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衛藤達也
第5回「続・衛藤達也」さん
ギャラリーとか個展とかアトリエとか、そういう分野とは縁がないと思っている方、多いんじゃないでしょうか。それはともかく、バイクのイラストとか写真とかだって立派な芸術です。このコーナーでは、そんなみなさまの作品を紹介させていただくギャラリーです。じっくりとご覧下さいませ。
(11月12日更新)
たぶんこの写真左、RVFのイメージ広告を見て思いついたんでしょう。
それはともかく、この写真は簡単な多重露光(重ね撮り)ではありません。
エンジンがカウルから透けて見えるようにということは、カウルを付けた状態でまず撮影して、そのまま1ミリたりとも動かすことなく、カウルを外して撮影せねばならないのです。
しかもライトも切り替えて撮らねばならない。スタジオじゃないから本職のアシスタントはいない。いるのは小うるさい編集者=安生さんのみ。撮影できる時間は限られていたと思います。
そこで考えた一番効率の良い方法はというと、1回目を撮影する→カメラが動かないように静かに2回目のレンズをチャージする→カメラに触らないようにストロボを切り替えに行く→その間にカウリングを外す。もちろんバイクが動かないよう慎重に→外したら、二回目のシャッターを切る。これでやっと一枚目を撮り終わるんです。
付けては外し外しては付けを繰り返すこと4回。計4枚撮影しました。
フレーミングに30分、ライティングに1時間、で、4枚撮るのに1時間もかかったので計2時間半。
しかもその後、「ワークスマシンは滅多に撮影できないかーらね。とりあえずあそこも撮ってここも撮って」と部分写真もイーッパイ撮らされました。
こんなに苦労を重ねて、現像が上がって見てみたら、使える写真は1枚だけ。
その頃は4x5にあまり慣れていなくて、多重露光するときは4x5ホルダーのフィルムを動かない様にテープで固定しておくなんてことは全く知らなかったんです。充分ホルダーをたたいてフィルムを落としたつもりだったけども落ちていなかったようです。
そしてそのだいぶ後で わかったことなのですが、ホンダ本社の下には地下鉄が走っているとのこと。そんなこととは知らず、撮影していたとは……地下鉄の振動でずれるのは当たり前ですよ……。
これに味を占めた安生さんはまたもやスケルトン撮影をセットします。ジョイダンロップのVFRを撮影することになるのです。こちらの苦労も知らず……
今から思えば、どーも前回のZ2を撮影した頃から安生さんの難しい撮影への欲望がむくむく育ち始めたのです。
これを俗に目が肥えるというらしいのですが、私には覚え立ての中学生が、激しい衝動を抑えきれずあらゆる方法をどん欲に追求していく姿に見えました……
ちなみにこの作品はミスター・バイク本誌ではなく、BGの前身であるミスター・バイク1986年11月臨時増刊号巻頭特集「レーサーレプリカ本番勝負」に掲載されました。
この号の表紙は、デビューしたばかり、当時12歳のゴクミ。そう、ジャン・アレジの奥さんになる後藤久美子ちゃんです。
この表紙も私が撮影させてもらいました。
NHKの大河ドラマ撮影のあとに表紙を撮影しましたが、撮影後に鼻血を出してしまった(私ではなくゴクミちゃんが)ことを思い出しました。
インタビューしたのがキルロイ(名物編集部員、のちに某大手ヘルメット会社へ就職)だったので、毒気に当てられちゃったのかも…しれません。
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