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八郎潟のことを知ったのは小学生の時だった。国語の教科書に載っていた「八郎」という児童文学で知った。その内容は何かもの悲しいものだったように記憶する。初めてかの地を訪れたのは、35、36年前の夏だった。当時付き合っていた彼女(現女房)と東北に1週間ほどのツーリングに出かけ、八郎潟と男鹿半島もルートに組み入れた。俺はGS750EⅡで、彼女はGX400だった。三陸海岸から下北半島、青森、津軽半島と巡り、恐山や、まだ青函トンネルの工事中だった竜飛崎にも寄って、その後、八郎潟に足を向けた。
当時の俺のツーリングスタイルは、ルートや距離、宿泊地を大まかに決めるだけだったので、予測通りに目的地に着かないことも少なくなかった。そのときも特別のんびりしていたわけではないが、八郎潟に足を踏み入れた頃は夕暮れが迫っていた。タンデムではなく2台での旅だったので、時折、俺は先行して分岐点などで待つこともあった。八郎潟の長~い直線路に入ると、ちょっと飛ばしたくなり、彼女を置き去りにして先行した。一本道だし、しばらく走ったところで待っていればはぐれることはないと思ってそうしたのだった。
だが、先で待っていた俺に追い付いた彼女は、涙ながらに置いてきぼりにして行ったことを責めた。夕闇が迫ってきていたし、道のことはわからない彼女としてみれば、とても心細かったのだ。何も言わずに飛ばして消えて行った俺が悪かったのだが、そのとき、ちゃんと謝ったかな…? 「なんだよ、一本道なんだから大丈夫なのに…」と言って慰めたかもしれないが、謝罪はしなかったように思う。若気の至りとはいえ、当時の俺はそういう馬鹿な奴だった。その後、男鹿半島あたりの民宿にでも飛び込みで泊まったと思う。
八郎潟を再訪したのは5年前、前号で記した鳥海山と月山の道を走った2010年の夏休みツーリングの時だった。山形から秋田の横手、田沢湖をまわり、国道105号線~国道285号線とつないで山間を走り抜け、国道7号線を突っ切って八郎潟に到着。午後3時頃だったかな。まだ十分に明るかった。かつて彼女と走ったであろう、長いストレートを息子のNSRとサンダーバードで突っ走った。人家もちらほらあるが、ほとんどは田園で、広々としている。
八郎潟に行くなら当然、男鹿半島にも、と思っていて、その日は半島の戸賀湾にある民宿を予約しておいた。寒風山パノラマラインのことは十数年前に知って(彼女とのツーリングのときは有料だったし、走っていないと思う)、一度走ってみたいと思っていた。寒風山の標高は355mで高くはないし、規模も小さいが、パノラマラインと俗称されているだけあって、見晴らしがいい道とされていたので、○○スカイラインのように景色や眺望が楽しめると期待したのだ。近くまで行って多少迷ったが県道54号線経由で乗り入れることができた。
しばらくは両側に人家や樹林があるが、頂上に近づくとそれらは消えて草原状の山麓となる。道幅は広くないし路面もそれほどよくないが、草原地帯は爽快で、眺望のよさも抜群だ。頂上付近にある回転展望台からの眺めは最高! 八郎潟や男鹿半島、その先の日本海まで一望できる。来てよかったなあ…。景色を堪能した後、西側の国道101号線まで下り、県道55号線/121号線/59号線とつないで走る。宿に着いたのは夕闇が迫る頃だった。風呂に入り夕食をいただいてから、海岸を散歩。波の音をBGMに眠りについた。
翌日は鳥海山、月山を経て裏磐梯まで走らなければならず、進路と逆行するので少し迷ったが、いつ再訪できるかわからないし、宿の人にも勧められて、入道崎に行くことにした。8時頃だったので道は空いていたし、入道崎までの県道121号線は海沿いのグッドロードでとっても気持ちよかった。ドライブインに寄って“なまはげ”の看板で記念写真を撮り、灯台にも行って観光を満喫。そういえば「なまはげライン」と呼ばれる道もあるようだが、よくわからなかった。
121号線を引き返し、59号線で海岸べりを南下~東進して男鹿半島の西南部をグルッと回って国道101号線に。その後、国道7号線に出て右折し、秋田市内を経由して鳥海山に向かった。秋田市街を抜けたあとの国道7号線は海岸線にごく近い区間が続き、右手に日本海を眺めながら走れる。幸いお天気に恵まれ、暑気を適度に払ってくれる潮風を受けつつ、のんびりとした気持ちで、にかほ市までの道程を楽しむことができた。
八郎潟の直線と寒風山パノラマラインはもちろん、男鹿半島の海岸線を走る県道121号線と59号線も気持ちよく走れる道で、入道崎もお薦めの観光ポイントだ。またいつか行きたいと思うが、東京から距離があるからなあ…。もし行くなら季節を変えて、春か秋だな。宿は温泉旅館がいいかな、と思う。