順逆無一文

第57回『警察官も、違反者も、人の子。 』

 来年の10月1日から順次実施されることになった、新しい二輪車の排出ガス規制値が発表されているのでここで紹介しておこう。国土交通省のWEBサイトによれば、

『今般、中央環境審議会答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(第10次答申(平成22年7月)及び第11次答申(平成24年8月))等を踏まえ、ディーゼル重量車及び二輪車の排出ガス規制を強化するため、道路運送車両の保安基準等を改正し、本日公布、施行しました。(改正の詳細は別紙を参照のこと。)
主な改正内容は、
(1)ディーゼル重量車関係
 ※省略しました。
(2)二輪車関係
 排出ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)に対する規制について、これまでの規制値と比較して最大約6割低い水準に引き下げる規制強化を行います。また、既に導入済みの「二輪車排出ガス試験方法(UN GTR No.2)」の排出ガス試験モードに加え、排出ガス規制値に係る規制区分についてもUN GTRと整合を図ります。そのほか、新たに駐車時等の燃料蒸発ガスに対する規制及び車載式故障診断装置の装備の義務付けを行います。』

 道路運送車両法の保安基準と、保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)等の一部を改正(7月1日付けで公布されてます)。今回は、ディーゼル重量車と二輪車に排出ガス規制強化の順番が来ました、ということ。規制値の内容は下の表を参照してください。
※UN GTR=United Nations global technical regulation(世界統一技術規則)
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 運用開始時期は、新型車と継続生産車および輸入車で時期が異なり、新型車は、平成28年10月1日以降分から。継続生産車および輸入車はさらに1年遅れて平成29年9月1日以降、となっている。
 
                  ※
 
 いやはや暑いですね。暑さとともに“困ったちゃん”の出没回数も鰻登り。あまりの多さに今回は一挙大放出してみました。
 
 まずは6月頭のニュースから。埼玉県警の男性警部補が酒気帯び運転をして出勤したとして書類送検され、減給の懲戒処分に。警部補が酒臭かったのを同僚が気づき、再度検査したところ酒気帯び状態が露見したという。前日の夜にウイスキーやビールを飲んでいたので出勤後に呼気検査を行ったが、その時はアルコールは検知されなかったのだとか。再検査時の数値は呼気1リットルあたり0.15ミリグラム以上。何故数値が違ったのでしょうか。それが気になります。
 
 同じ酒気帯びでも宮城県警の巡査長は、だいぶ悪質です。6月14日、宮城県警機動警ら隊の巡査長は、飲食店で同僚らと飲酒後タクシーでご帰宅。そこまでは良くある日常ですが、その後巡査長は何を思ったのか、クルマでラーメンを食べに出かけてしまったというのですね。そして帰宅途中に道路標識に激突。あろうことか、クルマをその場に残して逃走。約1時間後に現場に戻ってきたところを御用となったそうです。深夜の3時頃のことでした。
 
 飲酒運転関連で続けましょう。6月4日、秋田県警本部の一般職員が午後9時頃から11時頃に掛けて水割り6杯やビールなどを飲んでクルマで帰宅。途中で飲酒運転の取り締まりに出会ってしまいました。当然ながら酒気帯びが判明、書類送検とあいなりました。上の例を見てしまうと、何だ“ただの飲酒運転”じゃないか、と少しマシに思えてしまいますが、いずれにしても警察官のすることじゃないですよね。
 
 いくら“元”とはいえ、元警察官でもやって欲しくない飲酒運転。岩手県警の元警察職員さんは、5月17日、深夜の国道で129km/hを出して検挙された。法定速度60km/hの道路でした。自宅で飲んでいたそうですが、その後なんでわざわざクルマで出かけたのでしょう。しかもこの日は“春の交通安全運動期間”中だったというのですから、何をかいわんや、です。
 
 まだまだ行きます飲酒運転。
 
 福岡県警の警部補も飲酒運転の取り締まりを受け、逃走を図ろうとして捜査車両に激突、御用となりました。7月4日の午前0時半過ぎ、取締中の警察署員が不審な動きを見せた警部補の車を発見。職務質問したところいきなりクルマを後退させて逃げようとし、捜査車両にぶつかりました。車内には署員が乗っていましたが無事。その場で取り押さえられて判明したのがなんと福岡県警の警部補でした。
 
 この福岡県警さんはなにか問題をかかえているのでしょうか。福岡県警の警部補が捕まった翌日の7月5日、缶ビールを飲んで大型量販店に出かけた男性警部補が、警邏中のパトカーに職務質問され飲酒運転が発覚したといいます。ただし呼気検査では1リットルあたり0.13gと、刑事処分対象までには達していなかったということで“内規に基づく指導書”を渡されただけで処理されたそう。ちなみに福岡県警が出している三大重点目標のひとつが「飲酒運転の撲滅」で、7月は飲酒運転の取り締まり強化月間中。さらには前日の小郡署警部補の飲酒運転事件を受けて再発防止指導も行ったばかりだった、というのですね。こちらは柳川署の警部補だそうです。
 
 いやはや「警察官も人の子」と言う聞き飽きた言葉で済まされては困ります。
 
 飲酒関連はこれくらいにして、次は白バイ隊員の“困ったちゃん”の話題にいってみましょうか。京都府警の男性巡査のニュースです。5月27日のこと、京都市北区のコンビニで小型カメラを仕込ませたスニーカーで、女子高校生のスカートの中を盗撮している不審者をコンビニのオーナーが発見し110番通報。駆けつけた警察官が職務質問したところ犯行を認めたのですが…なんとその犯人は白バイ隊員だったというわけ。
 
 京都府警の白バイ隊員はストレスがキツイのでしょうか。これまた京都府警の白バイ隊員が警察施設のトイレで女性職員を盗撮したというニュース。と思ったら、なんとスニーカー盗撮の白バイ隊員と同じ人物でした。こちらの事件は平成26年10月に警察施設内のトイレの個室に小型カメラを設置し女性職員を盗撮していたのでした。別件として出てきたのでしょうね。
 
 広島県警では43歳の警察官がエスカレーターに乗っていた女性のスカートの中を携帯電話で撮影したとして懲戒処分を受けてますね。この広島県警では20代の警察官による追突当て逃げ事件も同時に報道されてました。
 
 当て逃げのニュースを続けます。5月19日、静岡県警では、男性巡査が信号待ちしていた乗用車に追突、運転していた男性に怪我を負わせたにもかかわらず事故を通報もせずに立ち去りました。被害者や目撃者の情報でこの当て逃げ犯を捕まえたところ、なんとそれは警察官だったというのです。「気が動転して…」とか。
 
 これまた京都府警でも。5月2日、京都府警の地域課の女性巡査が公用バイクで巡回中に駐車していた軽自動車に接触、そのまま逃走したという。事故を目撃した通行人が通報し捕まりました。「頭が真っ白になって逃げてしまった」と。
 
 鹿児島県警の捜査車両が対向車線の車両に衝突、というニュースもありました。6月18日、男性巡査長の運転する捜査車両が中央車線を越え対向の乗用車に衝突。緊急走行中に対向車線に入ったわけでもなく、単に「脇見運転をしてしまった」というもの。お粗末様です。
 
 捜査車両の運転に気が緩んでいるのは京都府警の男性巡査部長と男性巡査も一緒。2台の捜査車両に分かれて家宅捜査に向かったのですが、仲良く国道でそれぞれ約30km/hオーバーで検挙されてしまいました。31km/hオーバーと29km/hオーバーとのこと。捜査車両と分かってもキッチリ摘発したスピード取り締まりの警察官を褒めるべきでしょうか。
 
 捜査中の巡査長が自転車を跳ねるという事故も起こっています。6月22日午後、内定調査中の愛知県警の女性巡査長が運転するレンタカーが、千葉県の市道交差点で高校生の自転車と衝突。重傷を負わせてしまったというもの。レンタカーには巡査長の他に、警察官2人も乗っていたとか。不慮の事故でしょうから“困ったちゃん”というわけではないですが、最近の首都圏は自転車のからむ事故がやたら多いです。他地方のドライバーの方は特にご注意を。
 
 6月23日には、アクセルとブレーキを踏み間違えたパトカーが駐車中のクルマ2台に次々と衝突したというニュースが入ってます。幸い駐車中のクルマは無人でしたが…。鹿児島県警の男性警部補が運転する小型パトカーが交通安全講習などのために会場となった駐車場に到着、駐車しようとしたところブレーキとアクセルを踏み間違えてしまったというのですね。こういうのは「警察官も人の子」といえるでしょう。もちろん充分に注意して欲しいですが。
 
 鳥取では7月6日、交通安全運動の初日のことでした。県道でUターンしようとしていた鳥取県警の巡査が運転するパトカーが、なんと後方から来たバキュームカーと衝突、横転させてしまったというのです。幸いバキュームカーの運転手とパトカーの乗員双方に怪我はなかったそうですが。対向車線に交通違反車両を発見、赤色灯を付けてサイレンを鳴らして転回しようとしたまさにその時の事故でした。急ぐ時にこそ安全確認ですね、パトカーの運転手さん。
 
 悪質な“困ったちゃん”。7月2日、千葉県警が警視庁の巡査を自動車運転処罰法違反(過失傷害)と犯人隠避教唆の疑いで逮捕したと発表。容疑者の巡査はクルマで追突事故を起こしてしまった直後、同乗の女性に身代わりを依頼したことが発覚。飲酒運転の発覚を恐れた巡査が女性に嘘の申告を行わせたというものでした。
 
 ネット時代を象徴するかのニュースはこちら。6月24日のこと、バイクで巡回中の警察官2名がきちんと一時停止せずに交差点を通過する様子を捉えた動画が投稿サイトにアップされました。で、それを元に大阪府警が実況見分など検証を行った結果、裏付けが取れ、警察官2名が業務指導されました。明らかに違反している1人には一時停止違反の反則切符が切られたそうです。前々から言ってることですが、警察官の安全のためにも公務中は全て行動を録画するよう早く義務付けるべきですね。これだけ動画撮影が簡単、便利に出来るようになったのですから。昨今の市民が警察に向ける目には厳しいものがあるのはご存じですよね、当局の皆様。
 
 今回は京都府警さんネタが多いですね。京都府警の副所長さんが休日にバイクでツーリングを楽しんでいたそうです。大いにけっこう、素晴らしいことです。が、そのツーリング最中に50km/h規制の国道を92km/hで走行、検挙されてしまったというのですね。7月12日、ツーリング中に京都府南丹市の国道でスピード取り締まりを受け、42km/hオーバーの赤キップでした。ちなみにこの京都府警山科署では今年3月にも、出勤を急いだ男性巡査がバイクで91km/hを出したとして赤キップを切られているのだとか。バイク好きの署員が多い警察署なのでしょうか。くれぐれもスピードには気をつけて、楽しいバイクライフを。
 
 締めは、全国紙でも取り上げられていたのでご存じの方も多いかと思いますが、奈良県警の交通課の巡査部長による速度違反、無免許事故等もみ消し事件が、7月14日追起訴されたというニュース。県警高速隊に所属していた6年間に、この巡査部長は自動速度違反取り締まり装置で撮影された違反者に違反をもみ消すことを持ちかけ、ひきかえに現金を振り込ませていたというのですね。オービスを担当、違反者摘発にかかわる業務をなんとずっと一人で担当していたというのですから、どれだけの“裏取り引き”が行われていたのか。この一線だけは越えてはいけない、という事件が日本でもとうとう起きてしまった、という感じ。このほか無免許の男性が起こした事故ももみ消したとして加重収賄、犯人隠避罪でも起訴されているとか。「小遣いが欲しかったから」ですと。
 
 日本の警察への信頼を地に落としてしまったとんでもない事件でした。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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