Hi-Compression Column

アッキーがキタ

■ミュージシャンになるべく
夢抱き上京したバカ編 その2

(2011.2.8更新)

さて、前回では名古屋の田舎モンが故郷に錦を飾るべく上京した初日のドタバタを書いたが、今回はそのちょっと後の話。

んで、理由はいずれ書くけど、オレがどんなバンド組んでどういう活動していたかは、まだ書かない(スマン)。

まあしばらくは笑い飛ばせるネタでイケイケゴーゴーこいけやのポテトチップス(分からんだろうなあ…)でいくんで、よろしくっす!

東京にやっとこさ到着して、某農工大に通う幼馴染みの家に居候することになり、ビル掃除の仕事も見つけた23歳のオレ。

しかし、バンドのメンバーなんか全然コネがないから見つかりゃしない。

“う〜ん、どうしよう”

そうこうしているうちに、ある日友達の先輩でやたら顔が広いJという人にこう言われた。

「お前、頭脳警察って知ってるか?」

ももも、もちろんである。

まあ読者の中でも知ってる人は知ってるだろうし知らない人は知らない(なんだこの日本語)、要するに日本の思想派パンクロックの先駆けとなり、数多くの発売禁止アルバムを持つ伝説のバンド、それが頭脳警察(オフィシャルサイト・http://brain-police.net/)だった。

でも正直、オレは洋楽ヘヴィメタルばっか聴いていたので、あまり頭脳警察の曲は知らない。

だがそれを伝えると、J氏はそれを全く無視し、こう言い放った。

「よし、お前は明日から頭脳警察のローディーになって、プロの音楽業界を勉強しなさい!」(注:ローディーというのは、基本的にバンドの楽器や機材を管理して、そのほかにも身の回りの世話やら女の子のナンパ・手配など、ぶっちゃけオールマイティ付き人、って感じ。ただ楽器専門でやってるハイレベルな人もいる)

おおお、そんな大それたことができるのか? と、すでに心臓ドキドキ状態のオレに対し、彼は恐るべし命令をオレに下したのだった。

「実はもう頭脳警察のパンタには話を通してある。明日の3時、青山にあるビクタースタジオの301号スタジオルームへ行け!」

まったく何の想像もつかないオレ。

しかし、大学を途中でぶっちぎり、実家に帰ることも許されないオレには前進あるのみ! 


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そして次の日、バイクで都内の青山へ向かい、ビクタースタジオを発見。

入り口の受付で何か言われたらどーしよー、とドキドキしながらも何とかスルーし、エレベーターで3階に上がると、301号室のドアがすぐに見えた。(注:想像して欲しい。プロでも業界関係者でもないのに、天下のビクタースタジオに入る恐ろしさを!)

“こ、こ、このドアの向こうに、あの過激な歌詞と言動で有名なミュージシャン、パンタと頭脳警察のメンバーがいるのか…”

緊張は極限まで達していたが(だってもう、田舎から出てきたばっかのガキだもん)、ここで帰っては男がすたる。

ついに決心をし、ドンドンとドアを叩いて思いっきり開き「失礼しますっ!」と大声で叫んで中を見ると、パンタ氏の姿がどこにも見えない。

気がつくと、ソファーのはじっこに一人のオジサンが座っており、よく見れば彼は頭脳警察のパーカッション担当、トシさんだった。

彼は一人でちびちびと日本酒を呑んでイイ感じとなっていたのだが、当然オレのことなぞ知らないはずだし、J氏からの連絡も聞いてはいないはずだ。

“どうする、オレ?”

予想外の展開にしばし頭が混乱したが、とりあえず気を取り直し「今日からこちらでローディーをやらせて頂く加藤と言います。よろしくお願いしますっ!」と言うと、トシさんは「あぁ、そーなの?」と人ごとのように言い、「まあこっち来て座りなさいな」と手招き。

これを断っては失礼にあたるので、言われた通り彼の隣に座ると、トシさんはオレにグラスを持たせたかと思うや否や、日本酒をコポコポと注ぐではないか!!

“うわ〜、初日でしかもまだパンタさんにも挨拶してないのに酒なんか呑めないよ〜”

またしてもパニクるオレ。

だが、トシさんはオレが呑むのを横でじっと見ている。

くぅっ、ままよ! とばかり、オレがついに決心してグラスを口へ付けた、まさにその瞬間、スタジオのドアがガチャリと開き、パンタ氏を先頭に、頭脳警察の他メンバーご一行様がずらずら入ってきてしまったのだ!!!

酒を口から吹き出しそうになりながら、オレは自分の失態を見られたのを隠すかのように大声でパンタ氏に挨拶をした。

“来た日にいきなり酒なんか呑みやがって”と怒鳴られるのを覚悟していたのだが、彼は「おお、Jから話は聞いてる。よし、じゃあこれからよろしくな」と言ってくれたのだった。実は優しい人なのである。

そしてこれが、現在まで続くオレとパンタ氏の長い付き合いの始まりだったのだ。

(まだまだつづく) 



アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。見かけはご覧のようにとっつきにくそうが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はそれほどウソでもない。



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