Hi-Compression Column

アッキーがキタ

■ミュージシャンになるべく
夢抱き上京したバカ編 その4

(2011.4.8更新)

まず最初にお断り申し上げます。震災からまだひと月足らずの今、本来なら、真面目な事を書くべきかもしれません。

だが! 少なくとも被災地のみんなは、わざわざオレなんかのコラムで、なんだか小難しくて考えこんじゃう話なんか読みたくないだろ!「やっぱこいつバカで〜」って笑いたいだろ!! 

だから今回も、いつもと変わらずスっ飛ばす。批判、クレーム大いに結構。それでは本編、スタートだっ!!!

つーことで、前回はガキの頃バンドに目覚め、すったもんだの結果、ベースギターとアンプをとりあえず買った16歳のオレ、ってお話だった。

そしてハナ垂れ小僧は、何も分からぬまま練習を始めたのだが、いかんせん弦楽器は初めて。

実は告白すると小学生時代の6年間、オレはピアノのお教室なんぞに通わされていた過去があり(笑うな)、音感だけはあった。

しかし、である。まあみんな分かると思うが、ピアノっつーのは、とりあえず鍵盤を何か押してやればすぐに音が出る。

だけど、ベースギターっちゅーもんは、まず左手で4本ある弦のどれかの、フレットという目印みたいな部分を押さえ、そして右手でそれぞれの弦をはじかなければ音が出ない。

コレがワケわからないのだ! どの弦の、どこを押さえたらどんな音が出るのだ!?

「えっと、まず左手でぇ、ここを押さえて、んでもって右手でこの弦を…」

そうこうしているウチに、なんとか音程と弾き方のコツをつかんだオレ。

「やった! あとはお気に入りの曲を練習するだけだ!!」と思い立ったが! ここから先が実は大問題だったのだ。

どういうコトか? 

`80年代の様式美系ヘヴィメタルやパワーメタルなどでは、迫力ある重低音を重視するため、ベースギターは極力低音で、かつシンプルなメロディにされていることが多い。

それでは、普通の人にも分かりやすく『ドレミ』で、当時のオレの練習っぷりを表現してみよう(一部省略するが大体同じ)。

“ミミミミミミミミミミミミミミミミ(×14回)ミミミミミミミドードドドドドドソーソソソソラーララララララ(以下ほぼ繰り返し)”

はっきり言う! つまらないのだ!! 

若さ溢れすぎて鼻血も出そうな16歳が、チンコチンコと動くメトロノームを目の前に置き、部屋の中、独りっきりでひたすら“ミミミミミ…”。

これがギタリストなら“ズッズッズッジャー! テケテケテケテケ・グイーン”とか、何となく一人でもサマになる風景であろう(もちろん初心者には無理なのだが)。

オレはその時点で、ベースギターを選んだことを激しく後悔した(念のため言っておくが、実際にはベースというモノは非常に奥が深い楽器。しかしそれにオレが気づいたのは上京後のオハナシである)


右上へ

結局オレは「こんなんだったら練習なんて大してせんでもエエわ」と半ば放棄。しかしそれが、頭の中の80パーセント以上はエロいことしか考えていないガキの浅はかさだった……。

2週間後、とりあえずバンドメンバーと共に初めての練習スタジオ入りしたオレ。演奏する曲は、あらかじめヴォーカルの奴がレコードからカセットテープにダビングして(デジタルな若い人には何のコトヤラ、であろう)渡されていた。

テープに録音された順番に、曲を演奏していくオレ達。今思うに、その演奏レベルはデビュー当時のセックス・ピストルズを遙かにしのぐ下手クソさだったことだろう。

しかし、何せ初めてのセッション、いかに単純なフレーズばっかりでも、ギターやドラムと一緒だと気分もノッてくる。

だが5曲ほど演奏したところで、オレの音楽人生で初の大事件が勃発したのだ!!

「次はモトリー・クルーやろうぜ。テープのB面に録音してあったヤツ。聴いてるだろ?」

何気なくヴォーカルが言ったこのひと言で、オレは凍り付いた。

個人練習をあまりに投げやりな態度でやっていたため、すっかりテープのA面だけだと思い込み、B面の曲など全く練習していなかったのである!(A面、B面の意味が分からない若者はオジサンに聞いてくれ)

幸い、モトリー・クルーの曲"Looks That Kill"自体は、好きだったので覚えていた。しかし、どう弾けばいいのかは全く分からない。

そこでまだ小僧ながら、妙な浅知識だけはあった当時のオレは、一番低音を出す4弦のチューニングを、弦がベロンベロンになるまで下げ、アンプのヴォリュームをグイッを上げた。

どういうコトか? 

人間の耳というものは音が低くなればなるほど、そしてその音量が大きくなるほど、音程が分からなくなる。

「チューニングを下げまくり、大音量で弾いちまえばみんな気づかねぇだろ!」とオレは読んだのだ。

かくして、演奏はスタートした。 想像しがたい大音量の中、とりあえずリズムだけはキープし、左手はなんとなく音程を変えているように見せかけるため、弦を押さえはしないが位置だけ変える。もちろん、実際に弾いているのは何があろうとひたすら一番低音のみだ!

演奏終了後、ヴォーカルとギターが、生き生きとした表情でオレにこう言った。

「今の演奏、スゲー低音効いてて最高! 他の曲もこれくらい迫力出してくれよ」

こうして、オレは難関を乗り切ったのだった。

ちなみに、担当A山氏に今回の原稿を催促された際のメールには↓このように

「○○ネタはダメよ」(伏せ字はお察しください)と書かれていた。

ダメっすか?

(まだまだつづく) 


アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。見かけはご覧のようにとっつきにくそうが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はそれほどウソでもない。

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