■ミュージシャンになるべく
夢抱き上京したバカ編 その4
まず最初にお断り申し上げます。震災からまだひと月足らずの今、本来なら、真面目な事を書くべきかもしれません。
だが! 少なくとも被災地のみんなは、わざわざオレなんかのコラムで、なんだか小難しくて考えこんじゃう話なんか読みたくないだろ!「やっぱこいつバカで〜」って笑いたいだろ!!
だから今回も、いつもと変わらずスっ飛ばす。批判、クレーム大いに結構。それでは本編、スタートだっ!!!
つーことで、前回はガキの頃バンドに目覚め、すったもんだの結果、ベースギターとアンプをとりあえず買った16歳のオレ、ってお話だった。
そしてハナ垂れ小僧は、何も分からぬまま練習を始めたのだが、いかんせん弦楽器は初めて。
実は告白すると小学生時代の6年間、オレはピアノのお教室なんぞに通わされていた過去があり(笑うな)、音感だけはあった。
しかし、である。まあみんな分かると思うが、ピアノっつーのは、とりあえず鍵盤を何か押してやればすぐに音が出る。
だけど、ベースギターっちゅーもんは、まず左手で4本ある弦のどれかの、フレットという目印みたいな部分を押さえ、そして右手でそれぞれの弦をはじかなければ音が出ない。
コレがワケわからないのだ! どの弦の、どこを押さえたらどんな音が出るのだ!?
「えっと、まず左手でぇ、ここを押さえて、んでもって右手でこの弦を…」
そうこうしているウチに、なんとか音程と弾き方のコツをつかんだオレ。
「やった! あとはお気に入りの曲を練習するだけだ!!」と思い立ったが! ここから先が実は大問題だったのだ。
どういうコトか?
`80年代の様式美系ヘヴィメタルやパワーメタルなどでは、迫力ある重低音を重視するため、ベースギターは極力低音で、かつシンプルなメロディにされていることが多い。
それでは、普通の人にも分かりやすく『ドレミ』で、当時のオレの練習っぷりを表現してみよう(一部省略するが大体同じ)。
“ミミミミミミミミミミミミミミミミ(×14回)ミミミミミミミドードドドドドドソーソソソソラーララララララ(以下ほぼ繰り返し)”
はっきり言う! つまらないのだ!!
若さ溢れすぎて鼻血も出そうな16歳が、チンコチンコと動くメトロノームを目の前に置き、部屋の中、独りっきりでひたすら“ミミミミミ…”。
これがギタリストなら“ズッズッズッジャー! テケテケテケテケ・グイーン”とか、何となく一人でもサマになる風景であろう(もちろん初心者には無理なのだが)。
オレはその時点で、ベースギターを選んだことを激しく後悔した(念のため言っておくが、実際にはベースというモノは非常に奥が深い楽器。しかしそれにオレが気づいたのは上京後のオハナシである)
結局オレは「こんなんだったら練習なんて大してせんでもエエわ」と半ば放棄。しかしそれが、頭の中の80パーセント以上はエロいことしか考えていないガキの浅はかさだった……。
2週間後、とりあえずバンドメンバーと共に初めての練習スタジオ入りしたオレ。演奏する曲は、あらかじめヴォーカルの奴がレコードからカセットテープにダビングして(デジタルな若い人には何のコトヤラ、であろう)渡されていた。
テープに録音された順番に、曲を演奏していくオレ達。今思うに、その演奏レベルはデビュー当時のセックス・ピストルズを遙かにしのぐ下手クソさだったことだろう。
しかし、何せ初めてのセッション、いかに単純なフレーズばっかりでも、ギターやドラムと一緒だと気分もノッてくる。
だが5曲ほど演奏したところで、オレの音楽人生で初の大事件が勃発したのだ!!
「次はモトリー・クルーやろうぜ。テープのB面に録音してあったヤツ。聴いてるだろ?」
何気なくヴォーカルが言ったこのひと言で、オレは凍り付いた。
個人練習をあまりに投げやりな態度でやっていたため、すっかりテープのA面だけだと思い込み、B面の曲など全く練習していなかったのである!(A面、B面の意味が分からない若者はオジサンに聞いてくれ)
幸い、モトリー・クルーの曲"Looks That Kill"自体は、好きだったので覚えていた。しかし、どう弾けばいいのかは全く分からない。
そこでまだ小僧ながら、妙な浅知識だけはあった当時のオレは、一番低音を出す4弦のチューニングを、弦がベロンベロンになるまで下げ、アンプのヴォリュームをグイッを上げた。
どういうコトか?
人間の耳というものは音が低くなればなるほど、そしてその音量が大きくなるほど、音程が分からなくなる。
「チューニングを下げまくり、大音量で弾いちまえばみんな気づかねぇだろ!」とオレは読んだのだ。
かくして、演奏はスタートした。 想像しがたい大音量の中、とりあえずリズムだけはキープし、左手はなんとなく音程を変えているように見せかけるため、弦を押さえはしないが位置だけ変える。もちろん、実際に弾いているのは何があろうとひたすら一番低音のみだ!
演奏終了後、ヴォーカルとギターが、生き生きとした表情でオレにこう言った。
「今の演奏、スゲー低音効いてて最高! 他の曲もこれくらい迫力出してくれよ」
こうして、オレは難関を乗り切ったのだった。
ちなみに、担当A山氏に今回の原稿を催促された際のメールには↓このように
「○○ネタはダメよ」(伏せ字はお察しください)と書かれていた。
ダメっすか?
(まだまだつづく)
- アッキー加藤
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