(1998年~)

 七代目は、「タクト」「タクト・スタンドアップ」をラインアップし、フロントからリアまで流れるような曲面で構成したデザインに一新。 高級感と優しさにあふれたフォルムを実現した。さらに、座り心地の良いロングシートや広々としたフラット形状のフロアの採用で、ゆったりとしたライディングポジションを実現。
 また、新開発の空冷・2ストローク・単気筒エンジンは、キャブレターに改良を施し、混合気を薄めに設定する事で燃焼過程での有害物質の低減を図るとともに、マフラー内部に酸化触媒(キャタライザー)を設ける事で、排出ガス中のCO、HC、NOxをそれぞれ50%以上の低減を実現し、1998年10月より施行された二輪車排出ガス規制(原付1種・50cc 以下)に適合させるなど環境に優しい性能を実現しました。また、マフラーの内部構造を変更する事で、同年10月より新たに施行される二輪車騒音規制にも適合するものとしていた。
 さらに、使い勝手に優れたコンビ・ブレーキ(前・後輪連動ブレーキ)の新採用に加え、タクト・スタンドアップには、さらに操作性を向上させたスタンドアップ機構を搭載した。


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