オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。

時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ900。

第38回 オオカミ男の首都圏満喫生活!? 年末年始編

 
 川崎ICを出たオレはこのICの近くに住む仲間のアカさんに連絡を取った。まずやらなければならないのは宿へのチェックインよりもバイクの保管である。
 さすがに近所というだけあって火をつけたタバコが灰になるまえにアカさんはやってきた。そのまま彼の自宅へ向かう。岡山を出る前にアカさんには連絡してちょっとの間、バイクを預かってもらうことになっていた。鶴見の宿からそこそこ近くで公共機関による行き来が容易であるならそのまま置かせてもらうつもりでいたのだがそこはやはりこっちの思うとおりにはいかず電車、バスともにかなり面倒な位置関係にあった。距離にしても15キロ離れておりチャリンコを用意してどうにかなるものでもない。
 これから半年の間、拠点となる鶴見の宿の近辺で停めておける場所を探すしかなかろう。アカさん曰くこのあたりではバイクといえども適当に停めたりしていたら駐禁を切られるらしい。


到着直後、友人宅に鎮座するセロー。600以上の距離を一気に走ってきてここでしばしの休息となる
到着直後、友人宅に鎮座するセロー。600以上の距離を一気に走ってきてここでしばしの休息となる。

 宿にチェックインしたオレは生活空間を整理したのちにネットでバイクを置けそうな場所を検索にかかった。有料ではあるが駐輪場は結構、数はある。だがそのほとんどは鶴見の駅前(距離にして3キロほどある)に集中しており、しかも多くは125cc以下の原付用である。大きいバイク用もあるにはあるが料金も高く、それ以前の問題として空きがないときてる。
 そんな問題を抱えながら一週間が過ぎた頃、近所に歩いて買い物に出かけた時、駐車場やコンテナボックスなどのレンタルスペースを扱っている会社の看板を見つけた。ダメもとで電話してみると宿から歩いて5分ほどのところにちょうどバイク一台分のスペースが空いているという。料金はまぁそこそこであるが即決である。速攻でその会社に出向き半年分の料金を支払い契約をしてきた。
 ある意味今回、オレは超ラッキーだったといえる。ひとまずはこれでバイクの保管場所については解決である。だが問題はまだまだある。問題というよりも不具合と言った方が正しいかもしれないが……バイクを停めておくスペースは確保できたがそこであれやこれやと自分でバイクをイジる事ができない。工具類にしても最低限のものしか持ってきていないし、ほんとにバイク一台分のスペースなので色々やるには無理がある。
 とりあえずオイル交換だけはしておきたかったので近くにあったバイク用品店に持っていくと一時間半ほど待たされ料金は今まで自分でやってかかっていたものの3倍。おまけに次回からはなるべく予約を入れてくれと言われたよ。まぁ仕事自体はこれ以上ないくらいキチっとやってくれたので文句をいうつもりはないのだが……このあたりが都会の厄介なところだ。少数派には排他的。何をするにも金次第で欲求を満たすには行列に並んで順番を待たなければならない。しかもその結果、欲求が満たされるとは限らない。需要に対して供給が限定されれば誰かが泣きをみるしかない。地元である岡山での自分のバイクライフがいかに恵まれていたものであったかをただただ実感するのみである。
 何はともあれこれでひとまず環境は整った。さてここから十数年ぶりの関東生活が始まる。そして時は年末である。今年の年越しなのだが……オレの年越しはもう長い事例外なく桂浜で過ごしていた。しかし、その大みそかの夜、オレはテレビの前で年越しそばを食べながらボクシングと紅白歌合戦のチャンネル争いをしながら従妹と過ごしていた。まぁ何ともオレらしくない。それでも刺激とか面白味なんてものはないがなんだか妙に新鮮である。考えてみれば年末の紅白歌合戦なんてテレビを見ること自体がおそらく生まれて初めての事だ。まぁこれがオレの定番になる事など有り得ないんだがね。当初はフェリーで四国入りを目論んではいたのだが関東入りしてからの予想外の出費に加えて大雪以降の荒れ気味の四国の天候に見切りをつけたというのが四国入りを断念した理由だ。たまにはこういう変化も悪くない。

 そう、オレは今、関東にいる。ならば今までの習慣化したパターンにとらわれず今いる場所ならではの遊び方を優先しよう。というわけでオレは1月の後半に若洲で開催されたがんじーの宴会に参加する事にした。実に5年ぶりである。それ以前にオレの場合、こういう集まりに参加すること自体が久しぶりである。元々はミスター・バイクが誌面だった頃からそんな集会やらミーティングやらに狂ったように行っていたというのにだ。まぁ半分は仕事といった趣でもあったのだがあの頃はそのひとつひとつがとにもかくにも面白くハーレー系だろうが旅系だろうが手当たり次第に走り回り参加していた。じゃあ今は面白くなくなったのか? と聞かれれば決してそう言う訳ではない。ただ……新鮮さはなくなったかな。言い方は悪いが少し飽きたところもある。どんな高級な食材を使ったウマイ料理でも毎日食ってたらそりゃ飽きるってもんだ。つまり今のオレはバイク遊びに関して言えば少々別の方向を向いていると言える。そしてある程度のスパンを経て時々、元の世界へ戻ってみる。このやり方が、正しいなどと声を大にして言うつもりはこれっぽっちもない。ただオレの場合、元々の性格が飽き性なため常に変化が必要なだけなのだ。
 

 何はともあれ久しぶりのミーティングである。フルコースでの参加をオレは所望する。というわけでオレは開催前夜に千葉の市川にあるルイ邸に向かった。前夜祭だ。首都高に乗り……・そうやはりこっちに来てからというものこんな感じでちょこまかと高速を使うことが多くなっている。時間的な余裕がないわけではないのだがこのあたりの街中は信号が多すぎる。やはり距離に対してその進み具合が悪いとすり抜けしようが何しようがストレスが溜まる。なんだかんだ言って金はかかるが高速は便利だ。



久しぶりに会う友人は遊びに行くたびその住まいをグレードアップしていく。まぁオレ個人的には彼が独身だった頃のアパートが一番好きですが
久しぶりに会う友人は遊びに行くたびその住まいをグレードアップしていく。まぁオレ個人的には彼が独身だった頃のアパートが一番好きですが。

 1時間ほどでルイ邸に到着。久しぶりに会う友人は以前とはちょっとだけその住居を変えていた。オレが知る限りでは引っ越すのは2回目のはずだが今回はマンションを賃貸ではなく購入したようだ。みんなそれぞれに生活の変化ってやつはあるのだなと改めて実感したさ。この日はオレにとって本当に久しぶりな面々が揃って実に楽しい呑みであったよ。

 さてその翌日、がんじーの若洲宴の当日である。天気は晴天で1月とは思えないほどの小春日和。そのせいもあってか、会場となる若洲海浜公園は多くの人で賑わっていた。受付を済ませてテントを張る。何気に5か月ぶりのキャンプである、夏の隠岐の島以来という事になる。それにしても年明けの初キャンプが東京とはまぁなんとも不自然な。
 久しぶりに会うがんじーは嫁さんのユキちゃんと一歳になる息子を連れてきていた。彼もここ1、2年でその取り巻く環境は大きく変化していた。それによってかつてのように頻繁に出歩くことはできなくなっているようだ。それでも個人の本質などそうそう変化するものではない。ルイさんはルイさんのままだしがんじーはがんじーのままだ。しかし環境の変化に合わせてやらなければならないことは増えてくる。それによって今までやれていた事がやれなくなったりもする。それを見て「あいつ変ったよな」などというやつもいるだろう。だがそんな事は気にする必要もない。人の行動とは本来、流動的で変化に富んだものだ。それを受け入れられなかったり違った環境に身を置く事を恐れる臆病な人が自分を正当化するためにそんな物言いをする。まわりの雑音に翻弄されて自分を見失いさえしなければそれでいいのだ。


若洲の宴は着いた時からが呑み。いつもの面子で宴会スタート。そして主催のがんじーは家族同伴。1歳になるジュニアはまぁ元気。変な言葉ばかり連発しておりましたが

若洲の宴は着いた時からが呑み。いつもの面子で宴会スタート。そして主催のがんじーは家族同伴。1歳になるジュニアはまぁ元気。変な言葉ばかり連発しておりましたが
若洲の宴は着いた時からが呑み。いつもの面子で宴会スタート。そして主催のがんじーは家族同伴。1歳になるジュニアはまぁ元気。変な言葉ばかり連発しておりましたが。

人は常に変化を求められそれを受け入れないといけない時がくる。だからこそ変わらないでいられる部分は貴重で楽しい。そしてここにもそんな貴重な時間がある
人は常に変化を求められそれを受け入れないといけない時がくる。だからこそ変わらないでいられる部分は貴重で楽しい。そしてここにもそんな貴重な時間がある。

 久しぶりの若洲宴は相も変わらず昼間から乾杯でひたすらに呑み。久しぶりに会う仲間とのトークも実に楽しい。香川のホリさんも高速バスで現地入り。日が暮れる頃には人数も増え知らない顔もちらほら見かけるようになった。
 そんな中、その中の一人が飲みすぎてぶっ倒れるという事態が発生。ちょっと様子がヤバそうな感じだったので救急車を要請した。このあたりで救急車を呼ぶとどうやら消防車も一緒についてくるらしく公園内に消防車と救急車のパトライトが瞬き場内が騒然とする一幕もあったが結果としては倒れた本人も大したこともなく翌朝には戻ってきてみんなに詫びて回っていた。
 宴会は毎度のごとく深夜にまで及びオレはその最中にマルちゃんから関東での面白いスポットの情報を仕入れていた。こっちで遊ぶのには情報が必要だ。地元の事は地元のヤツに聞くのが一番である。そしてこの時、提示されたスポットは北関東の廃墟地帯。実に興味深い。色んな意味でホームとも言える関東だがまだまだオレの知らないオモロイ事というのはあるみたいだ。こりゃ退屈しないですみそうですな。


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