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ビー・エム・ダブリュー

 3月、東京モーターサイクルショーでS 1000 XRがお披露目された。その時、S 1000 XRが履くタイヤを見てオフを走る事にプライオリティーは置かず、むしろロードバイクの仕立てになっている、と感じた。しかしギザギザのステップやオフ車風スタンスのワイドなテーパーバーはどうだ。
 
 S 1000 Rに対しストレッチされたスイングアームや、BMWらしくパニアなどの拡張性を感じさせるマフラーの造りなど、走りの奥に間違いなく「旅」が見える。ある程度解ったが、まだスッキリ腑に落ちたわけではない。
 
 そんな日々をやり過ごし5月、S 1000 XRのメディアローンチが行われるバルセロナ郊外へと向かった。

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BMW S 1000 XR。ライダーの身長は183cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)(※撮影:河野正士)

 会場のホテルに、S 1000 XRは待っていた。走る前にこのバイクを紹介しておこう。まずルックス。BMWのスーパーバイク、S 1000 RRと血縁を感じるフェアリングデザイン、非対称に見えるライトというアイコニックな部分を継承。それでいてアドベンチャー風スクリーンが上手くマッチしたフロントセクションだ。燃料タンクとライダーシートの落差、ひと続きにしながらキックアップしたリアシート、後方に長いナンバーステーによりテールエンドが短いことも解る。
 
 搭載されるエンジンは、2014年に登場したS 1000 Rのエンジンがベース。そのスペックは118kW(160ps)/11,000rpm、112Nm/9,250rpmと額面はRと同一のスペックだ。しかしXRではシリンダーヘッドのポート形状、バルブタイミングを専用に設計されている。ライドバイワイヤーの電子制御スロットル、1シリンダーに2本のインジェクターを装備する点などはS 1000 RRと同様。80mmという大きなボアに対し、ストロークは49.7mm。排気量も999㏄のままだが、勾配のきつい山岳路でもパワフルな特性であるよう、特に低中速のチューニングには気を遣ったという。
 
 次にシャーシ。メインフレームはアルミダイキャストで造られたペリメターフレーム。エンジンも剛性体として使う。S 1000 Rよりもステアリングヘッド角度は0.8度寝かされ、トレールも長くなっている。スイングアームはS 1000 Rに対し65mm伸ばされ670mmへ。そしてフロントに150mm、リア140mmのストロークを持つサスペンションを与えたことで、S 1000 XRのホイールベースは1,548mmとR比109mmの延長となっている。なるほどタンデム、パニアケースなどのラゲッジの積載を意識した旅仕様なわけだ。


市街地レベルから感じる
軽さと扱いやすさの融合点。

 5月半ばだというのに気温が高いから水分補給を忘れずに! と試乗前ブリーフィングで促されるほど気温が上がるらしい。今回もバルセロナ郊外の町から風光明媚な山岳ルートを巡る230kmが設定されているという。
 
 試乗したS 1000 XRの仕様は、ダイナミック・トラクション・コントロール(DTC)、旋回中の急ブレーキにも対応するABS Proを備え、スタンダードではレイン、ロードの2つのライディング・モードに加え、ダイナミック、ダイナミックプロという4つを選択可能なプロ・ライディング・モード。アップもダウンもクラッチ操作の要らないギア・シフト・アシスト・プロ、クルーズコントロール、LEDウインカーを備える「ダイナミックパッケージ」装備のモデルだった。そのほか、セミアクティブサスであるダイナミックESA、左グリップに回転式のコントローラーを備え、ナビの表示を操作可能なキットとBMWモトラッドナビゲーター5も装備されていた。
 
 サイドスタンドから起こす。バイクは満タン。それでもスッと起こせるあたりに軽さを感じる。満タン228㎏は伊達ではない。シートはライダーがタンクとリアシートの間にすっぽり納まるようなポジション。積載性を考慮して頑丈に造ったサブフレームの幅のせいか、やや太腿内側にその存在を感じるのが気になった。
 
 ステップ位置は適度に後退したものだが、足に窮屈さはない。バイクをしっかりコントロール出来るタイプだ。
 
 ハンドル幅は広めかつ手前に引かれたもので、シートの高さとグリップ位置の関係は程よいコンパクトさをもたらしてくれる。膝回りにあたるフレーム、ボディーパネルにゴツゴツ感はない。
 
 メーターパネルは大型のアナログ回転計とデジタル表示の速度計、インフォメーション系が見やすく配置されている。
 
 このポジションから聞く4気筒サウンドはなかなか刺激的。それでいてアイドリングでクラッチをスルっとつないでもこともなげに走り出す。2,000rpmあたりからの力感を磨いたという開発者の説明に偽りはない。
 
 低速域からサスペンションの動きが良く、乗り心地がとても良い。前後に履いたディアブロロッソⅡは、快適な中にも多少芯の固さがある乗り心地だったと記憶しているから、この乗り味は合格。そして40km/hで6速までシフトアップしても、このエンジンはフツーの顔して走る。スムーズかつ実に扱いやすい。さすが並列4気筒だ。
 
 市街地にあるギャップも綺麗に舐めて行くXR。スポーツツアラーというカテゴリーが下火になりスポーツアドベンチャーがそれに取って代わると開発者の一人は語ったが、走行開始僅かで「なるほど」と思ってしまった。リラックスしたポジション、軽い車体、そしてハイスペックながらどこにも扱いにくさがない車体とエンジン。BMWのK1300シリーズ、隼、ZZR1400、VFR1200Fなど、あの重厚で圧倒的な存在感、そして重たいがモリモリしたトルクも魅力だが、軽く扱いやすく回せば凄いエンジンのパッケージ。なるほどいい。
 
 ただし、市街地速度では最初ステアリングダンパーがバイクの軽快さを少々スポイルしているとも感じた。これは1時間ほどで馴れたが、オドメーター3,000km弱のテスト車だったから、初期のなじみが出ていないせいとも思えない。しかしこれはその他の場面では実に有効であることが後に解る。
 

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ワインディングが楽しい!
扱いやすいポジションが活きる。

 山岳路に入った。タイトターンを含む低中速コーナーが続きアップダウンがそれに加わる。アップライトなポジションだから前方視界が楽に取れる。思いの外前傾が強いS 1000 Rよりもこんな場面では断然ラク。旋回のキッカケ造りも同じタイヤサイズ、Sよりもホイールベースが長いにもかかわらず重さ、鈍さを全く感じさせない。むしろリーンウイズのままラクラク走れる印象だ。
 
 市街地でも感じたが、リアブレーキの制動感がしっかりあるので速度コントロールがしやすい。また、フロントブレーキの制動力はレバーを握る力に応じて立ち上がるタイプでコントロールしやすい。カツンとあえて効かないのがいい。知らない道で実に扱いやすかった。
 
 こんな時、セミアクティブの恩恵か、ブレーキングしながらのアプローチでも、アップライトなポジションと相まって前後の荷重移動への対応に忙殺されることがない。これはセミアクティブサスの仕事も好影響を与えている。もちろん、コントロールしている実感はたっぷりあるからバイクを心底楽しめる。下りでペースを上げてもノーズダイブがキツイとか、上りのタイトターンからの立ち上がりでフロントが軽くなってコワイ、ということがなく乗りやすい。
 
 6,000rpmから7,500rpmあたりを使って走ると、トルクの盛り上がりを捉えつつ最高に気持ちよい音を楽しみながら走り続けられた。5,000rpmあたりからでも充分なのだが、4気筒の存在意義がこの辺に色濃く出いてる。色気のあるサウンド、走りにますます一体感が出るスポーティーさ、リラックスしたポジションで山道を切り取る快感。乗り手とバイクのチューニングがバチっと合った感触なのだ。
 

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アドベンチャースポーツとは
クロスオーバースポーツと読みにけり。

 とにかくこの日はワインディングが長かった。おそらく全体の7割以上は山道だったにちがいない。午前中80km程を走りコーヒーブレイク、その後、1時間以上のファンライディングを経て14時にランチスポット到着。芝の上に並ぶテーブルでスペインらしいランチをいただき、シメのスイーツとコーヒーで口の中を引き締めた後、最後のロードセクションに向かう。不思議なのはこんなに山道続きでも肩、膝などに疲れがない。
 
 ホテルまで40km。そこでも楽しめ、とばかりにやや荒れた下りのワインディングを下るセクションが用意されていた。嬉々としてそこを下り答えを捜し始める。アドベンチャースポーツとはスポーツツーリングを快適に長い時間こなせる、ということなのか。
 
 町まで長くない距離だったが高速道路をクルーズコントロールを効かせ走行した。一度使うとこれは必須だ。グリップエンド側とステップ、ボディーの一部にビーンという振動が出る。グリップの内側には不思議と出ないから付き合い方は探せそうだ。100km/h巡航時なので今後の課題にしてもらいたい。
 
 開発者は40%ツーリング、40%がスポーツ、そして10%が市街地、10%がダート、というイメージだと話した。つまり、スポーツツアラーであり、XRはクルマでいうところのスポーツクロスオーバーなのだ。実際、今回のテストルートに1メートルもダートの道は含まれなかった。また、開発者はロードメインの軽くスポーティーなクロスオーバーモデルを出すことで、今やBMWの中心となっているGSモデルをユーザーの要望の変化に合わせてGSが持つGS性を変えることなくこのままGSを造り続ける事ができる、とも語った。GSが好き、だけどオフは行かない、もっと軽くパワフルで、ロードを楽しめるバイク。もちろんツーリングも、という欲張りなユーザーに支持されるのだろう。S 1000 XRはそんなバイクだった。
 
(試乗:松井 勉)

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フロントノーズはスーパーバイク、S 1000 RRのイメージを踏襲。カウル先端の黒いプレートはダウンフォースも生み出す。ライト中央、縦長の灯具はLEDデイライト。スクリーンは手動で高さを変更可能だ。
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フェアリング下に覗くステアリングダンパー。低速でも強めのダンピングを持つ。もう少し距離を重ねればさらに摺動抵抗が減りマイルドになるのかもしれない。しかし軽く運動性のよいシャーシに過敏さを全く感じないのもステアリングダンパーの功績の一部だ。

ハンドルスイッチの特等席にTRIPのスイッチがあるようにライダーは一切のストレスを感じること無くツイントリップを使いこなせる。上奥が一度使うと無いバイクに乗る度に「?」と思うクルーズコントロール。ABS+サスのマークのスイッチはシーソー式で下に押すとサスのセットアップ変更、上はABSのキャンセルをするもの。 右はスタータースイッチ兼キルスイッチ、ライディングモードスイッチ、そして一番奥がグリップヒーターのスイッチ。
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S1000XRの由来は“クロスオーバー・ロードスター”とのこと。 ヘラーソケットタイプの12Vパワーアウトプットをカウル内に装備。走行中にスマホなどUSB変換コードを持っているだけでいくらでも拡張性を広げられる。 ヒップホールドのよいシート。座面は後部までしっかり広く、座り心地の良いものだった。内股の蹴られ感が無ければ最高。オプションのハイシートのほうがむしろまっすぐ足を下ろせ足つき性は良好に感じた。
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S 1000 XR専用の長いスイングアーム。 オプション装備となるギアシフトアシストプロ。2,000回転台より3,000回転以上まで上げシフト操作をしたほうが決まる。ダウンがまだ固かったが、アップ時は完璧な仕事をこなした。点火をカットし一瞬のうちにシフトを完了させる排気音は快感。S 1000 Rの例を見てもオプションの標準装備化をする日本仕様がどうなるのかは注目したい。 五角形デザインのサイレンサー。コレクターの容量を含めキャラクターに合わせたエンジン特性を生み出す役目も負っている。素材はステンレスを採用。
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赤いコードプラグを差し込むことでダイナミックパッケージに含まれるアクティブな制御を得られる。特にABS Proが全モードでアクティブとなり、一般道でABS +オートスタビリティーコントロール以上の仕事をしてくれるのが大きなメリット。ライディングモードのダイナミック、ダイナミックプロでも作動するが、ウイリー、リアホップなどの許容量が多くなるため、ライダーには応分のリスク管理が求められる。 GSモデルのように周囲がギザギザの尖った形状とラバーを用いたハイブリッドステップ。ステップからの車体の応答性はよくグッドハンドリングをもたらす源泉でもある。 φ265mm径のリアディスクプレート。ホイールは10本スポークの軽快なデザインだ。
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BMWにはダイナミック・ダンピング・コントロール(DDC)とダイナミックESAという2タイプのセミアクティブサスが用意されている。S 1000 RR、S 1000 R、HP4などはDDCを採用。センサーが拾ったサスストロークなどの情報を元に瞬時にダンピングを変化させる点は同じだが、ダイナミックESAは電動でイニシャルプリロードの変更も可能にしている。 ホイールのスポークにダイレクトに取りつけられたディスクプレート。インナーローターを持たないことで軽量化やイナーシャの低減、最適化にも貢献。プレートサイズはφ320mm径。
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■BMW S 1000 XR 主要諸元

●全長×全幅×全高:2,183×940(ミラー含む)×-mm、ホイールベース:1,548mm、最低地上高:-mm、シート高:840mm、車両重量:228kg●エンジン種類:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ、総排気量:999cm3、ボア×ストローク:80×49.7mm、最高出力:118(160HP)/11,000rpm、最大トルク:112N・m/9,250rpm、燃料供給:F.I.、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:20L、変速機形式:常時噛合式6段リターン式●タイヤ(前+後):120/70ZR17+190/55ZR17、ブレーキ(前+後):φ320mm油圧式ダブルディスク+φ265mm油圧式シングルディスク、懸架方式(前+後):倒立テレスコピックフォーク+スイングアーム、フレーム形式:アルミペリメターフレーム


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