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衛藤達也
現地集合、現地解散 ドイツ5日間、200台撮影の旅 その3
【前回までのあらすじ】 1980年代後半から90年代にかけ、ミスター・バイク誌上で数々の作品を発表したエトーカメラマン。今回は、彗星の如く飛び去った四輪の姉妹誌「TARGA」でのお話。初の欧州ロケを依頼されたのだが、東京エディターズ(弊社)だけにそんな美味しい話はそうそうない。5日間で車200台を撮影し、しかも現地集合という内容であった。無論ドイツ語など知らないエトーカメラマン。現地に着いたものの、チェックアウトの時間を間違えたり、うんこを踏んだりしながらも現地で撮影のキーマン、ケンオウとコーディネーターと無事合流、いよいよ仕事が始まるのだが……
さあ撮影、その瞬間に大ピンチ
翌朝7時、食堂でアットホームな食事をとりロッソビアンコ博物館へ向かう。
オーナーに挨拶をして、さっそくインタビュー開始。車両撮影だけではなくインタビュー撮影もあったのだ。
緊張していたからだろうか直接ACコードをコンセントにつないでしまい、ストロボメーターで露出をはかったとたんストロボが変な発光をした。
そう、準備万端用意してきた肝心の変換アダプターを間に入れ忘れてしまったのだ。
開始早々の痛いミスですーっと顔が青くなるのが解る。
それを見たケンオーは心配そうに「大丈夫ですか? どーしましょう。大変なことになりましたか。撮影できますか?」と、心の底から心配してくれているのだが、やはり目の奥は「エトーさん、やはりやらかしましたか。どーすんです??」と語っていた(ように見えた)。
しかし私もプロカメラマンのはしくれ。「大丈夫。スペアのクリップオンストロボも有るし,外光の有る所で撮れば大丈夫」と気を取り直し、無事インタビューも終了。
続いて、最大の懸念である館内の自動車を撮り始める。しかし、わざわざドイツくんだりまで運んできた大きいストロボは一瞬でご臨終。
さて、どーしようかと考えた。館内は蛍光灯なのでこのままで撮ると青っぽい写真になってしまう。
そーだ、ゼラチンフィルターがあった。三脚は有るからゼラチンフィルターをかけ蛍光灯補正をしてスローシャッターで撮影しよう。
しかし、蛍光灯は上からの光だけで横からの光が足りない。どうするか? そこで突然ひらめいた。
ちょっと専門的な話になって申し訳ないが、レンズの前には30Mのフィルター。蛍光灯の色は30G。ならばクリップオンストロボに30Gをかければいいじゃないか。
これで上からの蛍光灯と横からのストロボ光を同じ様に補正できる。ストロボとスローシンクロでなんとか撮れる。助かった。
しかも、ライトをセッティングする必要がなくなったケガの功名で1台5分あれば終わる。その結果、1時間で20台弱を撮った。
初日はインタビューが有り車両撮影のスタートが遅かったのでマリコさんに交渉してもらうと、何時まで撮影してもかまわないとお許しが出た。
ありがたい。ここでがんばらず、いつがんばると、ケンオーとがんばって、21時くらいまで撮りまくった。
おかげで3日目の昼には車両単体の撮影は終わり、イメージ撮影(いわゆるお芸術撮影)ができる算段となった。これに安心して、余裕が出た。
撮影は順調に進んでいたのだが、また別の問題が発生した。余裕が出れば、腹の減る具合も加速する。昼メシの問題である。
ミュージアムの近所には適当なレストランがないので、マリコさんにマクドナルドまで行ってもらって昼メシを買ってきてもらった。
しかし明日からはケンオーと2人っきり。それほど近所というわけでもなく、わざわざ買いに行く時間が惜しい。
その晩、レストラン(もちろん昨日と同じレストラン)で晩メシを食いながら、明日の昼メシをどうするか悩んでいると、部屋に大きな冷蔵庫が有ることを思い出したケンオーが、まるでできたてのスーパーカブを藤沢専務にお披露目する本田宗一郎氏のように目を輝かせて言った。
「パンとかハムとか買ってサンドイッチ作って持って行きましょう」と。
日本ならおにぎりだが、ハム、ソーセージの本場ドイツ。ピクニックみたいで楽しそうだ。
さっそくパン屋に寄った。。
このとき、2が「ツバイ」らしいことが解りった。だから「ツバイ」を連発しパンを買いまくった。
それを見ていたケンオーの目の奥は「サルがあれを覚えた様に、ツバイを使いまくって……」と語っていた(ように見えた)。
2日目の夜は撮影終了後、博物館のオーナーに誘われてフランクフルトの銀行主催のパーティーへ連れて行ってもらった。
いろんな名士を次々と紹介されるが、「ダンケシェーン」と「ツバイ」以外言葉が全くわからないので、日本人の得意技「微笑むだけ」を繰り返しパーティの夜は更けていった。
(まだまだ次号に続く)
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