ninja250sl_title.jpg

カワサキ
こちらで動画が見られない、もっと大きな画面で見たいという方は、YouTUBEの動画サイトで直接どうぞ。http://youtu.be/KTpdlMx7fn8

 ’80年代前半、カワサキに同じような関係の2気筒エンジンZ250FTと単気筒エンジンZ250FSというのがあったことを懐かしく思いながら、筑波サーキットコース1000での試乗を始めた。

 水冷4ストロークDOHC4バルブエンジンはD-トラッカーとKLX250に使われているものがベースになっている。低回転から中回転域までのトルクは豊かとは言えないけれど、体重70kgを乗せて前に進むことに何の不都合はない。Ninja 250より20kgほど軽い車重が効いている。そのままスロットルを開けると中回転から高回転で加速が強まり、車速は伸びていった。ロードスポーツとして高回転型に設定されており、KLX/D-トラッカーとは別ものに仕上がっている。

 最高出力は2気筒エンジンのNinja 250に及ばないが、その分、軽い。最大トルクも実は大差ない。それでもこの2台はまるで違う。Ninja 250の2気筒エンジンは低中速が明らかに単気筒エンジンのSLよりトルクが太く、シフトチェンジをサボって回転数を落としても、スロットルを開けたら速度がのってくる。一方、このSLは、とにかく回転数を上げたほうがイキイキとする。速く走ろうとするなら、ギャンギャン回して、6段変速を駆使し高回転を保ち続けてライディングする面白さがある。

 ハンドリングはNinja 250に輪をかけて軽快だ。Ninja 250だって機敏な動きで楽しく乗れるモデルなのに、それ以上。とにかくエイヤっとコーナーに突っ込んでもなんとか曲がれてしまう感覚は、これぞ単気筒スポーツといった感じ。まさに自由自在。ブレーキも走る性能に対し見合った効きで、積極的に飛ばして走れる。前後の足廻り、サスペンションは、タイヤのグリップ力、エンジンの力、車体とのバランスがとれている。豪華でも高剛性でもないけれど、このクローズドコースで私の出せる速度で、著しく物足りなさを感じることはなかった。もちろん欲を言えばキリがないが、充分。というか、Ninja 250より前傾姿勢になるポジションで、高回転を維持し、コーナーリング速度を保って、性能をフルに使って走るのが楽しくて、楽しくて。

12.jpg

 コンパクトで女性や小柄な男性でも気軽に乗れるのと、リーズナブルな価格からエントリーユーザー向きの立ち位置なのは明白だけれども、“初心者向き”と断定して、ベテランライダーにはツマラナイなんて言えない。これはいわゆる乗れる人が乗っても、このままでちゃんと遊べる素質を持っている。

 個人的な好みだけど、試乗した筑波サーキットコース1000では、2気筒エンジンより単気筒エンジンのNinja 250SLが気に入った。コーナーの立ち上がりから短い直線では確実に2気筒の方がパワフルで速い。しかしタイトに続くコーナーでは、Ninja 250SLの振り回せる感が勝り、心が踊る。このNinja 250SLに乗った後に、Ninja 250に乗ると、コックピット周りの見た目、より余裕のあるライディングポジション、乗り心地、スロットル操作に対するエンジンのスムーズさなどから高級感すらあった。

 同じカテゴリーに、なぜ2台も車種を投入するのか、という思いも、乗ってからは消えた。見た目以上に別のオートバイ。一般道では、2気筒エンジンのNinja 250の方が楽なアップライトポジションで、低中回転のトルクもあるから使い勝手は良さそうだ。けれどこのNinja 250SLの軽快性はライダーの技量を問わず大きな魅力だ。コースではなくストリートで乗るまで、自分ならどっちを選ぶか、という問いの答えは出さずにいよう。ここで乗った限りでは、楽しさにおいて2気筒エンジンに負けてはいなかった。ただ間違いなく言えるのは、Ninja 250でも「大きいなぁ」と感じていた人には朗報になる。ヤマハがYZF-R25を発売し、4社が出揃ったと思っていたら、カワサキはNinja 250SLという別の一手を国内市場に出してきた。さすがフルフェアリング250スポーツ復権のきっかけを作ったメーカーである。

(試乗:濱矢文夫)

IMG_0233.jpg IMG_0227.jpg IMG_0225.jpg
IMG_0264.jpg IMG_0270.jpg IMG_0276.jpg
大好評の250Ninjaシリーズに、「シンプルでレーシーなピュアスポーツ」Ninja 250SLが登場した。車名に採用された「SL」は“スーパー・ライト”の頭文字から付けられたと説明されており、ライトウェイトスポーツの性格を良く表している。 Ninja 250SLに搭載されたパワーユニットは、力強い低中速回転域と心地よいピックアップ特性と共に、高速回転域での鋭い反応が特徴のピークまで心地よく伸びるエンジンキャラクターとされている。また、軽量でスリム&コンパクトな車体を実現するために採用された新設計のトレリスフレームは、軽くてクイックなハンドリングに加え、アグレッシブなスーパースポーツデザインも醸し出している。
IMG_0260.jpg IMG_0319.jpg IMG_0283.jpg
ボディスタイルは、スリム化されたパッケージでライダーとタイトフィットするデザインを採用。トップブリッジ下にマウントされたクリップオンハンドルがスポーツライディングを想起させてくれる。Ninja一族のDNAを受け継いだ魅惑的なフルフェアリングは「スリムなパッケージ」「ダイナミックさとエッジの効いたライン」が補完し合い、Ninja 250とはまた異なる雰囲気の“Ninjaスタイル”にまとめあげられている。アグレッシブで軽快感のあるシングルバルブ式ヘッドライト、シャープなウインドスクリーンやスポーティーなホイールなどでスーパースポーツルックスを演出している。ラジエターファンカバーによりラジエターを通過した熱気をエンジン下部に逃がすことでカウル内の温度上昇を低減、ライダーの快適性に貢献している。コックピットは、モダンでレーシーなルックスを演出するオールデジタルの計器類を採用。
IMG_0216.jpg IMG_0210.jpg
スリム、軽量、コンパクトが特徴のオリジナル・トレリスフレームは、軽快で鋭敏なハンドリングとスポーツモデルらしい機能美を併せ持っている。Ninja 250より20kg以上も軽量な149kgという車重により、俊敏なハンドリング性能を実現。フロントには、φ37mmのテレスコピック式フォークを採用、リアはカワサキオリジナルのユニトラックリアサス。これらの足回りにより、あらゆるスピードレンジと路面コンディションに対応し、安定したハンドリングとスムーズなライディングを提供してくれる。ブレーキは、フロントとリアにはペタルディスクを採用し、安定した制動力を発揮するとともにスポーティーなルックスにも貢献している。ホイールはNinjaシリーズ共通のデザイン。前100/80-17M/C 52S、後130/70-17M/C 62Sと、Ninja 250よりもスリムなタイヤを装着することによってシャープなハンドリングを実現している。
02.jpg
IMG_0187.jpg

■KAWASAKI Ninja 250SL(JBK-BX250A) 主要諸元

●全長×全高×全幅:1,935×685×1,075mm、ホイールベース:1,330mm、最低地上高:165mm、シート高:780mm、車両重量:149kg、燃料タンク容量:11リットル、燃焼消費率:定地燃費値43.0km/L、WMTCモード値31.3km/L●エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:72.0×61.2mm、圧縮比:11.3、最高出力:21kW(29PS)/9,700rpm、最大トルク:22N・m(2.2kgf-m)/8,200rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火)、始動方式:セルフ式、潤滑方式:ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:24°、トレール:90mm●サスペンション:前・φ37mmテレスコピック、後・スイングアーム(ユニ・トラック)●ブレーキ:前・φ290mm油圧式シングルグディスク、後・φ220mm油圧式シングルディスク、タイヤ:前・100/80-17M/C 52S、後・130/70-17M/C 62S●メーカー希望小売価格:459,000円(4月15日発売)


| 新車プロファイル「KAWASAKI Ninja 250SL」のページへ |


| 「短期連載250の魅力を探るシリーズ」リンク一覧のページへ |