Hi-Compression Column

GMB

衛藤達也

1959年大分県生まれ。大分県立上野ヶ丘高校卒業後、上京し日本大学芸術学部写真学科卒業。編集プロダクションの石井事務所に就職し、かけだしカメラマン生活がスタート。主に平凡パンチの2輪記事を撮影。
写真修行のため株式会社フォトマスで (コマーシャル専門スタジオ)アシスタントに転職。
フリーになり東京エディターズの撮影をメインとしながらコマーシャル撮影を少しずつはじめる(読者の方が知っているコマーシャルはKADOYAさんで佐藤信哉氏が制作されたバトルスーツカタログやゴッドスピードジャケットの雑誌広告です)。
12年前に大分県に戻り地味にコマーシャル撮影をメインに活動中。
小学校の放送部1年先輩は宮崎美子さんです。全く関係ないですが。

第5回「続・衛藤達也」さん

ギャラリーとか個展とかアトリエとか、そういう分野とは縁がないと思っている方、多いんじゃないでしょうか。それはともかく、バイクのイラストとか写真とかだって立派な芸術です。このコーナーでは、そんなみなさまの作品を紹介させていただくギャラリーです。じっくりとご覧下さいませ。
(11月12日更新)

画像01

 エトさん、前回のGMB大好評でしたよ。特に安生さんのくだりが。
「もっと安生さんの無茶振りを堪能したーい」という声が多数(ほとんど業界関係者ですが)寄せられてます。 つきあい長いんだから、もっとオモシロ話あるんじゃないっすか?

「ん〜〜〜〜〜っ、じゃあ、この話はどーでしょう」

と、MB歴史の玉手箱から発掘されたステキな写真と共に今月も謎の写真技師こと、エトさ、こと、カメラマン衛藤達也さんに語っていただきます。

--青山のHONDA本社で撮影したNSR250の話--

 今なら、スケルトンの写真はPhotoshopでレイヤー重ねて、デジタル処理で簡単に作れるけど、当時は未だフィルムの時代。しかもカメラは大判の4x5(しのご)。
 あのときは、確か、地下駐車場の誰も来ない端っこで、こっそりとセットを組んで部外者に見られないよう撮影しました。

 スペンサーのマシンと市販車(NSR250R)を並べて撮るだけならそんなに難しい話じゃありません。
 しかし、リクエストは
「あのね、衛藤くん、エンジンがね、カウルからね、透—けて見—える写真が、ほーしいの」
というもの。たしか、担当は、安生さん(現ミスター・バイクBG編集部員)だったような。いや、間違いなく安生さんでした。

 たぶんこの写真左、RVFのイメージ広告を見て思いついたんでしょう。

 それはともかく、この写真は簡単な多重露光(重ね撮り)ではありません。
 エンジンがカウルから透けて見えるようにということは、カウルを付けた状態でまず撮影して、そのまま1ミリたりとも動かすことなく、カウルを外して撮影せねばならないのです。
 しかもライトも切り替えて撮らねばならない。スタジオじゃないから本職のアシスタントはいない。いるのは小うるさい編集者=安生さんのみ。撮影できる時間は限られていたと思います。

 そこで考えた一番効率の良い方法はというと、1回目を撮影する→カメラが動かないように静かに2回目のレンズをチャージする→カメラに触らないようにストロボを切り替えに行く→その間にカウリングを外す。もちろんバイクが動かないよう慎重に→外したら、二回目のシャッターを切る。これでやっと一枚目を撮り終わるんです。
 付けては外し外しては付けを繰り返すこと4回。計4枚撮影しました。
 フレーミングに30分、ライティングに1時間、で、4枚撮るのに1時間もかかったので計2時間半。
 しかもその後、「ワークスマシンは滅多に撮影できないかーらね。とりあえずあそこも撮ってここも撮って」と部分写真もイーッパイ撮らされました。

 こんなに苦労を重ねて、現像が上がって見てみたら、使える写真は1枚だけ。
 その頃は4x5にあまり慣れていなくて、多重露光するときは4x5ホルダーのフィルムを動かない様にテープで固定しておくなんてことは全く知らなかったんです。充分ホルダーをたたいてフィルムを落としたつもりだったけども落ちていなかったようです。
 そしてそのだいぶ後で わかったことなのですが、ホンダ本社の下には地下鉄が走っているとのこと。そんなこととは知らず、撮影していたとは……地下鉄の振動でずれるのは当たり前ですよ……。

 これに味を占めた安生さんはまたもやスケルトン撮影をセットします。ジョイダンロップのVFRを撮影することになるのです。こちらの苦労も知らず……

 今から思えば、どーも前回のZ2を撮影した頃から安生さんの難しい撮影への欲望がむくむく育ち始めたのです。
 これを俗に目が肥えるというらしいのですが、私には覚え立ての中学生が、激しい衝動を抑えきれずあらゆる方法をどん欲に追求していく姿に見えました……

 ちなみにこの作品はミスター・バイク本誌ではなく、BGの前身であるミスター・バイク1986年11月臨時増刊号巻頭特集「レーサーレプリカ本番勝負」に掲載されました。
 この号の表紙は、デビューしたばかり、当時12歳のゴクミ。そう、ジャン・アレジの奥さんになる後藤久美子ちゃんです。
 この表紙も私が撮影させてもらいました。
 NHKの大河ドラマ撮影のあとに表紙を撮影しましたが、撮影後に鼻血を出してしまった(私ではなくゴクミちゃんが)ことを思い出しました。
 インタビューしたのがキルロイ(名物編集部員、のちに某大手ヘルメット会社へ就職)だったので、毒気に当てられちゃったのかも…しれません。

●衛藤写真事務所
●webサイト http://www1.bbiq.jp/tailoretoh/site/Welcome.html
●webshop http://propup.shop-pro.jp/
●メール tatsuyaetoh@gmail.com
 


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