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Ninja H2 in Street & Circuit
こちらで動画が見られない、もっと大きな画面で見たいという方は、YouTUBEの動画サイトで直接どうぞ。https://youtu.be/0iyKq4vJgus
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Ninja H2。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 前置きはさておき、試乗したのは、愛知県にあるスパ西浦モーターパークと、その周辺の公道。そう、試乗車はナンバーが付いていて、一般道も乗れたのである。カワサキの主張はあくまでもストリートバイク。“レース”というキーワードにこだわっていない。そのポジションには今年のSBKでも勝ち進んでいるZX-10Rがある。しかし、純粋なストリートモデルと言われても、戸惑うようなスペック。カワサキはハイパフォーマンスモデルとしてZX-14Rも持っている。カテゴライズする必要はないけれど、あいまいな感じが脳の中を漂う。考えてみるとブレイクスルーした新しいものを前にすると、いつもこうだ。
 
 デザインは、カワサキのこれまでのトレンドだけでなく、オートバイそのものの中でも新しく感じる。この機種のために開発された無電解メッキを利用した銀鏡塗装は、近くによると鏡のように映り込む自分がいる。昔からマフラー等に使われているブラックメッキとも違う、面白い色合い。その中に、差し色になったフレームのグリーンが際立つ。特徴的な外装デザインは見る方向でまるで異なる表情を見せる凝りに凝った造形。フロント中央にはこのモデルのために装着許可を取った川崎重工の、いわゆるリバーマークが燦然と輝いていた。
 
 カワサキ初となる片持ちスイングアーム。トレリスフレーム。新しいフロントフォーク。クラッチ上部、タービンを駆動するギアが入った部分のカバーに“SUPER CHARGER”と入った丸いプレートが誇らしくあって、奥をのぞき込むとクランクケース背面に鎮座するタービンそのものが見えた。どこもかしこも目を引く。
 
 跨ってみると、乗車しただけで、上下のサスペンションがすっーっと沈んだ。足つきは身長170cmで短足な私でも土踏まず部分より前の踏みつけ部分が接地。ハンドルグリップ位置はスーパースポーツより高めで、手前の絞りも垂れ角も適度。前傾ポジションには間違いないけれど、タイトすぎないステップ位置も含め、全体的にコンパクトながら余裕があり、きつくない。タンクのホールドもしやすく、個人的には1日中走り続けるのも無理なくこなせそう。フロントカウルのボリュームとアグレッシブな造形から、手強そうに見えるが、人が触れる部分はこじんまりまとまって、やさしい。
 

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 ブレーキと共にシースルーのリザーバータンクを持つ油圧クラッチのレバーは、やや重め。特に握り始めは、それなりに力を使う。度合いを文字にするのは難しいが、重めながら、私は都心の渋滞で握る回数が増えても大丈夫そう。
 
 メーター内のギアポジション表示で1速に入っているのを確認して、走行をスタートした。過給は低速からかかり始め、厚いトルク。回転を上昇させるとそれがどんどん高まり、998cm3とは思えないほど強烈に押し出す。3つのモードの中に3段階、合計9種類あるトラクションコントロールの働きもあり、200mmという太いリアタイヤのグリップでトラクションするけれど、その装置をOFFにすると簡単にスピンさせられる。2速に入れて、また加速。スーっと速いのではなく、お尻を蹴飛ばされたような速さ。スロットルを開けると、よく動くリアサスペンションがグイっと沈んで、そのままぐっとタイヤを路面に押し付けるように進む。
 
 スロットルをオフにすると「プシュルルルル!」とブローオフバルブの音がして只者ではない感(実際、只者ではないのだが)を演出する。回転上昇からトップエンド近くまで淀みないのだけれど、ただ、パーシャルスロットルからの開け始めに、姿勢を大きく乱すほど大きくはないけれどドンツキが出るのが気になるところか。
 
 Φ330mmのブレンボセミフローティングディスクと、同じくブレンボのラジアルマウントモノコックキャリパー&ラジアルポンプマスターのフロントブレーキは強力。カワサキのモトクロッサーKXシリーズなどに採用されていた、エアとオイルを分離加圧したKYB製AOSフォークを、ロード用に進化させたAOS-Ⅱフォークは、動き出し初期がスムーズで、奥に向けてググっと踏ん張る。リアサスペンションと相まって、速度を上げなくても程よく動いて乗り心地がいい。さらにスポーツモデルらしく伸びのダンピングが効いていて、身のこなしを阻害しない。おかげで強い減速でも、制御しやすく、コーナーでもタイヤグリップが分かりやすい。身のこなしは軽く、思うように旋回、小回り出来る。それはスーパースポーツのような剛性の高いカッチリした乗り味と、強力な旋回力とは違うもの。全体の動きが適度に柔軟で、コントロール性が高く俊敏。
 
 私の腕前では2速、3速で終わってしまうサーキットを後にして、公道に出ても、当たりの柔らかいサスで路面の荒れをいなし、乗り心地がいい。クルマと一緒にゆっくり走るのもなんら気を使うところがない。それながら一度スロットルを大きく開けると、猛烈にダッシュだ。初めて乗って、カワサキがストリートバイクと言い切るのが良くわかった。速く走る、というより楽しく走る。大パワーながら乗る人を振り落とすような、粗野な感じがまったくない。日常的に使える中にとんでもない非日常性を秘めたあるひとつの究極スポーツ。難しく考える必要はなかった。誰でも簡単に乗れるだろう。見た目ほど怖くはない。
 

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■KAWASAKI Ninja H2(ZX1000N) 主要諸元

■全長×全幅×全高:2,085×770×1,125mm、ホイールベース:1,455mm、最低地上高:130mm、シート高:825mm、車両重量:約238kg■エンジン種類:スーパーチャージャー付水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ、総排気量:998cm3、ボア×ストローク:76.0×55.0mm、最高出力:147.2kW(200PS)/11,000rpm(ラムエア時154.5kW)、最大トルク:133.5N・m/10,500rpm、燃料供給:F.I.、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:17L、変速機形式:常時噛合式6段リターン式■タイヤ(前+後):120/70ZR17M/C58W+200/55ZR17M/C78W、ブレーキ(前+後):φ330mm油圧式ダブルディスク+φ250mm油圧式シングルディスク、懸架方式(前+後):φ43mm倒立フォーク+スイングアームUni-Trak、フレーム形式:トレリスフレーム■問い合わせ:ブライト http://www.bright.ne.jp/
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