Hi-Compression Column

アッキーがキタ

■無知ゆえに人は冒険する・・・後編

(2010.12.9更新)

さて、ほとんどの読者さんは前回のコラムなど読んじゃいねぇ! と勝手に被害妄想を抱いているので、これまでのあらすじを。

 *   *   *   *   *

まだガキのころ、初めてオレが手に入れたのは、ショベルヘッドのスポーツスター。

しかし、エンジンがぶっ壊れた状態で買い、しかも修理に出す金などありゃしねぇ!! 
ということで英語マニュアルを見ながらエンジンをバラそうとするも、クランクケースがなかなか左右に離れてくれず、頭に血が上って、隙間にマイナスドライバーを突っ込んで叩いたら、「パキッ!」という、とてもイヤ〜な音がして、というのが前のお話。

 *   *   *   *   *

そんで続きなのだが、その音に尋常ならぬ危機感を抱いたオレは、まずクランクケースをくまなくチェック。

すると、カムが入る右側ケースに、なんと! 5センチほどのクラックがぱっきり入っているではないか!! 

なぜ? 

ボルトは全部外したハズなのに、圧着されたガスケットの粘着力も、ケースを破損させるほど強くはないはず……。

そう思い、もう一度英文サービスマニュアルをみたオレ。

と、そこで重大な事実に気がついた。

オイラのスポーツスターは確か`79年式だったのだが、`76年式のページを見ていたのだ! 

しかし、そんなに変わりはないはず……、と思い、`79年式のエンジン分解図を見ると、ああああ、クランクのボルトが1本増えている。

実際に自分のエンジンを見ると、シリンダー根本あたりのところに、やたらオイルやホコリで汚れまくっていた部分を発見!

「ままま、まさか…」

そう思い、クリーナーでその部分を洗ってみると、なんとまあ、ボルトちゃんがしっかりと顔を出した。

要するにオレは、クランクケースのボルトを全部外さずに、無理矢理ひっぺがそうとして大変なことをしてしまったのだ。

嗚呼、ボクは取り返しのつかないことをしてしまった(ガンダムマニアしかわからんネタ)。

しかし、やっちまったことはどうしようもない。

その頃は若くて人生前向きバリバリだったオレは

「ま、溶接して綺麗に削れば大丈夫だろう」

とタカをくくっていたのだが、数日後に知り合いのハーレー屋に聞いてみると

「そんな簡単にいくわけないじゃん。クランクケースはかなり強度が必要なんだから」

と言われ、

「それなら、中古のクランクケースの片方だけ探してやる!」

と泣く泣く決意するも、当時(今もだが)ショベルヘッドのスポーツスターはそれほどメジャーじゃなく、どこの店に聞いても

「ねぇよ! そんなもん」

とどやされる始末。

しかも、すでに取り外した腰上をチェックすると、リアバンクのピストンちゃんが、見事にバルブとごっつんこ、ああ、専門的に言うとサージングってやつですか。

そのような悲惨な状況を目の当たりにし、やる気になるとガンガン物事を進めるも、いったん自分の力量では無理と悟ると、急激にやる気を失う性癖のオレは、結局、15万で買った壊れたスポーツスターをさらに壊し、知り合いのショップに10万円で引き取ってもらったのだった。

嗚呼、若い頃のオレを今に呼び出せるなら、きっとこう言うだろう。

「ホントお前はバカだな。今のオレだったらそれなりに収入あるから、すぐショップに修理を頼んだだろうに」と。

今でも思い起こす度に腹が立つというか、結局、ビンボーだからすべて自分でやってやれ、という考えを、その時点でオレは捨てた。

ハーレー関係ではなんでもかんでも自分でイジれるのがエラい、なんて風潮が当時は結構蔓延していたが、そんなもんファーック! 

まあそんなことで、若い頃に大きなバカやると、二度とそんなことはしません、という教訓めいた言葉を吐いて、今回はおしまい! 


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アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。見かけはご覧のようにとっつきにくそうが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はそれほどウソでもない。

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