Hi-Compression Column

アッキーがキタ

■ミュージシャンになるべく
夢抱き上京したバカ編 その7

(2011.7.7更新)

さあって! お待たせしました! 今回はオレが伝説の左翼系過激派バンド『頭脳警察』のローディー(要するに使いっぱ)だった時代のオハナシである。いや、オレのバンド話ばっかじゃ読者ちゃんも飽きると思うし、バイク乗り系には意外と頭脳警察ファンが多いので、今月は出血大サービス全台解放中、となるのだ!

んで、あれは91年の頭脳警察再結成の頃。前にも書いたが、ひょんなことからリーダーのパンタ氏と出会い、スタッフとなったオレは、ほぼすべてのライブにローディーとして同行していた。そしてその時期は、各大学の学園祭シーズン。もちろん、頭脳警察もあちこちの大学からのオファーを受けており、何カ所かライブ演奏のために出演をしていたのである。

たいていの大学は、まあ学祭ということで多少の盛り上がりすぎ感はあったのだが、今回取り上げるのは、横浜にある某有名大学でのこと(一応、大人として実名は出さない)。リハーサルのため早めに会場入りし、サウンドチェックなどを済ませると、あとはバンドとしてはやることがない。しかも当日は他にも数バンドが出演するため、トリをつとめる頭脳警察の待ち時間は相当なもんだったのである。

「アキ、ビールでも買ってこいよ」

そんな時、ほとんどアル中と言っても過言ではないパーカッション担当の頭脳警察オリジナルメンバー、トシさんがこう言った。それに、これまた当時アル中寸前だったドラムのマスヒロ氏も賛同し(ちなみにパンタ氏はアルコールを一切飲まない)、オレは買い出しに行かされるハメに。しかし、これが驚愕の出来事になるとは、オレもまだ予想だにしていなかった……。

まず学内でビールを売っているところを探すも、どこも売り切れ。しかたないのでとある学生に、深夜まで開いている酒屋を教えてもらうが、歩いていくにはちと遠い。ということで、オレは当時乗っていたチョッパーにまたがり、学外へ出ようとする。

しかし! 校門の周りはもはや異常と思える光景が展開していた。昼間から騒ぎすぎて疲れた学生たちは、そこいらへんに、まるで紛争地帯の難民のようにゴロゴロと道ばたに横たわり、その近くでは、これまたロス暴動の時の市民さながら、アルコールでメートルの上がった(死語)学生さんたち百名以上が、わけのわからん雄叫びをあげながら狂ったように騒ぎまくっているではないか!

「こ、これはヤバいかも……」

さすがにこれだけの人数に絡まれたら、たとえ若かりし頃、しかもイケイケだったオレでも突破できる確証はない。しかも、である。もう時効なので書いてしまうが、その時のオレは、近場への買い出しなら平気だろうと、ノーヘルで学外へ出ようとしていたのだ(また良識ある読者サマからクレーム入るかな……)。


右上へ

とにかく、まずはチョッパーで群衆の中を突破し、校門から外へ出ないことにはビールを買うことができない。だが、狂喜乱舞した学生たちは、オレが「ちょっとどいてくれ〜」と叫ぼうが、一向に気にしないのだ! 

くぅっ、このままではバンドメンバーにドヤされる! 意を決したオレは、直管マフラーを装備したチョッパーのアクセルをフルに吹かしまくり、騒いでいる奴らを威嚇しようと試みた。ギャーギャーと騒ぐ学生たちと、ズドドド〜っ! と鳴り響くオレのチョッパー。近所迷惑はなはだしい状況だが、これで何とかなると思っていたオレが浅はかだった。

なんと周りの酔っ払い学生たちは、ロン毛のノーヘルでチョッパーに跨がり、爆音をとどろかせているオレを見て「うぉ〜、すげぇ〜!」と、大勢集まってきてしまったのである! 奴らをけちらすためにアクセル吹かしたのに、かえって呼び寄せてしまったのである! これじゃ全くもって意味がないのである!

こうなったらヘタに敵対するより、同調した方が良い、と判断したオレは、なぜか「ロックンロール万歳!」と大声で叫んだ。すると、わけのわからん周りの学生たちも次々に「万歳!」と叫び出す!! おそらく周りにいた100人ほどの酔っ払い学生たちが皆オレに注目し、両手を掲げてシュプレヒコールを連呼! オレはちょっとしたヒーロー気分にひたるも、あまり油を売ってはいられない。

「オレはビールが欲しいんだ。道を開けてくれっ!」と叫ぶと、まるでモーゼの十戒のよーに、学生たちの群衆はズバ〜っと2つに別れ、校門までの道が開けたのである! おおっ、めちゃくちゃ気持ちいい!

こうして、なんとか学校の敷地から外に出られたオレ。しかし、なんとか無事にビールを調達して学内へ戻ってくると、またしても酔っ払い学生たちが集まってきやがった! 

もう奴らにかまっている暇などない。オレはアクセルを全開にし、はっきり言って2〜3人轢いたところで大丈夫だろ、的な(あくまで昔の話です)思考回路のまま、群衆の中へ思いっきり突っ込む。すると、さすがに危険を察したのか連中は道を開けてくれ、なんとかバンドメンバーが待つ控え室までビールを届けることができた。


「おまえ、ただビール買いにいくのにどんだけ時間かかってんだ?」

メンバーからそうお小言を言われ、しかし全部を説明するのもめんどくさいオレ。学生さん達、いくら学祭だといってもハメを外し過ぎちゃダメよ、まったく(ノーヘルで外へ出ようとしたオレも偉そうなことは言えないが)。


アッキー加藤
アッキー加藤
アメリカン、チョッパーなどそっち方面が主戦場のフリーライター。見かけはご覧のようにとっつきにくそうが、礼節をわきまえつつ、締切も絶対に守り、かつ大胆に切り込んでいく真摯な取材姿勢で業界内外で信頼が篤い。ここまで書くとかなりウソくさいが、締切うんぬん以外はそれほどウソでもない。

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